
介護職の残業実態を徹底解説|平均残業時間・サービス残業・施設別比較と対処法
介護職の残業時間は月平均6.8時間で全産業より少なめですが、4人に1人がサービス残業を経験。施設別の残業時間比較、サービス残業の原因と対処法、残業の少ない職場の見つけ方を公的データをもとに解説します。
この記事のポイント
介護職の残業時間は週平均1.7時間(月換算約6.8時間)で、全産業平均の月12.7時間より少ない水準です。56.6%が「残業なし」と回答する一方、約25%がサービス残業を経験しており、記録業務・申し送り・会議が主な原因です。残業の多さは施設形態や職位で大きく異なるため、転職時は平均残業時間・固定残業代の有無・ICT導入状況を必ず確認しましょう(出典:介護労働安定センター 令和6年度介護労働実態調査)。
介護職の平均残業時間はどれくらい?最新データで見る実態
「介護職は残業が多い」というイメージを持つ方は少なくありません。しかし、公的な調査データを見ると、実態はイメージとは異なる部分もあります。ここでは、最新の調査結果をもとに、介護職の残業時間の実態を詳しく見ていきましょう。
令和6年度 介護労働実態調査の結果
公益財団法人介護労働安定センターが実施した「令和6年度 介護労働実態調査」(2024年10月基準日、全国21,325人対象)によると、介護職の1週間の平均残業時間は1.7時間です。月換算すると約6.8時間となります。
残業時間の分布を見ると、以下のとおりです。
| 1週間の残業時間 | 割合 |
|---|---|
| 残業なし | 56.6% |
| 5時間未満 | 25.4% |
| 5〜10時間未満 | 9.7% |
| 10〜15時間未満 | 3.1% |
| 15時間以上 | 1.2% |
半数以上の56.6%が「残業なし」と回答しており、全体の約82%が週5時間未満に収まっています。一方で、週15時間以上(月60時間以上相当)の長時間残業者も1.2%存在し、職場による格差が大きいことがわかります。
職位別の残業時間比較
同調査では、職位によって残業時間に大きな差があることも明らかになっています。
| 職位 | 週平均残業時間 | 月換算 |
|---|---|---|
| 管理職 | 2.9時間 | 約11.6時間 |
| 主任・リーダー | 2.3時間 | 約9.2時間 |
| 一般職・担当職 | 1.1時間 | 約4.4時間 |
管理職は一般職の約2.6倍の残業時間となっています。管理職はシフト調整・人員管理・行政対応などの業務が加わるため、残業が増える傾向にあります。
職種別の残業時間比較
介護現場で働く職種ごとにも残業時間は異なります。
| 職種 | 週平均残業時間 |
|---|---|
| PT/OT/ST等(リハビリ専門職) | 2.9時間 |
| 看護職員 | 2.5時間 |
| 訪問介護員 | 2.4時間 |
| サービス提供責任者 | 1.9時間 |
| 生活相談員 | 1.7時間 |
| 介護支援専門員(ケアマネ) | 1.4時間 |
| 介護職員 | 1.2時間 |
介護職員(施設介護スタッフ)の残業時間は週1.2時間と最も短い一方、リハビリ専門職や看護職員は週2.5〜2.9時間とやや長くなっています。書類作成や計画書策定など、デスクワークの比率が高い職種ほど残業が多い傾向があります。
全産業との比較
厚生労働省「毎月勤労統計調査(令和7年1月分速報)」によると、全産業における一般労働者の平均残業時間は月12.7時間です。介護職の月6.8時間はこれを大きく下回っており、全産業の中でも残業が少ない部類に入ります。
業種別の月間残業時間を比較すると、以下のとおりです。
| 業種 | 月間平均残業時間 |
|---|---|
| 運輸業・郵便業 | 約20時間 |
| 建設業 | 約15時間 |
| 製造業 | 約14時間 |
| 情報通信業 | 約13時間 |
| 全産業平均 | 12.7時間 |
| 医療・福祉 | 約6.8時間 |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 約5時間 |
