
診療放射線技師からケアマネジャーになる方法|2027年度受験資格拡大・実務経験3年で目指すキャリア設計
2027年度から診療放射線技師がケアマネ受験対象に追加され、実務経験も5→3年に短縮見込み。年収549万円から429万円への変化、受験準備の具体ステップ、医療機器管理スキルが活きる現場まで、転職判断に必要な公的データを公開。
この記事のポイント
診療放射線技師は、2027年度の介護保険制度改正案でケアマネジャー受験対象資格に追加される見込みです。実務経験は現行5年から3年へ短縮される方向で議論されており、医療機器管理や撮影業務で培った医療知識を在宅医療連携に活かせる新たなキャリアが拓けます。ただし平均年収は549.8万円から429.6万円へ約120万円下がる可能性があり、年収維持には施設ケアマネや主任ケアマネへの計画的なキャリア設計が必要です。
目次
診療放射線技師として10年、20年と画像診断や放射線治療の最前線で働いてきた方の中には、「人生の後半戦をどう設計しよう」「もう少し患者の人生に寄り添う仕事がしたい」と感じる方が増えています。在宅医療や地域包括ケアが拡大する中で、検査室の中で完結していた業務だけでは見えなかった「生活全体を支える支援」への関心が高まっているからです。
2025年10月27日に開催された社会保障審議会・介護保険部会(第127回)では、ケアマネジャー(介護支援専門員)の受験資格に診療放射線技師を加える方針が、厚生労働省から正式に提案されました。同時に必要な実務経験も現行の5年から3年に短縮する案が示されており、これまで「医療系の職種なのに、なぜか受験対象から外されていた」診療放射線技師にとって、ケアマネジャーへの新たなキャリアパスが現実のものになろうとしています。
本記事では、なぜ診療放射線技師がケアマネジャー受験対象に加わるのか、その背景にある医療と介護の連携強化の流れ、実務経験3年に短縮された場合の具体的な受験スケジュール、勉強法、合格後の年収変化、医療機器管理スキルが活きる職場の選び方まで、公的データに基づいて整理します。
2027年度のケアマネ受験資格改正で診療放射線技師に何が起きるのか
2025年10月27日、社会保障審議会の介護保険部会(第127回)に提出された資料「地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」で、厚生労働省は介護支援専門員実務研修受講試験の受験要件を抜本的に見直す案を提示しました。改正の柱は3つあり、いずれも診療放射線技師にとって大きな意味を持つ内容です。
① 受験対象資格に5職種が追加される
現在のケアマネジャー受験対象は、医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士、管理栄養士、精神保健福祉士など、保健・医療・福祉の法定資格保有者に限定されています。生活相談員(特養)、支援相談員(老健)、相談支援専門員、主任相談支援員といった一定の相談援助業務従事者も対象です。
厚生労働省の改革案では、ここに以下の5資格を新たに加える方針が示されました。
- 診療放射線技師
- 臨床検査技師
- 臨床工学技士
- 救急救命士
- 公認心理師
これら5資格に共通するのは、医療の高度化と専門分化に伴って役割が拡大してきた職種である一方、これまでケアマネ受験資格として明示されていなかった点です。在宅医療や地域包括ケアの中で、医療機器管理・救急対応・心理的支援といった専門性がこれまで以上に求められるようになり、ケアマネジメントとの接続性が高まったことが、追加の根拠とされています。
② 実務経験年数が「5年→3年」に短縮される
現行制度では、対象資格を持つ人が受験するには「資格に基づく業務に通算5年以上、かつ900日以上従事」していることが必要でした。改正案では、これが「3年以上(900日も同様に短縮)」に緩和されます。この期間設定は、介護福祉士国家試験の実務経験ルート(3年+実務者研修)と整合させたもので、「医療系の他資格と比べてケアマネだけが5年というのはバランスを欠く」という指摘を踏まえた措置です。
診療放射線技師として3年以上働いてきた方であれば、改正施行後ただちに受験資格を満たすことになります。新人として就業して3年目を迎える人にとっても、5年待つ必要がなくなる点は大きな変化です。
③ 資格更新制が廃止される
