介護カンファレンスの運営|サ担会議・ケースカンファ・退院前を進行する技術
介護職向け

介護カンファレンスの運営|サ担会議・ケースカンファ・退院前を進行する技術

介護現場で運営する3種類のカンファレンス(サービス担当者会議・施設内ケースカンファレンス・退院前カンファレンス)の進行・準備・議事録のコツを体系化。加算要件と多職種連携のファシリ術まで現場目線で解説します。

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この記事のポイント

介護カンファレンスの運営は、種類ごとに目的・参加者・記録様式が違うことを理解するのが第一歩です。ケアマネが法令上の義務として開くサービス担当者会議、施設・在宅サービス事業所が日常のケア改善のために開くケースカンファレンス、医療機関主導で在宅復帰を設計する退院前カンファレンスの3種類を区別し、それぞれにアジェンダ・議事録テンプレート・タイムキープを用意することで会議の質と加算算定の両方を守れます。

目次

「議題が散らかってメンバーが疲れる」「議事録を書くだけで30分かかる」「医療職に圧倒されて自分の意見が言えない」——介護現場のカンファレンス運営にはこうした共通の悩みがあります。原因の多くは、会議の種類ごとに違う準備・進行・記録のフレームを使い分けていないこと。サービス担当者会議は介護保険法上の必須会議で、開催記録がないと運営基準減算の対象になります。ケースカンファレンスは事業所内で柔軟に設計でき、議題を絞り込む技術が成果を左右します。退院前カンファレンスは医療側のペースで進むため、ケアマネ・在宅サービス事業所側の準備力が問われます。本記事では3種類のカンファレンスを「準備・進行・記録・加算」の4軸で整理し、明日から使えるアジェンダと議事録テンプレートまで提示します。

3種類のカンファレンスを「目的・主催・記録」で見分ける

介護現場で混同されやすい3種類のカンファレンスを、運営の責任者と記録様式の観点で整理します。会議の名前は同じ「カンファレンス」でも、根拠法令・必須参加者・議事録の保存義務がそれぞれ違います。

会議の種類根拠主催記録様式主な目的
サービス担当者会議指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(第13条第9号)ケアマネジャーケアプラン第4表「サービス担当者会議の要点」ケアプラン原案の検討・専門的意見の聴取
施設内ケースカンファレンス(事業所内)事業所の任意(運営基準上の必須記録なし)介護リーダー・主任ケアマネ等事業所独自の議事録(5W1H+アクション)ケアの質向上・事例検討・チーム学習
退院前カンファレンス診療報酬「退院時共同指導料2」/介護報酬「退院・退所加算」入院先医療機関居宅サービス計画等にカンファ要点を記録+医療機関からの文書写し在宅復帰に向けた医療と介護の引き継ぎ

運営側が押さえるべき違い

  • サービス担当者会議は「開催そのもの」と「要点記録」が法令義務。やむを得ず開催できないときは照会記録で代替できますが、運営指導でチェックされる要件です。
  • ケースカンファレンスは法令の縛りがない分、事業所のテーマ設定・タイムキープ・記録テンプレートに自由度があります。逆に言えば「何を議論したいか」を運営側が定義しないと迷走します。
  • 退院前カンファレンスは医療側が主催で進行ペースも医療職のリズム。介護側は事前に「在宅で確認したい3項目」を準備しないと聞きそびれます。

サービス担当者会議の運営手順|5場面・準備・進行・第4表の書き方

サービス担当者会議は、介護保険法令上ケアマネジャーが必ず開催しなければならない会議です。運営基準では「居宅サービス計画の新規作成・変更時、要介護更新認定時、要介護状態区分の変更認定時」に、利用者・家族・サービス担当者を招集して開催することが求められます。やむを得ない事情があるときに限り、担当者への照会で代替できます。

開催が必須となる5つの場面

  1. 居宅サービス計画を新規に作成するとき
  2. 要介護認定を更新したとき
  3. 要介護状態区分の変更認定を受けたとき
  4. 居宅サービス計画を変更するとき(軽微な変更は除く)
  5. 主治医意見書の内容や利用者の状況に大きな変化があったとき

準備(開催1週間前まで)

