
人員欠如減算、急な離職などで適用猶予|厚労省Vol.1502・年1回最大3か月・2026年6月算定分から
厚労省は2026年5月12日付で介護保険最新情報Vol.1502を発出し、人員基準欠如減算の3か月猶予の運用ルールを正式に通知。年1回・最大3か月の限度、適用対象4要件、1割超減少の除外要件、6月算定分からの施行を解説。
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この記事のポイント
厚生労働省は2026年5月12日付で「介護保険最新情報Vol.1502」を発出し、人員基準欠如減算について年1回・最大3か月の猶予を認める運用ルールを正式に通知した。2026年6月算定分からの施行で、急な離職や本人・家族の急病など「突発的・想定困難なやむを得ない事情」に限定。ハローワーク等の活用、適正認定事業者の利用、自社採用情報の発信、適正な労働時間管理という4要件を満たす事業所のみが対象となり、人員配置基準から1割を超えて減少した場合は除外される。介護現場で働く側にとっては「採用活動の証跡」が事業所の生死を分ける時代に入ったことを意味し、求職者から見て採用に積極的な事業所かどうかの判断材料が増える局面でもある。
目次
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人員欠如減算Vol.1502解説(kaigonews)
2026年3月末の社会保障審議会・介護給付費分科会で「大筋了承」されていた人員基準欠如減算の3か月猶予措置が、5月12日に発出された「介護保険最新情報Vol.1502」によって運用ルールごと正式通知化された。3月時点では「方針発表」にとどまっていた特例措置が、約1か月半を経て通達ベースの確定情報となり、2026年6月算定分から実際に適用が始まる。
4月時点では「年1回・最大3か月の猶予を認める」という骨格しか公開されていなかったが、今回のVol.1502では適用を受けるための4要件、1割を超えて減少した場合の除外要件、対象となる事象例、届出手続きまで一体で整理されている。介護報酬の月次売上を3割削る重い減算が一時的に止まる仕組みなだけに、対象事業所と現場職員にとっての影響は大きい。
本記事では、Vol.1502の通知本体とQ&Aを起点に、運用詳細とその意味を読み解く。4月時点の方針記事をすでに読んだ読者でも、運用ルール確定後の判断基準として再点検できるよう構成した。
Vol.1502の中身:適用猶予の詳細ルールが正式通知化
通知の正式名称と発出経緯
2026年5月12日付で発出された「介護保険最新情報Vol.1502」の正式名称は、「『指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について』等の一部改正について及び当該通知の発出に伴うQ&Aの発出について」である。施設・居住系・通所・多機能・居宅介護支援といった主要サービスの留意事項通知を横断的に改正したうえで、運用上の疑義に答えるQ&Aを同時発出した形だ。
「方針」から「通知」への移行で何が変わったのか
3月30日の第255回介護給付費分科会では、人員基準欠如減算について「突発的で想定困難なやむを得ない事情に限り、1年に1回・最大3か月の猶予」という骨格が報告され、大筋で了承されていた。ただしこの段階では分科会への報告資料にとどまり、現場での適用判断に使える具体ルールは確定していなかった。Vol.1502によって、適用申請の入口(4要件)、適用が認められない出口(除外要件)、対象事象例、届出書類までが通達ベースで明示され、2026年6月算定分から実際に運用可能な状態となった。
年1回・最大3か月の限度の意味
猶予の対象期間は、欠員が発生した月の翌々月末までで最大3か月。同一事業所・施設につき、1年に1回しか適用できない。3か月という上限は、ハローワークや有料職業紹介を通じた介護職員・看護職員・ケアマネジャーの一般的な採用サイクル(求人掲載から就業開始までおおむね2〜3か月)に概ね対応する設定で、慢性的な人手不足を補填する目的ではなく、突発事象から立て直す期間として位置付けられている。
対象となる事象例
通知では、適用が想定される事象として、職員本人や家族の急病、1か月以上の長期療養、突発的な複数離職などが挙げられている。いずれも「事業所側が事前に予測することが困難で、防止のしようがない欠員」であることが共通点だ。慢性的な人手不足や、退職予告期間を踏まえれば対応できたはずの欠員は、通知の趣旨上、適用対象とならない。