もう一つの大きな変化が、ケアマネジャーの資格更新制廃止です。現行制度では、5年ごとに合計88時間以上の更新研修を受講する必要があり、未受講で失効するケースが相次いで離職要因となっていました。2026年4月3日に閣議決定された介護保険法改正案では、この更新制そのものを廃止し、資格を生涯有効とする方向性が示されています。代わりに、年6〜7時間程度の定期研修を分割して受講する仕組みが法的に位置付けられる予定です。
診療放射線技師の方にとってこの変化は、「ケアマネ資格を取った後の維持コストが大幅に下がる」ことを意味します。本業の診療放射線技師業務と兼務しながらケアマネ資格を取得し、将来的にゆるやかに移行する選択肢も現実的になります。
施行スケジュールの見通し
2026年4月3日に閣議決定された改正案は、2026年の通常国会での審議・成立を経て公布、その後1年半以内(2027年4月見込み)に施行という流れが想定されています。介護保険事業計画の第10期(2027〜2029年度)の初年度に間に合わせる形です。実際にどの試験回から新受験資格が適用されるかは、省令・通知の整備状況次第ですが、現時点では2027年度試験(10月実施)から新ルールが適用される可能性が高いと見られています。
つまり、診療放射線技師の方が新ルールでケアマネ試験を初めて受けられるのは、早くても2027年10月。逆算すると、2026年中に介護保険制度の概要把握や勉強開始ができていれば、改正初年度の合格を狙うことも十分に可能なスケジュール感です。
なぜ診療放射線技師がケアマネ受験対象に追加されるのか|医療と介護の接続点
厚生労働省が診療放射線技師を含む5資格を新たに受験対象に加える背景には、単なる「ケアマネ不足の補填」では説明できない、医療と介護の構造的な変化があります。
在宅医療を必要とする要介護者の増加
厚生労働省「介護給付費等実態統計」(2024年)によれば、要介護認定を受けている高齢者のうち、何らかの医療処置を必要とする人の割合は約45%に達しています。胃ろう栄養、人工呼吸器、在宅酸素療法、褥瘡(じょくそう)ケア、尿道カテーテルなど、かつては入院でしか対応できなかった医療的ケアが、在宅や介護施設で日常的に行われるようになりました。
同時に、地域包括ケアシステムの推進により、訪問診療を提供する診療所も増加しています。近年では、ポータブルX線装置を持参して訪問診療を行う「在宅画像診断」や、訪問エコー検査も一部地域で広がっています。在宅で過ごす利用者の状態を把握するために、画像診断の知見を持つ専門職の関与価値が高まっているのです。
診療放射線技師がケアマネジメントで持つ強み
診療放射線技師は、画像撮影・治療装置操作・医療被ばくの安全管理を専門領域としますが、ケアマネジメント業務に活かせる素養は意外に多くあります。
- 医療機器・撮影装置の知識:在宅で人工呼吸器・吸引器・在宅酸素濃縮器などの医療機器を使う利用者のケアプラン作成時に、機器の特性や安全管理の論点を踏まえた調整ができる。
- 解剖・病態の理解:脳血管障害、骨折、悪性腫瘍など、要介護状態の主因となる疾患の画像所見を読んできた経験があるため、主治医の説明やリハビリ計画の意図を素早く把握できる。
- 放射線防護・感染対策の素養:標準予防策や物理的遮蔽の考え方が身についており、在宅介護現場でも感染症対策の指導・調整に貢献できる。
- 多職種チームでの連携経験:医師、看護師、技師、事務スタッフが連携する病院チーム医療の中で動いてきた経験が、ケアマネジメントの「サービス担当者会議」運営にそのまま活きる。
厚生労働省が想定する5資格の役割分担
第127回介護保険部会の議事録には、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士、公認心理師を加える理由として、「保健・医療・福祉分野における専門性の多様化を考慮し、医療・介護の連携の要として、多様な背景を持つ人材の参入を促進する」という説明が記されています。在宅で必要とされるケアの質を高めるために、これら職種の参入を促す狙いが明確に位置付けられたわけです。
現場サイドでも歓迎する声が上がっており、日本介護支援専門員協会の小林広美副会長は受験資格緩和に「賛同する」と表明、日本医師会の江澤和彦常任理事は「門戸を広げるのは良いが、ケアマネを目指す人が本当に増えるかは施行後にデータをしっかり検証していく必要がある」と慎重な姿勢を示しつつも、改正の方向性自体には反対していません。
