園芸療法は認知症のBPSD・QOLに効くか|興奮を抑える研究エビデンスとその限界を介護現場目線で読み解く
介護職向け

園芸療法は認知症のBPSD・QOLに効くか|興奮を抑える研究エビデンスとその限界を介護現場目線で読み解く

園芸療法(horticultural therapy)は認知症の興奮(BPSD)やQOLに効くのか。システマティックレビュー・メタ解析の数値と『強いエビデンスとは言えない』限界を、介護現場・科学的介護の視点で正確に読み解きます。

Quick Diagnosis

45

全6問・動画ガイド付き

性格から、合う働き方をみつける。

介護の仕事を嫌いになる前に。施設タイプや転職サービスの選び方を、6つの質問と45秒の動画で整理できます。

無料で診断を始める
ポイント

この記事のポイント

「土いじりや花の世話(園芸療法)は、認知症の人のそわそわ・興奮(BPSD)をやわらげ、毎日を生き生きさせる」とよく言われます。研究を見渡すと、『興奮はやわらぐ方向の結果が出ているが、効果の確かさはまだ強くない』というのが、いまの正直なところです。複数の研究を束ねたまとめ(メタ解析)では、園芸の活動を続けた認知症の人は、続けなかった人より興奮の点数が下がり、ぼんやり過ごす時間が減って、活動に参加する時間が増えたと報告されています。ただし、くじ引きで2グループに分けて比べる、いちばん確かめやすい形の試験(ランダム化比較試験)がほとんど行われておらず、研究ごとに「園芸療法」の中身もバラバラです。さらに、自分の手で土に触れて世話をする活動には効果が出やすい一方、できあがった庭をただ眺めるだけでは、興奮や気分に変化が出にくいという違いも見えてきました。つまり園芸療法は「やってみる価値の高い、安全で前向きなケア」ではありますが、「確実に効く治療」と言い切れる段階ではありません。この記事では、その『効きそう、でも証拠はまだ強くない』の中身を、数字とともに現場目線でほどいていきます。

目次

介護の現場では、花や野菜を育てる活動が昔から自然に行われてきました。種をまき、水をやり、芽が出るのを待ち、収穫して食べる。この一連の流れには、季節を感じる、手や指を動かす、誰かと一緒に作業する、「自分が世話をして育てた」という手ごたえを得る、といった要素がぎゅっと詰まっています。認知症の人にとって、こうした「役割」や「手ごたえ」は、薬とは別のかたちで心を落ち着かせる力を持つのではないか。そう考えられ、研究が積み重ねられてきました。

一方で、「良さそうに見える」ことと「研究で確かめられた」ことは別です。園芸はもともと気持ちのよい活動なので、関わるスタッフも家族も「効いている」と感じやすく、思い込みが混じりやすい領域でもあります。だからこそ、現場で取り入れる前に、どこまでが研究で裏づけられていて、どこからがまだわかっていないのかを冷静に見分けておくことが、介護職の専門性につながります。

この記事は、利用者や家族に「園芸療法をすすめる」ためのものではありません。介護職・これから介護業界で働く人が、研究の結論とその限界を正しく理解し、日々のアクティビティや多職種での話し合いに活かすための解説です。結論を急がず、報告されている数字とその読み方、そして「ここはまだ言えない」という境界線まで、ていねいに見ていきます。

園芸療法は研究の世界でどう位置づけられてきたか

まず、研究の世界で「園芸療法」がどう位置づけられてきたかを整理します。

園芸療法(horticultural therapy)は、植物や園芸の活動を計画的に使って、心身の状態や生活の質(QOL=生活の満たされ具合)をよくしようとする取り組みの総称です。認知症ケアの文脈では、薬を使わない関わり(非薬物的介入)の一つとして注目されてきました。認知症の人に現れる興奮・落ち着きのなさ・暴言・無気力(アパシー)といった行動・心理症状(BPSD)に対して、いきなり薬に頼るのではなく、まず生活環境や関わり方を工夫しようというのが、国内外で共有された大きな方針です。

実際、英国の代表的な診療指針であるNICEのガイドライン(NG97・2018年)は、認知症の人の興奮や攻撃性に対して『まず本人に合った活動を提供し、心理的・環境的な工夫を先に行う』ことを推奨し、薬はその後の選択肢としています。日本でも厚生労働省の認知症施策や、かかりつけ医向けのBPSD対応の考え方の中で、環境調整やケアの見直しなどの非薬物的介入を優先し、改善しない場合にのみ薬物療法を検討するという順序が示されています。園芸療法は、この「まず非薬物から」という枠組みの中で語られる選択肢の一つです。

