共同意思決定(SDM)とは

共同意思決定(SDM)とは

共同意思決定(SDM:Shared Decision Making)は、患者・家族と医療介護専門職が情報と価値観を共有しながら治療やケアを一緒に決めるモデル。3ステップとICとの違いを解説。

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この記事のポイント

共同意思決定(SDM:Shared Decision Making)とは、患者・家族と医療介護の専門職が、エビデンス(科学的根拠)と本人の価値観・希望を共有しながら、治療やケアの方針を「一緒に」決めていくプロセスです。専門職が一方的に説明して同意を得るインフォームド・コンセントとは異なり、双方向の対話で合意形成する点が特徴で、複数の選択肢があり医学的成績だけでは選べない場面で重要性が高まっています。

目次

共同意思決定(SDM)とは何か

共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)は、医療者と患者が利用可能な最良のエビデンスを使って一緒に意思決定を行うアプローチで、日本医療安全学会は「医療者と患者が協働して、医学情報と患者の価値観に基づき、患者にとって最善の医療上の決定に至るプロセス」と定義しています。1997年にCharlesらが提唱した4つの必須条件(①医療者と患者の少なくとも2人が参加 ②両者が情報を共有 ③合意形成のステップを踏む ④実施する方針について合意に達する)が国際的な基盤になっています。

SDMが必要となるのは、治療法やケア方針が一つに定まらない「エビデンスの不確実性が高い場面(equipoise)」です。透析療法・腎代替療法の選択、進行がんの治療方針、認知症の医療同意、人生の最終段階の医療・ケア、在宅か施設かの選択など、医学的な成績だけでは決めきれず、本人の生き方や価値観が大きく関わる領域で活用されます。

日本では厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」が、本人・家族と医療ケアチームの繰り返しの話し合いを基本としており、その思想はSDMと一致します。また、がん検診運用マニュアルでもSDMの導入が明記され、医療現場だけでなく介護現場のサービス担当者会議・看取り判断・家族支援にも応用される概念に広がっています。

SDMの基本|患者と専門職が『一緒に』決める意思決定モデル

共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)は、医療・介護における意思決定モデルの一つで、専門職が一方的に決める「パターナリズム」でも、本人だけに任せる「インフォームドチョイス」でもなく、両者が情報と価値観を共有して一緒に決める方法です。

1997年にCharles Cらが論文で定式化し、欧米では2010年代に標準モデルとして普及しました。日本では厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年改訂)が ACP(人生会議)の文脈で SDM を採用しています。

介護現場では、看取り期のケア方針・延命処置・介護施設選択・身体拘束の是非など、本人と家族の価値観が結果を大きく左右する場面で活用されます。エビデンス(科学的根拠)と本人の価値観・希望のバランスを取りながら、「最善の選択」を探っていくのが特徴です。

SDMを進める3つのステップ(Three Talk Model)

英国のElwynらが提唱した「Three Talk Model(3つの会話モデル)」は、SDMを臨床で実践するための代表的な枠組みです。次の3段階を行き来しながら合意形成を進めます。

  1. Team Talk(チーム・トーク):意思決定が必要なことを本人に伝え、本人が「決定の主役」であることを共有します。専門職と本人がチームになるという信頼関係を作り、どんな選択肢があるかを大まかに示します。介護現場では、サービス担当者会議の冒頭で本人・家族の意向を確認する場面に相当します。
  2. Option Talk(オプション・トーク):各選択肢の内容、メリット・デメリット、不確実性を、本人が理解できる言葉や資料(意思決定支援ツール/decision aids)を使って具体的に説明します。本人が十分に理解しているかを都度確認し、誤解があれば補正します。
  3. Decision Talk(ディシジョン・トーク):Option Talkで共有した選択肢に対して、本人が何を大切にしたいか(価値観・好み)を引き出し、希望を明確化した上で合意に至ります。一度の会話で結論を急がず、考える時間を保証することも重要です。

3ステップは一方通行ではなく、本人の理解度や状況変化に応じて何度も往復します。認知症や意思表示が難しい方の場合は、家族・代理意思決定者を交えてプロセスを繰り返すことが推奨されます。

