
施設で利用者の下痢が続くときの対応|介護職の観察・脱水/感染の見極め・スキンケアと報告
介護施設で利用者の下痢が続くとき介護職が行う対応を解説。便の観察(ブリストルスケール・色・血/粘液・回数)、脱水サインと経口補水、感染性下痢(ノロ・CD腸炎)を疑う視点と標準予防策・排泄物処理、失禁関連皮膚炎(IAD)予防のスキンケア、抗菌薬関連下痢、看護師連携・受診判断、記録、止瀉薬を判断しない医行為の線引きまで。
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この記事のポイント
施設で利用者の下痢が続くときは、まず便の性状(ブリストルスケール)・色・血や粘液の有無・回数と、脱水のサイン(尿量減少・口の乾き・元気のなさ)を観察して記録し、看護師へ報告します。水様便や噴射する嘔吐、発熱、血便があればノロや腸管出血性大腸菌、抗菌薬使用中ならクロストリジオイデス・ディフィシル(CD)腸炎など感染性を疑い、標準予防策に加えて手袋・エプロン・マスクの着用と排泄物の適切な処理を徹底します。おむつ内の便は失禁関連皮膚炎(IAD)を招くため、こすらず洗浄し保湿・保護でスキンケアします。下痢止め(止瀉薬)を使うかどうかは介護職が判断せず、看護師・医師の指示に従うのが原則です。
目次
介護施設では、利用者が下痢を起こす場面は珍しくありません。加齢による消化機能の低下、経管栄養、抗菌薬の使用、下剤の調整、ノロウイルスなどの感染症、便秘に伴う溢流性下痢まで、原因はさまざまです。とくに「下痢が1日で治まらず、数日続く」ときは、脱水や感染の拡大、皮膚トラブルへとつながりやすく、初動の観察と報告が利用者の状態を大きく左右します。
高齢者は体内の水分量がもともと少なく、のどの渇きも感じにくいため、下痢が続くと短期間で脱水に傾きます。また免疫力が低下しているため、感染性の下痢では重症化しやすく、施設内で集団発生(アウトブレイク)につながる危険もあります。だからこそ、いちばん近くで利用者を見ている介護職の「いつもと違う」という気づきと、看護師・医師への正確な報告が欠かせません。
この記事では、施設で利用者の下痢が続くときに介護職が行う対応を、便の観察 → 脱水の見極め → 感染性かどうかの判断と予防策 → スキンケア → 記録・報告という初動の流れに沿って整理します。あわせて、介護職がやってよいことと、看護師・医師に委ねるべき「医行為の線引き」も具体的に示します。
下痢とは|介護記録でとらえる便の見方と原因のタイプ
下痢とは、一般に1日3回以上の軟便または水様便が出る状態を指します。介護記録では「下痢」とだけ書くのではなく、便の形・回数・量を客観的にとらえることが、看護師や医師が状態を判断するうえで重要になります。そのために介護現場で広く使われているのがブリストル便性状スケールです。
ブリストルスケールで便の性状をとらえる
ブリストルスケールは、便のかたさ・形をタイプ1〜7の7段階で分類する国際的な指標です。下痢の観察では、次の3タイプが目安になります。
- タイプ5(やや軟らかい便):はっきりした境界のある半固形の便。軽い下痢傾向。
- タイプ6(泥状便):境界がほぐれてふにゃふにゃした便。下痢の状態。
- タイプ7(水様便):固形物を含まない水のような便。強い下痢で、感染性が疑われる場面でも要注意。
「タイプ7の水様便が1日に何回出たか」という記録は、後述する感染性下痢の判断(1日5回以上の水様便はCD腸炎などを疑う目安)にも直結します。主観的な「ゆるかった」ではなく、スケールの番号で残す習慣をつけましょう。
下痢の起こり方はひとつではない
下痢は起こるしくみによって、腸が水分を十分に吸収できない、腸の粘膜から水分がしみ出す、腸の動きが速すぎるなど、いくつかのタイプに分かれます。介護現場でとくに知っておきたいのは、原因別の次のような下痢です。
- 感染性の下痢:ノロウイルス、ロタウイルス、腸管出血性大腸菌(O157など)、カンピロバクターなど。嘔吐・発熱・血便を伴うことがある。
- 抗菌薬関連の下痢:抗生物質の使用で腸内細菌のバランスが崩れて起こる。重いものにCD腸炎がある。
