
外国人介護人材の受け入れガイド|EPA・技能実習・特定技能・育成就労・在留資格「介護」の使い分け
外国人介護人材の5制度(EPA・在留資格「介護」・技能実習・特定技能・育成就労)を最新の公的データで比較。特定技能67,871人の国籍別前年比を独自集計、訪問系解禁の実際の利用状況、受け入れ事業所の課題まで一次資料で解説。
この記事のポイント
外国人介護人材の受け入れ制度は、EPA(経済連携協定)・在留資格「介護」・技能実習・特定技能・育成就労の5つに整理できます。2025年12月末時点で特定技能「介護」だけで6万7,871人が在留し(前年同期4万4,367人から53.0%増)、政府は2029年3月末までに育成就労3万3,800人+特定技能12万6,900人=計16万700人の受け入れを見込みます。送出国はインドネシア2万1,139人とミャンマー1万9,803人がほぼ並び、最大送出国ベトナムの介護分野の伸びは+16.7%と全体を大きく下回りました。2027年4月の育成就労開始(介護分野の日本語要件は入国時A2.2相当)と、2025年4月の訪問系サービス解禁への対応が急務です。地域ごとの浸透度は都道府県別の独自試算で確認できます。
目次
介護現場で外国人スタッフと一緒に働くことは、もはや特別な話ではありません。厚生労働省の集計を制度別に足し合わせると、EPA・在留資格「介護」・技能実習・特定技能の4制度だけで約10万5,000人が介護分野で在留しています。なかでも特定技能「介護」は2025年12月末時点で6万7,871人に達し、前年同期の4万4,367人から1年で53.0%増えました。
背景にあるのは深刻な人材需要です。厚生労働省が第9期介護保険事業計画をもとに集計した必要数では、介護職員は2026年度に約240万人(2022年度から約25万人の増加)、2040年度には約272万人(同約57万人の増加)が必要とされます。国内人材の確保と生産性向上だけで埋めきるのは容易ではありません。さらに2027年4月には技能実習に代わる育成就労制度が始まり、政府は2026年1月23日の閣議決定で、介護分野の2029年3月末までの受入れ見込数を16万700人と定めました。
一方で、現場の温度は数字ほど前のめりではありません。介護労働安定センターの令和7年度介護労働実態調査(2026年7月29日公表)では、外国籍労働者を受け入れている事業所は18.6%にとどまり、すでに受け入れている事業所でも「今後、積極的に受け入れを拡大していきたい」は26.4%と前年度から5.9ポイント低下しています。
本記事では、5つの在留資格の違いと選び方を、制度の建前ではなく公表データと施行済みの要件から整理します。出入国在留管理庁の国籍別統計を当サイトで再集計した送出国の構造変化、訪問系サービス解禁後に実際どれだけ動いたのか、そして受け入れ事業所が本当に困っている課題は何かまで、一次資料をもとに踏み込みます。
外国人介護人材の最新データ|在留資格別の人数・受入施設・2029年計画
まず、外国人介護人材が「いま何人いるのか」を在留資格ごとに押さえます。制度ごとに公表元と集計時点が違うため、数字を並べるときは必ず基準時点をセットで確認するのが実務上の鉄則です。下表は厚生労働省が令和8年3月25日の介護分野における特定技能協議会運営委員会に提出した説明資料「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」の掲載値をベースに、特定技能のみ出入国在留管理庁の最新公表値(令和7年12月末)に差し替えたものです。
| 在留資格 | 在留者数 | 基準時点 | 公表元 |
|---|---|---|---|
| 特定技能1号(介護分野) | 67,871人 | 2025年12月末(速報値) | 出入国在留管理庁 |
| 技能実習(介護職種) | 20,065人 | 2024年12月末 | 厚生労働省 |
| 在留資格「介護」 | 13,949人 | 2025年6月末 | 厚生労働省 |
| EPA介護福祉士・候補者 | 3,004人(うち資格取得者435人) | 2026年2月1日 | 厚生労働省 |
4制度の単純合算は約10万5,000人。ただし基準時点がそろっていないため、この合計値は「概算のオーダー」として扱ってください。加えて、永住者・定住者・日本人の配偶者といった身分系の在留資格で介護現場に立つ外国人は上表に含まれません。実際に現場で働く外国人の総数は、この10万5,000人よりさらに大きくなります。
特定技能だけが突出して伸びている
4制度のうち、伸びが突出しているのが特定技能です。出入国在留管理庁の「特定技能在留外国人数」(国籍・地域別特定産業分野別)で介護分野を前年同期と比べると、2024年12月末の44,367人から2025年12月末の67,871人へ、1年で53.0%増。同じ期間の特定技能全16分野の伸びは34.8%(283,634人から382,341人)ですから、介護は特定技能全体の平均を大きく上回るペースで拡大していることになります。技能実習が2027年4月に育成就労へ移行して新規受け入れを止めることも踏まえると、当面の主戦場が特定技能であることは数字からも明らかです。
試験合格者は17万人、在留者は6.8万人という「差」
受け入れを検討する側にとって重要なのは、実は在留者数よりも「候補者のプール」がどれだけ厚いかです。厚生労働省の同資料によると、介護分野の入口となる2つの試験の累計合格者数は次のとおりです(2019年4月から2026年1月末までの実績)。
| 試験 | 累計合格者数 | うち国内 | うち海外 |
|---|---|---|---|
| 介護技能評価試験 | 177,007人 | 49,713人 | 127,294人 |
| 介護日本語評価試験 | 162,470人 | 48,057人 | 114,413人 |
技能評価試験の合格者17万7,007人に対し、実際に日本で就労している特定技能1号は6万7,871人。合格者の6割超はまだ日本の介護現場に入っていない計算になります。とくに海外での合格者が12万7,294人と国内合格者の2.5倍を超えており、海外にすでに大きな待機層が積み上がっている構造です。「人がいないから採れない」のではなく、「その人たちと自施設をどう結びつけるか」が課題である、というのが数字の示す実像です。
どんな施設が受け入れているか
厚生労働省が介護の特定技能協議会への入会申請状況をもとに集計した施設・事業所類型(2025年9月12日時点、N=33,713、複数回答可)では、受け入れの中心は入所系に強く偏っています。
| 順位 | 施設・事業所類型 | 件数 |
|---|---|---|
| 1 | 特別養護老人ホーム | 10,563 |
| 2 | 病院 | 3,899 |
| 3 | 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 3,752 |
| 4 | 特定施設入居者生活介護 | 3,087 |
| 5 | 介護老人保健施設 | 2,618 |
| 6 | 通所介護 | 1,941 |
| 7 | 短期入所生活介護 | 1,225 |
上位5類型で全体の約7割。24時間シフトを組む入所系ほど受け入れが進み、通所系・訪問系は相対的に少ないという分布です。自施設の類型が上位にない場合、「同じ類型の先行事例が近隣に少ない」という前提で情報収集の計画を立てる必要があります。地域ごとの偏りについては、介護職員1,000人あたりで正規化した特定技能「介護」の都道府県別浸透度ランキングで、自県がどの位置にいるかを確認できます。
政府が決めた2029年3月末までの受け入れ計画
政府は2026年1月23日の閣議で、育成就労制度と特定技能制度の基本方針・分野別運用方針を決定し、2029年3月末までの5年間の受入れ見込数を分野ごとに設定しました。介護分野の内訳は次のとおりです。
| 区分 | 介護分野 | 全19分野合計 |
|---|---|---|
| 育成就労 | 33,800人 | 426,200人 |
| 特定技能1号 | 126,900人 | 805,700人 |
| 合計 | 160,700人 | 1,231,900人 |
ここで見落とされがちな点が2つあります。1つめは、介護は最大枠ではないこと。分野全体の受入れ見込数を大きい順に並べると、工業製品製造業31万9,200人、建設19万9,500人、飲食料品製造業19万4,900人に次いで、介護は4番目です。人材獲得は他産業との競合であり、介護分野だけが優遇される枠組みではありません。
2つめは、特定技能の枠はむしろ絞られたこと。2024年3月に設定された介護分野の特定技能受入れ見込数は13万5,000人でしたが、今回は12万6,900人へ引き下げられています。生産性向上と国内人材確保の取組を前提に精査した結果であり、政府は「外国人材の枠を無制限に広げる」方針ではないことが読み取れます。介護分野の合計が16万700人に増えて見えるのは、技能実習では設定がなかった育成就労の枠3万3,800人が新たに乗ったためです。
なお、受入れ見込数は上限として運用される数値です。計画どおり16万700人が受け入れられたとしても、2040年に向けて見込まれる介護人材の不足規模には届きません。外国人材の確保は、介護テクノロジーの導入や業務の切り出しといった生産性向上策と並走させることが前提になります。
送出国はどう変わったか|介護分野の国籍・地域別データと前年比【独自集計】
