認知症の徘徊・ひとり歩きへの対応|介護職が施設で行う背景のひもとき・離設防止・尊厳を守るリスク管理
介護職向け

認知症の徘徊・ひとり歩きへの対応|介護職が施設で行う背景のひもとき・離設防止・尊厳を守るリスク管理

施設で介護職が認知症の徘徊(ひとり歩き)にどう対応するか。不安・トイレ・痛み・せん妄など背景のひもとき、力で止めず付き添うケア、離設防止と発見の備え、環境調整、身体拘束を避ける視点までを一次資料で解説。

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この記事のポイント

施設で認知症の人の徘徊(ひとり歩き)に向き合うとき、介護職がまず行うのは「止めること」ではなく「なぜ歩くのか」をひもとくことです。歩き回る背景には不安、トイレに行きたい、痛みやせん妄、退屈、昔の習慣や役割の記憶など必ず理由があります。力で制止せず安全な範囲で付き添い、トイレ誘導や声かけで満たされない欲求に応えるのが基本対応です。同時に、離設(無断外出)を防ぐ環境調整と発見の備え、転倒・脱水への配慮、記録の多職種共有を行い、車椅子やベッドへの拘束といった身体拘束に頼らないケアを組み立てます。

施設で働いていると、フロアを落ち着きなく歩き続ける利用者、出入口の前で「家に帰る」と訴える利用者、夕方になるとそわそわして外へ向かおうとする利用者に、ほぼ毎日のように出会います。こうした歩き回る行動は長く「徘徊」と呼ばれてきましたが、近年は「あてもなくさまよう」という否定的な響きを避け、「ひとり歩き」と言い換える自治体や国の動きが広がっています。呼び方の変化は単なる言葉の問題ではなく、行動を「問題行動」として封じ込める発想から、その人なりの理由を理解して支える発想への転換を意味します。

本記事は、施設で介護職が認知症の人のひとり歩きにどう向き合うかに絞って整理します。家庭での見守りやGPS活用ではなく、フロアという生活の場で、行動の背景をひもとき、安全と尊厳を両立させながら、離設や転倒のリスクを管理する実務の手順を、厚生労働省や警察庁などの一次資料に沿って解説します。

「徘徊」から「ひとり歩き」へ、呼び方が変わってきた理由

「徘徊」は医学・介護の現場で長く使われてきた用語ですが、辞書的には「目的もなくうろうろ歩き回ること」を指し、本人の中にある理由を見えなくしてしまう言葉だという指摘があります。実際には、認知症の人が歩き回る行動には、本人なりの目的や感情がほぼ必ず存在します。この点を踏まえ、大府市のように行政文書や事業名で「徘徊」を使わないことを宣言する自治体が増え、厚生労働省も文書や口頭で「ひとり歩き」を用いるようになっています。

呼称をめぐる議論に唯一の正解はありませんが、現場で大切なのは「あてもなく歩いている」と決めつけず、その人が何を求めて歩いているのかを観察する姿勢です。本記事では検索でなじみのある「徘徊」という語も併記しますが、ケアの実践としては「ひとり歩きには理由がある」という前提に立ちます。

中核症状が土台になっている

歩き回る行動の土台には、認知症の中核症状があります。記憶障害によって「さっき職員と話したこと」「今いる場所がどこか」を保持できず、見当識障害によって時間・場所・自分の状況の理解があいまいになります。その結果、「ここは自分の家ではない」「子どもを迎えに行かなければ」といった切実な感覚が生まれ、出口を探して歩き始めることがあります。本人にとっては理由のある行動であり、外から見て「意味のない徘徊」に見えるのは、その理由がこちらに伝わっていないだけだと捉えると、対応の糸口が見えてきます。

歩き出す「きっかけ」をひもとく7つの視点

中核症状という土台の上で、実際に歩き出す引き金(きっかけ)は人それぞれです。厚生労働省の身体拘束廃止・防止の手引きでも、落ち着かない行動には必ず理由があり、その理由を探って対応することが代替ケアの出発点だとされています。現場でアセスメントするときの視点を整理します。