このように、介護を含む医療・福祉業界の残業時間は全産業で見てもトップクラスに短い水準です。ただし、この数字はあくまで「申告ベース」であり、後述するサービス残業(不払い残業)を含めると実態は異なる可能性がある点に注意が必要です。
サービス残業(不払い残業)の実態|4人に1人が経験
介護職の残業時間そのものは全産業平均より短いものの、深刻な問題として指摘されているのがサービス残業(不払い残業)です。労働時間として申告されない「見えない残業」が、介護現場では根強く残っています。
サービス残業の発生率
全国労働組合総連合(全労連)の「介護労働実態調査報告書」によると、介護職員の約4人に1人(約25%)が不払い残業を経験しています。また、介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」では、労働条件に関する悩みとして「不払い残業がある・多い」と回答した割合は全体で6.7%に上ります。
職種別では、以下のように差があります。
| 職種 | 「不払い残業がある・多い」の回答割合 |
|---|---|
| 生活相談員 | 9.6% |
| サービス提供責任者 | 9.0% |
| 介護職員 | 6.9% |
| 全体平均 | 6.7% |
デスクワークや書類作成が多い生活相談員・サービス提供責任者ほど、不払い残業の悩みが大きいことがわかります。
サービス残業の時間分布
介護ワーカーの調査データでは、不払い残業の時間分布が以下のように報告されています。
| 月間の不払い残業時間 | 割合 |
|---|---|
| 0時間(サービス残業なし) | 75.0% |
| 5時間未満 | 8.8% |
| 5〜10時間 | 6.7% |
| 10〜15時間 | 4.2% |
| 15〜20時間 | 1.4% |
| 20時間以上 | 3.9% |
75%はサービス残業なしと回答している一方、月10時間以上の不払い残業がある人が約9.5%も存在します。月20時間以上という深刻なケースも3.9%に上り、職場環境によっては過酷な状況に置かれている介護職員がいることがわかります。
サービス残業をしてしまう理由
なぜサービス残業が発生し、それが放置されてしまうのでしょうか。同調査では、サービス残業をする理由(複数回答)として以下の結果が出ています。
| サービス残業をする理由 | 割合 |
|---|---|
| 自分から請求していない | 70.9% |
| 請求できる雰囲気にない | 40.3% |
| 支給されない業務や会議がある | 25.8% |
| 請求する時間の上限が決められている | 11.3% |
| 請求しても削られる | 4.5% |
最も多い理由は「自分から請求していない」(70.9%)であり、職員側が残業を自己負担と捉えてしまっている実態が浮かび上がります。また、「請求できる雰囲気にない」が40.3%と高く、職場の風土として残業申請しづらい空気がある施設が少なくないことがわかります。
サービス残業が発生しやすい業務
どのような業務がサービス残業につながりやすいのでしょうか。残業の発生要因を始業前・終業後に分けて見てみます。
| サービス残業の要因 | 始業前 | 終業後 |
|---|---|---|
| 情報収集・記録 | 71.1% | 63.2% |
| ケアの準備・片づけ | 47.6% | 36.2% |
| 利用者へのケア・家族対応 | 23.8% | 36.1% |
| 会議・委員会・研修等 | 6.2% | 31.2% |
| レク・施設行事の準備 | 10.4% | 17.9% |
| 職場ミーティング | 10.6% | 17.3% |
圧倒的に多いのが「情報収集・記録」で、始業前71.1%、終業後63.2%と突出しています。介護記録の作成は、利用者のケアを直接行っている日中の時間帯には手が回らず、出勤前や退勤後に「サービス」で行っているケースが非常に多いのです。
次いで「ケアの準備・片づけ」「利用者へのケア・家族対応」と、利用者に直接関わる業務が並びます。終業後には「会議・委員会・研修等」が31.2%と高く、日中は利用者対応で全員が集まれないため、勤務時間外にミーティングが行われている実態がわかります。
介護職の残業が多くなる5つの原因
