
特養の費用|月額・所得別負担限度額・追加費用の内訳
特別養護老人ホームの費用を月額構成・要介護度別・所得別負担限度額・追加費用まで厚労省データで解説。減免制度の使い方も具体例で紹介します。
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この記事のポイント
特別養護老人ホーム(特養)の月額費用は、施設サービス費(介護保険1〜3割負担)+居住費+食費+日常生活費の4要素で構成され、多床室なら月7〜10万円、ユニット型個室なら月12〜15万円がおおよその目安です。住民税非課税世帯であれば「介護保険負担限度額認定」で食費・居住費の上限が大幅に下がり、第1段階の方は月5万円台で収まることもあります。要介護度・居室タイプ・所得段階の3つで実額が決まる仕組みを順に確認しましょう。
目次
親や配偶者の入所先として特別養護老人ホーム(特養)を検討するとき、最大の不安は「結局、毎月いくらかかるのか」ではないでしょうか。介護付き有料老人ホームと違い、特養は入所一時金がなく月額の利用料のみで終身入所できる公的施設ですが、それでも費用は要介護度・居室タイプ・本人や世帯の所得で大きく変わります。同じ施設の同じ部屋でも、第1段階の方と第4段階(住民税課税世帯)の方では月額が倍近く違うことも珍しくありません。
本記事では、厚生労働省の介護報酬告示・社会保障審議会資料・「介護サービス情報公表システム」など一次資料をもとに、(1) 月額費用の構成と内訳、(2) 所得別の負担限度額認定の仕組み、(3) 居室タイプ別の居住費、(4) 食費・日常生活費・追加サービス費の実態、(5) 申請から減免までの流れを順番に整理します。年金収入だけで足りるのか、貯蓄をどれだけ取り崩すのか、家族で誰がどの費用を負担するのかを冷静に判断するための材料として活用してください。
特養の費用の全体像:月額の構成と相場(要介護度別)
特別養護老人ホームの月額費用は、大きく分けて「介護保険サービス費」「居住費」「食費」「日常生活費」の4つで構成されます。このうち介護保険サービス費は要介護度と居室タイプ、加算項目で決まり、居住費・食費は厚生労働省告示の基準費用額をベースに各施設が設定します。日常生活費は理美容代やおむつ代(一部)、嗜好品などの実費です。
月額費用の構成(第4段階・1割負担の場合)
| 費目 | 多床室 | 従来型個室 | ユニット型個室 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 介護保険サービス費(1割) | 約2.5〜3.0万円 | 約2.5〜3.0万円 | 約2.7〜3.2万円 | 要介護度・夜勤体制等で変動 |
| 居住費(基準費用額) | 2.7万円 (915円×30日) | 3.7万円 (1,231円×30日) | 6.2万円 (2,066円×30日) | 2024年8月改定 |
| 食費(基準費用額) | 4.3万円(1,445円×30日) | 3食提供前提 | ||
| 日常生活費 | 0.5〜1.5万円程度 | 理美容・嗜好品・教養娯楽など | ||
| 月額合計目安 | 10〜11万円 | 11〜12万円 | 14〜15万円 | 2割・3割負担はさらに増額 |
厚生労働省「介護サービス情報公表システム」の試算例では、要介護5の方が多床室を利用すると月額約106,930円、ユニット型個室では約143,980円となっています。後述する負担限度額認定の対象になれば、この合計額から食費・居住費が大幅に軽減される仕組みです。
要介護度別の介護保険サービス費(介護老人福祉施設サービス費・1日あたり単位数の目安)
介護保険サービス費は、介護報酬告示で定められた「介護福祉施設サービス費」の単位数(1単位=10円前後、地域区分で1.0〜1.14倍)に、加算(栄養管理・看取り介護・夜勤職員配置・サービス提供体制強化など)が積み上がる構造です。2024年度改定で基本報酬が引き上げられ、要介護度が重いほど単位数は高くなります。
| 要介護度 | 従来型個室(円/日・1割) | ユニット型個室(円/日・1割) | 月額目安(30日・1割) |
|---|---|---|---|
| 要介護3 | 約732円 | 約814円 | 2.2〜2.4万円 |
| 要介護4 | 約802円 | 約885円 | 2.4〜2.7万円 |
| 要介護5 | 約871円 | 約955円 | 2.6〜2.9万円 |