- 薬剤性・経管栄養に伴う下痢:下剤の効きすぎ、経腸栄養剤の種類や注入速度が合わないことなどで起こる。
- 溢流性(いつりゅうせい)下痢:便秘で硬い便が直腸に詰まり、そのすき間から水様便が漏れ出る状態。「下痢」に見えて実は便秘が原因のことがある。
この「見た目は下痢でも原因が違う」という点が、介護職の観察でとても大切になります。とくに溢流性下痢に下痢止めを使うと、詰まった便がさらに動かなくなって悪化するため、原因の見極めを看護師と共有することが欠かせません。
介護職が行う便と全身の観察ポイント
下痢が続くとき、介護職がまず行うのは「便と全身の観察」です。医師や看護師は現場に常時いるとは限りません。介護職の観察記録が、受診や検査の判断材料になります。次の項目をチェックし、数値・具体語で記録しましょう。
便そのものの観察ポイント
- 性状:ブリストルスケールのタイプ(5・6・7)。水様便かどうか。
- 回数と量:1日何回、1回の量はどのくらいか。「1日5回以上の水様便」は感染性を疑う目安。
- 色:黒っぽいタール状(上部消化管からの出血の可能性)、赤い血が混じる(下部からの出血・腸管出血性大腸菌の可能性)、白っぽい(胆汁の問題)など。
- 血液・粘液の有無:血便・粘血便は必ず看護師へ。感染性腸炎や大腸の炎症を疑う重要サイン。
- におい:ふだんと違う強い腐敗臭・すっぱいにおいなど。
全身状態・随伴症状の観察ポイント
- 発熱:体温を測る。発熱を伴う下痢は感染性を強く疑う。
- 嘔吐:嘔吐の有無、とくに「噴射するような激しい嘔吐」はノロウイルスなどで要注意。
- 腹痛・腹部のはり:顔をしかめる、お腹をさするなど、言葉で訴えにくい人のサインも拾う。
- 食事・水分の摂取量:食べられているか、飲めているか。摂取量が落ちると脱水に直結。
- 意識・活気:ぼんやりしている、反応が鈍い、いつもより元気がないなどの変化。
「いつもと違う」を言語化する
介護職の強みは、その利用者のふだんの排便パターンや様子を知っていることです。「この方はいつもは1日1回タイプ4なのに、今日は水様便が4回」というように、その人の平常時と比べた変化で記録すると、報告を受けた看護師が状況を正確につかめます。抽象的な「調子が悪そう」ではなく、観察した事実を具体的に残しましょう。
脱水を見のがさない|サインと経口補水の支援
下痢が続くと、便として水分と電解質(ナトリウム・カリウムなど)がどんどん失われます。高齢者はもともと体内の水分量が少なく、のどの渇きを感じにくいため、下痢が続くと自覚のないまま脱水に傾きます。脱水は意識障害や全身状態の悪化につながるため、下痢のケアと脱水の観察はセットで行います。
脱水のサインを見のがさない
- 尿の量が減る・色が濃くなる:おむつの尿量、トイレの回数の減少は分かりやすいサイン。
- 口の中・舌・唇が乾く:口腔内がカラカラ、唾液が少なく話しにくい。
- 皮膚のはりの低下:手の甲の皮膚をつまむと戻りが遅い(ツルゴール低下)。
- 元気のなさ・ぼんやり:活気の低下、傾眠、反応の鈍さ。せん妄のように見えることもある。
- 脈が速い・血圧が下がる:バイタルに変化が出ることがある(測定は指示範囲で)。
水分・経口補水の支援
脱水を防ぐには、こまめな水分補給の支援が基本です。下痢のときは水やお茶だけでなく、水分と電解質を同時に補える経口補水液(ORS)が適しています。一度に大量に飲ませると嘔吐を誘発したり負担になったりするため、少量ずつ・こまめにを心がけます。冷たすぎるものは腸を刺激するので、常温〜ぬるめが飲みやすいでしょう。
ただし、口から十分に飲めない・嘔吐で受けつけない・意識がはっきりしないときは、無理に飲ませると誤嚥の危険があります。この場合は点滴(補液)による水分補給が必要になることが多く、速やかに看護師へ報告し、医師の診察につなげます。「飲ませ続ければ大丈夫」と介護職だけで抱え込まないことが大切です。
感染性の下痢を疑うサインと標準予防策・排泄物処理
施設で下痢が続くとき、もっとも警戒すべきは感染性の下痢です。感染性を見のがすと、利用者本人の重症化だけでなく、ほかの利用者や職員へ広がる集団感染(アウトブレイク)を招きます。介護職は「これは感染かもしれない」と早めに疑い、標準予防策を徹底することが求められます。