ただし、ここで一つ大事な前提があります。音楽療法やアロマセラピー、動物を介したケアなどには、世界で最も慎重に研究を束ねるCochrane(コクラン)レビューという専用のまとめが存在しますが、『園芸療法 × 認知症』に絞った Cochrane レビューは、現時点では作られていません。2022年に発表されたある系統的レビューは、研究計画の登録簿(PROSPERO)と Cochrane の図書館を調べたうえで、地域で暮らす認知症の人を対象にした園芸療法の Cochrane レビューは、既存のものも準備中のものも見当たらなかったと明記しています。つまり園芸療法は、ほかの非薬物療法に比べて『最高水準のまとめ』がまだそろっていない、発展途上の領域だということです。これは効果を読むうえで外せない背景になります。

園芸療法を調べた主な研究と報告された数値|メタ解析・系統的レビュー

ここからが本題です。園芸療法が認知症の人に「効くか」を調べた代表的な研究と、報告された数字を見ていきます。統計の言葉が出てきますが、それぞれ日常の言葉に置きかえながら進めます。

束ねて分析したまとめ(メタ解析)が示した数字

2020年に発表された Lu(ルー)らの系統的レビュー・メタ解析(米国アルツハイマー病学会誌に掲載)は、認知症の人を対象にした園芸関連の研究23本を集め、そのうち数字を束ねられた研究を統合して分析しました。中心となった結果は次の3つです。

調べたこと報告された数値日常語での意味
そわそわ・興奮(CMAIという興奮の点数)効果の大きさの目安(SMD)−0.59
(95%信頼区間 −0.77〜−0.40、偶然では説明しにくい差。統合した8研究・介入群237名/比較群233名)
園芸の活動をした人は、しなかった人より興奮の点数が下がった(点数は低いほど落ち着いている)。差の大きさは、一般的なものさしでは『中くらい』に近い手ごたえ。研究間のばらつきはほぼなし(I²=0%)で、結果はそろっていた
活動に参加していた時間の割合平均で+45.10%(95%信頼区間 7.27〜82.92。2研究・73名/69名)ぼんやりせず活動に関わっている時間が増えた。ただし研究ごとの差が極端に大きく(I²=99%)、『どの現場でも同じだけ増える』とは読めない
何もしていない時間(不活動)−29.36%(95%信頼区間 −51.85〜−6.87。2研究・73名/69名)手持ちぶさたな時間が減った。これも研究間のばらつきが大きい(I²=85%)

※SMD(標準化平均差)は「効果の大きさの目安」です。マイナスは『点数が下がった=興奮がやわらいだ』方向を意味します。一般的な読み方の目安では、0.2前後で小さい・0.5前後で中くらい・0.8以上で大きい、とされます(これは効果量を読むための一般的なものさしで、原報の数字そのものではありません)。今回の −0.59 は『中くらい』に近い大きさです。I²(アイ二乗)は研究結果のばらつき具合で、0%に近いほど結果がそろっていることを示します。

もう一つのまとめ(Zhaoら2022)が示した「質的な違い」

2022年に発表された Zhao(ジャオ)らの系統的レビュー(看護系の学術誌に掲載)は、認知症の人を対象にした園芸関連の研究14本(合計411名)を整理しました。このレビューの注目点は、『参加するタイプの園芸(自分で土に触れて世話をする)』と『庭を眺めるだけ・自然の映像を見るだけ』を分けて読んだことです。

  • 自分で手を動かす参加型の園芸では、認知機能・興奮・前向きな感情・活動への関わり(エンゲージメント)に良い方向の報告が見られた
  • 一方、庭を眺めるだけ・自然の風景を見るだけでは、興奮や感情の点で『良くなった』とは言えなかった

これは現場にとって示唆的です。同じ「緑に触れる」でも、『見せる』のではなく『手を動かして関わってもらう』ことに意味がありそうだ、という読み方ができます。

注意:これらは『RCTを束ねた結果』ではない

大事な前提として、Lu らのメタ解析は『くじ引きで2グループに分けて比べる試験(ランダム化比較試験=RCT)は1本も取り出せなかった』と明記しています。RCTは、介入の効果を最も確かめやすい研究の形です。それが束ねられていないということは、ここで出てきた『興奮が下がった』という数字も、『参加した人が前後で変わった』『園芸をしたグループとしなかったグループを後から比べた』といった、より思い込みの混じりやすい研究を中心に積み上げた結果だということです。数字の見た目ほど、結論は強くありません。