1. 不安・落ち着かなさ

見慣れない環境、知らない人に囲まれている、家族に会いたいといった不安が、安心できる場所を探す行動につながります。手引きが紹介する実践事例では、家族に会いたい気持ちからひとり歩きする方に、実際に家族に会ってもらうことで落ち着いたケースが挙げられています。

2. トイレに行きたい

尿意や便意を言葉でうまく伝えられず、トイレの場所もわからないために、そわそわと歩き回ることがあります。歩き始める時間帯と排泄リズムが重なっていないか、記録で確認する価値があります。トイレ誘導がそのまま「ひとり歩き」への対応になる場合は少なくありません。

3. 痛み・身体の不快

腰や関節の痛み、便秘、空腹、暑さ寒さといった身体的な不快も、じっとしていられない原因になります。認知症が進むと痛みを言葉で訴えにくくなるため、表情・動作・歩き方の変化から痛みのサインを読み取る観察が欠かせません。

4. せん妄

脱水、感染(尿路感染など)、便秘、薬剤、環境の変化などをきっかけに、急に落ち着きをなくし動き回るのは、認知症そのものではなくせん妄の可能性があります。せん妄は数時間から数日で変動し、誘発因子を取り除くと改善します。普段と様子が明らかに違う、急に始まった、という場合は看護師と共有し、身体の状態を確認します。

5. 退屈・役割の喪失

一日中することがなく、座って過ごすだけの時間が長いと、エネルギーの行き場として歩く行動が増えることがあります。生活が不活発なまま放置されると、かえって心身が落ちていきます。

6. 昔の習慣・役割の記憶

「会社に行く時間だ」「子どもを迎えに行く」「夕飯の買い物に行かなくては」など、その人が長年果たしてきた役割の記憶が、夕方など特定の時間に行動として表れることがあります(夕暮れ症候群と重なる場合もあります)。

7. 環境のストレス

騒がしさ、まぶしさ、人の出入りの多さ、他の利用者とのトラブルなど、環境の刺激そのものが落ち着かなさを生み、その場から離れたい気持ちにつながります。

ひとり歩きの場面で介護職がとる基本対応

背景の見立てができたら、実際の関わり方です。広く共有されている基本原則を、施設の現場で再現できる形に手順化します。

ステップ1:力で止めない・行く手をふさがない

歩こうとする人の前に立ちふさがる、腕をつかんで引き戻すといった対応は、本人に「邪魔をされた」という感情を生み、抵抗や興奮を強めます。まずは正面ではなく斜め前や横から近づき、おだやかな声で名前を呼び、表情を見せながら関わります。

ステップ2:付き添い、行き先や気持ちを聞く

安全が確保できる範囲なら、止めずに一緒に歩きます。歩きながら「どちらに行かれますか」「何か気がかりなことがありますか」と尋ね、本人の言葉に耳を傾けます。「家に帰る」という訴えを頭から否定せず、「そうなんですね、心配ですね」と気持ちを受け止めることで、興奮が和らぐことがあります。

ステップ3:満たされていない欲求に応える

聞き取りやアセスメントから見えた背景に応じて、トイレ誘導、水分や軽食の提供、痛みの確認と看護師への相談、静かな場所への移動などを行います。歩く行動そのものを止めるのではなく、歩かせている理由に対応するのがポイントです。

ステップ4:歩く行動を否定せず活かす

歩くこと自体は、運動機能やリズムの維持にとって悪いことばかりではありません。中庭の散歩に職員が付き添う、フロア内に安全に歩ける回遊できる動線をつくるなど、「危ないから歩かせない」ではなく「安全に歩ける環境で歩いてもらう」発想に切り替えます。手引きの事例でも、リハビリ職が歩行訓練や安全に歩ける環境設定、歩行評価を行うことで、介護職が自信を持って見守れるようになったと紹介されています。

ステップ5:その場で終わらせず記録に残す

いつ、どんな状況で歩き始め、何をしたら落ち着いたかを記録します。一度の対応で終わりにせず、パターンを蓄積することで、次に同じ場面が来る前に先回りした対応(予防)ができるようになります。