※基本報酬のみの概算。実際には処遇改善加算・サービス提供体制強化加算・看取り介護加算など複数の加算が上乗せされ、月額3万円前後になるのが一般的です。2割・3割負担に該当する高所得者は単純に2倍・3倍となります。
2割・3割負担の判定基準
2018年8月から、本人の合計所得金額と年金収入の合計が一定額以上の方は介護保険の自己負担割合が2割・3割に引き上げられました。単身世帯の場合の目安は次のとおりです。
- 1割負担:本人の合計所得金額160万円未満(または年金収入+その他合計所得金額280万円未満)
- 2割負担:合計所得金額160万円以上で年金収入+その他合計所得金額280万円以上(340万円未満)
- 3割負担:合計所得金額220万円以上で年金収入+その他合計所得金額340万円以上
3割負担の場合、介護保険サービス費だけで月8万円を超え、ユニット型個室では月額20万円に達するケースもあります。一方で後述する「高額介護サービス費」により、月の自己負担に上限が設けられている点も覚えておきましょう。
所得別の負担限度額認定(第1〜第4段階)
特養の月額費用を「払えるかどうか」の分かれ目になるのが、「介護保険負担限度額認定」(特定入所者介護サービス費=補足給付)です。住民税非課税の方には居住費・食費の自己負担に1日あたりの上限が設定され、上限を超えた分は介護保険から施設へ直接支給されます。本人と世帯の課税状況、年金収入、預貯金額の3つで段階が決まり、第1〜第3段階の方は大幅に費用が下がります。
段階別の対象者要件
| 段階 | 世帯課税状況 | 本人の年金等収入 | 預貯金等の上限 (単身/夫婦) |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者、または世帯全員が住民税非課税で老齢福祉年金受給者 | — | 1,000万円/2,000万円 |
| 第2段階 | 世帯全員が住民税非課税 | 合計所得金額+課税年金収入額が年80万円以下 | 650万円/1,650万円 |
| 第3段階① | 世帯全員が住民税非課税 | 年80万円超〜120万円以下 | 550万円/1,550万円 |
| 第3段階② | 世帯全員が住民税非課税 | 年120万円超 | 500万円/1,500万円 |
| 第4段階 | 住民税課税世帯 | — | —(補足給付対象外) |
2021年8月の改正で、第3段階は①と②の2区分に分割され、預貯金要件もそれまでの「単身1,000万円・夫婦2,000万円」から段階別に細かく設定されました。生活保護を受給していない第1段階の対象者は、ほぼ「老齢福祉年金(年額約40万円)」のみで生活している方に限られます。
段階別の食費・居住費の負担限度額(1日あたり)
| 段階 | 食費 | 多床室 | 従来型個室 | ユニット型 個室的多床室 | ユニット型 個室 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1段階 | 300円 | 0円 | 320円 | 490円 | 820円 |
| 第2段階 | 390円 (短期は600円) | 430円 | 420円 | 490円 | 820円 |
| 第3段階① | 650円 (短期は1,000円) | 430円 | 820円 | 1,310円 | 1,310円 |
| 第3段階② | 1,360円 (短期は1,300円) | 430円 | 820円 | 1,310円 | 1,310円 |
| 第4段階 | 1,445円 (基準費用額) | 915円 | 1,231円 | 1,728円 | 2,066円 |
※短期入所(ショートステイ)と入所では一部金額が異なります。2024年8月の改定で、多床室は60円/日(月約1,800円)、その他の居室タイプも30〜60円/日引き上げられました。2025年8月にも軽微な見直しが予定されています。
第2段階の方の月額試算(多床室・要介護4)
たとえば「年金収入年78万円・住民税非課税・預貯金300万円」の方が多床室に入所した場合、第2段階に該当し、月額は次のように試算できます。
- 介護保険サービス費(要介護4・1割):約2.5万円
- 居住費:430円×30日=1.3万円
- 食費:390円×30日=1.2万円
- 日常生活費:0.5〜1.0万円
- 合計:約5.5〜6.0万円/月
年金収入が月6.5万円であれば、年金内でほぼ収まる水準です。第4段階の同条件(月10〜11万円)と比べて月5万円ほど軽減され、年間60万円の差になります。減免制度を使うか否かで生涯費用が数百万円単位で変わるため、必ず申請を検討してください。