「外国人介護人材=ベトナムかインドネシア」というイメージで受け入れ計画を組んでいる施設は、いま前提を更新する必要があります。ここでは出入国在留管理庁が公表する「国籍・地域別 特定産業分野別 特定技能1号在留外国人数」(第4表)の令和7年12月末版と令和6年12月末版を当サイトで突き合わせ、介護分野だけを抜き出して前年比を算出しました。国籍別の前年比まで踏み込んだ集計は他ではほとんど見かけないため、送出国選定の一次資料として使ってください。
対象は特定技能1号のみです。技能実習・育成就労・EPA・在留資格「介護」は含みません。入管の原表に「本表の数値は速報値である」旨の注記があります。介護分野に1人以上在留する国籍・地域は44あり、下表に載せた12か国以外はすべて100人未満です。
介護分野の国籍・地域別データ(2025年12月末)
| 国籍・地域 | 2025年12月末 | 2024年12月末 | 前年比 | 介護特化度 | 介護分野シェア |
|---|---|---|---|---|---|
| インドネシア | 21,139人 | 12,242人 | +72.7% | 24.4% | 31.1% |
| ミャンマー | 19,803人 | 11,717人 | +69.0% | 44.7% | 29.2% |
| ベトナム | 10,401人 | 8,910人 | +16.7% | 6.6% | 15.3% |
| ネパール | 6,013人 | 3,602人 | +66.9% | 49.0% | 8.9% |
| フィリピン | 5,704人 | 4,538人 | +25.7% | 16.1% | 8.4% |
| 中国 | 1,340人 | 1,103人 | +21.5% | 6.3% | 2.0% |
| スリランカ | 1,321人 | 638人 | +107.1% | 33.2% | 1.9% |
| モンゴル | 440人 | 442人 | -0.5% | 35.5% | 0.6% |
| タイ | 436人 | 334人 | +30.5% | 6.5% | 0.6% |
| インド | 417人 | 248人 | +68.1% | 55.3% | 0.6% |
| カンボジア | 402人 | 320人 | +25.6% | 4.8% | 0.6% |
| バングラデシュ | 223人 | 77人 | +189.6% | 27.0% | 0.3% |
| 介護分野 合計 | 67,871人 | 44,367人 | +53.0% | 17.8% | 100% |
「介護特化度」=その国の特定技能1号全16分野のうち介護分野が占める割合。「介護分野シェア」=介護分野全体に占めるその国の割合。似た言葉ですが分母が違うため、混同しないよう定義を明記しています。出典: 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数」第4表(令和7年12月末・令和6年12月末)をもとに当サイトが集計。
読み取り1: 「送出国の大きさ」と「介護での存在感」は一致しない
この表でいちばん重要なのは、国全体の送出規模と介護分野での存在感がまったく比例しないという事実です。ベトナムは特定技能1号の全分野合計で15万8,497人と圧倒的な最大送出国ですが、介護分野は1万401人にとどまり3位。自国の特定技能人材のうち介護に来ているのはわずか6.6%です。
対照的に、ミャンマーの全分野合計は4万4,315人とベトナムの3分の1以下にもかかわらず、介護分野では1万9,803人と首位に迫ります。ミャンマー人材の44.7%、ネパール人材の49.0%、インド人材の55.3%が介護分野に集中しているのです。「大きい送出国と組めば介護人材が採れる」という発想は、この構造の前では機能しません。介護に強い送出国と、製造・建設・外食に強い送出国は別物だと考えるべきです。
読み取り2: 首位交代が目前に迫っている
インドネシア2万1,139人に対してミャンマー1万9,803人、その差はわずか1,336人です。前年同期は1万2,242人対1万1,717人で差は525人でしたから、絶対差は開いたものの、伸び率は+72.7%と+69.0%でほぼ互角。介護分野の最大送出国が入れ替わってもおかしくない接戦が続いています。「介護の外国人材といえばインドネシア」という理解は、すでに現実の半分しか説明していません。
4位の入れ替わりはすでに起きています。厚生労働省が公表した2025年6月末時点の集計ではフィリピン5,122人がネパール4,713人を上回っていましたが、2025年12月末にはネパール6,013人がフィリピン5,704人を抜いて4位に浮上しました。半年で順位が動く速度で構造が変わっているということです。
読み取り3: ベトナム依存からの転換局面
ベトナムの介護分野の伸びは+16.7%で、介護分野全体の+53.0%を大幅に下回りました。人数自体は増えていますが、相対的なシェアは確実に落ちています。ベトナムの人材は建設・製造・飲食料品製造など他分野の需要が非常に強く、介護がその競合に勝ちきれていない構図です。
実務的な含意ははっきりしています。ベトナム前提で送出機関・監理団体・受け入れ体制を組んでいる施設は、送出国の分散を検討する局面です。特定の1か国に依存した体制は、相手国の政策変更や為替、他国の受け入れ拡大といった外部要因を丸ごと受けることになります。
読み取り4: 新興送出国の急伸は「率」だけで判断しない
伸び率だけを見ると、バングラデシュ+189.6%、スリランカ+107.1%、インド+68.1%が目を引きます。ただし実数はバングラデシュ223人、インド417人と小さく、母数が小さい国の伸び率は振れ幅が大きい点に注意が必要です。率と実数は必ずセットで見てください。
そのうえで意味があるのは、これらの国の介護特化度が高いことです。インドは自国の特定技能1号754人のうち55.3%が介護、スリランカは3,973人のうち33.2%が介護。母数は小さいが、来日する人材の相当割合が介護を選んでいるという構造は、数年後に主要送出国へ育つ可能性を示します。逆にモンゴルは442人から440人へと唯一の減少(-0.5%)で、介護分野では頭打ちの状態です。
送出国を変えるときに実際に検討すべきこと
送出国の分散を検討する際、当サイトでは「国民性」「気質」といった裏づけのない一般化は扱いません。実際に確認すべきなのは、確認可能な制度・環境の要素です。
- 二国間協力覚書(MOC)の有無と内容: 特定技能・育成就労で日本と協力覚書を結んでいるか、送出しの手続きがどう規定されているかは、出入国在留管理庁の公表資料で確認できます
- 試験の実施体制: 介護技能評価試験・介護日本語評価試験が現地で継続的に実施されているか。海外での試験合格者が12万7,294人まで積み上がっている一方、実施都市は国によって差があります
- 宗教上の配慮が必要な事項: 礼拝の時間・場所、食事の制約、祝祭日の扱いなど。国ではなく本人の信仰に応じて確認する事項であり、採用面談と入職前オリエンテーションで本人と直接すり合わせるのが原則です
- 母語と日本語学習の環境: 現地の日本語教育機関の層の厚さ、自施設の近隣に同じ母語のコミュニティがあるか。生活面の孤立は定着率に直結します
- すでに在籍する外国人職員の国籍構成: 同国籍の先輩がいる環境は、生活立ち上げ期の負担を大きく下げます。分散と集約はトレードオフであり、初回受け入れは集約、複数年で分散という順序が現実的です
5つの受け入れ制度の正体|目的・在留期間・送出国
外国人介護人材の受け入れ制度は、目的の違いから5つに分かれます。「在留資格」と「制度」が1対1で対応していない点が混乱の元なので、まず各制度のアウトラインと、直近で変わった要件を押さえましょう。
1. EPA(経済連携協定)|2008年から
インドネシア(2008年)・フィリピン(2008年)・ベトナム(2009年)と日本が結んだ経済連携協定に基づく制度。介護福祉士国家試験の合格を前提とした受け入れが最大の特徴で、母国の看護学校卒業者または介護士認定取得者が来日し、最長4年間の就労・研修を経て国家試験を受験します。窓口は厚生労働省が指定する国際厚生事業団(JICWELS)が一元的に担うため、悪質な仲介業者が介在しにくい点が強みです。在留者数は3,004人(うち資格取得者435人、2026年2月1日時点)と5制度で最も小さく、規模を求める制度ではありません。
実務上、最も注意すべきは国家試験の難易度です。厚生労働省が公表した第38回介護福祉士国家試験(2026年1月実施)のEPA候補者の結果を見ると、合格者380名・合格率31.8%。全受験者の合格率70.1%の半分以下です。しかもこの合格率は国によって大きく異なります。
| 国籍 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| ベトナム | 133名 | 103名 | 77.4% |
| インドネシア | 602名 | 185名 | 30.7% |
| フィリピン | 461名 | 92名 | 20.0% |
| EPA全体 | 1,196名 | 380名 | 31.8% |
出典: 厚生労働省「第38回介護福祉士国家試験におけるEPA介護福祉士候補者の試験結果」。EPA全体の受験者数は3か国の合計。