SDMの3つのステップ

  1. Choice talk(選択肢を伝える): 複数の選択肢があることを本人・家族に明示する。「決めるのは皆さんです」と伝え、検討の余地を作る。
  2. Option talk(情報を共有する): 各選択肢のメリット・デメリット・エビデンス・確率を分かりやすく説明。意思決定支援ツール(Patient Decision Aids)を活用する。
  3. Decision talk(決定を支援する): 本人の価値観・希望・心配事を引き出し、それと選択肢を照らし合わせて結論に導く。決定後の伴走を約束する。

意思決定モデル3類型の違い

モデル主導者情報の流れ適する場面
パターナリズム専門職専門職→患者救急・短時間判断
インフォームドチョイス本人専門職→本人(説明後本人決定)選択肢が単純なとき
SDM専門職と本人の協働双方向価値観依存・複数選択肢・看取り期

インフォームドコンセント(IC)が「説明と同意」なのに対し、SDMは「対話と協働」が中心。介護現場ではIC+SDMをセットで行うのが理想です。

介護現場でSDMを実践するコツ

  • サービス担当者会議でSDMフレームを使う: 「選べる選択肢を3つ提示→それぞれの結果と確率を共有→ご本人の価値観で選ぶ」を意識
  • 意思決定支援ツールを作る: 経管栄養・在宅看取り・グループホーム移行など、よく出てくる選択は施設で標準フォーマット化
  • 「決めなくていい」も選択肢: 即決を求めず「来週もう一度話し合いましょう」と時間を取る
  • 家族間の意見不一致を整理: ジェノグラム・エコマップで家族関係を可視化し、キーパーソンを特定
  • 意思決定の経緯を記録: 「誰が・何を・どう判断したか」をケアプランに残し、後で変更可能にしておく

SDMの効果を示す主要なエビデンス

SDMの有効性は国際的な研究で示されています。代表的な知見を整理します。

  • Cochraneレビュー(2017年・Stacey D et al.):Patient Decision Aids(意思決定支援ツール)の効果を検証した105の無作為化比較試験(参加者約31,000人)のメタ解析で、ツール使用群は通常ケア群と比較して「選択肢への知識スコアが平均13ポイント上昇」「選択肢のリスク認識が正確になる確率が2倍以上」「意思決定への迷い(decisional conflict)が有意に減少」という結果が示されています。
  • 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年改訂):本人・家族と医療ケアチームによる繰り返しの話し合いを基本とし、本人の意思が変化することを前提に意思決定プロセスを設計するよう求めています。SDMの考え方と整合的で、看取り期・終末期ケアにおける標準的アプローチとして位置づけられています。
  • がん検診運用マニュアル(厚生労働省):がん検診受診の意思決定にSDMの導入が明記され、利益と不利益(過剰診断・偽陽性のリスク)を本人が理解した上で選択することが推奨されています。
  • 米国PCORI(Patient-Centered Outcomes Research Institute):2010年設立以来、患者参加型研究を通じてSDMの実装研究を多数支援。慢性疾患管理・がん治療・透析選択などで意思決定支援ツールの開発と評価を進めています。

これらの知見は、SDMが「時間がかかる手間」ではなく「意思決定の質と満足度を高める投資」であることを示唆します。介護現場の看取り判断・施設選択・身体拘束の同意取得などにも応用が広がっています。

よくある質問

Q1. 認知症の方にもSDMは可能ですか?
A. 軽度〜中等度なら本人の意思を可能な限り尊重し、補完者(家族・後見人)と協働する「拡張型SDM」を行います。重度では事前指示書・人生会議ノートの活用が中心になります。
Q2. 時間がかかりすぎませんか?
A. 初回は30〜60分必要ですが、その後の混乱・苦情・訴訟リスクを大きく減らすため、長期的には時間効率が高いことが研究で示されています。
Q3. 介護報酬上の評価はありますか?
A. 看取り介護加算・ACP関連加算(人生会議実施記録)で間接的に評価されます。2024年改定で評価軸が強化されました。

まとめ

SDM(共同意思決定)は、看取り期や複雑なケア選択の場面で本人・家族・専門職が協働して「最善の選択」を探るモデルです。3ステップを意識し、意思決定支援ツールを整備することで、後悔の少ない介護を実現できます。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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