ユニット型個室・従来型個室・多床室で違う居住費
特養の居室は4タイプあり、それぞれ居住費の基準費用額が異なります。プライバシーが確保されたユニット型個室ほど高く、相部屋の多床室が最も安いというのが原則です。2024年8月の制度改定で、すべての居室タイプで居住費が60円/日(月約1,800円)引き上げられました。
4つの居室タイプの違いと居住費(2024年8月以降)
| 居室タイプ | 定員 | 1日あたり 基準費用額 | 月額目安 (30日) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 多床室 | 2〜4人 | 915円 | 約27,450円 | カーテンで区切るタイプが中心。費用は最も安いが、プライバシー確保は限定的。 |
| 従来型個室 | 1人 | 1,231円 | 約36,930円 | 廊下に面した個室。共用スペースは食堂や談話室を全員で利用。 |
| ユニット型 個室的多床室 | 1人 | 1,728円 | 約51,840円 | 従来型多床室を間仕切り改修。10人程度のユニットで生活。 |
| ユニット型個室 | 1人 | 2,066円 | 約61,980円 | 10人前後の共同生活単位(ユニット)で、各個室+共有リビング。新設の主流。 |
ユニット型がなぜ高いのか
ユニット型は、概ね10人以下の「ユニット」ごとに共有リビング・キッチン・浴室が配置され、専属スタッフが担当する「ユニットケア」を前提にした建物構造です。建設コストが高いだけでなく、人員配置基準も「ユニットごとの専従職員」が求められるため、運営コストも高くなります。一方で、家庭的な雰囲気の中で個別ケアを受けられるメリットがあり、2003年以降の新設特養は原則ユニット型としていく方針が打ち出されました。
多床室はなぜ減っていないのか
厚生労働省はユニット型化を推進してきましたが、最新統計では特養全体の約4割が依然として多床室を中心とした従来型構造です。理由は「ユニット型は月額費用が高くなりすぎ、低所得高齢者が入りづらい」という現実問題で、自治体や事業者からの要望を受け、改修・建替え時にも多床室を一部維持するケースが続いています。家計に余裕がない場合、まずは多床室のある近隣の特養を優先的に探すのが現実的な選択肢です。
居室タイプを選ぶ際のチェックポイント
- 本人の希望:他人との同居が苦手か、孤独感を感じやすいか
- 家族の費用負担:年金内で収めたいなら多床室、貯蓄を取り崩してでも個別ケアを優先したいならユニット型
- 認知症の進行度:ユニット型は少人数で職員と顔なじみになりやすく、認知症の方には落ち着きやすい環境とされる
- 面会のしやすさ:個室であれば家族との個別時間を確保しやすい
- 地域の選択肢:都市部の新設施設はユニット型のみ、というケースも多い
申し込み時に居室タイプを複数選択できる施設もあります。「ユニット型個室を第1希望、多床室を第2希望」のように柔軟に申し込むと、入所までの待機期間を短縮できる場合があります。
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食費の自己負担と減額制度
特養における食費の基準費用額は1日1,445円(月約4.3万円)。これは厚生労働省告示で定められた「平均的な食材費+調理員人件費」を踏まえた標準額で、第4段階(住民税課税世帯)の方はこの額が原則の自己負担となります。2021年8月の改定で1,392円から1,445円に引き上げられ、その後据え置かれていますが、物価高騰により実際の運営コストは大きく上回っているのが現状です。
食費の中身:何にいくらかかっているのか
公益社団法人全国老人福祉施設協議会の2025年調査によると、特養の利用者1人1日あたりの実際の食費は1,787.6円(給食材料費972.8円+調理員人件費814.8円)にまで上昇しており、基準費用額の1,445円との差約340円は施設の持ち出しです。介護施設の経営圧迫要因として再三議論されていますが、利用者負担額の急激な引き上げを避けるため、現行では据え置きとなっています。
食事提供の内容
- 朝・昼・夕の3食+おやつを施設で調理して提供
- 常食・刻み食・ミキサー食・ペースト食・嚥下調整食など個別対応
- 糖尿病・腎臓病・高血圧などの治療食にも対応(栄養ケアマネジメント加算の算定施設)
- 誕生日メニューや行事食も提供する施設が多い
食事は単なる栄養補給ではなく、施設生活のQOL(生活の質)を左右する大切な時間です。施設見学の際は、献立表をもらって行事食や個別対応の頻度を確認するとよいでしょう。