  • ケアプラン原案を完成させる:第1表〜第3表を全担当者に事前送付。当日その場で読ませない。
  • 日程調整は3案以上提示:医師参加の壁が高いため、医師の外来日・往診日を起点に他職種を合わせる。
  • 利用者・家族に「議題と質問してほしいこと」を伝える:本人参加の会議でも、当事者が黙ってしまうのは準備不足が原因。
  • 開催通知に「想定所要時間」を明記:60分以内が原則。それ以上必要なら議題を分割。

進行のアジェンダ例(60分)

  1. 開会・参加者紹介・本日の議題確認(5分)
  2. 利用者・家族の意向と現状の困りごと(10分)
  3. ケアプラン原案の説明(10分)
  4. 各サービス担当者からの専門的意見(20分)
  5. 意見をもとにした原案修正の合意(10分)
  6. 次回開催時期と宿題の確認・閉会(5分)

第4表「サービス担当者会議の要点」の記載項目

ケアプラン第4表は厚生労働省の標準様式で、以下の項目を埋めることで運営指導の指摘を回避できます。

  • 開催日・場所・所要時間
  • 開催回数(第○回)と開催理由(新規/更新/区分変更/その他)
  • 会議出席者の氏名・所属・職種
  • 検討した項目・検討内容(議題ごと)
  • 結論(合意事項とアクション)
  • 残された課題(次回の宿題)

欠席者が出た場合は「照会した内容」を別途記録。電話・FAX・メールいずれでも構いませんが、いつ・誰に・何を照会して何を回答してもらったかを残します。

施設内ケースカンファレンスの運営|議題設計とファシリテーション

施設内ケースカンファレンス(事業所内事例検討会)は、運営基準上の必須会議ではないものの、ケアの質を継続的に高めるために多くの介護施設・在宅サービス事業所が定期開催しています。サービス担当者会議のような厳密な様式はない代わりに、議題が散らかると形骸化しやすいのが運営上の課題です。

議題設計の3パターン

  1. 困難事例検討型:BPSD(認知症の行動・心理症状)対応、家族との関係調整、看取り判断など、ひとりで抱え込みやすいケースを多職種で共有する。
  2. 振り返り型(事故・ヒヤリハット):転倒・誤薬・誤嚥などのインシデントを「人を責めず仕組みを直す」観点で分析する。リスクマネジメント加算やリビングウィル対応の足場になる。
  3. ケアプラン振り返り型:モニタリング結果をもとに目標達成度を点検し、次の介入を決める。「達成できなかった原因」を環境・本人・支援の3層で分解するとアクションが出やすい。

ファシリテーション5つのコツ

  • 議題は1つに絞る:60分で複数テーマを扱うと議論が浅くなる。テーマ追加は次回に回す。
  • 事前資料を1枚にまとめる:利用者情報・経過・困っていること・話し合いたい問いの4区分。A4両面まで。
  • 発言順を職位順にしない:若手・夜勤担当・新人から先に話してもらう。リーダーが先に話すと意見が誘導される。
  • 「事実」と「解釈」を分けて板書する:観察した事実(昨夜2時に大声)と解釈(不安だったのでは)を別欄に書くと、原因分析が深まる。
  • アクションは担当者と期限を必ず付ける:「みんなで気をつけよう」では翌週には消えている。誰が・いつまでに・何をやるかを議事録に残す。

議事録テンプレート(ケースカンファ用)

【開催情報】
日時:       場所:       司会:       書記:
参加者:(氏名・職種)

【検討対象】
利用者:(イニシャル可)  事例カテゴリ:(困難/インシデント/プラン振り返り)

【観察された事実】
・
・

【参加者の解釈・意見】
・
・

【決定したアクション】
1. 担当:    期限:    内容:
2. 担当:    期限:    内容:

【次回までの宿題・モニタリング項目】
・

このテンプレートを事業所の共有フォルダに置き、毎回コピーして使うだけで議事録作成時間は半分以下になります。

退院前カンファレンスの運営|介護側が押さえる事前準備と当日5項目

退院前カンファレンスは入院先医療機関が主催する会議で、入院していた利用者が在宅復帰するときに、医療と介護のサービス担当者が顔を合わせて引き継ぎを行います。診療報酬では「退院時共同指導料2」、介護報酬では居宅介護支援事業所の「退院・退所加算」の算定要件にもなっており、介護側はカンファレンス参加によって加算単位の上乗せを受けられます。

事前準備(開催前〜当日朝)