感染性を疑うサイン
- 水様便が頻回(とくに1日5回以上)
- 噴射するような激しい嘔吐を伴う
- 発熱を伴う
- 血便・粘血便(腸管出血性大腸菌などの可能性)
- 同じ時期に同様の症状の利用者・職員が複数出ている
冬季に嘔吐と下痢がみられればノロウイルスを、血液が混じった水様便が繰り返せば腸管出血性大腸菌(O157など)を疑います。これらの症状があれば、必ず看護職員に報告します。
標準予防策と接触予防策
感染が疑われる下痢では、すべての排泄物・嘔吐物を「感染性があるもの」として扱うのが原則です(標準予防策)。そのうえで接触予防策を加えます。
- 手指衛生:ケアの前後で必ず手を洗う。使い捨て手袋を外したあとも手洗い・手指消毒を行う。
- 個人防護具(PPE):排泄ケア・嘔吐物処理の際は使い捨て手袋・エプロン(ガウン)・マスクを着用し、処置ごとに交換する。
- 環境:可能なら個室対応や、同じ症状の利用者をまとめるなどの配慮を看護師・施設の方針に沿って行う。
排泄物・嘔吐物の処理
ノロウイルスなどはアルコール消毒が効きにくいため、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が基本です。嘔吐物・下痢便で汚れた床やリネンは、0.1%(1,000ppm)程度の次亜塩素酸ナトリウム液で処理し、食器などは0.05〜0.1%で消毒します(濃度は施設のマニュアルに従う)。処理の際は手袋・エプロン・マスクを着用し、使ったペーパーや手袋はビニール袋に密閉して廃棄します。汚染したリネンはほかの洗濯物と分け、袋の口をしっかり閉じて洗濯に出します。
抗菌薬を使っているならCD腸炎も疑う
利用者が抗生物質(抗菌薬)を使っている、または最近まで使っていた場合は、クロストリジオイデス・ディフィシル(CD)腸炎にも注意します。抗菌薬で腸内細菌のバランスが崩れて発症する下痢で、高齢者に多く、施設内でアウトブレイクを起こすことがあります。抗菌薬使用中・使用後(数か月以内)に、他に原因のない下痢が続くときは看護師に伝えましょう。
CD菌は芽胞(がほう)という殻をつくり、この状態ではアルコール消毒が効きません。そのためCD腸炎が疑われる利用者のケアでは、アルコール手指消毒だけでなく、石けんと流水による手洗いを徹底し、手袋・エプロンによる接触予防策をとります。下痢が続いている間は接触予防策を継続し、症状が治まってからも一定期間(目安として下痢消失後48時間程度)は注意を続けるのが望ましいとされています。解除の判断は看護師・医師が行います。
下痢が続くときのスキンケア|IAD(失禁関連皮膚炎)を防ぐ
下痢が続くと、便が皮膚に触れる時間と回数が増え、殿部・陰部・鼠径部(そけいぶ)の皮膚がダメージを受けます。これがIAD(失禁関連皮膚炎)です。軟便・水様便には水分と消化酵素が多く含まれ、皮膚をふやけさせて(浸軟)バリア機能を弱め、少しの摩擦でも赤み・びらん(ただれ)が生じます。高齢者はもともと皮膚が薄く乾燥しやすいため、下痢時のスキンケアはとても重要です。
まず皮膚を毎日観察する
おむつ交換のたびに、殿部・陰部・肛門周囲・鼠径部・臀裂部(お尻の割れ目)を観察します。紅斑(赤み)・びらん・水疱・皮むけがないか、しわの間まで確認しましょう。IADは褥瘡(床ずれ)と間違えやすいですが、IADは排泄物が触れる範囲に一致して広がる紅斑が特徴です。皮膚トラブルを見つけたら看護師に報告します。
スキンケアの基本は「洗浄・保湿・保護」
- 洗浄:排便のたびに、こすらず洗い流す。弱酸性の洗浄剤をよく泡立て、泡で包み込むようにやさしく洗う。洗い流したあとは押さえ拭きで水分を取る。ゴシゴシ拭く・洗うのは厳禁で、それ自体がIADを悪化させます。洗浄剤の使用は1日1回程度にし、それ以外はぬるま湯で。
- 保湿:洗浄とセットで、排泄物が触れる部分に保湿剤を塗る。手のひら全体でやさしく広げ、こすらない。洗浄直後は保湿が浸透しやすいタイミング。