食費の負担限度額(段階別)
食費にも居住費と同じく所得段階別の上限が設定されています。前述の通り、第1段階は1日300円、第2段階は390円、第3段階①は650円、第3段階②は1,360円、第4段階は基準費用額の1,445円が上限です。第3段階②は2021年8月の改定で新設された区分で、年金収入が年120万円を超える非課税世帯の方が該当します。改定前は同じ第3段階で650円だったため、月約2万円の負担増となった世帯が多く、当時は大きな反発がありました。
食費を抑える追加の方法
負担限度額認定に加えて、次の工夫で食費負担をさらに抑えられる場合があります。
- 外泊時の食費控除:家族と外出・外泊した日は食事を停止すれば、その日の食費はかからないか日割り計算となります(施設のルールにより異なるため要確認)。
- 社会福祉法人等利用者負担軽減制度:実施している社会福祉法人運営の特養では、低所得者の食費・居住費・利用料を1/4(生活保護受給者は1/2)軽減します。市町村への申請が必要です。
- 市町村独自の助成制度:自治体によっては独自に食費・居住費の助成を行っているところがあります。例:東京都の一部区市では非課税世帯への上乗せ給付など。
これらは申請しなければ適用されません。施設の生活相談員やケアマネジャーに「我が家に使える制度はありますか?」と必ず確認してください。
追加費用:日常生活費・特別なサービス・医療連携費
特養の月額費用には、介護保険でカバーされない「日常生活費」と「特別なサービス費」が必ず別途発生します。施設のパンフレットや見積書では「月10〜15万円」と書かれていても、実際の請求はそれより1〜3万円高くなるのが一般的です。家計シミュレーションでは、この「上乗せ部分」を必ず織り込んでください。
主な追加費用の内訳
| 項目 | 月額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 理美容代 | 1,500〜3,000円 | 2か月に1回の訪問理容が一般的 |
| 洗濯代 | 0〜5,000円 | 施設で行うか家族が持ち帰るかで差。クリーニング指定の衣類は別途実費 |
| おむつ代 | 原則施設負担 | 特養は施設提供。ただし指定銘柄やパッド等は実費の場合あり |
| 嗜好品・教養娯楽 | 2,000〜5,000円 | 新聞、雑誌、嗜好品、レクリエーション参加費 |
| 医療費 | 1,000〜10,000円 | 協力医療機関の外来・薬代。介護保険外 |
| 個別行事費 | 0〜3,000円 | クリスマス会、夏祭り、お花見など参加費 |
| クラブ活動費 | 0〜2,000円 | 書道、手芸など実施施設のみ |
| 電気・通信費 | 0〜2,000円 | 個室での家電持込時に追加請求される場合あり |
「介護保険外サービス費」として請求されるもの
厚生労働省告示「指定介護老人福祉施設サービスにおける特別な室料及び特別な食事の額に関する留意事項」では、施設が利用者から徴収できる費用が明確に定められています。これに該当しないものを「サービス向上のため」と称して請求することは認められていません。請求書を受け取ったら、次の3点を確認しましょう。
- 請求項目の単価と回数が明示されているか
- 利用者または家族の同意を得てから提供されているか
- 領収書・明細書が発行されているか
不透明な請求があれば、まず生活相談員に問い合わせ、それでも疑問が残る場合は市町村の介護保険担当窓口や国民健康保険団体連合会(国保連)へ相談してください。
医療費との関係
特養は介護保険施設ですが、医療施設ではないため、入所中の医療は協力医療機関への通院または往診となります。費用負担は次のように分かれます。
- 協力医の往診・健康診断:施設の介護保険サービス費に含まれる範囲が多い
- 専門医療や入院:医療保険適用で、自己負担分は別途請求
- 常用薬・処方薬:医療保険で薬剤費が発生(一部負担あり)
- 胃ろう・喀痰吸引等の医療的ケア:介護保険の加算の範囲内で実施されるが、付随する医療材料は実費
看取り介護加算と最期の費用
看取り期に入ると、施設では「看取り介護加算」が算定されます。これは介護保険給付の範囲内なので、本人負担は1〜3割相当が増えるのみで、終末期医療を別途高額に請求されるものではありません。具体的には、死亡前30日以内の期間中に1日あたり72〜1,580単位(要件により)が加算され、1割負担なら月8,000〜30,000円ほどの追加負担です。家族にとっては、最期の時間を施設の見慣れた環境で過ごせるメリットは大きく、費用面でも有料老人ホームより抑えられる傾向があります。
