介護職が知っておくべき認知症ケアの基礎知識|4つの種類・症状別対応・コミュニケーション術
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介護職が知っておくべき認知症ケアの基礎知識|4つの種類・症状別対応・コミュニケーション術

介護職向けに認知症ケアの基礎知識を体系的に解説。アルツハイマー型・レビー小体型・血管性・前頭側頭型の4種類の特徴、中核症状とBPSDの違い、現場で使えるコミュニケーション5つのコツ、やってはいけないNG対応まで。未経験者からベテランまで役立つ実践ガイドです。

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この記事のポイント

認知症は脳の疾患で、4大タイプはアルツハイマー型(全体の約67%)、血管性(約20%)、レビー小体型(約4%)、前頭側頭型(約1%)。介護職が押さえるべきは「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状)」の違いです。中核症状(記憶障害・見当識障害)は全員に現れ、BPSDは環境やケアで改善可能。対応の基本は「否定しない・急かさない・叱らない」の3原則。認知症の方の言動には必ず理由があり、その理由を理解しようとする姿勢が質の高いケアにつながります。

目次

介護の仕事をしていれば、認知症の利用者と接する機会は必ずあります。厚生労働省によると、2025年時点で認知症の高齢者は約730万人。65歳以上の約5人に1人が認知症であり、介護施設の利用者の大半が何らかの認知症を有しています。

「何度も同じことを聞かれてイライラする」「急に怒り出す利用者にどう対応すればいい?」「幻覚を訴えられたときの正しい反応は?」——認知症ケアに悩む介護職は非常に多く、「認知症ケアが大変」は離職理由の一つにもなっています。

しかし、認知症の種類と症状の特徴を理解し、正しい対応法を知っていれば、ケアの質は劇的に変わります。この記事では、介護の現場で働く方向けに、認知症の4つの種類と特徴、中核症状とBPSDの違い、症状別の具体的な対応法、コミュニケーションのコツ、やってはいけないNG対応をわかりやすく解説します。

認知症の4つの主要タイプ|特徴と症状の違い

認知症の4つの種類を表すイメージイラスト

認知症は単一の病気ではなく、脳の障害によって認知機能が低下する症状の総称です。主な4タイプとそれぞれの特徴を理解しておくことが、適切なケアの第一歩です。

種類割合主な症状進行パターン
アルツハイマー型約60%記憶障害(新しいことを覚えられない)、見当識障害(時間・場所がわからなくなる)ゆるやかに進行
レビー小体型約20%幻視(見えないものが見える)、パーキンソン症状(手足の震え・動作緩慢)、認知機能の変動日によって波がある
血管性約15%脳梗塞・脳出血が原因。障害部位によって症状が異なる。感情のコントロールが難しくなる段階的に悪化(階段状)
前頭側頭型約5%人格変化、社会性の低下、同じ行動の繰り返し(常同行動)、言語機能の低下比較的若い年代(65歳未満)に多い

アルツハイマー型認知症

最も多い認知症で、脳全体が徐々に萎縮します。初期は「さっき言ったことを忘れる」「物をどこに置いたか思い出せない」といった近時記憶障害が目立ちます。進行すると場所や時間がわからなくなる見当識障害、判断力・理解力の低下が顕著になり、日常生活全般に支援が必要になります。

レビー小体型認知症

はっきりとした幻視(「部屋に知らない人がいる」「虫が壁を這っている」)が大きな特徴です。パーキンソン病のような症状(手足の震え、小刻み歩行、転倒しやすさ)も伴います。注意すべきは認知機能に波がある点で、調子の良い日と悪い日の差が大きく、ケアする側は戸惑いやすいです。

血管性認知症

脳梗塞や脳出血など、脳の血管障害が原因で発症します。障害を受けた部位によって症状が異なるため、「まだら認知症」と呼ばれることもあります。記憶力は比較的保たれるが判断力が低下している、といったアンバランスな症状が特徴です。感情失禁(突然泣く・笑う)が見られることもあります。

前頭側頭型認知症

前頭葉・側頭葉の萎縮が原因で、人格の変化が最大の特徴です。以前は穏やかだった人が急に怒りっぽくなったり、社会的なルールを守れなくなったりします。同じ時間に同じ行動を繰り返す「常同行動」や、万引きなどの反社会的行動が現れることも。記憶障害はアルツハイマー型ほど目立たず、初期は認知症と気づかれにくい場合があります。65歳未満の若年層に比較的多い点も特徴です。

中核症状とBPSD(行動・心理症状)の違い

認知症の症状は大きく2つに分類されます。この分類を理解することが、ケアの方向性を正しく判断する基盤になります。

中核症状(脳の障害で直接起きる症状)