年収の現実|診療放射線技師549万円 vs ケアマネ429万円の差を独自分析
キャリアチェンジを検討する際に最も気になるのが年収の変化です。公的データに基づいて、診療放射線技師とケアマネジャーの収入構造を独自に比較してみます。
厚生労働省賃金構造基本統計調査による平均年収
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとに、両職種の収入を整理すると以下のようになります。
| 項目 | 診療放射線技師 | 介護支援専門員(ケアマネ) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 平均年収 | 549万8,500円 | 429万6,000円 | ▲120万2,500円 |
| 所定内給与(月) | 37万5,600円 | 29万4,000円 | ▲8万1,600円 |
| 年間賞与 | 99万1,300円 | 63万3,500円 | ▲35万7,800円 |
| 初任給(20〜24歳) | 351万9,900円 | 338万4,100円(25〜29歳の値) | ▲13万5,800円 |
| ピーク年齢 | 55〜59歳 | 45〜49歳 | ー |
| ピーク年収 | 761万9,300円 | 460万6,600円 | ▲301万2,700円 |
独自分析①:年代別の差はキャリア後半でさらに開く
賃金構造基本統計調査の年代別データを見ると、両者の差は若年層では13万円程度ですが、50代に入るとピーク同士で300万円を超える開きになります。診療放射線技師は夜勤・当直手当・専門加算(核医学・放射線治療・MRIなど)が積み上がりやすく、勤続年数とともに年収が伸びる構造です。一方ケアマネは、平均年齢50.9歳・勤続年数10.2年(厚労省統計)と、長く働いている人でも横ばいの傾向があります。
つまり「3年で受験OKだから今すぐ転身」と短期的に決めると、生涯賃金で見た損失が膨らむ可能性があります。逆にキャリア前半で資格を取り、施設ケアマネや主任ケアマネへステップアップする計画なら、長期で年収維持を狙う余地があります。
独自分析②:施設タイプ別ケアマネ給与で年収維持を狙える
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」第89表より、施設タイプ別ケアマネの月収を整理すると、転職先選びで年収差をかなり埋められることが見えてきます。
| 施設タイプ | ケアマネ平均月給 | 年収換算(×12) |
|---|---|---|
| 介護老人福祉施設(特養) | 41万6,060円 | 約499万円 |
| 介護老人保健施設(老健) | 40万3,680円 | 約484万円 |
| 特定施設入居者生活介護事業所(有料老人ホーム等) | 39万9,380円 | 約479万円 |
| 訪問介護事業所 | 39万1,040円 | 約469万円 |
| 介護医療院 | 37万2,420円 | 約447万円 |
| 認知症対応型共同生活介護事業所(グループホーム) | 35万8,900円 | 約431万円 |
| 通所リハビリテーション事業所 | 35万8,870円 | 約431万円 |
| 小規模多機能型居宅介護事業所 | 35万4,020円 | 約425万円 |
| 通所介護事業所(デイサービス) | 34万1,800円 | 約410万円 |
施設ケアマネ(特養・老健)の年収は約480〜500万円となり、診療放射線技師の中央値(550万円)との差は50〜70万円まで縮まります。さらに主任ケアマネジャーになれば賞与込みで520万円超を狙える事業所もあり、医療機関の常勤診療放射線技師の中堅層と同等水準を維持することも不可能ではありません。
独自分析③:時給換算では「年金受給後の継続就労」が有利
厚労省「賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)」によれば、診療放射線技師の時給は2,770円、介護支援専門員は1,667円です。一見ケアマネの方が低く見えますが、定年後の継続就労を考えると話は変わります。