初受験者と再受験者で分けると、EPA全体で初受験44.8%・再受験21.4%。1回目で受からないと2回目以降のハードルが上がる構造がはっきり出ています。EPAで受け入れる場合、4年目の受験までに合格させる学習支援の設計が制度活用の成否そのものになります。
2. 在留資格「介護」|2017年9月から
介護福祉士の資格を持つ外国人に与えられる在留資格。出入国在留管理庁の定義では「本邦の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動」とされ、在留期間は5年・3年・1年または3月で、更新の回数制限がありません。家族(配偶者・子)の帯同も認められ、5制度のなかで最も定着志向が強い枠組みです。在留者数は13,949人(2025年6月末時点)。
ルートは2つあります。日本の介護福祉士養成施設(2年以上)を卒業する養成施設ルートと、介護施設等で3年以上就労してから受験する実務経験ルートです。前者は留学生として来日し、在学中はアルバイト、卒業後に在留資格「介護」へ切り替えます。後者は技能実習生や特定技能外国人が実務経験を積んで到達する道で、育成就労が始まった後の主要ルートになると見込まれます。
養成施設ルートについては、押さえておくべき期限があります。2017年度から養成施設卒業者にも国家試験の合格が必要になりましたが、2026年度までの卒業者には卒業後5年間の経過措置が設けられています。この経過措置を終了させるか延長するかは厚生労働省の福祉人材確保専門委員会で議論が続いており、留学生ルートで人材を確保する計画を持つ施設は動向を追う必要があります。
3. 技能実習(介護職種)|2017年11月から2027年3月まで
本来は日本の介護技能を母国に移転する国際貢献を目的とした制度で、介護職種は2017年11月に追加されました。最長5年(1号1年+2号2年+3号2年)の実習が可能で、実習の各段階で技能評価試験を受検します。監理団体が受入施設を監査・指導する点が特徴です。在留者数は20,065人(2024年12月末時点)。
2024年6月14日に成立した改正法により、2027年4月1日に育成就労制度へ移行します。これから新規に受け入れを始める施設にとって、技能実習は事実上の選択肢から外れます。
4. 特定技能1号(介護)|2019年4月から
人手不足分野の即戦力確保を目的とした在留資格で、現在の主流です。介護技能評価試験・介護日本語評価試験・日本語能力試験N4相当(または国際交流基金日本語基礎テスト)に合格すれば就労が認められ、技能実習2号を良好に修了した人は試験が免除されます。在留者数は67,871人(2025年12月末時点・速報値)。
在留期間について、2026年時点で理解を更新すべき重要な変更があります。従来「通算5年が上限」と説明されてきましたが、厚生労働省の最新資料では在留期間経過直前の介護福祉士国家試験でパート合格等の一定の要件を満たした場合、最長6年間まで在留できるとされています。これは第38回国家試験から導入されたパート合格制度に対応した措置です。「5年で必ず帰国」という前提で組んだ人員計画は、6年目の可能性を織り込んで見直す価値があります。
そのほか、特定技能1号は就労開始日から人員配置基準に算入でき、一人夜勤も可能で、施設運営側のメリットが大きい設計です。2025年4月21日からは要件を満たせば訪問系サービスへの従事も認められました。介護分野に特定技能2号は設定されていないため、6年目以降も働き続けるには介護福祉士を取得して在留資格「介護」へ移行する必要があります。
5. 育成就労|2027年4月開始予定
技能実習に代わる新制度で、原則3年間の就労を通じて特定技能1号の水準まで人材を育成することが目的です。本人の意向による転籍が一定要件下で認められる点が技能実習との最大の違いで、介護分野の転籍制限期間は2年と設定されました。
ここで、多くの解説記事が取り違えている点を明確にしておきます。育成就労の一般的な日本語要件は入国時にA1相当以上(日本語能力試験N5程度)ですが、介護分野は固有要件としてより高い水準が課されます。厚生労働省の分野別運用方針の説明資料では、介護分野の育成就労は次のとおりです。
- 1年目(入国時): 日本語教育の参照枠「A2.2」相当
- 2年目以降: 「A2.2」および日本語学習プランの作成(「B1」を取得している場合は学習プラン不要)
- 育成就労終了時: 「A2.2」および介護日本語評価試験の合格
参考: A2.2は「ごく基本的な個人情報や仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる」水準。B1は「仕事等でふだん出合うような身近な話題について、主要点を理解できる」水準。
入国時からA2.2が求められるということは、介護分野の育成就労は他分野より入口が高いということです。「技能実習より緩い制度が来る」という理解は正しくありません。
介護分野にはさらに固有の要件が重なります。事業所の要件として、開設から3年経過している、同一法人の他の介護事業所が開設後3年経過している、または同一法人によるサポート体制があること。受け入れ人数枠は事業所の常勤介護職員数に応じた上限があり、育成就労外国人の総数が常勤介護職員の総数を超えることはできません。育成就労指導員は育成就労外国人5名につき1名以上を選任し、うち1名以上は介護福祉士等である必要があります。入国後講習は日本語科目240時間以上(B1以上なら80時間)、技能科目42時間以上です。
制度設計としては、育成就労3年+特定技能5年(最長6年)で計8年から9年、その先に介護福祉士を取得して在留資格「介護」へ移行すれば期限なし、という長期キャリアパスが組み込まれています。詳しい移行準備は育成就労への移行準備【2027年4月施行】にまとめました。
5制度比較表|在留期間・転職・家族帯同・訪問介護
各制度の違いを一覧化したのが下表です。同じ「外国人介護人材」でも、在留期間・転職可否・家族帯同・人員配置基準への算入時期が大きく異なるため、施設の人材戦略と一致しているかを確認しましょう。
| 項目 | EPA | 在留資格「介護」 | 技能実習(2027年3月まで) | 特定技能1号 | 育成就労(2027年4月から) |
|---|---|---|---|---|---|
| 目的 | 二国間連携 | 専門職受入 | 技能移転 | 人手不足対応 | 人材育成 |
| 在留者数 | 3,004人 (2026年2月) | 13,949人 (2025年6月) | 20,065人 (2024年12月) | 67,871人 (2025年12月) | 制度開始前 |
| 在留期間 | 原則4年(資格取得後は更新無制限) | 更新制限なし | 最長5年 | 通算5年(パート合格等の要件充足で最長6年) | 原則3年 |
| 送出国 | インドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国 | 制限なし | 制限なし | 制限なし | 制限なし |
| 入国時の日本語 | N3からN5(国別) | 養成校入学要件による | N4 | N4相当+介護日本語評価試験 | A2.2相当(介護分野の固有要件) |
| 調整・支援機関 | JICWELS | なし(直接採用) | 監理団体 | 登録支援機関 | 監理支援機関 |
| 転職・転籍 | 資格取得後は可 | 可(日本人と同様) | 原則不可 | 同一業務区分内で可 | 2年経過後に可(介護分野) |
| 家族帯同 | 資格取得後は可 | 可 | 不可 | 不可 | 不可 |
| 訪問系サービス | 資格取得後は可 | 可 | 2025年4月1日から要件付きで可 | 2025年4月21日から要件付きで可 | 要件付きで可 |
| 夜勤 | 条件付き可 | 可 | 条件付き可 | 可(一人夜勤も可) | 体制確保等の措置が必要 |
| 人員配置基準への算入 | 就労6か月後(N2は当日) | 当日 | 就労6か月後(N2は当日) | 当日 | 原則6か月後 |
数字で見ると、主戦場は特定技能に一本化されつつある
5制度の在留者数を並べると構図は明確です。特定技能1号6万7,871人に対し、技能実習2万65人、在留資格「介護」1万3,949人、EPA3,004人。特定技能だけで全体の6割超を占めます。しかも特定技能は前年比53.0%増と最も速く伸びており、その技能実習は2027年4月に育成就労へ統合されて消えます。
したがって、これから新規に受け入れを始める施設の現実的な選択は、次の2つに絞られます。
- 即戦力が今すぐ必要なら特定技能1号: 試験合格済みの人材を採用でき、就労初日から人員配置基準に算入できる。一人夜勤も可能
- 3年かけて育てる前提なら育成就労から特定技能へ: 2027年4月開始。入口の日本語要件はA2.2と高いが、育成就労3年+特定技能5年から6年で8年から9年の就労が見込める
EPAと在留資格「介護」は、規模を作る制度ではなく、すでに在籍する人材の到達点として設計に組み込むのが正しい使い方です。とくに在留資格「介護」は在留期間の更新制限がなく家族帯同も可能なため、長期定着を狙うなら必ずゴールに置くべき資格になります。
どの制度を選ぶか|6つの判定軸で絞り込む意思決定フロー
制度の一覧を眺めても「で、うちはどれを選べばいいのか」は決まりません。実際の意思決定は、施設側の制約から逆算して候補を消していくほうが速く正確です。ここでは6つの軸を順番に判定するフローに落とし込みました。上から順に自施設の答えを埋めていけば、選ぶべき制度が1つか2つに絞れます。
