
認定調査とは
認定調査は要介護認定の一次判定材料となる訪問調査。市町村の認定調査員が自宅で74項目の基本調査と概況調査・特記事項を実施します。所要時間や流れ、特記事項の書き方のコツまで整理。
この記事のポイント
認定調査とは、要介護認定の申請後に市町村の認定調査員(市町村職員または委託ケアマネジャー)が申請者の自宅または入所先を訪問し、全国共通の74項目の基本調査に加えて概況調査・特記事項を聞き取る訪問調査のことです。所要時間は45〜60分程度。調査結果はコンピュータによる一次判定と、介護認定審査会による二次判定の基礎資料となり、要介護度を左右します。
目次
認定調査の3つの構成要素と法的位置づけ
認定調査は介護保険法第27条に基づき、市町村が要介護認定を行う際に必ず実施しなければならない訪問調査です。被保険者が市町村に要介護認定申請を行うと、市町村は「主治医意見書」の取り寄せと並行して、認定調査員を申請者宅に派遣します。調査票は厚生労働省が全国統一で定めており、自治体間で要介護度がバラつかないよう設計されています。
調査票は次の3部で構成されます。
- 概況調査: 利用中の介護保険サービス、家族構成、住居環境、傷病歴、現在の介護状況など、申請者の置かれている状況を全体把握する欄。
- 基本調査: 心身の状態に関する全国共通の74項目。一次判定(コンピュータ判定)の入力データとなる。
- 特記事項: 基本調査の選択肢では表現しきれない「選択の根拠」「介護の手間の頻度・程度」「調査時と日頃の差」などを自由記述で残す欄。二次判定で介護認定審査会の議論材料となる。
とくに特記事項は要介護度の上下を左右する重要パートで、コンピュータ一次判定が同じ点数でも特記事項の内容次第で二次判定の最終区分が変わるケースがある、と現場のケアマネジャーや市町村職員の間で長年指摘されてきました。
基本調査74項目の内訳
基本調査74項目の内訳(6領域)
基本調査の74項目は厚生労働省「認定調査員テキスト2009改訂版」で6領域に整理されています。各群は評価軸(能力/介助/有無)が異なるため、調査員はどの軸で見るかを意識しながら聞き取ります。
| 群 | 領域 | 項目数 | 評価軸 | 主な調査項目 |
|---|---|---|---|---|
| 第1群 | 身体機能・起居動作 | 13項目 | 能力 | 麻痺、関節の動き、寝返り、起き上がり、歩行、立ち上がり、視力、聴力など |
| 第2群 | 生活機能 | 12項目 | 主に介助 | 移乗、移動、食事摂取、排尿、排便、口腔清潔、洗顔、整髪、更衣、外出頻度など |
| 第3群 | 認知機能 | 9項目 | 能力 | 意思の伝達、生年月日や年齢、短期記憶、自分の名前、今の季節、徘徊など |
| 第4群 | 精神・行動障害 | 15項目 | 有無 | 被害妄想、作話、感情不安定、昼夜逆転、大声、介護抵抗、収集癖、火の不始末など |
| 第5群 | 社会生活への適応 | 6項目 | 能力/介助 | 薬の内服、金銭管理、日常の意思決定、集団への適応、買い物、簡単な調理 |
| 第6群 | 特別な医療 | 12項目 | 有無 | 点滴、中心静脈栄養、透析、ストーマ、酸素療法、レスピレーター、気管切開、疼痛看護、経管栄養、モニター測定、褥瘡処置、カテーテル |
合計67項目(1〜5群)+ 7項目(特別な医療)=74項目という数え方をする資料もありますが、厚生労働省の公式テキストでは6群合計74項目で整理されています。
認定調査から要介護度決定までの流れ
- 要介護認定の申請: 本人または家族が市町村窓口(または地域包括支援センター経由)に申請書を提出。同時に主治医を申告する。
- 認定調査員の訪問日程調整: 申請後1〜2週間以内に、市町村職員または委託されたケアマネジャー等の認定調査員から日程調整の連絡が入る。
- 訪問調査(45〜60分): 自宅または入所施設で、概況調査・基本調査74項目・特記事項の聞き取りを実施。家族の立ち会いが推奨される。
- 主治医意見書の作成: 並行して、市町村が申告された主治医に意見書を依頼。診療実績や認知症高齢者の日常生活自立度などが記載される。
- 一次判定(コンピュータ判定): 基本調査74項目と主治医意見書の一部項目を全国統一のロジックで処理し、要介護認定等基準時間(分)を算出して暫定の要介護度を出す。
- 二次判定(介護認定審査会): 保健・医療・福祉の専門家5名程度で構成される審査会が、一次判定結果と特記事項・主治医意見書を突き合わせ、最終的な要介護度を決定。一次判定からの変更(重度化・軽度化)はこの段階で起こる。
- 結果通知: 申請から原則30日以内に「要支援1〜2/要介護1〜5/非該当」のいずれかが通知される。
特記事項の書き方と「日頃の様子」を伝えるコツ
特記事項は「介護の手間が一次判定で過小評価された場合に、二次判定で実態に合った要介護度に補正してもらう」ための欄です。記載のポイントは次の通りです。