診療放射線技師は60代で年収が589万円→478万円へと下降しますが、ケアマネは70歳以上でも354万円水準を保っており、デスクワーク中心で身体的負担も軽いため、長期就労がしやすい職種です。仮に60歳で診療放射線技師として一線を退いた後、ケアマネとして75歳まで15年間就業すれば、累計5,000万円超の追加収入も視野に入ります。
「短期では年収が下がるが、長期での就労期間でカバーする」という設計が、診療放射線技師→ケアマネ転身では現実的な選択肢です。
実務経験3年への短縮|診療放射線技師がケアマネを目指すロードマップ
新ルールでは、診療放射線技師として3年以上900日以上の実務経験を積んでいれば、ケアマネジャー試験を受験できるようになります。ここでは、改正初年度(2027年度)の合格を目標に置いた場合の具体的なスケジュールと準備内容を整理します。
ステップ1:実務経験要件の確認
受験資格として認められるのは、「資格に基づく業務に通算3年以上、かつ900日以上従事」した場合です。診療放射線技師として診療所・病院・健診センター・医療機器メーカーなどで撮影・治療・装置管理業務に従事した期間が原則カウントされます。複数施設での勤務期間は通算でき、フルタイムでなくても勤務日数が900日を超えれば要件を満たします。
ただし、医療機器メーカーで「製品開発職」「営業職」として勤務した期間は対象外となる可能性があります。詳細は施行時の省令・通知で確定する見込みのため、自施設での勤務証明書発行体制を早めに整えておくことをおすすめします。
ステップ2:受験申込(試験前年の春〜夏)
ケアマネジャー試験は、毎年10月の第2日曜日前後に各都道府県で実施されます。申込は、受験する都道府県に住所または勤務地がある人が対象で、5〜7月頃に受付が始まります。受験料は都道府県ごとに異なりますが、おおむね9,000〜13,000円程度です。
診療放射線技師として申込む場合、以下の書類が一般的に必要です(自治体によって細部が異なります)。
- 受験申込書
- 診療放射線技師免許証の写し
- 実務経験証明書(勤務先の長による証明)
- 従業期間証明書
- 住民票または勤務先証明書
- 受験手数料の振込控え
ステップ3:試験対策(申込前の半年〜1年)
ケアマネジャー試験は、五肢複択式60問の出題で、試験時間は120分。出題分野は次の2つに大別されます。
- 介護支援分野(25問):介護保険制度、要介護認定、ケアマネジメント、地域支援事業、保険給付など
- 保健医療福祉サービス分野(35問):医療系(高齢者医療、認知症、リハビリテーション)と福祉系(訪問介護、施設サービス、相談援助技術等)
合格基準は分野ごとに7割(実際は補正されて60〜70%が合格ライン)。診療放射線技師は保健医療福祉の医療分野は得点しやすい一方、介護保険制度・地域支援事業・福祉系サービスは知識ゼロから学ぶ必要があります。標準的な勉強時間は100〜200時間とされ、平日30分・休日2時間ペースで6〜10か月の準備が現実的です。
ステップ4:合格後の実務研修(合格翌年)
試験に合格しただけではケアマネジャーとして従事できません。合格者は87時間以上の「介護支援専門員実務研修」を修了する必要があります。研修は、各都道府県または委託団体が開催し、4〜5か月かけて講義・演習・現場実習を行います。研修費は5万〜8万円程度(都道府県により差あり)。
働きながら受講するため、平日夜・土日開催のクラスを選ぶケアマネジャー候補が多いですが、診療放射線技師の業務シフトとの調整が必要になります。受験する前に、勤務先で公休・有給を組み合わせて研修日程を確保できるか確認しておくと安心です。
ステップ5:登録と就業(研修修了後)
実務研修修了後、各都道府県に登録申請を行うと、介護支援専門員証が交付されます。これでケアマネジャーとして勤務可能となります。新制度では更新制が廃止される見込みのため、一度登録すれば生涯有効です。診療放射線技師の本業を続けながら、副業や非常勤での居宅ケアマネ就業も理論上可能になります。
2027年度合格を狙う場合のタイムライン例
診療放射線技師として既に3年以上の実務経験がある方が、2027年度試験合格を狙う場合の現実的なスケジュールは以下の通りです。
- 2026年4〜6月:介護保険制度の基本書を1冊通読、ケアマネ試験の出題範囲を把握
- 2026年7〜9月:分野別問題集に着手、得意分野(保健医療)と苦手分野(介護保険制度)を切り分け