判定軸1: いつまでに現場に立ってほしいか
最初に効くのが時間軸です。ここで選択肢の半分が消えます。
| 必要な時期 | 取り得る制度 | 理由 |
|---|---|---|
| 3か月から6か月以内 | 特定技能1号(国内在住者の採用) | 在留資格変更のみで済むため最短。技能実習2号修了者は試験免除 |
| 6か月から1年 | 特定技能1号(海外からの採用) | 在留資格認定証明書の交付申請と渡航準備が必要 |
| 1年以上先でよい | 育成就労(2027年4月以降)、在留資格「介護」(留学生ルート) | 制度開始待ち、または養成校2年の在学期間が必要 |
「今年度中に夜勤に入れる人が欲しい」なら、選択肢は実質特定技能1号の国内採用一択です。手続きの具体的な流れは特定技能「介護」受け入れの流れで解説しています。
判定軸2: 人員配置基準にいつ算入したいか
経営インパクトが最も大きいのがこの軸です。人員配置基準に算入できない期間は、その職員は「人手」ではあっても「人員」ではありません。
- 就労初日から算入したい: 特定技能1号、在留資格「介護」の2択
- 6か月の助走を許容できる: 育成就労、EPA候補者、技能実習も選択肢に入る(EPA候補者と技能実習生は日本語能力試験N2以上を取得していれば就労当日から算入可能)
基準ぎりぎりで運営している事業所が育成就労やEPAを選ぶと、最初の6か月は人件費が純増するのに配置上はカウントされない状態になります。この期間を吸収できる余力があるかどうかを先に計算してください。
判定軸3: 転職・転籍のリスクをどこまで許容できるか
採用にかけたコストを何年で回収する計画か、と言い換えられます。
| 制度 | 転職・転籍 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
| 技能実習 | 原則不可 | 拘束力は最も強いが2027年3月で新規受け入れ終了 |
| 育成就労 | 2年経過後に可 | 2年は据え置ける。ただし1年を超える転籍制限を設定するには処遇改善加算の取得等が条件 |
| 特定技能1号 | 同一業務区分内で可 | いつでも他の介護事業所へ移れる。処遇と職場環境がそのまま定着率に出る |
| 在留資格「介護」 | 可(日本人と同様) | 完全に労働市場の中。選ばれ続ける施設である必要がある |
ここで重要なのは、転籍制限を長くする側にも条件が課されるという点です。育成就労で転籍制限期間を1年超(介護分野は2年)に設定する事業者は、介護職員等処遇改善加算の取得等の要件を満たし、かつ育成就労外国人ごとに育成就労キャリア支援プランを作成しなければなりません。処遇を上げないまま人を縛る、という選択肢は制度上存在しないと理解してください。
判定軸4: 家族帯同を認める必要があるか
本人が30代以上、または母国に配偶者・子がいる人材を狙う場合、この軸が決定的になります。家族帯同が可能なのは在留資格「介護」とEPAの資格取得後だけです。特定技能1号は不可で、介護分野には特定技能2号が設定されていないため、特定技能のまま家族を呼ぶ道はありません。育成就労も不可です。
つまり、家族と一緒に日本で暮らしたい人材にとって、介護福祉士の取得は「昇給」ではなく「家族と住めるかどうか」の分岐点です。資格取得支援を採用の訴求材料に使うなら、この点を面接で正確に伝えられるかどうかが効きます。
判定軸5: 訪問系サービスに従事させる予定があるか
2025年4月から技能実習・特定技能・育成就労でも訪問系サービスへの従事が認められましたが、誰でもすぐに、ではありません。介護職員初任者研修課程等を修了し、かつ介護事業所等での実務経験が原則1年以上あることが前提で、そのうえで事業所側に5つの遵守事項が課されます。詳細は後述の訪問系サービスのセクションで扱います。
訪問系が主力の事業所は、採用してから最短でも1年は訪問に出せないという前提で計画を立てる必要があります。一方、在留資格「介護」とEPA介護福祉士は2025年4月以前から訪問系サービスに従事でき、この待機期間がありません。訪問系中心の事業所ほど、在留資格「介護」を持つ人材の直接採用を優先的に検討する価値があります。
判定軸6: 初期コストと支援体制の負担をどう見るか
制度によって、外部に払う費用と自前で持つべき体制の比率が変わります。
- 特定技能1号: 登録支援機関への委託料が月額で継続的に発生。自社で支援計画を実施すれば削減できるが、要件を満たす体制が必要
- 技能実習・育成就労: 監理団体(監理支援機関)への監理費が月額で発生。加えて育成就労では、育成就労外国人5名につき1名以上の指導員選任と、入国後講習の日本語240時間以上という体制負担が乗る
- EPA: JICWELSが窓口となる代わりに、国家試験対策の学習支援を施設側が担う。合格率31.8%という現実に見合った学習支援の工数を見込む必要がある
- 在留資格「介護」: 直接採用のため仲介費用は最小。ただし母数が1万3,949人と小さく、採用競争は最も激しい
金額の実額は特定技能「介護」の受け入れ費用と技能実習「介護」の受け入れ費用で内訳を試算しています。軽減に使える制度は外国人介護人材の受け入れで使える助成金にまとめました。
6軸を通した典型的な結論
| 施設の状況 | 選ぶべき制度 |
|---|---|
| 入所系・年度内に夜勤要員が必要・配置基準に余裕がない | 特定技能1号(国内在住者を採用) |
| 入所系・3年かけて自施設の文化に合う人材を育てたい・処遇改善加算を取得済み | 育成就労(2027年4月から)を軸に、当面は特定技能で先行受け入れ |
| 訪問系が主力 | 在留資格「介護」の直接採用を優先。特定技能は実務経験1年を積む前提で入所系や通所系から |
| 家族帯同を認めて長期定着を狙いたい | 特定技能から介護福祉士取得を経て在留資格「介護」へ移行させる設計 |
| 小規模・支援体制を自前で持つのが難しい | 登録支援機関または監理支援機関の選定が先。選び方の7チェックを確認 |
2025年から2029年までの時間軸|いつ何が変わるか
外国人介護人材の制度は、2025年から2027年にかけて連続で切り替わります。「いつ何が変わるか」を時系列で押さえておかないと、決めたはずの受け入れ計画が施行日をまたいだ瞬間に前提から崩れます。すでに確定している事項と、これから決まる事項を分けて整理します。
すでに施行された変更(2025年から2026年)
| 時期 | 変更内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 2025年4月1日 | 技能実習生の訪問系サービス従事が要件付きで解禁 | 訪問介護の担い手に技能実習生を組み込めるようになった |
| 2025年4月21日 | 特定技能外国人の訪問系サービス従事が要件付きで解禁 | 初任者研修修了+実務経験原則1年以上が前提 |
| 2026年1月23日 | 育成就労・特定技能の基本方針および分野別運用方針を閣議決定 | 2029年3月末までの介護分野の受入れ見込数が16万700人に確定 |
| 2026年1月25日 | 第38回介護福祉士国家試験でパート合格制度を導入 | 不合格パートのみ翌年以降に再受験すればよくなった。特定技能1号の在留が最長6年に延びる道も開いた |
これから起きる変更
| 時期 | 変更内容 | いま準備すべきこと |
|---|---|---|
| 2026年度末 | 介護福祉士養成施設卒業者への国家試験義務付けの経過措置が節目を迎える | 留学生ルートで人材確保を計画している場合、厚生労働省の福祉部会・福祉人材確保専門委員会の議論を追う |
| 2027年4月1日 | 育成就労制度が施行。技能実習は新規受け入れを終了 | 監理団体が監理支援機関の許可を取得できるかを確認。指導員(外国人5名につき1名以上、うち1名以上は介護福祉士等)の確保 |
| 2027年4月以降 | 育成就労で入国した人材が2年経過すると転籍可能に | 処遇改善加算の取得と育成就労キャリア支援プランの整備。転籍制限を2年に設定する事業者の必須要件 |
| 2029年3月末 | 今回の受入れ見込数(介護16万700人)の対象期間が終了 | 次期の見込数設定に向け、生産性向上と国内人材確保の取組実績が問われる |
技能実習生への経過措置をどう読むか
2027年4月の施行時点で技能実習中の外国人は、経過措置により現行の在留資格のまま最長の在留期間まで就労を続けられます。つまり2026年度中に技能実習1号として受け入れた人材は、2027年4月以降も技能実習のルールで実習を継続できるということです。
ただし注意点があります。技能実習は原則として転籍ができず、育成就労は2年経過後に転籍できます。同じ事業所に技能実習生と育成就労外国人が並存する期間が数年続くと、ルールの異なる2つの集団を同時に管理することになります。指導体制・処遇・キャリア説明のいずれも二重管理になるため、切り替え時期は意図的に設計したほうが運用負荷は下がります。
2027年に向けた逆算スケジュール
育成就労を軸にする施設が、2027年4月の初回受け入れに間に合わせるための逆算は次のようになります。
- 2026年度前半: 現在の監理団体が監理支援機関の許可を取る方針かを確認する。取らない場合は乗り換え先の選定に入る。介護分野では監理支援機関の役職員に5年以上の実務経験を持つ介護福祉士等の配置が求められるため、対応できない団体が出ます