介護職の残業が発生する背景には、業界特有の構造的な問題があります。ここでは主な5つの原因を詳しく解説します。
原因1:慢性的な人手不足
厚生労働省の推計によると、2026年度に必要な介護職員数は約240万人とされていますが、現状の介護職員数は約215万人で、約25万人の不足が見込まれています。人手が足りないため、1人あたりの業務量が増え、定時内に仕事が終わらないケースが発生します。
特に深刻なのは、欠勤者や退職者が出た際の対応です。代替要員が確保できず、残ったスタッフが残業でカバーせざるを得ない状況が日常的に起こっています。地方の小規模施設では、採用そのものが困難なため、人手不足が常態化しやすい傾向があります。
原因2:介護記録・事務作業の負担
前述のデータでも明らかなように、残業の最大の原因は「記録業務」です。介護記録には、利用者の健康状態、提供したケアの内容、食事量、排泄状況、バイタルサインなど、詳細な情報を記録する必要があります。
日中は利用者の直接ケアが最優先であるため、記録業務は後回しになりがちです。結果として、勤務時間の前後に「自分の時間」を使って記録を仕上げる職員が多くなります。紙ベースの記録を採用している施設では、手書きの時間がさらにかかり、残業の一因となっています。
原因3:引き継ぎ・申し送りの時間
介護施設はシフト制で運営されているため、勤務交代時に前任者から後任者への引き継ぎ(申し送り)が必要です。利用者の状態変化、医師からの指示、家族からの連絡事項など、伝達すべき情報は多岐にわたります。
多くの施設では、引き継ぎのために始業時刻の15〜30分前に出勤することが暗黙の了解となっています。この時間が労働時間としてカウントされていない場合、サービス残業に該当します。厚生労働省のガイドラインでは、業務に必要な準備行為は労働時間として扱われるべきとされています。
原因4:突発的な対応・緊急事態
介護の仕事は「生身の人間」を相手にするため、予定どおりに業務が進まないことも珍しくありません。利用者の急な体調変化、転倒事故、家族からの緊急連絡など、突発的な対応が必要になる場面が日常的に発生します。
特に夜勤帯では、少人数のスタッフで対応するため、1件の緊急対応で勤務時間が大幅に延びることがあります。救急搬送に付き添う場合は、数時間の残業になることも珍しくありません。
原因5:会議・研修・行事準備
介護施設では、ケアカンファレンス、事故防止委員会、感染対策委員会、虐待防止委員会など、多くの会議や委員会活動があります。これらは介護保険制度で義務付けられているものも多く、省略することができません。
しかし、日中は利用者対応で全職員が一堂に会する時間が取れないため、勤務時間外に会議を設定せざるを得ない施設があります。また、レクリエーションの企画・準備、季節行事の飾り付け、研修レポートの作成なども、直接ケア以外の「見えにくい業務」として残業の原因となっています。
施設形態別の残業時間比較|残業が多い施設・少ない施設
介護職の残業時間は、勤務する施設の形態によって大きく異なります。転職を考える際には、施設タイプごとの特徴を理解しておくことが重要です。
施設形態別の平均残業時間
介護労働安定センターの調査および各種求人データをもとにした施設形態別の残業時間の目安は以下のとおりです。
| 施設形態 | 月間平均残業時間 | 残業の多さ |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 約10〜13時間 | やや多い |
| 介護老人保健施設(老健) | 約8〜11時間 | 普通 |
| 有料老人ホーム | 約7〜10時間 | 普通 |
| グループホーム | 約5〜8時間 | 少なめ |
| デイサービス(通所介護) | 約3〜6時間 | 少ない |
| 訪問介護事業所 | 約5〜8時間 | 少なめ |
残業が多い傾向の施設とその理由
特別養護老人ホーム(特養)は、残業が比較的多い施設形態です。要介護3以上の重度利用者が入所しており、24時間365日の介護体制が求められます。看取り対応も行うため、夜間の緊急対応や急変時の残業が発生しやすく、月間残業時間は12.8時間程度というデータもあります。
特養で残業が多くなる具体的な理由は以下のとおりです。