- 2026年10〜12月:模擬試験で弱点把握、福祉系サービスの暗記を強化
- 2027年1〜3月:法改正による新ルール(受験対象拡大・実務3年)を反映した最新テキストへ切替え
- 2027年4〜6月:受験申込・実務経験証明書の準備
- 2027年7〜9月:過去問演習を5年分以上、模擬試験で7割超を安定化
- 2027年10月:本試験
- 2027年12月:合格発表
- 2028年1〜5月:実務研修(87時間)受講
- 2028年6月以降:登録完了・ケアマネジャーとして就業可能
診療放射線技師がケアマネに転身するメリット・デメリット
キャリアチェンジには必ず両面があります。診療放射線技師がケアマネジャーへ移る場合の現実的なメリットとデメリットを、業務特性と公的データから整理します。
メリット
1. 就業期間を大幅に伸ばせる
診療放射線技師は、放射線業務での被ばく管理や夜勤当直、画像診断装置の重さなど身体的負荷があり、60歳以降に勤務継続が難しくなるケースが多くあります。一方ケアマネジャーは、デスクワークと訪問・面談中心で身体的負荷が軽く、賃金構造基本統計調査でも70歳以上の就業者が一定数存在します。「人生100年時代」のキャリア後半設計として、就業期間延長の選択肢になります。
2. 医療と介護の橋渡し役として独自の付加価値
在宅医療を受ける利用者が増えるなか、医療画像所見の読み方、放射線治療後の状態、医療被ばくに関する家族の不安への対応など、診療放射線技師の専門知識を直接活かせる場面が出てきます。例えば、認知症高齢者の頭部MRIで側頭葉萎縮の進行を見てきた経験は、ケアプランの「先を見越した支援設計」に活きます。
3. 介護保険制度の理解で本業のキャリアも広がる
ケアマネ試験の学習を通じて介護保険制度や地域包括ケアシステムを理解することは、本業の診療放射線技師業務でも価値を生みます。回復期リハ病棟の地域連携室、訪問診療部門、地域包括ケア病棟の運営管理など、医療機関内でも介護保険制度に通じた人材は重宝されます。資格を活かさず本業を続ける場合でも、組織内ポジションが広がる効果があります。
4. 年6〜7時間の研修で資格維持できる新制度
2027年度施行予定の新制度では、ケアマネ資格の更新制が廃止され、年間6〜7時間程度の定期研修を受ければ資格を維持できる仕組みに変わる見込みです。これまで5年で88時間以上必要だった更新研修の負担が、年単位に分散・軽量化されるため、診療放射線技師としての本業と兼務しやすい環境が整います。
5. 訪問診療・在宅画像診断との連携で新業務領域
近年は、ポータブルX線装置を用いた訪問診療や在宅画像診断サービスを提供する医療機関が増えています。在宅医療チームの中で、画像診断スキルとケアマネジャー資格を併せ持つ職種は希少で、訪問診療の責任者や地域連携コーディネーターとして活躍する可能性が広がります。
デメリット
1. 短期的に年収が約120万円下がる
本記事の独自分析でも示した通り、診療放射線技師の平均年収549万円から、ケアマネの平均429万円への移行で約120万円の差額が発生します。住宅ローンや教育費が重い40代では、家計への影響を慎重に試算する必要があります。施設ケアマネを選べば差を50〜70万円まで縮められますが、それでも一定の減収は避けにくいのが現実です。
2. 介護保険制度の学習が必要
診療放射線技師の養成課程では、介護保険制度や地域包括ケアの体系的な学習はほとんど行われません。ケアマネ試験では介護保険分野(25問)が主要科目であり、ゼロからの学習が必要です。仕事と勉強の両立で半年〜1年の継続的な学習時間を確保する必要があります。
3. ケアマネ試験の合格率は20%前後
厚生労働省の発表によれば、近年のケアマネジャー試験の合格率は19〜32%(年度による変動あり)。難関ではないものの、医療系国家試験を経験している層からすると油断できない難易度です。診療放射線技師国家試験の合格率は通常80%超ですから、それと比較すると相当な準備が必要であることは認識しておくべきです。
4. 業務量・書類負担が大きい
居宅ケアマネは1人あたり最大35件の利用者を担当し、毎月のモニタリング訪問・ケアプラン更新・サービス担当者会議の調整・給付管理票の作成など事務負担が重いことで知られています。日本総研「ケアマネジメント業務効率化に関する調査」(2023年)では、業務時間の約40%が記録・書類作成に費やされているとされます。撮影業務に比べて「決まった時間で完結しない」業務が多く、ワークライフバランスの再設計が必要です。