離設(無断外出)を防ぐ・見つける備え

フロア内のひとり歩きと、施設の外に出てしまう離設(無断外出)は、リスクの大きさが異なります。離設は転倒や交通事故、夏場の熱中症、冬場の低体温など命に関わる事態に直結します。警察庁の「令和5年における行方不明者の状況」によると、認知症またはその疑いによる行方不明者は19,039人で、原因・動機別では疾病関係の中で最も多くなっています。施設で預かっている以上、職員には離設を防ぎ、起きたときに速やかに見つける備えが求められます。

防ぐ側の備え

出入口の見守り体制、来客や納品で扉が開く時間帯の注意、離設のリスクが高い利用者の情報共有が基本です。見守りセンサーやカメラ、出入口の通知装置は、人手を補う有効なツールですが、注意点があります。手引きでは、離床センサーへの依存が「安全優先で歩行を危険視するケア」につながりかねないと指摘されています。機器はあくまで人の見守りを補助するものであり、機器に任せて関わりが減れば本末転倒です。

見つける側の備え

離設が起きてしまったときに備え、利用者の顔写真・当日の服装・身体的特徴・立ち寄りそうな場所(昔住んでいた地域、よく行った店など)を平時から把握し、いざというときの連絡フロー(家族・警察・近隣)を決めておきます。地域全体での発見の仕組みとして、多くの自治体が「認知症の見守り・SOSネットワーク」を整備しており、厚生労働省も市区町村・地域による取組事例集をまとめています。施設としても、地域包括支援センターや警察と平時からつながっておくことが、緊急時の初動を早めます。

フロア内のひとり歩きと離設リスクの対応の違い

場面主なリスク介護職の重点
フロア内のひとり歩き転倒・疲労・他利用者とのトラブル背景のひもとき、付き添い、欲求への対応
出入口に近づく・出ようとする離設の前兆声かけで気をそらす、出入口の見守り強化、要因の記録
離設(実際に外に出た)事故・行方不明・命の危険速やかな捜索開始、連絡フロー発動、地域・警察連携

歩き回る人が安心できる環境調整

個別の関わりと並行して、フロアの環境そのものを整えることで、落ち着かなさやひとり歩きを減らせます。手引きでも、行動の原因を取り除く環境整備が代替ケアの柱とされています。

サインと動線の工夫

  • トイレの位置をわかりやすく:トイレのドアに大きな表示やわかりやすいサイン(絵や色)をつけ、居室からトイレまでの動線に目印を置く。トイレが見つけられず歩き回るケースを減らせます。
  • 居室を「自分の部屋」とわかるように:ドアに本人の名前や昔の写真、なじみの品を置き、自分の居場所を見つけやすくする。
  • 出口を強調しすぎない:出口に向かう動機が強い人には、出入口を直接視界に入りにくくする配置の工夫が役立つ場合があります。ただし、自分の意思で開けられない居室への隔離は身体拘束にあたるため、扉を施錠して閉じ込めるのとは区別します。

過ごし方と刺激の調整

  • 安全に歩ける場所をつくる:つまずく家具や段差をなくし、フロア内に回遊できる動線や、付き添いで歩ける中庭・廊下を確保する。
  • 役割と活動を用意する:洗濯物たたみ、テーブル拭き、レクなど、その人が役割を感じられる活動を用意し、退屈による歩き回りを減らす。
  • 生活リズムを整える:日中に活動して適度に疲れ、夜に眠れるリズムをつくると、夕方以降の不穏やひとり歩きが和らぐことがあります。
  • 刺激を減らす:騒音やまぶしさ、人の出入りの多さを抑え、落ち着ける居場所を用意する。

見落としがちなリスクと多職種共有

転倒に備える

歩く時間が長い人ほど、転倒のリスクは高まります。歩き回りを無理に止めるのではなく、滑りにくい床、手すり、つまずく物の撤去、本人に合った靴や歩行補助具の見直しで、転んでも大事に至らない環境をつくります。ふらつきや歩行の変化に気づいたら、リハビリ職や看護師に相談し、歩行評価につなげます。