- 重度利用者が多く、ケア量が多い
- 看取り対応で夜間の急変対応が発生する
- 記録すべき情報量が多い(医療的ケア含む)
- 職員数が多く、会議・委員会活動も多い
介護老人保健施設(老健)も、リハビリ計画の作成・見直しや多職種カンファレンスなど、書類業務が多い傾向があります。医師・看護師・リハビリ専門職との連携が必要なため、会議の頻度も高くなりがちです。
残業が少ない傾向の施設とその理由
デイサービス(通所介護)は、最も残業が少ない施設形態です。営業時間が決まっており(一般的に9時〜17時頃)、利用者が帰宅した後に業務を終えるという明確な区切りがあります。夜勤がないため、夜間の緊急対応もありません。
デイサービスで残業が少ない理由は以下のとおりです。
- 営業時間が固定されており、終了時刻が明確
- 夜勤がなく、夜間の緊急対応がない
- 利用者の介護度が比較的軽度
- 送迎業務の時間管理がしやすい
訪問介護事業所も残業は少なめですが、サービス提供責任者は書類業務が多く、訪問介護員(ヘルパー)との残業格差が大きい点に注意が必要です。ヘルパー自体は訪問時間が決まっているため残業は少ないものの、移動時間が労働時間に含まれないケース(直行直帰型)ではサービス残業に該当する可能性があります。
当サイト独自分析:施設形態と残業の関係
上記のデータを総合的に分析すると、残業時間は以下の要因と強い相関があることがわかります。
- 入所型か通所型か:24時間体制の入所型施設は、通所型に比べて残業が多い傾向
- 利用者の介護度:重度利用者が多い施設ほど、突発対応・記録量が増える
- 施設の規模:大規模施設は会議・委員会が多い一方、小規模施設は人員不足で残業が増えやすい
- ICT導入状況:記録のデジタル化が進んでいる施設は記録業務の残業が減る傾向
転職の際には、施設形態だけでなく、これらの要因を総合的に確認することが重要です。
介護職の残業を減らす7つの方法|個人でできること・職場の取り組み
残業時間を減らすためには、個人の工夫と職場全体の取り組みの両方が必要です。ここでは、実践的な7つの方法を紹介します。
【個人でできること】
方法1:記録業務の効率化
残業の最大原因である記録業務を効率化することが、残業削減への最短ルートです。具体的には以下の工夫が有効です。
- テンプレート・定型文の活用:頻出する記録パターンをテンプレート化し、個別に変更が必要な部分だけを書き換える
- 隙間時間の活用:利用者の入浴中やレクの待ち時間など、短い空き時間にメモや下書きを残す
- 音声入力の活用:スマートフォンやタブレットの音声入力機能を使えば、手書きの3〜5倍の速度で記録できる
- 箇条書きの活用:長文で書くのではなく、要点を箇条書きにまとめることで記録時間を短縮する
方法2:タイムマネジメントの意識
日々の業務に「時間の区切り」を意識的に設けることが重要です。
- 出勤時に「今日の優先業務リスト」を作成する
- 記録業務は「1件5分以内」など時間制限を設ける
- 終業30分前に「残タスク」を確認し、翌日に回せるものは翌日対応にする
- 「あと少しだけ」の残業を減らすため、退勤時刻をタイマーで管理する
方法3:残業時間の記録と申告
サービス残業をなくすためには、まず自分の残業時間を正確に記録することが大切です。タイムカードの打刻前・後に行った業務を手帳やスマートフォンのメモに記録し、定期的に上司に報告しましょう。
残業を申告しづらい雰囲気がある場合でも、記録を残しておくことで、後から請求できる可能性があります。労働基準法では、残業代の請求権は3年間(2020年4月以降の労働分は5年間、当面の間3年間)の時効があります。
【職場の取り組み】
方法4:ICT・介護記録ソフトの導入
介護記録のデジタル化は、残業削減に最も効果的な施策の一つです。タブレットやスマートフォンで記録を入力できるシステムを導入することで、以下のメリットがあります。
- 手書きに比べて記録時間が大幅に短縮される
- 過去の記録をコピー・修正して使い回せる
- バイタルデータの自動連携で転記ミスと転記時間を削減
- 申し送り事項をシステム上で共有でき、口頭での引き継ぎ時間を短縮