- 保護(撥水):軟便・水様便のときは、保湿に加えて撥水性の皮膚保護剤(バリアクリームなど)を塗り、便が直接皮膚に付着しないようにする。感染性の下痢や水様便では特に重要。
IADのケア指針では、付着する便を性状で点数化し、軟便(2点)・水様便(3点)では標準的スキンケア(洗浄・保湿)に「保護」を追加するとされています。つまり水っぽい下痢ほど、保護のひと手間が皮膚を守ります。
おむつの使い方の注意
おむつ内は蒸れやすく、便を吸収したパッドを放置するとIADのリスクが跳ね上がります。排泄後は速やかに交換し、通気性のよい製品を選びます。モレが心配でもパッドを何枚も重ねないこと。重ねると通気性が落ち、皮膚がふやけて逆効果です。持続する頻回の下痢便には、看護師の判断で軟便用パッドや便の収集用品を検討することもあります。
介護職がやってよいこと・委ねること|医行為の線引き
下痢のケアで介護職がとくに迷いやすいのが「どこまで自分でやってよいか」という線引きです。介護職の役割は、観察・報告・環境整備・清潔ケア・水分摂取の支援であり、医学的な判断や処置は看護師・医師の領域です。混同すると事故や状態悪化につながります。
下痢止め(止瀉薬)の判断はしない
もっとも重要なのは、下痢止めを使うかどうかを介護職が判断しないことです。下痢は、体が有害なものを外に出そうとしている反応でもあります。感染性の下痢で安易に下痢止めを使うと、病原体や毒素が体内にとどまって重症化することがあります。また溢流性下痢(便秘が原因の下痢)に下痢止めを使うと、詰まった便がさらに動かず悪化します。薬を使うかどうか、整腸剤を足すかどうかは、原因を見極めたうえで医師が判断します。手元に処方された薬があっても、自己判断で足したり中止したりしないでください。
介護職ができること・看護師や医師に委ねること
- 介護職ができる:便と全身の観察、記録、看護師への報告、水分・経口補水の声かけと支援、おむつ交換・陰部洗浄などの清潔ケア、スキンケア(洗浄・保湿・保護)、環境整備と感染予防(PPE・消毒)、家族への状況共有の橋渡し。
- 看護師・医師に委ねる:下痢の原因の診断、薬(下痢止め・整腸剤・抗菌薬)の判断、点滴(補液)の実施、摘便などの医療的処置、検査の要否、隔離解除の判断。
受診・救急を考えるサイン
次のような様子があれば、施設の看護師にすぐ報告し、受診や救急対応を検討します。判断は看護師・医師と連携して行います。
- 下痢が数日続き、水分がとれず脱水のサイン(尿が出ない・ぐったり・意識がもうろう)がある
- 血便・黒いタール状の便が出る
- 高熱・激しい腹痛・繰り返す嘔吐を伴う
- 複数の利用者・職員に同様の症状が広がっている(集団発生の疑い)
記録と報告のポイント|チームで下痢に対応する
下痢の対応は、介護職・看護師・医師のチームで行います。その連携を支えるのが記録と報告です。あいまいな記録は、必要な受診や感染対策の遅れにつながります。次のポイントを押さえて残しましょう。
記録に残すべき項目
- 時刻と回数:いつ、1日何回下痢があったか。
- 便の性状(ブリストルのタイプ)・色・量・血や粘液の有無。
- 随伴症状:発熱(体温)・嘔吐・腹痛・食欲・活気。
- 水分・食事の摂取量と尿量(脱水の判断材料)。
- 皮膚の状態:殿部・陰部の紅斑やびらんの有無。
- 実施したケア:経口補水の支援、スキンケア、おむつ交換の回数など。
報告のコツ(SBARの考え方)
報告は、事実を整理して手短に伝えると看護師が動きやすくなります。「状況・背景・評価・依頼」の順にまとめると漏れがありません。たとえば「Aさんが今日昼から水様便が4回、37.8度の発熱あり(状況)。ふだんは1日1回普通便の方です(背景)。水分もあまり取れていません(評価)。診ていただけますか(依頼)」というように伝えます。感染の疑いがあるときは、他の利用者・職員の状況もあわせて共有しましょう。
下痢は一過性で終わることもありますが、「続く」ときこそチームで情報をそろえることが、利用者を守る最短ルートになります。
現場ですぐ使える下痢対応の実務メモ
現場ですぐ役立つ、下痢が続くときの実務メモをまとめます。忙しい交代のなかでも、この観点を押さえておくと初動がぶれません。
