訪問介護の基本報酬引き下げから2年|事業所倒産と人材流出の現状を厚労省データから検証
介護職向け

訪問介護の基本報酬引き下げから2年|事業所倒産と人材流出の現状を厚労省データから検証

2024年の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が引き下げられてから約2年。事業所倒産の増加、ヘルパー人材流出、2026年6月の臨時改定による補填効果まで、厚労省や東京商工リサーチの最新データをもとに現状を検証します。

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2024年4月の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬が約2%引き下げられてから2年が経過し、2025年の訪問介護事業者倒産は91件(前年比+12.3%)と3年連続で過去最多を更新しました(東京商工リサーチ調査)。ヘルパー有効求人倍率は約4.44倍と人材流出も深刻で、2026年6月の臨時改定(+2.03%)で一定の補填は行われるものの、基本報酬そのものの回復には至らず、現場の苦境は続いています。

目次

2024年度改定で訪問介護に何が起きたか|基本報酬引き下げの経緯

2024年4月の介護報酬改定は、介護業界全体としては+1.59%のプラス改定でした。しかしその裏で、訪問介護の「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の基本報酬は一律で約2%超引き下げられるという、制度開始以来きわめて異例の措置が取られました。

引き下げの根拠とされた「収支差率」

厚生労働省が引き下げの根拠としたのは、2023年の介護事業経営実態調査で訪問介護の収支差率が7.8%と、他のサービスより高かったことです。全サービス平均(2.4%)と比べて経営が安定しているとの判断でした。

しかしこの数字には統計上の偏りがあります。調査対象は回答した事業所のみで、経営が苦しい零細事業所ほど回答率が低く、実態よりも良好な数字が出やすい構造でした。結果として、地域に根ざす小規模事業所の現実と、改定根拠となった平均値との間に大きな乖離が生まれました。

引き下げ幅と「処遇改善加算拡充」とのセット

改定では基本報酬を引き下げる代わりに、介護職員等処遇改善加算が拡充され、訪問介護では加算率が最大24.5%(Ⅰ区分)まで引き上げられました。厚労省は「加算分を含めればプラスになる」と説明しましたが、加算を満額算定できるのは一定規模以上の事業所に限られます。

小規模事業所にとっての「ハシゴ外し」

常勤換算5人未満、登録ヘルパー中心の零細事業所では、加算要件(キャリアパス・職場環境等要件)を満たすための事務負担や書類作成コストが重く、結果的に基本報酬のマイナス分を加算で補いきれない事業所が続出しました。厚労省が2024年9月に全国約3,300の訪問介護事業所を対象に行った調査では、改定前の2023年8月と比べて「介護保険収入が5%以上減った」と回答した事業所が全体の5~6割に達しました。

業界団体からは「梯子を外された」「統計のトリックで現場を切り捨てた」との強い反発が続き、2年経った今もこの改定の是非が2027年度改定に向けた議論の中心論点になっています。

訪問介護事業所の倒産件数推移|3年連続で過去最多

東京商工リサーチ(TSR)が2026年1月に公表した調査によれば、2025年の訪問介護事業者倒産(負債1,000万円以上)は91件で、前年の81件から+12.3%増加し、介護保険制度が始まった2000年以降で過去最多を更新しました。倒産件数の更新は2023年・2024年・2025年と3年連続です。

年次推移(東京商工リサーチ調べ)

訪問介護倒産件数備考
2020年56件コロナ禍・資金繰り支援で抑制
2021年56件前年並み
2022年50件コロナ支援縮小開始
2023年67件過去最多更新(当時)
2024年81件改定直後に急増・最多更新
2025年91件3年連続最多・調査開始以来最多

介護事業者全体でも過去最多176件

訪問介護を含む介護事業者全体の倒産も2025年は176件となり、こちらも過去最多を更新しました(前年比+4件)。内訳は訪問介護91件、通所・短期入所45件、有料老人ホーム16件、その他24件で、訪問介護が全体の約52%を占めています。他のサービス類型(通所は前年比-11件)が減少または横ばいの中、訪問介護だけが突出して増え続けている点が特徴です。