厚生労働省も介護ロボット・ICT導入支援事業として補助金制度を設けており、事業所の導入費用の一部が補助されます。ICT導入が進んでいる施設は、残業時間が少ない傾向にあります。
方法5:業務分担の見直し・介護助手の活用
介護職員が直接ケア以外の業務(清掃、リネン交換、配膳・下膳、事務作業など)に時間を取られている場合、介護助手(介護補助者)の配置が有効です。2024年度介護報酬改定でも介護助手の活用が推進されており、直接ケア以外の業務を分担することで、介護職員の業務負担と残業を減らすことができます。
方法6:会議・研修の効率化
残業の原因となる会議・研修について、以下の効率化が考えられます。
- 会議時間の上限を設定する(例:1回30分以内)
- 議題と資料を事前に共有し、会議中は議論と決定に集中する
- オンライン研修(eラーニング)の活用で、勤務時間内に各自のペースで受講できるようにする
- 委員会活動の統合や効率化を検討する
方法7:適切な人員配置・シフト管理
残業の根本原因である人手不足に対しては、採用強化だけでなく、既存の人員配置を見直すことも重要です。
- 業務が集中する時間帯(入浴介助・食事介助の時間帯)に人員を手厚くする
- シフト交代時に引き継ぎ時間を正式に組み込む(例:15分の重複時間を設定)
- 急な欠勤に対応できるよう、フレキシブルな勤務体制を整備する
- 残業時間の多い職員を定期的にモニタリングし、業務量の偏りを是正する
サービス残業への対処法|違法な残業を見極めて適切に対応する
サービス残業は労働基準法に違反する行為です。もし自分の職場でサービス残業が常態化している場合、以下の手順で適切に対処しましょう。
そもそも「違法な残業」とは?
労働基準法では、以下のケースが違法な残業に該当します。
- 残業代の未払い:法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働に対して、25%以上の割増賃金を支払わないこと
- 月60時間超の割増率未適用:月60時間を超える残業に対して50%以上の割増賃金を支払わないこと
- 36協定なしの残業命令:労使間で36協定を締結していないにもかかわらず、法定労働時間を超えて労働させること
- 36協定の上限超過:36協定で定めた残業上限(原則:月45時間、年360時間)を超えて労働させること
これらに違反した場合、事業主には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
36協定の基本を知っておこう
36協定(さぶろくきょうてい)とは、労働基準法第36条に基づく労使協定のことです。法定労働時間を超えて残業させる場合、事業主は労働者代表と36協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。
36協定の残業上限は以下のとおりです。
| 区分 | 残業上限 |
|---|---|
| 原則 | 月45時間・年360時間 |
| 特別条項付き(臨時的な事情がある場合) | 年720時間以内 |
| 特別条項の月上限 | 月100時間未満(休日労働含む) |
| 特別条項の複数月平均 | 2〜6ヶ月平均で80時間以内 |
自分の職場の36協定の内容は、事業所に掲示されているか、就業規則と一緒に閲覧できるようになっているはずです。確認したことがない方は、まず自分の職場の36協定を確認することをおすすめします。
サービス残業への具体的な対処ステップ
ステップ1:証拠を残す
まずは自分の労働時間の記録を正確に残しましょう。タイムカードの打刻時刻だけでなく、実際の出勤・退勤時刻を手帳やスマートフォンのアプリに記録します。メールの送信履歴やPCのログイン・ログアウト時刻も証拠になります。
ステップ2:上司・人事部門に相談する
記録をもとに、まずは直属の上司や人事部門に相談します。「記録業務に時間がかかっているので、勤務時間内に終えられるよう業務分担を見直してほしい」など、具体的な改善提案とセットで伝えると効果的です。
ステップ3:労働組合に相談する
職場に労働組合がある場合は、組合に相談しましょう。組合を通じて団体交渉を行うことで、個人で交渉するよりも改善が進みやすくなります。職場に組合がない場合は、地域の合同労組(ユニオン)に加入して相談することも可能です。