脳の神経細胞が壊れることで直接起きる症状で、認知症の方全員に現れます。治療やケアで完全に消すことは難しいですが、進行を遅らせることは可能です。

  • 記憶障害:新しい出来事を覚えられない。「さっきご飯を食べた」ことを忘れる
  • 見当識障害:時間・場所・人がわからなくなる。「今日は何月何日?」「ここはどこ?」「あなたは誰?」
  • 実行機能障害:計画を立てて行動できなくなる。料理の手順がわからない、お金の計算ができない
  • 失語:言葉が出てこない、言い間違える。「あれ」「それ」が増える
  • 失行:身体は動くのに、やり方がわからない。服の着方がわからない
  • 失認:見えているのに認識できない。鏡に映った自分がわからない

BPSD(行動・心理症状)

中核症状に加え、本人の性格・生活歴・環境・人間関係などが影響して現れる症状です。環境やケアの工夫で改善・軽減できるのが大きな特徴で、介護職の対応力が問われる部分です。

  • 行動症状:徘徊、暴言・暴力、介護拒否、異食、不潔行為、昼夜逆転
  • 心理症状:不安、抑うつ、妄想(物盗られ妄想など)、幻覚、焦燥、無気力

重要なポイント:BPSDには必ず「原因」があります。「お腹が空いている」「トイレに行きたい」「寒い」「不安」「退屈」——本人がうまく表現できない不快感や欲求が、徘徊や暴言という形で現れていることがほとんどです。「問題行動」と捉えるのではなく、「本人のSOS」として原因を探る視点が認知症ケアの核心です。

現場で使える認知症コミュニケーション術|5つの基本

認知症の方と目線を合わせてコミュニケーションを取る介護職員のイメージイラスト

認知症の方とのコミュニケーションは難しいと感じるかもしれませんが、基本を押さえるだけで関係性が大きく変わります。

基本1:目線を合わせ、穏やかに話す

認知症の方は視野が狭くなっていることが多いため、正面から、目線の高さを合わせて話しかけましょう。車椅子の方にはしゃがんで目線を合わせます。後ろから突然声をかけると驚かせてしまい、パニックの原因になります。声のトーンは穏やかに、ゆっくりはっきりと。

基本2:短く、シンプルな言葉で伝える

「〇〇して、△△したら、××してください」のような複数の指示を同時に出すと混乱します。1回に1つの内容を、簡潔に伝えましょう。「お食事ですよ」「椅子に座りましょう」のように、短い文で具体的に。選択肢を出すときも「AとBどちらがいいですか?」のように2択までが理想です。

基本3:否定しない・訂正しない

「さっき食べたでしょ!」「違うでしょ!」と否定すると、本人は自尊心を傷つけられたと感じ、不安や怒りが増します。事実が違っていても、まずは「そうですね」と受け止めてから対応を考えましょう。幻視(レビー小体型)の場合も「何もいませんよ」と否定せず、「怖かったですね。一緒に見に行きましょう」と寄り添うのが基本です。

基本4:過去の記憶を活かす

認知症では新しい記憶(近時記憶)は失われやすいですが、昔の記憶(遠隔記憶)は比較的保たれます。子どもの頃の話、仕事の話、故郷の話など、過去の記憶に触れる会話は本人の安心感と自信につながります。「回想法」として認知症ケアの手法にもなっており、レクリエーションにも活用できます。

基本5:非言語コミュニケーションを大切にする

認知症が進行すると言葉の理解が難しくなりますが、表情・声のトーン・ボディタッチは最後まで伝わります。穏やかな笑顔、温かい手の温もり、ゆっくりした動作は、言葉以上に安心感を与えます。手を握る、肩に手を添える、目を見てうなずくなど、言葉に頼らないコミュニケーションを意識しましょう。

やってはいけないNG対応|認知症ケアの「3ない」

認知症ケアの基本は「否定しない」「急かさない」「叱らない」の3つです。これらに違反すると、BPSDが悪化し、利用者と介護者の双方が苦しむ結果になります。

NG1:否定する・訂正する

  • NG:「さっき食べたでしょ!」「何回言ったらわかるの?」「誰もいませんよ!」
  • 影響:自尊心が傷つき、不安・怒り・引きこもりにつながる
  • 正しい対応:「そうですね。では一緒に確認しましょう」と受け止めてから対応

NG2:急かす・焦らせる

  • NG:「早くしてください」「もう時間がないんです」「いつまでかかるの?」
  • 影響:焦りからパニックになり、できることもできなくなる。介護拒否につながることも
  • 正しい対応:本人のペースに合わせる。待つことも立派なケア

NG3:叱る・怒る

  • NG:「ダメでしょ!」「なんでそんなことするの!」「いい加減にして!」
  • 影響:恐怖心が刻まれ、特定の介護者を避けるようになる。暴言・暴力の引き金にも
  • 正しい対応:BPSDには必ず原因がある。「なぜこの行動をしているのか」を考える