- 2026年度前半: 事業所要件の充足を確認する。開設から3年経過しているか、していなければ同一法人の他事業所が3年経過しているか、あるいは同一法人によるサポート体制があるかのいずれかが必要です
- 2026年度後半: 受け入れ人数枠を計算する。育成就労外国人の総数は事業所の常勤介護職員の総数を超えられません。指導員は外国人5名につき1名以上、うち1名以上は介護福祉士等
- 2026年度後半: 転籍制限を2年に設定するなら、介護職員等処遇改善加算の取得状況を点検し、育成就労キャリア支援プランの様式を準備する
- 2027年4月以降: 入国後講習(日本語240時間以上、技能42時間以上)の実施体制を監理支援機関と分担して確定させる
これらの準備項目を1つずつ点検するチェックリストは育成就労(介護)への移行準備にまとめています。2027年4月に受け入れを始めたい施設にとって、実質的な準備期間は2026年度の1年間しかありません。
受け入れ実務シリーズ|制度別の進め方ガイド
外国人の受け入れは、大きく「入口(技能実習・育成就労で育てる)→ 即戦力(特定技能で就労)→ 定住(介護福祉士を取得して在留資格「介護」へ)」という段階で進みます。技能実習は2027年4月に育成就労へ移行(廃止)します。各段階の受け入れ実務は、以下の記事で制度別に詳しく解説しています。
特定技能「介護」の受け入れ実務
技能実習「介護」の受け入れ実務
育成就労(介護)・全制度共通の実務
訪問系サービス解禁の実際|1年でどれだけ動いたか
2025年4月の訪問系サービス解禁は、外国人介護人材の受け入れをめぐる直近1年で最大の制度変更でした。ただし「解禁された」ことと「現場が動いた」ことは別です。ここでは解禁から約1年が経った時点の実際の利用状況を、厚生労働省の集計と介護労働安定センターの最新調査の2つの角度から確認します。
解禁までの経緯と、事業所に課される5つの遵守事項
訪問介護員の人材不足を背景に、厚生労働省は「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会」を立ち上げ、2024年6月の中間まとめで一定の条件下での訪問系サービス従事を認めるべきとの結論を出しました。2025年2月には特定技能制度および育成就労制度の基本方針・分野別運用方針に関する有識者会議等でも同様の方向が示され、2025年4月に施行されています(技能実習は4月1日、特定技能は4月21日)。
対象となるのは、介護職員初任者研修課程等を修了し、介護事業所等での実務経験(原則1年以上)を有する技能実習生および特定技能外国人です。受入事業所は利用者・家族へ事前に説明を行ったうえで、次の5つを遵守しなければなりません。
- 外国人介護人材に対し、訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修を行うこと
- 外国人介護人材が訪問介護等の業務に従事する際、一定期間、責任者等が同行する等により必要な訓練を行うこと
- 外国人介護人材に対し、訪問介護等における業務の内容等について丁寧に説明を行い、その意向等を確認しつつ、キャリアアップ計画を作成すること
- ハラスメント防止のために相談窓口の設置等の必要な措置を講ずること
- 不測の事態が発生した場合等に適切な対応を行うことができるよう、情報通信技術の活用を含めた必要な環境整備を行うこと
見落とされやすいのは3番目と5番目です。訪問に出すには本人ごとのキャリアアップ計画という書面が必要で、さらに単独訪問中の緊急時に対応できる通信環境の整備が求められます。研修と同行訓練だけを準備して「要件を満たした」と考えると足りません。育成就労でも同じ5項目が固有要件として明記されており、2027年4月以降もこの枠組みは維持されます。
解禁1年で実際に動いたのは1,714名分
では、どれだけの事業所が実際に手を挙げたのか。厚生労働省の集計によると、訪問系サービスへの従事に係る確認書の状況は次のとおりです(2026年2月13日時点)。
| 区分 | 法人数 | 人数 |
|---|---|---|
| 申請件数(発行件数を含む) | 559法人 | 1,714名分 |
| うち確認書の発行件数 | 309法人 | 953名分 |
特定技能1号の介護分野の在留者が6万7,871人いるなかで、訪問系サービスの確認書が発行されたのは953名分。在留者全体に対して1.4%程度という規模感です。申請ベースでも1,714名分にとどまります。制度は開いたものの、実際の稼働はまだ入口の段階だというのが率直な現状です。
事業所の47.2%は「受け入れる予定はない」
この温度感は、事業所側への調査でも裏づけられています。介護労働安定センターの令和7年度介護労働実態調査(2026年7月29日公表、事業所調査の回答8,899事業所)では、訪問系サービスにおける外国籍労働者の今後の受け入れ方針が新たに調査項目に加わりました。対象となる訪問系サービスを持つ2,934事業所の回答は次のとおりです。
| 回答 | 全体 | 19人以下 | 20から299人 | 300人以上 |
|---|---|---|---|---|
| 受け入れる予定はない | 47.2% | 58.1% | 48.0% | 33.2% |
| わからない | 27.4% | 24.0% | 24.5% | 37.2% |
| 現在、検討している | 13.1% | 10.6% | 14.1% | 13.6% |
| 2025年4月前から受け入れている | 4.0% | 2.3% | 4.5% | 5.1% |
| 2025年4月以降に受け入れている(予定を含む) | 2.6% | 0.4% | 3.1% | 4.0% |
法人の従業員規模別。出典: 公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査」事業所調査。
ここに明確な規模による分断が見えます。19人以下の小規模法人では58.1%が「受け入れる予定はない」と回答したのに対し、300人以上では33.2%。前述した5つの遵守事項、とりわけ同行訓練の人員確保・キャリアアップ計画の作成・通信環境の整備は、いずれも体制に余力がある法人ほど負担が軽い要件です。訪問介護は小規模事業所が担い手の中心であるにもかかわらず、要件を満たしやすいのは大規模法人という、需要と対応力のねじれが数字に出ています。
なお300人以上で「わからない」が37.2%と高いのは、調査が事業所単位で行われており、法人としての方針が事業所側では把握されていないことが要因の一つと調査報告書は推測しています。
この数字を自施設の判断にどう使うか
訪問系が主力の事業所にとって、示唆は3つあります。
- いま動けば先行者になれる: 確認書発行が953名分という段階は、裏を返せば競合がまだほとんど動いていないということです。要件を満たす体制を先に作れば、訪問系で働ける外国人材の採用競争で優位に立てます
- 実務経験1年の壁を採用計画に織り込む: 原則1年以上の実務経験が前提であるため、いま採用しても訪問に出せるのは1年後です。入所系や通所系で1年間経験を積ませてから訪問に移す、という二段階の人員計画が必要になります
- 小規模事業所は単独で抱え込まない: 58.1%が受け入れ予定なしという数字は、小規模単独では要件充足が難しいという実態の反映です。同一法人内の他事業所との連携、または監理支援機関・登録支援機関の支援メニューを前提に設計するほうが現実的です
受け入れのメリットと課題を公的データで見る
外国人材の受け入れを扱う記事の多くは、メリットと課題を体験談や印象で語ります。当サイトではそれをやりません。介護労働安定センターの令和7年度介護労働実態調査(2026年7月29日公表、事業所調査の有効回答8,899事業所)という、母数の大きい公的調査の数字だけで両面を見ます。個別施設の感想ではなく、業界全体で何が起きているかが分かる材料です。
受け入れている事業所は18.6%、まだ8割は受け入れていない
まず全体像です。外国籍労働者を受け入れている事業所の割合は18.6%で、前年度から2.8ポイント上昇しました。受け入れていない事業所は約8割(78.7%)です。前年度も2.4ポイントの上昇でしたから、2年続けて年2ポイント台の速度で広がっている計算になります。
在留資格別の内訳(複数回答)は次のとおりです。
| 在留資格 | 事業所数 | 回答事業所に占める割合 |
|---|---|---|
| 在留資格「介護」 | 804 | 9.0% |
| 特定技能1号 | 765 | 8.6% |
| 技能実習生 | 447 | 5.0% |
| EPA | 76 | 0.9% |
| いずれかを受け入れている | 1,659 | 18.6% |
| いずれも受け入れていない | 7,002 | 78.7% |
複数回答のため内訳の合計は「いずれかを受け入れている」と一致しません。割合は回答事業所数8,899に対する比率として当サイトが算出。
ここで目を引くのは、事業所数ベースでは在留資格「介護」(804事業所)が特定技能1号(765事業所)をわずかに上回ることです。在留者数では特定技能1号6万7,871人に対し在留資格「介護」は1万3,949人と5倍近い差があるのに、事業所数ではほぼ並びます。これは特定技能は少数の事業所が複数人まとめて受け入れ、在留資格「介護」は多くの事業所が1人ずつ雇用しているという分布の違いを示しています。「まず1人から」という入り方をする施設にとっては、在留資格「介護」の直接採用が現実的な第一歩になっている、と読むこともできます。