必ず書くべき3要素
- 選択した根拠: 基本調査でその選択肢を選んだ理由を、観察した事実ベースで書く(例:「歩行は『できる』を選択。テーブルや壁を伝って5m移動できることを確認」)。
- 介護の手間の頻度・程度: 「週3回深夜のトイレ介助で家族が起こされる」「服薬を1日3回家族が確認しないと飲み忘れる」など、介護者側の実労働量がわかる書き方が望ましい。
- 調査時と日頃の差: 調査当日は気を張って普段以上に動けるケースが多いため、家族から聞いた「普段の状態」を併記し、より頻度の高い状況を選択肢として採用したことを明示する。
家族・本人側が伝えると効果的な情報
- 夜間の徘徊や排泄介助の回数(家族の睡眠時間がどれだけ削られているか)
- 1週間のうち何日くらいデイサービスや訪問介護を利用しているか、その日の様子
- 転倒歴・受診歴・骨折歴など、過去半年〜1年の出来事
- 本人が嫌がって拒否する介助(入浴・服薬・更衣など)の頻度
- 認知症の周辺症状(BPSD)の具体的なエピソードと頻度
調査員から「何か気になることはありますか」と聞かれたタイミングで、メモにまとめておいた情報を渡すと特記事項に反映されやすくなります。
認定調査と主治医意見書・介護認定審査会の役割の違い
要介護認定では「認定調査」「主治医意見書」「介護認定審査会」の3つが連動して動きます。役割を混同しないよう整理しておきます。
| 項目 | 認定調査 | 主治医意見書 | 介護認定審査会 |
|---|---|---|---|
| 担当 | 市町村職員または委託ケアマネ等の認定調査員 | 申請者の主治医(かかりつけ医) | 保健・医療・福祉の専門家5名程度の合議体 |
| 場所/形式 | 申請者の自宅または入所先での訪問聞き取り | 診察記録・問診をもとに書面作成 | 市町村の会議室で開催(書面審査) |
| 主な目的 | 心身状態と介護の手間の実態把握 | 傷病・認知症の医学的所見の提供 | 一次判定の妥当性検証と要介護度決定 |
| 位置づけ | 一次判定の入力データ | 一次判定と二次判定の両方に使われる | 二次判定(最終決定) |
| 所要時間/タイミング | 1回・45〜60分 | 市町村依頼から数日〜2週間程度 | 1ケース数分〜10分程度の合議 |
認定調査が「生活の場での実態」を、主治医意見書が「医学的な裏付け」を担い、二次判定の介護認定審査会が両者を突き合わせて最終判断する、という分業構造になっています。
認定調査に関するよくある質問
Q1. 認定調査は誰が来るのですか?
新規申請の場合は市町村の職員(保健師・看護師・福祉職など)が原則担当します。更新申請や区分変更申請では、市町村から委託を受けた居宅介護支援事業所のケアマネジャーや地域包括支援センター職員が訪問する場合もあります。いずれも市町村が指定する研修を修了した有資格者です。
Q2. 調査にはどのくらい時間がかかりますか?
標準的には45〜60分程度です。認知症の周辺症状や医療処置が多いケース、家族からの聞き取りに時間がかかるケースでは1時間半近くになることもあります。事前に主治医や入院歴のメモ、薬の一覧を準備しておくと進行がスムーズです。
Q3. 家族は同席した方がよいですか?
同席を強く推奨します。本人は調査員の前で「できる」と答えがちで、日常の介護負担が伝わらないことが多いためです。家族は普段の介助頻度・夜間の対応・転倒歴・服薬管理の状況などを補足説明する役割を担います。
Q4. 調査結果に納得できない場合はどうすればよいですか?
結果通知後60日以内に都道府県の介護保険審査会に審査請求できます。また、状態が変化したと感じた場合は「区分変更申請」を行うことで、新たな認定調査と二次判定をやり直してもらえます。区分変更申請には期限の制限はありません。
Q5. 認定調査の前に準備しておくべきものは?
(1)介護保険被保険者証 (2)主治医の連絡先と診療科 (3)現在服用中の薬の一覧(お薬手帳) (4)過去半年の通院・入院歴のメモ (5)家族が困っている場面のエピソード集、を用意しておくと調査票への記載漏れを防げます。
まとめ
認定調査は要介護認定の入り口であり、概況調査・基本調査74項目・特記事項の3部構成で実施されます。コンピュータによる一次判定だけでは表現しきれない「介護の手間」を伝えるのが特記事項の役割で、ここに「日頃の様子」をどれだけ具体的に書き残せるかで、介護認定審査会による二次判定の結果が変わってきます。本人だけでなく家族が同席し、夜間の介助頻度や周辺症状のエピソードを準備しておくことが、適切な要介護度の判定につながります。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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