5. 「医療職としての専門性が薄まる」感覚
診療放射線技師は高度に専門化された医療職であり、画像診断の読影補助・装置の精度管理など、研鑽の積み重ねで価値が上がる職種です。ケアマネに転身すると、こうした「狭く深い専門性」よりも「広く浅い調整力」が求められるため、専門職としてのアイデンティティが揺らぐことがあります。本業を完全にやめずに兼務する形を取り、両方のスキルを維持・発展させる工夫が必要です。
医療機器管理スキルが活きる就業先|診療放射線技師ケアマネの活躍領域
医療系国家資格を持つケアマネジャーは限られているため、診療放射線技師の経歴を持つケアマネには独自のニッチ需要があります。具体的にどの領域で活躍しやすいかを整理します。
① 介護老人保健施設(老健)
老健は「在宅復帰支援」を主目的とする介護施設で、医師・看護師・リハビリ専門職が常勤しています。ここで施設ケアマネとして勤務する場合、入所者の医療画像所見や検査データを理解しながらケアプランを組む場面が多く、診療放射線技師の経験が直接活きます。施設ケアマネの平均月収は40万3,680円(厚生労働省 令和6年度介護従事者処遇状況等調査)と、診療放射線技師の中堅層と近い水準です。
② 訪問診療クリニック・在宅医療センターの居宅ケアマネ
訪問診療を提供する診療所が併設・連携する居宅介護支援事業所では、医療ニーズの高い利用者が多く、医療系資格を持つケアマネが特に重宝されます。在宅で人工呼吸器・在宅酸素・胃ろう・尿道カテーテルなどを使用する利用者の状態把握や、医療職と介護職の通訳役として、診療放射線技師の専門知識が直接的に役立ちます。一部の事業所では、訪問エコー検査やポータブルX線装置を用いた在宅画像診断サービスとの連携も進んでおり、両資格を活かせる新業務領域です。
③ 地域包括支援センター
地域包括支援センターは、市町村が設置する高齢者総合相談窓口で、保健師・社会福祉士・主任ケアマネジャーの3職種を中心に運営されています。診療放射線技師としての医療現場経験を持つケアマネは、地域住民の健診結果や画像検査の説明、認知症の早期発見・予防に関する啓発活動などに貢献できます。公務員型の安定雇用が多く、給与水準も比較的高めに設定されています。
④ 特別養護老人ホーム(特養)
特養の施設ケアマネは平均月収41万6,060円(厚生労働省 令和6年度介護従事者処遇状況等調査)と、ケアマネの中で最も高水準の職場です。要介護3以上の重度利用者が中心で、終末期ケアや看取り対応も多いため、医療知識を持つケアマネへのニーズが高い傾向にあります。診療放射線技師として終末期患者の画像撮影に携わってきた経験は、看取り期の家族支援にも活きます。
⑤ 介護医療院
2018年に新設された介護医療院は、長期療養と生活支援を一体的に提供する施設類型で、医療ニーズの高い高齢者が中心です。常勤医師・看護師・リハビリ専門職が配置され、画像診断装置を備える施設も多くあります。ケアマネとして勤務しながら、本業の診療放射線技師スキルを活かす場面も発生する可能性があり、ハイブリッド型のキャリアを志向する人に向いています。
⑥ 主任ケアマネジャーとしての管理職ポジション
ケアマネとして5年以上の実務経験を積み、主任介護支援専門員研修(70時間)を修了すると、主任ケアマネジャーの資格が取得できます。主任ケアマネは、地域包括支援センターの必置職員、特定事業所加算を取得する居宅介護支援事業所の管理者ポジションなど、より高度で責任のある仕事に就けます。給与水準も上がり、診療放射線技師時代に近い年収を維持しやすくなります。
勉強法のコツ|診療放射線技師がケアマネ試験に効率的に合格する方法
診療放射線技師の方がケアマネジャー試験を受験する際の特徴は、「医療知識のベースは強いが、介護保険・福祉系の知識はゼロから」という状態です。この特性を活かした学習戦略を整理します。
戦略①:得意分野(保健医療福祉)を最初に固める
ケアマネジャー試験の出題は介護支援分野25問・保健医療福祉分野35問。保健医療福祉のうち医療系(高齢者医療、認知症、リハビリテーション、感染症対策など)は、診療放射線技師の解剖学・病態学の素養がそのまま活きる領域です。最初の1〜2か月で保健医療分野を集中的に固め、得点源を作ると後の学習が楽になります。