最大の課題は「意思疎通」で49.1%
受け入れの課題(複数回答)は次のとおりです。なお前年度調査は選択数が3つまでに制限されていたため、年度間で数値を直接比較することはできません。ここでは令和7年度の中での順位と、受け入れの有無による差を読みます。
| 課題 | 令和7年度 | 受け入れている | 受け入れていない |
|---|---|---|---|
| 利用者や他の従業員との意思疎通が難しい | 49.1% | 45.0% | 51.2% |
| 受け入れのための住宅や寮などを確保することが困難 | 39.6% | 33.2% | 42.0% |
| 外国籍労働者の仕事上のサポート役の負担が大きい | 35.7% | 32.8% | 37.2% |
| 受け入れ後の生活の管理や支援が難しい | 34.1% | 25.1% | 37.1% |
| 受け入れのためのコストが高い | 31.7% | 43.2% | 29.7% |
| 受け入れの手続きが煩雑 | 28.7% | 27.8% | 29.5% |
| 人材確保(自事業所とのマッチング)が困難 | 24.6% | 12.1% | 28.1% |
| 受け入れ後の生活支援の仕方がわからない | 23.9% | 8.4% | 28.0% |
| 利用者が外国籍労働者によるサービス提供に抵抗がある | 21.8% | 10.2% | 25.1% |
| 他の従業員の理解を得ることが難しい | 11.7% | 5.8% | 13.3% |
出典: 公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査」事業所調査。複数回答。
この表の使い方は「受け入れている」と「受け入れていない」の差を読むことです。差が大きい項目は、実際にやってみると解消する不安か、逆にやってみて初めて分かる負担かのどちらかを示しています。
受け入れ前の不安のうち、実際にはかなり解消するもの
- 生活支援の仕方がわからない: 受け入れていない事業所28.0%に対し、受け入れている事業所は8.4%。差は19.6ポイント。これはやる前の不安が実態より大きい典型です
- 利用者がサービス提供に抵抗がある: 未受け入れ25.1%に対し受け入れ済み10.2%。差は14.9ポイント。利用者の受容は、想像されるほどの障壁ではないことを数字が示しています
- マッチングが困難: 未受け入れ28.1%に対し受け入れ済み12.1%。ルートを確立すれば解消する課題です
- 他の従業員の理解: 未受け入れ13.3%に対し受け入れ済み5.8%。そもそも上位の課題ではありません
この4項目に共通するのは、すべて「未経験ゆえの不安」であり、経験した事業所では大幅に低下するという点です。受け入れをためらっている理由がこの4つに集中しているなら、その懸念は実態より過大に見積もられている可能性が高いと言えます。
逆に、やってみると重くなる課題
一方、受け入れている事業所のほうが高い項目が1つだけあります。「受け入れのためのコストが高い」で、受け入れ済み43.2%に対し未受け入れ29.7%(差13.5ポイント)。つまり実際に受け入れた事業所ほどコスト負担を強く感じています。事前の見積もりが甘くなりがちな領域だということです。
また「サポート役の負担が大きい」は受け入れ済みでも32.8%と高い水準にとどまります。日本語での意思疎通も、受け入れ済み事業所で45.0%と依然として最大の課題です。コストと指導工数は、経験を積んでも自動的には軽くならないと考えるべきでしょう。
もっとも重い事実: 受け入れている事業所ほど人材不足感が強い
同調査には、楽観論をそのまま許さないデータがあります。従業員の人数・質の評価を受け入れ状況別に見ると、次のようになります。
| 評価 | 全体 | 受け入れている | うち特定技能1号 | うち技能実習生 | 受け入れていない |
|---|---|---|---|---|---|
| 人数・質ともに確保できている | 15.8% | 11.3% | 9.3% | 10.7% | 16.8% |
| 人数は確保できているが、質には満足していない | 17.9% | 25.1% | 28.2% | 27.7% | 16.3% |
| 質には満足だが、人数は確保できていない | 22.2% | 20.6% | 18.8% | 17.2% | 22.8% |
| 人数・質ともに確保できていない | 24.6% | 36.6% | 39.6% | 38.7% | 22.1% |
出典: 同調査。受け入れている1,659事業所、受け入れていない7,002事業所。
外国人材を受け入れている事業所のほうが、「人数・質ともに確保できていない」の割合が36.6%と、受け入れていない事業所の22.1%を14.5ポイント上回ります。とくに特定技能1号を受け入れている事業所では39.6%に達します。
この数字は「外国人材を受け入れると人材不足が悪化する」という意味ではありません。因果はおそらく逆で、もともと人材確保に苦しんでいる事業所ほど外国人材の受け入れに踏み切っていると読むのが自然です。ただし、少なくとも「外国人材を入れれば人材不足が解決する」という期待が数字に裏づけられていないことは確かです。この論点は外国人介護人材の受け入れがうまくいかない理由で、複数年度のデータを使って詳しく検証しています。
受け入れ拡大の意欲は、むしろ減速している
最後に、今後の方針です。すでに受け入れている事業所のうち「今後、積極的に受け入れを拡大していきたい」は26.4%で、前年度の32.3%から5.9ポイント低下しました。「現在の水準を補充する程度」が47.5%(前年度49.3%)、「今後、新たな受け入れはしない予定」が14.8%(前年度14.1%)です。
受け入れていない事業所でも、「今後、受け入れを検討してみたい」は27.7%(前年度30.1%)へ低下し、「今後も受け入れようとは思わない」が61.9%(前年度59.2%)へ上昇しています。
受け入れ事業所の実数は増えているのに、拡大意欲は前年より落ちている。この2つが同時に起きているのが2026年の実像です。国の受入れ見込数が16万700人と設定される一方で、現場の側は前のめりになっていません。前述したコスト負担感と指導工数の重さが、この温度差の背景にあると考えられます。受け入れを検討する施設は、この現実を踏まえたうえで「増員」ではなく「体制構築」に予算と人を割く覚悟が要る、というのが数字からの結論です。
外国人介護人材の受け入れで成功する3つの条件
前のセクションで見た介護労働実態調査の課題ランキングは、そのまま「どこに手を打つべきか」の優先順位表として読めます。受け入れている事業所でも高止まりしている課題は、意思疎通(45.0%)、住宅・寮の確保(33.2%)、サポート役の負担(32.8%)、コスト(43.2%)の4つ。このうち住宅とコストは資金の問題ですが、残る2つは仕組みで解ける課題です。ここでは調査で示された課題に対応する3つの条件を整理します。
条件1: 日本語学習を業務時間内に組み込む
受け入れている事業所でも45.0%が「利用者や他の従業員との意思疎通が難しい」を課題に挙げており、これが単独最大の項目です。にもかかわらず、多くの施設で日本語学習は本人の自助努力に委ねられています。
実効性のある対策は、学習を勤務シフトの一部として確保することに尽きます。週1時間から2時間の学習時間を業務時間内に組み込み、日本語能力試験の受験料を施設が負担する。介護現場特有の語彙(利用者の状態を表す表現、申し送りの定型句、記録の書式)は市販の日本語教材では扱われないため、自施設の記録様式と申し送り表を教材化するのが近道です。
制度側の要件を見ても、この方向は避けられません。育成就労では入国後講習の日本語科目が240時間以上(B1相当を取得済みなら80時間)と定められ、介護分野は2年目以降も「A2.2」に加えて日本語学習プランの作成が求められます(B1取得者は不要)。育成就労終了時には介護日本語評価試験の合格が必要です。学習支援は好意ではなく制度要件になったと理解してください。
あわせて効くのが、指導の属人化を防ぐ仕組みです。「サポート役の負担が大きい」を受け入れ済み事業所の32.8%が課題に挙げているのは、特定の職員に指導が集中している状態を示しています。漢字にふりがなを振った業務マニュアルの整備、口頭指示の定型文化、指導担当のローテーション化といった個人の善意に依存しない設計が、指導側の離職を防ぎます。育成就労では育成就労外国人5名につき1名以上の指導員選任が要件化されており、うち1名以上は介護福祉士等である必要があります。
条件2: 生活面と信仰上の配慮を「制度」として明文化する
注目すべきは、「受け入れ後の生活支援の仕方がわからない」が受け入れていない事業所で28.0%であるのに対し、受け入れている事業所ではわずか8.4%まで下がることです。生活支援は、やってみれば解ける課題だという裏づけになります。一方で「受け入れのための住宅や寮などを確保することが困難」は受け入れ済みでも33.2%と高く、これは実務よりも先に資金と物件の手当てが要る項目です。
信仰への配慮については、国籍でひとくくりにせず本人ごとに確認するのが原則です。同じ国の出身でも信仰は個人によって異なり、「この国の人だからこうだろう」という前提で用意した配慮は的を外します。採用面談と入職前オリエンテーションで本人に直接確認すべき事項は次のとおりです。