  • 入院時情報連携加算の情報提供を済ませる:入院から3日以内に医療機関へ情報提供すれば入院時情報連携加算(Ⅰ)200単位、4〜7日以内なら(Ⅱ)100単位を月1回算定可能。退院前カンファの前段階として位置付けると医療側もスムーズ。
  • 在宅で確認したい3項目を準備する:①継続する医療処置(吸引・経管栄養・褥瘡処置など)、②介護負担の変化(家族の介護力・住宅環境)、③緊急時の連絡体制と判断基準。
  • 関係事業所への声かけ:訪問看護・訪問リハ・福祉用具・通所サービス等、退院後すぐに動く事業所には参加可否を早めに確認。物理的に参加が難しければ事前に「聞いてほしい質問」を集約。

当日の標準的な進行(30〜45分)

  1. 開催趣旨と自己紹介(3〜5分)
  2. 入院中の経過と現在のADL・医療処置の説明(医療機関側、10〜15分)
  3. 退院後の在宅サービス計画(ケアマネ、5〜10分)
  4. 利用者・家族の意向と不安の聞き取り(5〜10分)
  5. 緊急時の連絡先・判断基準・主治医の引き継ぎ確認(5分)

退院・退所加算の単位数(2024年度改定)

区分連携回数カンファ参加なしカンファ参加あり
退院・退所加算(Ⅰ)1回450単位600単位
退院・退所加算(Ⅱ)2回600単位750単位
退院・退所加算(Ⅲ)3回900単位

※入院又は入所期間中につき1回が限度。初回加算とは同時算定不可。

加算上の「カンファレンス」要件(病院・診療所の場合)

退院・退所加算でカンファ参加と認められるためには、診療報酬「退院時共同指導料2の注3」の要件を満たす必要があります。入院先の保険医・看護師等を除いて、以下のうち3者以上の参加が必要です。

  • 在宅療養担当医療機関の保険医または看護師等
  • 歯科医師またはその指示を受けた歯科衛生士
  • 保険薬局の保険薬剤師
  • 訪問看護ステーションの看護師等(准看護師を除く)、理学療法士、作業療法士または言語聴覚士
  • 介護支援専門員
  • 相談支援専門員

通所介護・通所リハの職員(看護師・リハ職含む)はカウントに含めない点が運営上の落とし穴。同じ訪問看護ステーションから看護師とPTが2名参加しても1者として数えるため、参加メンバーの所属法人を事前に整理しておきましょう。

記録の残し方

カンファ参加時は国の定める様式ではなく、日時・開催場所・出席者・内容の要点を居宅サービス計画等に記録し、利用者・家族に提供した文書の写しを添付するのが標準的な運用です。退院・退所情報記録書の標準様式例(厚労省提示)を参考に、自施設の様式を整えるとよいでしょう。

医療職と対等に話すための事前準備と用語ハンドリング

カンファレンスで「医師や看護師にペースを握られて発言できない」「専門用語が分からず流される」と感じる介護職は少なくありません。介護労働安定センター「介護労働実態調査」では、職場の不満として「医療職との連携」を挙げる介護職の声が継続的に報告されています。対策は、運営側があらかじめ介護職の発言枠と用語ハンドリングを設計することです。

運営側が用意する3つの工夫

  • 「介護職からの観察報告」枠を議題に組み込む:朝食時の表情、夜間の覚醒、家族との会話量など、日常生活で介護職しか観察できない情報を必ず最初に発言してもらう枠を作る。司会が「では○○さんから日常の様子を5分でお願いします」と振る。
  • 専門用語のミニ事前資料を配る:医療側から出る頻出用語(褥瘡、ADL、IADL、誤嚥性肺炎、せん妄、嚥下機能、リエイブルメント等)を1枚資料にまとめて参加者全員に共有。介護職員が会議中に質問する心理的ハードルが下がる。
  • 「分からない用語は手を挙げて聞く」ルールを宣言:開会時の司会の一言で、その場の空気が変わる。質問は学びの機会と位置付ける。

介護職側が事前にやっておくこと

  1. 担当利用者の直近1週間の食事量・排泄・睡眠・気分・痛みのメモを持参
  2. 家族との会話で出た「困っていること」と「希望」を箇条書きで整理
  3. 分からない医療用語は事前にケアマネに聞く。会議で初めて出会うとフリーズする
  4. 自分の意見は「観察した事実 → 私はこう感じた → 提案」の順で短く述べる練習