具体的には、過去問5年分の保健医療福祉分野を解いてみて、現状で何問正解できるかを把握。診療放射線技師として頻繁に関わる疾患(脳血管障害、骨折、がん、認知症)に関する設問は、ほぼ正解できるはずです。
戦略②:介護保険制度を「自分の言葉で説明できる」レベルまで
苦手分野になりがちな介護支援分野(介護保険制度、要介護認定、ケアマネジメント、地域支援事業)は、暗記だけでは点が取れません。「なぜそのルールが必要なのか」「制度の背景は何か」を理解する必要があります。
おすすめの学習法は、市販の図解テキストで全体像を把握した後、要介護認定の流れ、ケアプラン作成プロセス、地域支援事業の内容を「家族や同僚に説明する」つもりで自分の言葉でまとめてみることです。アウトプットを通じて理解の穴が見え、覚えるべき論点が明確になります。
戦略③:福祉系サービスは「現場の動き方」を映像でイメージ
訪問介護、通所介護、短期入所、福祉用具貸与といった福祉系サービスは、診療放射線技師の業務とは縁遠く、教科書だけで覚えるのは苦痛です。YouTubeなどでサービス事業者が公開している現場動画や、自治体の介護保険ハンドブックの図解を活用し、「実際にどう動くサービスか」をビジュアルで把握すると暗記が定着しやすくなります。
戦略④:過去問は最低5年分、できれば10年分
ケアマネ試験は出題傾向が比較的安定しており、過去問の繰り返し演習が合格への近道です。最低でも5年分(300問)、可能なら10年分(600問)を3周以上回し、間違えた問題は付箋で印をつけて反復してください。
戦略⑤:法改正情報を必ず最新化
2027年度施行の制度改正により、ケアマネ試験の出題内容も影響を受ける可能性があります。具体的には、更新制廃止、受験資格拡大、主任ケアマネの位置づけなどです。受験する前年の春以降に発売されるテキスト・問題集を選び、改正情報を網羅した教材で学習することが重要です。
戦略⑥:通信講座・eラーニングを活用する
診療放射線技師として働きながら独学だけで進めるのは負担が大きいため、通信講座やeラーニングを併用すると効率的です。代表的な講座として、ユーキャン、三幸福祉カレッジ、資格の大原、たのまな、晶文社などがあります。費用はおおむね3万〜6万円台で、過去問演習・模擬試験・添削指導がセットになっています。
戦略⑦:模擬試験で「時間配分」を体に染み込ませる
本試験は60問を120分で解きます。1問あたり2分以内が目安ですが、五肢複択(複数選ぶ)であるため、迷うと時間を消費しがちです。試験3か月前からは、必ず時間を計って模擬試験を解き、見直し時間を10分以上残せる時間配分を体に染み込ませましょう。
診療放射線技師→ケアマネジャー転身に関するよくある質問
Q1. 改正は本当に2027年4月から施行されるのですか?
2026年4月3日に閣議決定された介護保険法等改正案は、2026年の通常国会での審議を経て成立し、公布後1年半以内(2027年4月見込み)に施行という流れが想定されています。介護保険事業計画の第10期(2027〜2029年度)の初年度に間に合わせる形です。ただし、施行時期は法案審議の進行や省令・通知の整備状況により変動する可能性があるため、厚生労働省の最新情報を継続的に確認することが必要です。
Q2. 現在診療放射線技師として勤務歴3年あります。改正後すぐに受験できますか?
改正案では、診療放射線技師として通算3年以上900日以上の業務従事を満たせば受験可能となります。施行後最初の試験(2027年10月実施が想定される)から受験申込ができる見込みです。ただし、受験申込時には実務経験証明書の提出が必要なため、勤務先で証明書発行の体制を事前に確認しておくと安心です。
Q3. 改正前(2026年度試験まで)に受験する方法はありますか?
2026年度試験までは旧ルールが適用される可能性が高いため、診療放射線技師単独では受験資格を満たせません。ただし、社会福祉士や介護福祉士など現行の対象資格を別途取得すれば受験できます。介護福祉士の場合は実務経験3年+実務者研修の修了が必要で、本業を続けながら取得するのは時間的に厳しいケースが多くあります。改正施行を待って2027年度試験を狙う方が現実的です。
Q4. ケアマネに転身したら本業の診療放射線技師の仕事はやめなければなりませんか?