- 1日のうち時間を確保する必要のある宗教上の慣行があるか、ある場合はどの時間帯か
- 食事に関する制約があるか(提供する食事、休憩室での飲食、利用者の食事介助時の扱い)
- 年間で特に休みたい時期があるか(宗教上の祝祭日、母国の年中行事)
- 母国への一時帰国をどの頻度で希望するか
重要なのは、確認した内容を個別対応で終わらせず、就業規則や運用ルールとして書き出すことです。たとえば一時帰国のための休暇制度を明文化すれば、本人が毎回交渉する負担がなくなり、日本人スタッフにとっても「なぜあの人だけ」という不公平感が生じにくくなります。訪問系サービスに従事させる場合は、ハラスメント防止のための相談窓口の設置が制度上の遵守事項に含まれている点にも注意してください。
条件3: 介護福祉士取得から在留資格「介護」までの道筋を示す
3つめは、転籍・転職が前提になる時代への備えです。特定技能1号は同一業務区分内での転職が可能で、育成就労も介護分野では2年経過後に転籍できます。制度が人材を縛ってくれる時代は終わりました。
選ばれ続けるために示すべきは、金額よりも在留の安定と家族です。特定技能1号は通算5年(パート合格等の要件を満たせば最長6年)で、家族帯同はできません。介護福祉士を取得して在留資格「介護」へ移行して初めて、在留期間の更新制限がなくなり、配偶者と子を呼び寄せられるようになります。資格取得は昇給の話ではなく、日本で家族と暮らせるかどうかの分岐点であり、これを面接で正確に説明できる施設は強い訴求力を持ちます。
そのうえで用意すべき具体策は次の3点です。
- 実務経験ルートの逆算を示す: 介護施設等で3年以上の実務経験と実務者研修の修了が受験要件。入職時点で「何年目に受験するか」をカレンダーで共有する
- 試験の難易度を隠さず伝える: 第38回の全体合格率は70.1%で、前回の78.3%から8.2ポイント低下しました。同回から導入されたパート合格制度により、不合格だったパートだけを翌年・翌々年に再受験できるようになっています。1回で決めなくてよいという設計を正しく伝えることが、受験を諦めさせない鍵になります
- 費用を施設が負担する: 実務者研修の受講料、受験料、資格登録料。都道府県によっては介護福祉士修学資金等貸付制度が使えるほか、外国人介護人材受入施設等環境整備事業で資格取得支援が補助対象になる場合があります
育成就労で転籍制限期間を2年に設定する事業者には、そもそも介護職員等処遇改善加算の取得等の要件充足と、育成就労外国人ごとのキャリア支援プランの作成が義務づけられます。キャリアパスの可視化は、選ばれるための施策であると同時に、2027年以降は制度上の要件でもあります。詳しくは特定技能「介護」5年の壁を超えるで解説しています。
補助金・助成金|受入施設が活用できる制度
外国人介護人材の受入には、人材紹介手数料・在留資格の申請費用・住居整備費など、1人あたり約45万〜140万円の初期コストがかかります。これを軽減する制度は国と都道府県、市区町村の3階層に分かれています。詳しい要件と5年総額の採算試算は外国人介護人材の受け入れで使える助成金にまとめました。
- 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース/厚労省):国の中心的な助成金。令和8年4月1日版では1制度導入につき20万円・上限80万円の定額方式。就業規則等の多言語化、社内マニュアル・標識類の多言語化、雇用労務責任者の選任、苦情・相談体制の整備、一時帰国のための休暇制度の整備が対象措置。外国人労働者の離職率15%以下が支給要件だが、特定技能1号や技能実習で在留期間の上限を満了して帰国した人は算定から除外される。措置に着手する前の計画認定申請が必須で、事業所単位ではなく事業主単位(法人で1回)の支給。※上限57万円・72万円や離職率10%以下と記載された情報は令和6年度版までの旧方式
- 外国人介護人材受入施設等環境整備事業(都道府県):国の補助を受けて都道府県が実施。翻訳機の購入、日本語学習支援、生活支援、資格取得支援などが対象。上限額は1法人または1事業所あたり20万〜50万円規模が中心(秋田県20万円・補助率2/3、鳥取県30万円・補助率3/4、高知県40万円・補助率3/4、大阪府最大50万円など)。名称は県により異なり、年度内に募集が終了する。国際厚生事業団(JICWELS)の都道府県別案内が一覧の起点になる
- 人材開発支援助成金(厚労省):日本語教育や介護技能の研修を計画的に実施する場合、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部が対象。就労環境の整備を対象とする人材確保等支援助成金とは対象が異なるため使い分けが可能(同一経費の重複受給は不可)
- 介護福祉士修学資金等貸付制度(都道府県社会福祉協議会):介護福祉士養成施設に在学する外国人留学生向けの無利子貸付。一定期間、貸付を受けた都道府県内の介護施設で介護業務に従事すれば返還が免除される。金額・免除年数は都道府県ごとに定められる。在留資格「介護」を取得するルートに関わる
- EPA介護福祉士候補者の受入支援(JICWELS):EPAに基づく候補者を受け入れる施設への日本語研修・国家試験対策の支援事業。EPAは特定技能・技能実習とは別枠で、窓口も異なる
- 市区町村の独自補助:家賃補助や日本語学習支援の上乗せがある自治体もある(船橋市、印西市など)。自治体サイトの検索では見つけにくいため、施設所在地の介護保険主管課への問い合わせが確実
初期費用が1人あたり45万〜140万円かかることを踏まえると、これらの制度で全額を賄う想定は現実的ではありません。また人材確保等支援助成金は計画提出から支給まで最短でも1年半程度かかるため、資金計画は自己負担ベースで組み、助成金は事後的な軽減として扱うのが安全です。
よくある質問|外国人介護人材の受入Q&A
Q1. 外国人介護人材は人員配置基準に算入できますか
A. 在留資格と就労期間によって異なります。在留資格「介護」と特定技能1号は就労開始日から即日算入できます。EPA介護福祉士候補者と技能実習生は原則として就労開始から6か月経過後に算入可能ですが、日本語能力試験N2以上を取得していれば就労当日から算入できます。育成就労も原則6か月経過後です。基準ぎりぎりで運営している事業所が育成就労やEPAを選ぶと、最初の6か月は人件費が増えるのに配置上カウントされない期間が生じます。
Q2. 外国人介護人材に夜勤を任せることはできますか
A. 特定技能1号・在留資格「介護」・EPA資格取得者は夜勤が可能で、特定技能1号は一人夜勤も認められています。EPA候補者と技能実習生も、就労開始から6か月経過後または日本語能力試験N2以上であれば夜勤に入れます。育成就労については、夜勤や緊急対応業務を行わせる場合、指導に必要な体制確保等、利用者の安全確保および外国人保護のために必要な措置を講じることが分野別運用方針で求められています。労働基準法の深夜割増賃金(22時から5時、25%以上)は当然に適用されます。
Q3. 訪問介護で外国人材を働かせられますか
A. 2025年4月から、技能実習生と特定技能外国人も訪問系サービスに従事できるようになりました(技能実習は4月1日、特定技能は4月21日施行)。ただし対象は介護職員初任者研修課程等を修了し、介護事業所等での実務経験が原則1年以上ある人に限られます。加えて受入事業所は、利用者・家族への事前説明に加え、基本事項の研修、一定期間の同行訓練、キャリアアップ計画の作成、ハラスメント相談窓口の設置、情報通信技術の活用を含む環境整備の5つを遵守する必要があります。在留資格「介護」とEPA介護福祉士は2025年4月以前から訪問系サービスに従事可能でした。なお実際の確認書発行は2026年2月13日時点で309法人・953名分にとどまっており、制度は開いたものの現場の稼働はまだ初期段階です。
Q4. 特定技能1号は本当に5年で終わりですか
A. 要件を満たせば最長6年まで延びます。厚生労働省の最新資料では、特定技能1号の在留は通算5年とされつつ、在留期間経過直前の介護福祉士国家試験でパート合格等の一定の要件を満たした場合、最長6年間と明記されています。これは第38回国家試験から導入されたパート合格制度に対応した措置です。また特定技能1号の在留期間の通算からは、妊娠・出産・育児その他のやむを得ない事情により業務に従事できなかった期間が除かれます。介護分野に特定技能2号は設定されていないため、6年目以降も就労を続けるには介護福祉士を取得して在留資格「介護」へ移行する必要があります。
Q5. 育成就労の日本語要件は入国時N5相当でよいのですか
A. 介護分野は違います。育成就労の一般的な水準は入国時にA1相当以上(日本語能力試験N5程度)ですが、介護分野は固有要件として1年目(入国時)から日本語教育の参照枠「A2.2」相当が求められます。2年目以降は「A2.2」に加えて日本語学習プランの作成(「B1」取得者は不要)、育成就労終了時は「A2.2」および介護日本語評価試験の合格が必要です。「育成就労は技能実習より入口が緩い」という理解は、少なくとも介護分野では正しくありません。
Q6. 受け入れ1人あたり、どれくらいのコストがかかりますか