その他のNG行動

  • 無視・放置:「どうせわからないから」と無視するのは人権侵害。認知症でも感情は最後まで残っている
  • 子ども扱い:「よくできまちたね〜」など、赤ちゃん言葉は自尊心を傷つける。大人として敬意を持って接する
  • 行動の制限:「危ないから座っていて」と安易に行動を制限する(身体拘束に該当する可能性も)

症状別の対応法|よくある場面と具体的な声かけ

現場でよく遭遇する場面ごとの対応法を紹介します。

場面NG対応適切な対応
「ご飯まだ?」(食後すぐ)「さっき食べたでしょ!」「そうですね、もうすぐ準備しますね」と受け止め、お茶や軽い作業で気をそらす
「帰りたい」(帰宅願望)「ここがあなたの家です」と否定「お家が恋しいですよね」と共感し、一緒に散歩や窓の外を見るなど気分転換を図る
「財布を盗まれた!」(物盗られ妄想)「誰も盗んでいません!」と否定「それは大変ですね。一緒に探しましょう」と寄り添い、探す動作で安心感を与える
見えないものを怖がる(幻視)「何もいませんよ!」と否定「怖かったですね」と受け止め、部屋の照明を明るくする。近づいたり触れたりすると幻視が消えることも
暴言・暴力「やめてください!」と大声で制止少し距離を取り、落ち着くのを待つ。原因(痛み、不安、環境の変化)を探る。記録して多職種で共有
徘徊「座っていてください!」と行動制限安全な範囲で一緒に歩く。原因(トイレ、退屈、不安)を探る。見守りセンサーの活用も検討
介護拒否「やらないとダメですよ」と無理強い時間を置いて再度声かけ。担当者を変える、声かけの方法を変えるなど工夫。本人の生活習慣を確認

よくある質問

Q. 認知症ケアの資格はありますか?
A. はい。代表的なものに「認知症介護基礎研修」(2024年4月から無資格者は受講義務化、約6時間)、「認知症介護実践者研修」(現場リーダー向け)、「認知症ケア専門士」(民間資格、5年の実務経験が要件)があります。初任者研修以上の資格があれば基礎研修は免除されます。
Q. 認知症の方に何度も同じことを聞かれてイライラします
A. とても自然な感情です。しかし、認知症の方は「聞いたこと自体を忘れている」ため、本人にとっては毎回が初めての質問です。「さっきも言ったでしょ」は最もNGな対応。何度でも初めて聞かれたように穏やかに答えるか、話題を自然に変えましょう。ストレスを感じたら、同僚と交代して気持ちをリセットするのも大切です。
Q. 未経験でも認知症ケアはできますか?
A. はい、できます。認知症ケアの基本は「否定しない・急かさない・叱らない」というシンプルな原則です。特別な技術よりも、相手を一人の人間として尊重する姿勢が最も重要。入職後の研修やOJTで段階的に学べます。「未経験から介護職を始める完全ガイド」も参考にしてください。
Q. 暴言や暴力を受けたらどうすればいいですか?
A. まず自分の安全を確保し、少し距離を取って落ち着くのを待ちましょう。暴言・暴力はBPSDの一つで、痛み・不安・環境変化などの原因があります。1人で抱え込まず、必ず上司に報告し、チームで対応策を検討してください。厚労省の「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」も参考にしてください。当サイトの「メンタルヘルスガイド」も合わせてご覧ください。

参考文献・出典

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介護の仕事を嫌いになる前に。施設タイプや転職サービスの選び方を、6つの質問と45秒の動画で整理できます。

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まとめ|認知症ケアの基本は「その人を知ること」

認知症ケアは特別なスキルではなく、相手を一人の人間として尊重し、理解しようとする姿勢が最も大切です。

この記事のポイント:

  • 認知症は4タイプ。アルツハイマー型(約60%)が最多で、レビー小体型は幻視が特徴
  • 症状は中核症状(全員に現れる)とBPSD(環境やケアで改善可能)に分かれる
  • BPSDは「問題行動」ではなく「本人のSOS」。原因を探る視点が大切
  • コミュニケーションの基本:目線を合わせ、短い言葉で、否定せず、過去の記憶を活かす
  • NG対応は「否定しない」「急かさない」「叱らない」の3つ
  • 暴言・暴力を受けたら1人で抱え込まず、チームで対応する

認知症の方のケアは大変なことも多いですが、適切な知識と対応があれば、利用者の穏やかな笑顔を引き出すことができます。「未経験から介護職を始める完全ガイド」「介護記録の書き方ガイド」も合わせてご活用ください。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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