脱水・熱中症を防ぐ

歩き続けると汗をかき、体力を消耗します。とくに夏場は脱水・熱中症のリスクが高く、本人は喉の渇きを訴えないことも多いため、こまめな水分補給の声かけと、室温・水分摂取量の記録が重要です。離設して屋外で長時間過ごすと命に関わるため、外気温が高い時期は出入口の見守りをいっそう手厚くします。

事実と解釈を分けて記録する

「徘徊が多い」「落ち着かない」といった解釈だけを書くのではなく、いつ・どこで・どんな様子で歩き始め、直前に何があり、何をしたら落ち着いたか、という事実を具体的に記録します。事実が積み重なると、トイレ・空腹・特定の時間帯など引き金のパターンが見え、予防的な対応につながります。

多職種で見立てを共有する

歩き回る背景には、痛み、薬の影響、せん妄、排泄など、介護職だけでは判断しきれない要因が含まれます。看護師、リハビリ職、医師、ケアマネジャーと記録を共有し、カンファレンスで「なぜ歩くのか」「どう支えるか」を一緒に検討することで、個人の経験や勘に頼らないケアになります。手引きも、組織全体・多職種でのアセスメントと代替策の検討を重視しています。

身体拘束に頼らず尊厳を守る視点

ひとり歩きや離設のリスクに直面すると、「転倒したら」「外に出てしまったら」という不安から、安全を優先して動きを制限したくなる場面があります。しかし、認知症基本法(令和6年1月施行)は「認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすこと」を理念に掲げており、安全のためという理由であっても、不当に身体の自由を奪うことは許されません。

これらは身体拘束にあたる

厚生労働省が示す身体拘束の具体例には、ひとり歩きに関連するものが含まれます。代表的なものとして、歩き回らないように車椅子や椅子、ベッドに体や手足をひもなどで縛ること、立ち上がれないようにY字型の抑制帯や腰ベルト、車椅子テーブルを使うこと、立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げる椅子を使うこと、自分の意思で開けられない居室などに隔離することなどが挙げられます。さらに、行動を落ち着かせるために向精神薬を過剰に使うことも身体拘束に含まれます。「ちょっと待って」と動きを言葉で縛るスピーチロックも、拘束の一種として戒められています。

例外が認められるのは3要件をすべて満たすときだけ

身体拘束は原則禁止であり、例外的に認められるのは「切迫性」「非代替性」「一時性」の3要件をすべて満たす緊急やむを得ない場合に限られます。切迫性は本人や他の利用者の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと、非代替性は身体拘束以外に代わる方法がないこと、一時性は一時的な対応にとどまることを指します。これらを満たすかをチームで慎重に確認し、態様・時間・理由を記録することが義務づけられています。「歩くと危ないから」という理由だけで安易に動きを制限することは、この例外には当たりません。

「新しい認知症観」と「見守り」の両義性

令和6年施行の認知症基本法のもとで策定された認知症施策推進基本計画は、「新しい認知症観」を打ち出しています。これは、認知症になったら何もできなくなるのではなく、なってからも一人ひとりにできること・やりたいことがあり、希望を持って自分らしく暮らし続けられるという考え方です。歩くという行為も本人にとっては意思や目的のある行動であり、頭ごなしに止める対象ではないという視点につながります。あわせて基本計画は、「見守り」が本人からは「自由な暮らしを阻むもの」として体験される場合があるとも指摘しています。介護職にとっての見守りは安全確保の手段ですが、本人には監視と受け取られかねません。センサーやカメラで「見張る」発想に偏らず、安心して歩ける環境と歩く理由に応える関わりを土台に据えることが、尊厳ある自立生活の支援につながります。

めざすのは「拘束しない代替ケア」

手引きが繰り返し示すのは、まず身体拘束を必要としないケアを追求するという姿勢です。落ち着かない行動には原因があり、その原因を取り除けば拘束は不要になることが多い。組織のトップが「拘束しない」と決意し、多職種でアセスメントと代替策を検討する。本記事で述べてきた背景のひもとき、付き添い、環境調整、見守りの工夫は、すべてこの「拘束しないケア」を成り立たせるための具体策です。