適用対象4要件:公的機関の活用・適正認定事業者・採用情報発信・労働時間管理
要件1:ハローワーク・福祉人材センター等の公的機関を活用していること
Vol.1502は、適用対象の事業所要件として、まず「ハローワークや福祉人材センターなど公的機関を通じた人材確保の取り組み」を求めている。具体的には、ハローワークへの求人登録、都道府県社会福祉協議会が運営する福祉人材センターの活用、都道府県・市町村の介護人材確保事業の利用などが該当する。求人登録の事実関係は求人票の写しや受付番号で証跡を残す運用となる見込みで、申請時の添付資料に直結する要件だ。
要件2:民間職業紹介事業者は「適正認定事業者」を利用すること
第二の要件として、民間の有料職業紹介を利用する場合は「国の適正認定事業者」を使うことが求められる。これは厚生労働省が要件適合性を認定した職業紹介事業者の制度で、医療・介護・保育分野について手数料水準や紹介後の早期離職対応などに関する一定の基準を満たす事業者が公表されている。高額紹介料と短期離職の連鎖が業界課題となっていた中、適正認定事業者の利用を要件化したことで、減算猶予のインセンティブを通じて事業所側の紹介会社選定を誘導する狙いが読み取れる。
要件3:自社ホームページ等で採用情報を発信していること
第三の要件は、自社ホームページなどでの採用情報発信である。求人媒体への掲載や紹介会社への依頼だけでなく、事業所として自前の採用広報チャネルを持っていることが条件となる。ホームページを持たない小規模事業所には個別配慮があるとされるが、原則として「自社で採用に取り組む姿勢」が要件化された意味は大きい。求職者から見て事業所の採用ページがあるかどうかは、応募前の判断材料として日常的に使われており、この要件化はその情報非対称の解消にも資する。
要件4:適正な労働時間管理と既存職員への過度負担の回避
第四の要件として、既存職員に過度な負担をかけないための「適正な労働時間管理・体制整備」が求められる。欠員が出た現場では残存職員の残業や夜勤回数増加が起こりやすいが、それを猶予期間中に放置することは認められない。労働時間管理の証跡(タイムカード・勤怠システムログ・36協定の運用記録)が事後検証で確認される可能性があるため、欠員発生時点から「適正運用の証拠」を意識的に残す必要がある。
届出手続き
適用を受けるためには、欠員発生月の翌月までに、求人票の写し、欠員理由、採用活動状況、体制維持への取り組みなどを記載した書類を所定の手続きで届け出る。届出が受理されなければ通常通り翌々月から3割減算が発動するため、突発離職発生時の事務処理スピードが事業所のキャッシュフローに直結する設計となっている。
除外要件(1割超減少)と運用上の論点:基準ライン直下のグレーゾーン
1割超減少は問答無用で除外
Vol.1502は、介護職員または看護職員が人員配置基準上必要とされる員数から1割を超えて減少している場合を、猶予の対象外として明示している。たとえば人員基準上10人必要なところに対し、欠員1人(10%減)までは猶予対象になりうるが、欠員2人(20%減)では原則として翌々月から3割減算が即時発動する。「3か月猶予」と聞くと大規模な欠員にも対応できる印象を持ちやすいが、実際の運用ラインはかなりタイトに引かれている。
1割ラインを境にした経営判断の二極化
1割超減少の除外要件は、経営判断に明確な二極化をもたらす可能性が高い。1割以内に収まる小規模な欠員は猶予枠を使って正規採用に時間をかけられるのに対し、1割を超える複数欠員が同時発生した場合は、紹介手数料を払ってでも一気に補充するか、サービス供給能力そのものを縮小する判断が迫られる。読者である介護職にとっては、「1割を超える欠員が出ている事業所」が短期間で求人募集を増やし、紹介経由の採用ボーナスや好待遇求人を出してくる可能性が高まる局面でもある。
「年1回」のリセットタイミングは要確認事項
「年1回」の起算点については、施行直後のため事業所間で運用判断が割れる可能性がある。年度(4月起算)なのか、暦年(1月起算)なのか、適用月から1年間(ローリング)なのかは、Q&Aや今後の追加通知で確認が必要な実務論点だ。複数回の突発欠員が出た事業所では、どのタイミングで猶予を使うかが半ば戦略的な判断となる。
ケアマネジャー欠員は別建てで要注意