倒産の中身|零細中心・「売上不振」が8割超

  • 原因別:売上不振(販売不振)75件(82.4%)、人手不足関連(求人難・従業員退職など)13件(2023年の11件を上回り過去最多)
  • 規模別:従業員10人未満79件(86.8%)、資本金500万円未満73件(80.2%)、負債1億円未満81件(89.0%)
  • 手続別:破産86件(94.5%)で過去最多。再建より撤退を選ぶ事業者が圧倒的多数

地方への倒産の拡大

都道府県別では大阪府12件、東京都11件が最多ですが、前年比では大都市が減少する一方、北海道(2→8件)、和歌山(0→5件)、愛知(2→6件)など地方への広がりが鮮明になっています。大都市では合理化や大手事業所への統合が進む一方、地方では代替事業所がない「介護難民予備軍」が発生するリスクが高まっています。TSR情報部は「人手不足や介護報酬減額に起因した業績悪化が目立ち、零細から中堅にまで倒産は広がっている」と分析しています。

人材流出の実態|有効求人倍率4.44倍、離職率14.2%

訪問介護の苦境は倒産だけではありません。そもそもヘルパーが集まらず、集まっても辞めていく──この「人材流出」こそが倒産の引き金を引いている最大の要因です。

訪問介護員の有効求人倍率は4倍超で高止まり

厚生労働省「介護人材確保に向けた取組」資料によれば、訪問介護員の有効求人倍率は2025年9月時点で約4.44倍。介護関係職種全体(約4.02倍)をさらに上回り、全職業平均(約1.10倍)の4倍近い水準で推移しています。2022年度以降は訪問介護員だけ二桁台(一時15倍前後)に達した時期もあり、「求人を出しても応募がない」状態が常態化しています。

離職率・労働力の高齢化

  • 訪問介護の離職率:令和6年度(2024年度)で約14.2%(介護労働安定センター「介護労働実態調査」)。全産業平均(約13.1%)をわずかに上回るが、問題はその担い手の構造にあります。
  • ヘルパーの高齢化:訪問介護員の平均年齢は約54歳、60歳以上が全体の約4割を占めると推計されます。新規参入が極端に少なく、引退による自然減が大きい。
  • 賃上げの遅れ:介護13団体の調査によれば、2025年度の介護業界の賃上げ率は2.58%で、全産業平均(5.25%)の半分以下。他業界との賃金差が年々拡大しています。

「売上不振」の裏にある「稼働できない」問題

TSRの分析では、倒産原因のトップである「売上不振」(82.4%)の実態は、需要がないのではなくヘルパーがいないために訪問回数を増やせず、結果的に売上が伸びないという構造的問題です。介護労働安定センターの2024年度調査でも、訪問介護事業所の約30%が「大いに不足」または「不足」と回答し、都市部の約7割・過疎地の約6割で離職者が発生しています。

将来推計|2026年に240万人必要

厚労省は、2026年度に必要な介護職員を約240万人(2022年比+25万人)、2040年度には約272万人(同+57万人)と見込んでいます。現在の賃金水準・人材確保ペースではこの目標の達成はきわめて困難で、訪問介護は最も不足が深刻な類型の一つとされています。

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2026年6月臨時改定の効果と限界|基本報酬は戻らない

倒産ラッシュと人材流出を受け、政府は2025年11月の総合経済対策で「介護職員の処遇改善を報酬改定を待たずに前倒しで実施する」と打ち出しました。そこで実施されるのが2026年6月1日施行の臨時介護報酬改定(+2.03%)です。

臨時改定の中身

項目内容
改定率全体 +2.03%(処遇改善加算の拡充分)
対象介護職員 → 介護従事者全体(訪問看護・リハビリ・居宅介護支援も新たに対象)
賃上げ額(目安)基本1万円(+3.3%)+ 生産性向上0.7万円 + 定期昇給0.2万円 = 最大月1.9万円(+6.3%)
財源2025年度補正予算 約1,920億円(介護職員1人あたり月最大1.9万円を2025年12月~2026年5月に補助、以降は報酬で恒久化)