申請から入居まで:負担限度額認定証の取り方
「介護保険負担限度額認定証」は、所得段階が第1〜第3段階の方が補足給付(食費・居住費の減額)を受けるために必須の書類です。市町村の介護保険担当窓口へ申請し、認定後に交付された認定証を入所する特養に提示することで、毎月の請求額が下がります。申請しなければ第4段階の基準費用額が全額自己負担となるため、入所前または入所後すみやかに手続きを行いましょう。
申請に必要なもの
- 介護保険負担限度額認定申請書(市町村の窓口またはホームページで入手)
- 同意書(金融機関への預貯金照会の同意)
- 本人と配偶者の預貯金通帳のコピー(直近2か月分の取引履歴、定期預金、有価証券、現金、負債を含む)
- マイナンバー(個人番号)が確認できる書類
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 非課税年金等の振込通知書(遺族年金・障害年金など)
申請の流れ
- 市町村の介護保険担当窓口で相談(地域包括支援センターでも可)
- 申請書類一式を入手・記入。本人記入が困難な場合は家族・ケアマネが代筆可
- 必要書類を添えて市町村へ提出(窓口・郵送・電子申請に対応している自治体あり)
- 市町村が課税情報と預貯金額を確認(通常2〜4週間)
- 「介護保険負担限度額認定証」が交付される(有効期間:毎年8月1日〜翌年7月31日)
- 認定証を施設へ提示。提示日以降の食費・居住費が限度額に変更される
申請のタイミング
入所が決まったらすぐ申請するのが基本ですが、認定証は「申請月の初日」から有効となります。たとえば4月20日に申請して5月10日に認定証が届いた場合、4月1日にさかのぼって減額が適用されます。ただし、申請が遅れて月をまたぐと、前月分の差額は戻りません。「入所する施設の請求書が高すぎる」と気づいた時点で、月内に申請を済ませることが重要です。
毎年の更新申請
負担限度額認定証は1年更新です。住民税課税状況や預貯金額は毎年変動するため、市町村は7月頃に更新案内を送付します。同封の更新申請書に記入して返送するだけで継続更新できる場合が多いですが、預貯金通帳のコピーを再提出する自治体もあります。更新を忘れると8月から自動的に第4段階扱いになり、月数万円の負担増となります。家族が代理で管理する場合、毎年7月をカレンダーに登録しておくとよいでしょう。
認定証が出ないケース
- 世帯のいずれかに住民税課税者がいる(夫婦で世帯分離していても、配偶者の課税状況は通算)
- 預貯金等の総額が段階別の上限を超えている
- 有価証券・投資信託・金地金・負債の控除など、収支記録が不十分
- 申請書の記載や添付資料に不備がある
不認定となった場合でも、後述する「社会福祉法人等利用者負担軽減制度」や生活保護への切替で対応できる場合があります。市町村窓口で「他に使える制度はないか」必ず相談してください。
費用が払えなくなったら:減免・生活保護・福祉医療機構
特養入所後、本人の年金や預貯金、家族の援助では月額費用が払いきれなくなるケースがあります。退所を選ぶ前に、必ず以下の4つの制度を順番に確認してください。本来の制度設計上、「払えないから退所」とならないよう複数のセーフティネットが用意されています。
1. 高額介護サービス費(毎月の自己負担上限)
1か月の介護保険サービス費の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超過分が払い戻されます。上限額は所得区分により分かれます。
| 区分 | 月額上限(世帯) |
|---|---|
| 生活保護受給者等 | 15,000円 |
| 世帯全員が住民税非課税で年金収入+その他合計所得80万円以下 | 15,000円(個人)/24,600円(世帯) |
| 世帯全員が住民税非課税(上記以外) | 24,600円 |
| 住民税課税世帯(一般) | 44,400円 |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円 |
| 課税所得690万円以上 | 140,100円 |
申請は市町村への一度限りでOK。次回以降は自動的に超過分が指定口座へ振り込まれます。居住費・食費は対象外で、介護保険サービス費のみが対象である点に注意してください。
2. 高額医療・高額介護合算療養費制度