ステップ4:労働基準監督署に相談する
職場内での改善が見込めない場合は、最寄りの労働基準監督署に相談します。打刻記録、シフト表、業務日誌などの証拠を持参し、専門の担当者に面談を申し込みましょう。匿名での相談も可能です。労働基準監督署は事業所への立入調査や是正勧告を行う権限を持っています。
ステップ5:未払い残業代の請求を検討する
未払い残業代がある場合は、過去にさかのぼって請求することができます。請求権の時効は原則3年間です。弁護士や社会保険労務士に相談することで、適切な請求手続きを進められます。裁判で勝訴した場合、未払い残業代に加えて遅延損害金や付加金(最大で未払額と同額)が上乗せされる可能性があります。
転職時に確認すべき「残業」のチェックポイント
残業の多い職場から転職を考えている方、これから介護職に就く方が、残業の少ない職場を見つけるために確認すべきポイントを解説します。
求人票で確認すべき5つのポイント
1. 平均残業時間の記載
求人票に「月平均残業時間:○時間」と明記されているかを確認しましょう。記載がない場合は、残業時間を管理・公開する意識が低い可能性があります。目安として、月10時間以下であれば比較的少ない水準です。
2. 固定残業代(みなし残業)の有無
「月給25万円(固定残業代30時間分含む)」のような記載がある場合、注意が必要です。固定残業代は一見給与が高く見えますが、実際には30時間分の残業が前提の給与体系です。確認すべきポイントは以下のとおりです。
- 固定残業代に含まれる残業時間数
- 固定残業代の金額
- 超過分の残業代が別途支給されるか
- 実際の平均残業時間はみなし時間以下か
3. 年間休日数
厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」によると、企業全体の平均年間休日数は112.1日です。年間休日110日以上であれば標準的、120日以上であれば充実していると判断できます。年間休日が極端に少ない施設は、残業も多い傾向があります。
4. ICT導入状況
「介護記録ソフト導入済み」「タブレット支給」などの記載があれば、記録業務の効率化が進んでいる施設と判断できます。ICT化が進んでいる施設は、記録業務による残業が少ない傾向にあります。
5. 職員の離職率・定着率
離職率が高い施設は、人手不足による残業増加の悪循環に陥っている可能性があります。求人票に「離職率○%」「平均勤続年数○年」などの記載があれば参考にしましょう。
面接時に確認すべき質問例
面接は、職場の実態を把握する貴重な機会です。以下の質問で残業の実態を探りましょう。
- 「月の平均残業時間はどれくらいですか?」
- 「残業が発生する主な理由は何ですか?」
- 「残業代はどのように計算・支給されていますか?」
- 「介護記録はどのような方法で行っていますか?(紙 or デジタル)」
- 「シフト交代時の引き継ぎ時間は勤務時間に含まれていますか?」
- 「会議や研修は勤務時間内に行われていますか?」
- 「36協定の内容を教えていただけますか?」
面接担当者の回答が曖昧だったり、残業について質問すること自体を嫌がる様子がある場合は、残業管理に問題がある施設の可能性があります。
施設見学で見るべきポイント
可能であれば、面接前後に施設見学を依頼しましょう。以下の点を観察すると、残業の実態が推測できます。
- 退勤時間帯の職員の様子:定時を過ぎても多くの職員が残っていないか
- 記録方法:タブレットやPCを使っているか、手書きの記録用紙が山積みになっていないか
- 職員の表情:疲弊した様子がないか、余裕を持って業務にあたっているか
- 掲示物:36協定や労働条件に関する掲示がきちんと行われているか
介護職の残業に関するよくある質問
Q. 介護職の残業時間は他の業種と比べて多いですか?
A. いいえ、データ上は全産業平均より少ない水準です。介護労働安定センターの令和6年度調査では週平均1.7時間(月約6.8時間)で、全産業平均の月12.7時間(厚労省 毎月勤労統計調査)を大きく下回っています。ただし、サービス残業(不払い残業)を含めると実態はこの数字より多い可能性があります。