評価できる点

  • 介護職員以外(看護師・リハ職・ケアマネ)も処遇改善加算の対象に含まれ、職場全体の賃上げに使いやすくなる
  • 補正予算との接続で「空白期間なし」に支援が継続
  • 訪問介護は処遇改善加算の加算率がすでに業界最高水準(最大24.5%)で、臨時改定の恩恵を受けやすい

限界|「基本報酬」は戻らない

一方、今回の臨時改定では2024年に引き下げられた基本報酬そのものは戻りません。加算で上乗せされる仕組みのため、以下の構造的問題が残ります。

  • 加算要件を満たせない零細事業所は恩恵を受けにくい:キャリアパス要件や職場環境要件を満たすための書類整備ができず、結局下位区分のままの事業所が多い
  • 加算分は賃金に充当する義務がある:事業所の経営改善(設備投資・ガソリン代・家賃など)には使えない
  • 物価高・燃料費高騰を吸収できない:ガソリン代・電気代・介護用品の価格上昇は基本報酬の引き上げでしか対応できない

東京商工リサーチの担当者は「一時的な人材確保にはつながるかもしれないが、中・小規模事業者の経営改善は見通しづらい」とコメントしています。淑徳大学・結城康博教授も「2027年度改定で、訪問介護の基本報酬は最低でも5%の引き上げが必要」と指摘しており、臨時改定では根本解決に至らないという見方が専門家の間では主流です。

2027年度改定に向けた論点

現在、社会保障審議会介護給付費分科会では2027年度改定に向けた議論が進行中です。主な論点は以下の4点です。

  1. 基本報酬の引き上げ幅(結城教授らが主張する+5%の実現可否)
  2. 同一建物減算・集合住宅併設事業所への対応
  3. 中山間地域・過疎地域向けの加算拡充
  4. 訪問介護と定期巡回・随時対応型サービスの再編・統合

訪問介護員・転職希望者が今知っておくべき5つのこと

報酬引き下げと倒産増というニュースは、現役ヘルパーや訪問介護への転職を考える方にとって不安材料です。ただし、正しく情報を整理すれば「危ない事業所」と「安定した事業所」は見分けられます。転職・就職の判断材料として、以下の5点を必ず押さえてください。

  1. 処遇改善加算の区分を必ず確認する
    2026年6月からの臨時改定で最大月1.9万円の賃上げが実現するかは、就職先事業所の処遇改善加算区分に直結します。求人票・面接時に「介護職員等処遇改善加算はⅠ~Ⅳのどの区分ですか?」と必ず質問しましょう。Ⅰ区分なら月1万円以上の賃上げが期待できます。区分を答えられない事業所は要注意です。
  2. 常勤比率と登録ヘルパー比率を見る
    登録ヘルパー(直行直帰の非常勤)中心の事業所は、シフト調整が難しく稼働率が伸びにくい傾向にあります。常勤ヘルパー比率が高い事業所(目安:常勤40%以上)の方が、一人あたりの月収・社会保険の安定度で優位です。
  3. 経営母体をチェックする
    倒産の86.8%は従業員10人未満の零細事業所で発生しています。医療法人・社会福祉法人・上場企業系列・大手チェーンは、体力があり倒産リスクが相対的に低い傾向にあります。単独の株式会社でも、複数事業所を展開していたり、デイサービスや居宅介護支援を併設している事業所は収益の柱が複数あり安定しやすいです。
  4. 移動時間・交通費の扱いを確認する
    訪問介護の給与トラブルで最も多いのが「移動時間の未払い」問題です。厚労省通達では移動時間も労働時間として賃金支払い対象ですが、実際には時給が発生しないケースがあります。面接時に「移動時間の時給は発生しますか?」「ガソリン代・自転車手当はいくらですか?」を必ず確認しましょう。
  5. 2026年6月以降の昇給計画を聞く
    臨時改定の加算分をどのように職員に分配するかは事業所の裁量です。「6月改定の加算分は、どのタイミングで、どの手当として支給されますか?」と直接聞いて構いません。明確に答えられる事業所は処遇改善に前向きな証拠です。逆に「検討中」「まだ分からない」という回答の場合、分配方針が曖昧で実際の昇給額が少なくなる可能性があります。