ケアマネジャーには専従義務がなく、副業や非常勤も可能です。新制度で更新制が廃止されれば、診療放射線技師として常勤で勤務しながら、土日や夜間に居宅ケアマネとして副業する選択肢も現実的になります。ただし、勤務先の就業規則で副業が認められているかを必ず確認し、利益相反や守秘義務に注意が必要です。
Q5. 診療放射線技師の経験は実務研修や研修免除に影響しますか?
合格後に必要な87時間の介護支援専門員実務研修について、現時点で診療放射線技師に対する免除制度はありません。ただし、医師・看護師・社会福祉士などには一部科目の免除があるため、改正に合わせて新規対象資格(診療放射線技師等)にも免除制度が拡大される可能性があります。施行時の通知を確認してください。
Q6. 試験の合格率はどのくらいですか?
厚生労働省の発表によれば、近年のケアマネジャー試験(介護支援専門員実務研修受講試験)の合格率は19〜32%で年度により変動があります。2024年度試験は合格率約32.1%でした。診療放射線技師国家試験(合格率80%超)と比較すると相応に難易度はあるため、計画的な学習が必要です。
Q7. 受験料・教材費・実務研修費を合計するといくらかかりますか?
受験料は都道府県により9,000〜13,000円、テキスト・問題集で1〜2万円、通信講座を利用する場合は3〜6万円、合格後の実務研修費が5〜8万円程度です。トータルで10万〜18万円程度を想定しておくと安心です。会社員の場合、教育訓練給付制度の対象講座もあるため、利用できれば費用を抑えられます。
Q8. 年齢的に40代・50代から目指しても遅くないですか?
ケアマネジャーは厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査によれば平均年齢50.9歳・勤続年数10.2年で、40代・50代からのキャリアチェンジが多い職種です。70歳以上で就業している人もおり、長期就労を前提に考えれば、診療放射線技師として身体的に負荷を感じ始めた時期からの転身は十分に合理的な選択です。
参考文献・出典
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- [7]ケアマネの資格取得要件を緩和 厚労省方針 必要な実務経験年数を5年から3年に- 介護ニュースJoint
受験対象資格5職種追加(診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士、公認心理師)の詳細解説
まとめ|診療放射線技師からケアマネへの新たなキャリアパス
2027年度の介護保険制度改正案で、診療放射線技師は新たにケアマネジャー受験対象資格に加わる見込みとなりました。同時に、必要な実務経験も5年から3年に短縮される方向で議論が進んでおり、これまで「医療系の国家資格を持っているのに、なぜか受験できなかった」状況が大きく変わります。
本記事で整理した要点を改めて確認します。
- 2025年10月27日の社会保障審議会介護保険部会で、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士、公認心理師の5職種をケアマネ受験対象に追加する案が大筋了承された
- 実務経験要件は現行5年から3年へ短縮される方向。介護福祉士の実務経験ルート(3年+実務者研修)と整合させた制度設計
- 2026年4月3日に介護保険法改正案が閣議決定され、2027年4月施行が見込まれる。最初の試験は2027年10月実施予定
- 更新制度も廃止予定。年6〜7時間の定期研修で資格を維持できる仕組みに変わる見込み
- 診療放射線技師の平均年収549.8万円から、ケアマネ平均429.6万円へ約120万円の差。施設ケアマネを選べば差は50〜70万円まで縮小
- 主任ケアマネへのステップアップ、地域包括支援センター・介護医療院・在宅医療チームでの活躍など、医療スキルが活きる職域が広がる
- 勉強時間の目安は100〜200時間。診療放射線技師の医療知識を活かして保健医療福祉分野(35問)を得点源にする戦略が有効
診療放射線技師としてのキャリアを20年、30年と歩んできた方にとって、ケアマネジャーへの転身は単なる「転職」ではなく、これまでの医療現場経験を地域社会に還元する新しい役割への移行です。在宅医療を必要とする高齢者が増えるこれからの時代、画像診断の知見と医療機器管理の経験を持つケアマネジャーは、地域包括ケアシステムの中で独自の価値を発揮できます。
2027年度の改正施行までは、まだ1年以上の準備期間があります。本業を続けながら、介護保険制度の基本書を1冊読み始める。ケアマネジャー試験の過去問を1年分解いてみる。地域の居宅介護支援事業所や老健の見学に行く。こうした小さな一歩から、新たなキャリアの可能性が拓けます。介護のハタラクナカマでは、ケアマネジャーの仕事内容や試験対策、キャリアパスに関する記事を多数公開しています。あわせてご覧ください。
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