Q. サービス残業を断ることはできますか?
A. はい、サービス残業は労働基準法違反であり、断る権利があります。残業自体は36協定の範囲内で命じることができますが、残業代を支払わない「サービス残業」は明確に違法です。断りづらい場合は、まず自分の残業時間を記録し、上司や人事部門、労働組合に相談しましょう。改善されない場合は労働基準監督署への相談も選択肢です。
Q. 残業代はどのように計算されますか?
A. 法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働に対して、通常賃金の25%以上の割増賃金が支払われます。深夜(22時〜翌5時)の残業は50%以上、月60時間を超える残業は50%以上の割増率が適用されます。例えば、時給1,200円の場合、通常の残業代は1,500円/時間、深夜残業は1,800円/時間となります。
Q. 介護記録を勤務時間外に書いたら残業扱いになりますか?
A. はい、なります。介護記録の作成は業務の一部であり、勤務時間外に行った場合は労働時間として扱われるべきです。厚生労働省のガイドラインでは、使用者の指揮命令下にある時間はすべて労働時間に該当するとされています。「自主的にやっている」と思っていても、業務上必要な記録であれば残業として申告できます。
Q. 始業前の申し送りは残業代の対象ですか?
A. はい、対象です。業務に必要な引き継ぎ・申し送りのために始業時刻より早く出勤する場合、その時間は労働時間に含まれます。たとえ明確な命令がなくても、慣行として早出が求められている場合は労働時間として認められる可能性が高いです。
Q. 残業が少ない介護施設はどのように探せばいいですか?
A. 求人票で「月平均残業時間」「固定残業代の有無」「年間休日数」を確認するのが基本です。ICT化が進んでいる施設、デイサービスなどの通所型施設は残業が少ない傾向にあります。介護職専門の転職エージェントを活用すると、求人票に載っていない残業の実態情報を得やすくなります。面接時に「残業の主な原因」「記録の方法」を質問することも有効です。
Q. 夜勤明けの残業はどのように扱われますか?
A. 夜勤の所定勤務時間を超えて働いた場合は残業となり、割増賃金の対象です。例えば、16時間夜勤で翌朝9時が勤務終了時刻の場合、9時以降も引き継ぎやケアで残った時間は残業として扱われます。深夜帯(22時〜5時)にかかる残業は50%以上の割増率が適用されます。
参考文献・出典
- [1]令和6年度 介護労働実態調査 結果の概要について- 公益財団法人介護労働安定センター
全国21,325人の介護労働者を対象とした調査。1週間の残業時間、職位別・職種別の残業データ、不払い残業の実態等を掲載。
- [2]
- [3]
- [4]
まとめ|介護職の残業実態を正しく理解し、自分に合った職場を選ぼう
介護職の残業時間は週平均1.7時間(月約6.8時間)と、全産業平均の月12.7時間を大きく下回っており、データ上は「残業が少ない業種」です。しかし、約25%がサービス残業を経験しており、申告されない「見えない残業」が存在する点には注意が必要です。
本記事のポイントを整理すると、以下のとおりです。
- 平均残業時間:週1.7時間(月約6.8時間)で全産業平均より少ない。ただし職位・施設形態で差がある
- サービス残業:約4人に1人が経験。記録業務・申し送り・会議が主な原因
- 施設別の違い:特養は残業が多め、デイサービスは少なめ。ICT導入施設は記録残業が減少傾向
- 残業を減らすコツ:記録の効率化、タイムマネジメント、残業時間の正確な記録と申告
- サービス残業の対処:証拠を残し、上司・労働組合・労働基準監督署に段階的に相談
- 転職時の確認:平均残業時間、固定残業代の有無、ICT導入状況、年間休日数をチェック
残業の多さに悩んでいる方は、まず自分の残業時間を正確に記録することから始めましょう。そのうえで、職場内での改善を働きかけるか、より労働環境の良い施設への転職を検討することが大切です。
介護職は社会的意義の大きい仕事であり、適切な労働環境で長く働き続けられる職場を選ぶことが、あなた自身にとっても利用者にとってもプラスになります。
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介護記録の書き方完全ガイド|新人が押さえるべき5つのポイントと例文集
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