訪問介護業界全体は苦境ですが、安定した法人ほどヘルパーの奪い合いになっているのも事実です。人材難の裏返しで、優良事業所では入社一時金・資格取得支援・有給消化率100%など、条件改善が進んでいます。情報を見極めれば、今はむしろ好条件の事業所に移るチャンスでもあります。

他の介護サービスとの経営状況比較|訪問介護だけがなぜ突出するのか

2025年の介護事業者倒産176件のうち、訪問介護が91件と約52%を占めます。他のサービス類型と比較することで、訪問介護の構造的問題がより鮮明になります。

介護サービス類型別の2025年倒産件数と前年比

サービス類型2025年倒産前年比2024年改定率(基本報酬)
訪問介護91件+10件(+12.3%)-2%超(マイナス改定)
通所介護・短期入所45件-11件プラス改定
有料老人ホーム16件-2件プラス改定(住宅型は報酬対象外)
その他(グループホーム等)24件+7件プラス改定
合計176件+4件全体+1.59%

通所介護(デイサービス)は前年比-11件と明確な改善が見られ、訪問介護との差は歴然です。通所介護は送迎・食事・入浴などを施設内で集中的に提供できるため、規模の経済が働きやすく、また基本報酬がプラス改定だったことも経営安定に寄与しています。

訪問介護が構造的に不利な3つの理由

  • ①「移動時間」という非生産時間が報酬化されていない
    訪問介護員は1日の約3割を移動に使うと言われますが、その時間は介護報酬の対象になりません。特に過疎地・中山間地では1件の訪問のために往復30分以上かかるケースもあり、燃料費高騰が直撃します。全国ハイヤー・タクシー連合会の調査ではガソリン価格はここ3年で約20%上昇しており、移動距離の長い事業所ほど利益を圧迫されています。通所介護は利用者を集めるため、この問題が発生しません。
  • ②スケールメリットが効かない
    施設系サービスは1棟に職員・利用者が集中するため、ICT・食事調達・事務処理で効率化が可能です。訪問介護はヘルパー1人が1世帯を担当する1対1のサービスで、規模を拡大しても1人あたりの生産性は劇的には上がりません。記録・請求業務の電子化は進みつつありますが、現場のサービス提供時間そのものを短縮することはできず、人手不足を規模で吸収する戦略が通用しない構造的特性があります。
  • ③「身体介護」と「生活援助」の単価差
    生活援助(掃除・買い物など)は身体介護の半額以下の単価で、利用者のニーズは高いのに収益性は低いという矛盾があります。2024年の引き下げで、この生活援助中心の零細事業所が直撃を受けました。特に独居高齢者の増加で生活援助ニーズは伸び続けていますが、単価の低さゆえに事業として成り立たず、「需要はあるのに撤退」というパラドックスが全国で発生しています。

こうした構造的問題に対し、「訪問介護」という類型そのものを見直すべきとの議論もあり、2027年度改定では定期巡回・随時対応型訪問介護看護との統合や、中山間地域加算の拡充が論点になる見通しです。転職を考える方にとっては、単価の高い身体介護の比率が高い事業所・同一建物内の集合住宅に併設された事業所・定期巡回型に移行している事業所など、収益構造が安定したビジネスモデルを採用している法人を見極めることが重要になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 2024年の訪問介護の基本報酬引き下げ幅は具体的に何%ですか?

A. サービス類型ごとに異なりますが、身体介護・生活援助・通院等乗降介助のいずれも約2~2.3%の引き下げとなりました。例えば身体介護20分未満は167単位→163単位(約2.4%減)、生活援助45分以上は225単位→220単位(約2.2%減)です。介護業界全体は+1.59%のプラス改定だった中で、訪問介護だけがマイナスとなった異例の改定でした。

Q2. 訪問介護事業所に就職するのは危険ですか?