Q. 利用者が出入口から出て行こうとします。止めてもいいですか。

無理に力で止めるのは避けます。まずは斜めや横から近づいておだやかに声をかけ、行き先や気持ちを聞きながら、別の関心に注意を向ける(飲み物を勧める、一緒に座る、用事を頼むなど)方法を試します。出入口に近づく行動が頻繁な場合は、リスクの高い利用者として職員間で情報を共有し、出入口の見守りを強化します。実際に外に出てしまった場合は、ためらわず捜索を開始し、あらかじめ決めた連絡フローを発動します。

Q. 一日中歩き回っていて、ほかの業務が回りません。どうすれば。

歩く行動の引き金(トイレ・空腹・痛み・退屈・特定の時間帯など)を記録から探り、先回りした対応で歩く回数を減らすのが根本的な解決です。一人で抱え込まず、カンファレンスで多職種に相談し、役割のある活動や安全に歩ける動線の整備など、チームで負担を分散させる工夫を検討します。

Q. 安全のために少しの間だけ車椅子のベルトで固定するのは許されますか。

「歩くと危ないから」という理由だけで体を固定することは身体拘束にあたり、原則として認められません。例外が許されるのは切迫性・非代替性・一時性の3要件をすべて満たす緊急やむを得ない場合に限られ、チームでの確認と記録が必須です。まずは拘束しない代替策を尽くすことが求められます。

Q. 「徘徊」と「ひとり歩き」、どちらの言葉を使うべきですか。

近年は「あてもなくさまよう」という否定的な響きを避け、「ひとり歩き」と言い換える自治体や国の動きが広がっています。記録や申し送りでどの言葉を使うにせよ、大切なのは「あてもなく歩いている」と決めつけず、その人なりの理由を探る姿勢です。施設としての表記ルールがあればそれに従いましょう。

Q. 見守りセンサーやカメラを入れれば安心ですか。

機器は人手を補う有効なツールですが、機器に頼りきって人の関わりが減るのは逆効果です。手引きでも離床センサーへの過度な依存が、歩行を危険視するケアにつながりかねないと指摘されています。機器はあくまで見守りを補助するものと位置づけ、背景のひもときや声かけといった人による関わりと組み合わせて使います。

Q. 夕方になると決まってそわそわして歩き出します。なぜですか。

夕方から夜にかけて落ち着かなくなる「夕暮れ症候群」と重なっていることがあります。日が傾く時間帯の不安や、昔の生活で夕方に担っていた役割(夕食の支度、子どもの迎えなど)の記憶が引き金になりやすいとされます。日中に活動して生活リズムを整える、夕方に安心できる関わりや役割を用意する、照明を明るくして不安を和らげるといった対応が役立ちます。毎日同じ時間帯に起きるなら、その時間の前に先回りした関わりを計画すると、ひとり歩きや不穏が和らぐことがあります。

参考文献・出典

まとめ

認知症の人の徘徊・ひとり歩きへの対応で、施設の介護職にまず求められるのは、行動を「問題」として封じ込めることではなく、「なぜ歩くのか」をひもとくことです。不安、トイレ、痛みやせん妄、退屈、昔の習慣や役割の記憶など、歩き出すきっかけには必ず理由があります。力で止めず安全な範囲で付き添い、満たされていない欲求に応える。これが対応の出発点です。

そのうえで、離設という命に関わるリスクには、防ぐ備えと見つける備えの両面で臨み、地域や警察とのつながりも平時から整えておきます。環境調整で落ち着ける場と安全に歩ける動線をつくり、転倒・脱水に配慮し、事実と解釈を分けた記録を多職種で共有する。そして、安全を理由にした安易な身体拘束は、認知症基本法が掲げる尊厳の保持に反する原則禁止の行為であり、まずは拘束しない代替ケアを尽くすことが介護職の専門性です。歩く行動の背景に丁寧に向き合う日々の積み重ねが、本人の尊厳と安全を両立させるケアにつながります。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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