当サイト独自の運営フレーム:「3つの観察軸」

本サイトでは介護現場のカンファレンス運営を観察してきた経験から、議論を深めるための「3つの観察軸」を提案します。困難事例の検討で迷ったら、参加者に以下の3軸でそれぞれ1人ずつ発言してもらうと議論が立体的になります。

  1. 身体の軸:バイタル・ADL・痛み・嚥下・栄養・服薬の客観データ(看護師・リハ職・栄養士が主導)
  2. 暮らしの軸:1日の過ごし方・趣味・楽しみ・人間関係・住環境(介護職・家族・本人が主導)
  3. 気持ちの軸:本人の意思・不安・希望・拒否のサイン(介護職・ケアマネ・心理職が主導)

多くの会議は「身体の軸」だけで終わりがちですが、3軸すべてを言語化してから合意形成に進むと、ケアプランに反映できる具体的なアクションが出てきます。

カンファレンス運営のよくある質問

Q. サービス担当者会議に医師が参加できないときはどうすればよいですか?

医師が出席できない場合は「やむを得ない理由」として、ケアプラン原案を医師に文書照会する形で代替できます。照会内容と回答を記録に残し、第4表または別紙に綴じておくと運営指導での説明がスムーズです。最初から「医師は照会で済ます」と決め打ちせず、3案以上の日程を提示して参加打診をした記録を残しておくことが重要です。

Q. ケースカンファレンスの頻度はどれくらいが適切ですか?

事業所の規模や利用者数によりますが、特養・老健などの施設では月1〜2回、訪問介護・通所介護では月1回が一つの目安です。「定例で枠を確保しておき、議題がない週はスキップ可」と運用を緩めると形骸化を防げます。一方で事故・看取り判断・家族からの苦情が出たら臨時開催を躊躇しないこと。

Q. オンラインのサービス担当者会議は認められますか?

2021年度改定以降、利用者・家族の同意があればテレビ電話等を活用したサービス担当者会議の開催が認められています。やむを得ない事情があり同意が得られる場合は、認知症の方を除いて利用者本人の同席なしでオンライン開催することも可能です。録画やチャットの履歴も会議の記録として補強材料になります。

Q. 議事録を取る役割は誰がやるべきですか?

サービス担当者会議では原則ケアマネジャー(書記を別に立てる事業所もあり)、施設内ケースカンファでは司会と書記を分担して若手職員を書記に充てる事業所が多いです。書記は議論を聞きながら記録する高度な技術が必要なので、新人教育の一環として「2回見学→3回目から書記」というステップを踏むと負担が減ります。

Q. 退院前カンファレンスに参加しないと退院・退所加算は算定できませんか?

カンファレンス参加なしでも、医療機関から情報提供を受ければ退院・退所加算(Ⅰ)イ450単位、(Ⅱ)イ600単位を算定できます。カンファレンス参加によって加算単位が上乗せされる仕組みです。在宅復帰直後の安定性を考えると、可能な限り参加した方が利用者にとってもメリットが大きいといえます。

Q. 議題が時間内に終わらないときはどうしますか?

「次回に持ち越す課題」と「今日中に決めること」を司会が明示して、決めることを優先します。延長してダラダラ続けるより、宿題リストを明確にして次回30分の臨時会を設定する方が参加者の集中力が保てます。会議の最後5分は必ず「決まったこと・宿題・次回日程」の確認に充てましょう。

参考文献・出典

まとめ|カンファ運営は「型」と「準備」で半分以上が決まる

3種類のカンファレンスは目的・主催・記録様式が違うため、運営者は「サービス担当者会議=法令義務」「ケースカンファ=事業所の質向上」「退院前カンファ=医療と介護の引き継ぎ+加算」という性格の違いを意識して準備することが第一歩です。アジェンダ・議事録テンプレート・タイムキープを事業所ごとに型化し、毎回それを使い回すだけで会議時間は30〜50%短縮できます。

介護職としてキャリアを伸ばしていく上で、カンファレンスの司会・書記・発言の経験は多職種から信頼を得るための重要な武器になります。ケアマネ・主任ケアマネ・サービス提供責任者へのキャリアパスを考えている方は、現職場で「議事録を取らせてください」「次回は司会をやってみたい」と手を挙げることから始めてみてください。会議運営力は転職市場でも明確に評価される実務スキルです。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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