A. 一律に危険とは言えません。倒産の87%は従業員10人未満の零細事業所に集中しており、大手・医療法人系・社会福祉法人系の訪問介護事業所は相対的に安定しています。むしろ人材難で採用競争が激しく、条件改善が進んでいる事業所も多数あります。就職先選びでは、経営母体・職員数・処遇改善加算区分の3点を必ず確認しましょう。

Q3. 2026年6月の臨時改定で給料はいくら上がりますか?

A. 処遇改善加算Ⅰを算定する事業所では、介護職員1人あたり月額最大1.9万円の賃上げが想定されています(基本1万円+生産性向上0.7万円+定期昇給0.2万円)。ただし実際の支給額・時期は事業所の裁量で決まるため、必ず勤務先(または就職希望先)に確認してください。

Q4. 訪問介護ヘルパーの有効求人倍率はなぜこんなに高いのですか?

A. 主因は労働力の高齢化新規参入の少なさです。訪問介護員の平均年齢は約54歳、60歳以上が約4割を占め、毎年引退者が出る一方で若年層の参入が極端に少ない状況です。施設系介護と比べ、単独で利用者宅を訪問する責任の重さや移動の負担がハードルになっています。

Q5. ヘルパー不足が解消する見込みはありますか?

A. 短期的には難しい見通しです。厚労省推計では2026年度に必要な介護職員は約240万人(2022年比+25万人)、2040年度には約272万人と需要が増え続けます。政府は外国人介護人材の受入拡大・ICT導入支援・処遇改善を進めていますが、賃上げ率が全産業平均の半分(2.58%対5.25%)にとどまる現状では、根本的な解消には時間がかかります。逆に言えば、今後10年以上は訪問介護員の求人需要は高止まりし続けると予想されます。

Q6. 倒産した事業所のヘルパーはどうなりますか?

A. 多くの場合、別の訪問介護事業所に移ることになります。ヘルパー不足が深刻なため、倒産事業所からの転職者は歓迎される傾向にあり、即戦力として採用されやすいです。ただし利用者との関係が切れてしまうことや、新しい事業所のルール・シフトに慣れる必要があるなど、当事者の負担は大きくなります。

参考文献・出典

まとめ|制度の隙間で働く人を守るために

2024年4月の訪問介護基本報酬引き下げから約2年、現場の苦境はデータで明らかに悪化しました。2025年の訪問介護事業者倒産は91件と3年連続で過去最多、介護事業者全体の倒産176件のうち約52%を訪問介護が占めます。倒産の主因は「ヘルパー不足による売上不振」で、賃金が他産業平均の半分程度の伸びしかない中、有効求人倍率4.44倍という異常事態が続いています。

2026年6月の臨時改定(+2.03%、最大月1.9万円の処遇改善)は一定の前進ですが、基本報酬そのものは戻らず、加算要件を満たせない零細事業所の救済には限界があります。専門家からは2027年度改定で基本報酬を最低5%引き上げるべきとの声も上がっており、今後1年間の議論が訪問介護の命運を左右します。地域によっては訪問介護事業所の撤退により「介護難民」が発生するリスクも指摘され、自治体レベルでの支援策の必要性も高まっています。

一方で、現役ヘルパー・転職希望者にとって重要なのは「事業所を選ぶ目」です。経営母体・常勤比率・処遇改善加算区分・移動時間の扱い・改定後の昇給計画──この5点を確認すれば、倒産リスクが低く、臨時改定の恩恵をしっかり受け取れる事業所を見分けられます。業界全体の逆風の中でも、優良な事業所ではヘルパー獲得競争で待遇改善が進んでいるのも紛れもない事実です。入社一時金・資格取得支援・退職金制度・有給消化率など、数年前では考えられなかったレベルで条件改善に踏み切る事業所も登場しています。

訪問介護は、在宅で暮らし続けたい高齢者の生活を支える地域包括ケアの土台です。その土台を支えるヘルパー一人ひとりが正当に評価される制度設計と、働く人自身による情報武装──その両輪が、これからの訪問介護を守ることにつながります。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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