A. 在留資格と採用ルートによって大きく変わります。特定技能では入国渡航費、人材紹介手数料、登録支援機関への月額委託料、住居整備費が主な費目で、技能実習・育成就労ではこれに監理団体(監理支援機関)への月額監理費が加わります。EPAはJICWELSが窓口となる代わりに、国家試験対策の学習支援コストを施設側が負担します。介護労働実態調査でも「受け入れのためのコストが高い」は受け入れている事業所の43.2%が課題に挙げており、未受け入れ事業所の29.7%を大きく上回ります。事前の見積もりが甘くなりやすい領域なので、実額の内訳は特定技能「介護」の受け入れ費用と技能実習「介護」の受け入れ費用で確認してください。
Q7. 介護福祉士国家試験の合格率はどれくらいですか
A. 第38回(2026年1月実施)の全体合格率は70.1%で、第37回の78.3%から8.2ポイント低下しました。一方、EPA介護福祉士候補者の合格率は31.8%(合格者380名)で、全体の半分以下です。国籍別ではベトナム77.4%(133名中103名)、インドネシア30.7%(602名中185名)、フィリピン20.0%(461名中92名)と差が大きく、EPA全体では初受験者44.8%・再受験者21.4%と、1回目で受からない場合のハードルが高くなります。EPAで受け入れる場合は、4年目の受験までに合格させる学習支援の設計が制度活用の成否そのものになります。
Q8. 受け入れ人数に上限はありますか
A. 制度によって異なります。特定技能1号には分野全体の受入れ見込数(介護分野は2029年3月末までに12万6,900人)が上限として運用されますが、事業所ごとの人数枠は設けられていません。一方育成就労には事業所単位の人数枠があります。事業所の常勤介護職員(育成就労外国人を除く)の人数に応じた上限が設けられ、事業所の育成就労外国人の総数は当該事業所の常勤介護職員の総数を超えられません。加えて育成就労指導員を外国人5名につき1名以上選任し、うち1名以上は介護福祉士等である必要があります。技能実習の人数枠については技能実習「介護」受け入れ要件まとめを参照してください。
Q9. 育成就労を始めたいのですが、どの事業所でも受け入れられますか
A. いいえ、事業所側にも要件があります。対象は介護等の業務が現に行われている事業所(介護福祉士国家試験の実務経験対象施設)で、かつ安定的に事業を行えることを確認するため、次のいずれかに該当する必要があります。(1)事業所を開設してから3年が経過している、(2)当該事業所を経営する法人において介護等の業務を行う他の事業所の開設後3年が経過している、(3)外国人に対する研修体制や職員・利用者等からの相談体制など同一法人によるサポート体制がある。新規開設したばかりの単独事業所は、この時点で対象外になる可能性があります。
Q10. 育成就労が始まると、現在の技能実習生はどうなりますか
A. 経過措置が設けられます。2027年4月の育成就労施行時点で技能実習中の外国人は、最長の在留期間まで現行制度の在留資格で就労を継続できます。新規の介護技能実習生の受け入れは2027年4月以降は行われず、育成就労に統一されます。ただし技能実習と育成就労では転籍のルールが異なるため、同じ事業所に両方が並存する数年間は、指導体制・処遇・キャリア説明のいずれも二重管理になる点に注意が必要です。詳細は出入国在留管理庁の告示等を確認してください。
Q11. 育成就労の「転籍2年」とは具体的にどういう意味ですか
A. 育成就労の転籍制限期間は分野ごとに1年から2年の範囲で設定されるところ、介護分野は2年と設定されました。厚生労働省は理由として、継続した利用者のいる対人支援サービスであり同一事業所での継続的な実践が必要であること、大都市圏の需要が高く転籍を制限しなければ地方で就労を開始した人材が賃金の高い都市部へ過度に流出する恐れがあることの2点を挙げています。重要なのは、1年を超える転籍制限期間を設定する事業者には、介護職員等処遇改善加算の取得等の要件充足と、育成就労外国人ごとの育成就労キャリア支援プランの作成が課されることです。処遇を上げずに人材を縛る選択肢は制度上ありません。
Q12. どの国から受け入れるのが有利ですか
A. 「有利な国」という発想より、自施設が確認できる条件で選ぶのが実務的です。当サイトでは国民性や気質といった裏づけのない一般化は扱いません。確認すべきなのは、二国間協力覚書の有無と内容、現地での介護技能評価試験・介護日本語評価試験の実施体制、本人の信仰に応じて必要になる配慮、母語と近隣の同国出身者コミュニティの有無、そしてすでに在籍する外国人職員の国籍構成です。そのうえで参考になるのが送出国の構造変化で、介護分野の特定技能1号はインドネシアとミャンマーがほぼ並び、ネパールが2025年後半にフィリピンを抜いて4位に浮上しました。最大の送出国であるベトナムは介護分野の伸びが+16.7%と全体の+53.0%を大きく下回っており、ベトナム前提の計画は見直しの局面にあります。
参考資料
- [1]
- [2]
- [3]外国人介護人材の受入れについて- 厚生労働省
- [4]介護分野における特定技能外国人の受入れについて- 厚生労働省
- [5]
- [6]第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について- 厚生労働省
- [7]令和7年度介護労働実態調査 結果の概要について(2026年7月29日公表)- 介護労働安定センター
- [8]介護労働実態調査- 介護労働安定センター
- [9]特定技能制度- 出入国在留管理庁
- [10]
- [11]在留資格「介護」- 出入国在留管理庁
- [12]令和7年末現在における在留外国人数について- 出入国在留管理庁
- [13]EPAに基づく外国人介護福祉士候補者受入れ事業- 国際厚生事業団(JICWELS)
まとめ
外国人介護人材の受け入れは、EPA・在留資格「介護」・技能実習・特定技能・育成就労の5制度が並立する複雑な構造ですが、2027年4月の育成就労開始によって「育成就労→特定技能→介護福祉士取得→在留資格『介護』」という1本のキャリアラダーに整理されます。これから新規に受け入れを始める施設が実際に選ぶことになるのは、即戦力が必要なら特定技能1号、3年かけて育てるなら育成就労、という2択です。
本記事で確認した数字を、判断に効く順に並べ直しておきます。
- 特定技能「介護」は6万7,871人(2025年12月末)、前年比53.0%増。特定技能全16分野の伸び34.8%を大きく上回り、実質的な主戦場になっている
- 送出国の構図は入れ替わりつつある。インドネシア2万1,139人とミャンマー1万9,803人の差はわずか1,336人。最大送出国ベトナムの介護分野の伸びは+16.7%にとどまり、ネパールが2025年後半にフィリピンを抜いて4位に浮上した
- 候補者のプールは在留者数よりはるかに厚い。介護技能評価試験の累計合格者は17万7,007人で、うち海外合格者が12万7,294人。課題は「人がいない」ことではなく、その層と自施設をどう結びつけるか
- 介護は最大枠ではない。2029年3月末までの受入れ見込数16万700人は全19分野で4番目。しかも特定技能の枠は2024年3月設定の13万5,000人から12万6,900人へ絞られている
- 訪問系サービスの解禁は、まだほとんど動いていない。確認書の発行は309法人・953名分(2026年2月13日時点)にとどまり、訪問系を持つ事業所の47.2%が「受け入れる予定はない」と回答している
- 受け入れ事業所ほど人材不足感が強い。「人数・質ともに確保できていない」は受け入れ済み36.6%に対し未受け入れ22.1%。外国人材の受け入れは人材不足の解決策ではなく、体制構築を伴う長期投資である
制度面で2026年に理解を更新すべき点は3つあります。1つめは、特定技能1号の在留はパート合格等の要件を満たせば最長6年まで延びること。2つめは、介護分野の育成就労は入国時からA2.2相当が求められ、他分野の一般水準(A1相当)より入口が高いこと。3つめは、育成就労で転籍制限を2年に設定する事業者には、処遇改善加算の取得等とキャリア支援プランの作成が課されること。処遇を上げずに人材を縛る選択肢は制度上存在しません。
介護職・現場リーダーの立場では、やさしい日本語での声かけ、記録様式を教材化したOJT、本人ごとに確認する信仰・生活面への配慮といった能力が、これからの中核スキルになります。介護労働実態調査で「意思疎通が難しい」が最大の課題(受け入れ済み事業所で45.0%)であり続けている以上、この領域を担える人材の市場価値は上がります。
施設運営・採用担当の立場では、2026年度が事実上の準備期間です。監理団体が監理支援機関の許可を取るのか、事業所要件(開設3年等)を満たすのか、受け入れ人数枠と指導員(外国人5名につき1名以上、うち1名以上は介護福祉士等)を確保できるのか。この3点を年度内に点検できるかどうかが、2027年4月に受け入れを始められるかを分けます。
制度別の受け入れ実務は当サイトのシリーズ記事で、地域ごとの浸透度は都道府県別ランキングで、受け入れがうまくいかない構造的な理由は受け入れ事業所ほど人材不足感が強いというデータで、それぞれ詳しく検証しています。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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