1年間(8月1日〜翌年7月31日)の医療保険と介護保険の自己負担合計が、所得区分別の上限額を超えた場合に超過分が払い戻される制度です。長期入院や複数施設利用で医療費がかさんだ年は、特に大きな還付になる可能性があります。市町村の介護保険担当と医療保険担当の両方で案内されます。
3. 社会福祉法人等利用者負担軽減制度
社会福祉法人が運営する特養や訪問介護で、低所得者の利用者負担を1/4軽減(生活保護受給者は1/2軽減)する制度です。対象は次の要件をすべて満たす方です。
- 世帯全員が住民税非課税
- 年間収入が単身150万円以下(家族が増えるごとに50万円加算)
- 預貯金等の総額が単身350万円以下(家族増ごとに100万円加算)
- 日常生活に必要な資産以外の活用できる資産がない
- 負担能力のある親族等に扶養されていない
- 介護保険料を滞納していない
市町村が認定を行い、対象施設で利用すると介護保険サービス費・食費・居住費の合計の25%が軽減されます。ただし「社会福祉法人等利用者負担軽減事業」を実施している施設に限るため、入所前に施設へ実施有無を確認してください。
4. 生活保護への切替・福祉医療機構の貸付
本人の年金・預貯金・家族支援を組み合わせても費用を賄えない場合、最終的なセーフティネットは生活保護です。特養入所中も申請でき、認定されれば月額費用が「介護扶助+生活扶助」で全額カバーされます。本人が「子に迷惑をかけたくない」とためらうケースも多いですが、生活保護は本人個人の権利であり、原則として子の収入は問われません(明らかな扶養義務違反がない限り)。
また、独立行政法人福祉医療機構(WAM)では低利の福祉貸付を行っており、施設利用料の支払いに困っている世帯への一時融資制度を設けている自治体もあります。市町村社会福祉協議会の「生活福祉資金貸付制度」(無利子または年1.5%)も選択肢の一つです。
制度を組み合わせるイメージ
「年金収入年90万円・預貯金200万円・住民税非課税」の方が要介護4でユニット型個室に入所した場合、第3段階①に該当し、次のように費用が階段状に下がります。
- 第4段階フル負担:月14万円
- +負担限度額認定(第3段階①):月8.5万円
- +高額介護サービス費(24,600円上限):月8.0万円
- +社会福祉法人軽減(実施施設):月6.5万円
このように制度を重ねれば、年金収入7.5万円+貯蓄取り崩しで対応可能なレベルまで下がります。「払えない」と諦める前に、必ず市町村窓口・施設・地域包括支援センターの3者で相談してください。
参考資料・一次ソース
- [1]
- [2]
- [3]介護保険最新情報 Vol.1280(2024年6月21日)- 厚生労働省老健局介護保険計画課・老人保健課
2024年8月施行 居住費基準費用額60円引き上げの通知(多床室915円・従来型個室1,231円・ユニット型個室2,066円)
- [4]
- [5]
- [6]
- [7]
まとめ
特養の月額費用は、介護保険サービス費(要介護度・自己負担割合)+居住費(4種類の居室タイプ別)+食費(基準費用額1,445円/日)+日常生活費の4要素で決まります。所得が住民税非課税の世帯であれば「介護保険負担限度額認定」で食費・居住費に1日あたりの上限が設定され、第1〜第3段階の方は月5〜8万円台まで圧縮できます。さらに高額介護サービス費・社会福祉法人軽減・生活福祉資金などのセーフティネットを組み合わせれば、年金生活でも特養での生活を続けることは十分可能です。
まず取り組むべきは、市町村の介護保険担当窓口で「介護保険負担限度額認定証」の申請。次に高額介護サービス費の手続きを済ませ、社会福祉法人運営施設なら追加軽減の対象になるか確認しましょう。そして毎年7月の更新申請を忘れないこと。年金収入と貯蓄、家族支援のバランスを家族会議で見直し、選択肢が複数あることを共有しておけば、後悔のない施設選びと長期介護に備えられます。
監修者
介護のハタラクナカマ 医療・介護監修チーム
医療・介護専門職チーム(看護師/介護福祉士/ケアマネジャー)
訪問看護・介護保険・医療保険に関する制度内容を、厚生労働省・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の一次ソースをもとに、医療・介護専門職チームが内容の正確性を確認しています。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。
介護の現場・介護職の視点
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