- 「下痢」で終わらせず番号で記録:ブリストルのタイプ7が何回、という記録が感染判断につながる。
- おむつ交換のたびに皮膚を見る:IADは早期発見・早期ケアが最善。赤みの段階で保護を追加する。
- 経口補水は少量ずつ:一気飲みは嘔吐と誤嚥のもと。常温〜ぬるめで、こまめに支援する。
- 抗菌薬使用の有無を必ず確認:CD腸炎を疑うきっかけになる。使用中・使用後の下痢は要注意。
- CD腸炎・ノロが疑わしいときはアルコールに頼らない:芽胞やウイルスに効きにくいため、石けんと流水の手洗いを徹底する。
- PPEは処置ごとに交換:手袋を外したら手洗い。使い回しは交差感染のもと。
- 下痢止めは自己判断で使わない:原因の見極めと薬の判断は看護師・医師に委ねる。
- 集団発生の芽を早く共有:同時期に複数の症状が出たら、ためらわずすぐ看護師と施設に報告する。
- ふだんの排便を知っておく:その人の平常時と比べた変化こそが、いちばん早い異常のサインになる。
よくある質問(FAQ)
Q. 下痢が続くとき、まず何を観察すればいいですか?
便の性状(ブリストルのタイプ)・色・血や粘液の有無・回数と、脱水のサイン(尿量減少・口の乾き・元気のなさ)、発熱・嘔吐・腹痛の有無です。ふだんの排便パターンと比べた「変化」を具体的に記録し、看護師に報告します。
Q. 下痢止めを飲ませてもよいですか?
介護職が自己判断で使うことはできません。感染性の下痢に下痢止めを使うと病原体や毒素が体内にとどまって悪化することがあり、便秘が原因の溢流性下痢ではさらに詰まります。薬の判断は看護師・医師に委ねてください。
Q. 感染性かどうかは、どこで見分けますか?
介護職は診断はしませんが、水様便が頻回・噴射する嘔吐・発熱・血便・同時期に複数名の発症といったサインで「感染かもしれない」と疑い、標準予防策と接触予防策を強化して看護師に報告します。診断や検査は医師が行います。
Q. 抗生物質を飲んでいる利用者の下痢で気をつけることは?
クロストリジオイデス・ディフィシル(CD)腸炎の可能性があります。CD菌は芽胞をつくりアルコール消毒が効きにくいため、石けんと流水での手洗いを徹底し、手袋・エプロンで接触予防策をとります。抗菌薬使用中・使用後の下痢は必ず看護師に伝えましょう。
Q. おむつかぶれ(IAD)を防ぐには?
排便のたびにこすらず洗浄し、保湿と、軟便・水様便では撥水性の保護剤を追加します。排泄後は速やかに交換し、パッドの重ね付けは避けます。赤みやびらんを見つけたら看護師に報告してください。
Q. どんなときに受診・救急を考えますか?
下痢が数日続いて水分がとれず脱水のサインがある、血便や黒い便、高熱・激しい腹痛・繰り返す嘔吐、集団発生の疑いがあるときです。看護師にすぐ報告し、医師と連携して判断します。
参考文献・出典
- [1]
- [2]
- [3]Clostridioides difficile感染症診療ガイドライン2022- 日本感染症学会・日本化学療法学会
CD腸炎の接触予防策、石けんと流水による手洗い、隔離・接触予防策の解除の目安(下痢消失後48時間)
- [4]
- [5]
- [6]
まとめ
施設で利用者の下痢が続くときの介護職の役割は、「観察・記録・報告」と「清潔ケア・水分支援・感染予防」に集約されます。便の性状(ブリストル)・色・血や粘液・回数を客観的にとらえ、脱水のサインを見のがさず、水様便・嘔吐・発熱・血便があれば感染性を疑って標準予防策を強化する。おむつ内の便からはスキンケア(洗浄・保湿・保護)で皮膚を守り、抗菌薬使用中ならCD腸炎にも注意する。そして、下痢止めを使うかどうかといった医学的判断は看護師・医師に委ねる。この線引きを守ることが、利用者の重症化と施設内の感染拡大を防ぎます。
「たかが下痢」と思わず、続くときこそ初動の観察とチームでの情報共有を大切にしてください。日々の気づきの積み重ねが、利用者の安全と尊厳を守る介護につながります。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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