居宅介護支援事業所のケアマネジャー欠員については、人員基準上の扱いが介護職員・看護職員と異なるサービスもあるため、Vol.1502の特例を適用する際にはサービス種別ごとの留意事項通知の改正部分を併せて確認する必要がある。とりわけ管理者要件と兼ねた配置になっている小規模事業所では、1人欠員が即座に基準充足不能につながりやすいため、適用可否の確認は早めの段階で行うのが安全だ。
事業所への影響:「採用活動の証跡管理」が経営の必須項目に
採用活動の証跡が「無いと使えない」制度設計
Vol.1502の最大の特徴は、3か月猶予を受けるための要件が「採用努力を行っていることを書類で示せるかどうか」に集約されている点にある。求人票の写し、ハローワーク受付番号、適正認定事業者との契約書、自社採用ページのURL、勤怠記録――これらを欠員発生時に即座に揃えられるかどうかが、月次売上3割の確保を左右する。4月時点の方針発表記事で予想されていた「3か月猶予の経営インパクト」は、Vol.1502によって「証跡管理コストとの引換」という形で具体化されたと言える。
採用広報を「日常業務」として再設計する必要
従来、採用活動を「欠員が出てから始める」運用をしていた事業所は、Vol.1502下では適用要件を満たせない可能性が高い。ハローワーク登録の維持、自社採用ページの定期更新、適正認定事業者との関係構築は、欠員の有無にかかわらず日常的に動かしておく必要がある。要件1〜4はいずれも「単発で揃える」ことが難しい性質のもので、平時から取り組んでいない事業所は突発離職が発生した瞬間に出遅れる構造になっている。
介護職・看護職にとっての意味:採用に積極的な事業所が見えやすくなる
働く側から見ると、Vol.1502は事業所の「採用への本気度」を見える化する制度でもある。自社ホームページに採用情報を載せ、適正認定事業者を活用し、勤怠管理を整えている事業所は、減算猶予を使える=突発事象に強い=人員配置が比較的安定している、というシグナルになる。転職活動時には、求人媒体だけでなく事業所の採用ページを直接確認することで、要件1〜4を満たしているかどうかをおおまかに判断できる。
紹介会社選定の構造変化
適正認定事業者の利用が要件化されたことは、介護人材紹介市場にも構造変化をもたらす。事業所側は、減算猶予の可能性を確保するために認定事業者を優先利用するインセンティブが働き、未認定の紹介会社は事業所と求職者の両面で選ばれにくくなる。求職者にとっては、紹介会社が認定事業者かどうかを登録前に確認することで、紹介先事業所の経営の安定性まで間接的に判断する材料が増えた格好だ。
地域差と中小事業所への配慮
ホームページを持たない小規模事業所への配慮は通知に明記されているものの、要件1(ハローワーク等の公的機関活用)と要件2(適正認定事業者の利用)は事業所規模を問わず求められる。地方の単独経営事業所では、適正認定事業者との接点が薄く、突発事象発生時に要件2を満たせない懸念がある。地域包括ケアの担い手である小規模事業所の存続を考えるなら、認定事業者の地方拠点拡充や福祉人材センターの紹介機能強化が、Vol.1502の実効性を担保する課題として浮かび上がる。
まとめ
2026年5月12日付の介護保険最新情報Vol.1502は、3月分科会で大筋了承されていた人員基準欠如減算の3か月猶予を、6月算定分から運用可能なルールとして確定させた。突発的・想定困難な事象に限定し、年1回・最大3か月の限度を設けたうえで、ハローワーク等の公的機関活用、適正認定事業者の利用、自社採用情報の発信、適正な労働時間管理という4要件を課す設計は、減算という重いペナルティの一時停止と引換に、事業所側の採用努力と労務管理を可視化する制度設計だ。人員配置基準から1割を超えて減少した場合は除外されるという厳格なラインも引かれている。
働く介護職・看護職・ケアマネジャーにとっては、応募先事業所の採用ページや紹介会社の選び方を見ることで、Vol.1502下で安定運営を続けられる事業所かどうかをこれまでより判断しやすくなった。日常の採用広報や勤怠管理が雑な事業所は、突発離職が出た瞬間に減算で経営が傾く構造になったとも言える。転職や働き方を検討する局面では、「事業所が要件1〜4を平時から満たしているか」という観点を加えると、より長く安心して働ける職場を選びやすくなる。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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