数値の正しい読み方|『効きそう』と『証拠が強い』は違う

ここまでの数字を、現場で誤解なく使うための「読み方のコツ」を5つにまとめます。園芸療法は前向きな選択肢ですが、その手前で立ち止まるべきポイントがあります。

  1. 『興奮が下がった』は本当だが、確かさはまだ弱い
    メタ解析で興奮の点数が中くらいの大きさで下がったのは事実です。ただし、いちばん確かめやすいRCTが束ねられておらず、参加前後の比較や後ろ向きの比較が中心です。『効果が示唆された』とは言えても、『効果が確立した』とまでは言えません。
  2. 『活動時間が45%増えた』は、そのまま鵜呑みにしない
    この数字を出した研究はわずか2本で、研究ごとの差が極端に大きい(I²=99%)状態でした。『どの施設でも45%増える』という保証ではなく、『うまくいった現場ではそれくらい増えた例もある』という幅のある話として読むのが正確です。
  3. 『園芸療法』の中身がバラバラ
    Lu らは『研究によって園芸療法の定義が不明確で一致していない』と限界に挙げています。プランターで野菜を育てる活動と、緑の映像を見る活動が同じ『園芸療法』として扱われることもあり、何をもって効いたと言うのかが、研究間でそろっていません。
  4. 『眺めるだけ』と『手を動かす』は別物
    Zhao らのレビューでは、自分で世話をする参加型では良い報告が見られた一方、庭を眺めるだけ・自然の映像を見るだけでは興奮や感情に改善が見られませんでした。『緑があればよい』ではなく、『本人が手を動かして関われるか』が鍵になりそうです。
  5. 対象の多くは施設入所の高齢者で、脱落も多い
    この分野の研究は、心身が弱った人を対象にするため、最後まで参加できずに抜けてしまう人が多いという弱点があります。続けられた人の良い結果だけが残りやすく、効果が大きめに見える可能性も意識しておく必要があります。

まとめると、園芸療法は『安全で前向き、興奮をやわらげる可能性はあるが、強いエビデンスとは言えない』という位置づけです。この温度感を保ったまま現場に持ち込むことが、専門職としての誠実さになります。

研究の知見を介護現場でどう活かすか|アクティビティ設計・科学的介護・多職種連携

では、ここまでの研究の知見を、介護職は現場でどう活かせばよいのでしょうか。『効くと断言できない』からこそ、活かし方に専門性が出ます。worker視点で5つの落とし込みを提案します。

1. 『見せる緑』ではなく『関わる緑』を設計する

Zhao らの知見が示すのは、庭を眺めてもらうだけでは効果が出にくく、自分の手で世話をする参加型に意味がありそうだ、という点です。中庭をきれいにすることそのものより、『水やりの当番をお願いする』『種まきや収穫を一緒にやる』など、本人が手を動かし役割を持てる設計のほうが、研究の方向性と合致します。立てない・握力が弱い人には、立ち上がらずに作業できる高さのプランター(レイズドベッド)や、軽い道具を使うなどの工夫で『参加』を作れます。

2. 興奮(BPSD)への期待値を正しく置く

研究は『興奮がやわらぐ可能性』を示しますが、『薬の代わりに確実に効く』とは言っていません。園芸を導入したのに興奮が減らない人がいても、それは失敗ではなく、もともと効果の確かさが弱い領域だからです。『この人には別の関わりが合うかもしれない』とアセスメントをやり直す前提で取り入れると、過度な期待や落胆を避けられます。

3. 科学的介護(LIFE)の発想で『記録して見直す』

科学的介護情報システム(LIFE)に象徴されるように、いまの介護は『やりっぱなしにせず、状態を記録して評価し、ケアを見直す』方向に進んでいます。園芸療法も同じで、導入前後で興奮や表情、活動への参加の様子を簡単な記録に残し、合っているかを多職種で振り返ることが、エビデンスの弱さを現場の観察で補う方法になります。研究のCMAIのような『点数で見る』発想を、施設なりの簡易な記録に翻訳して使うと、思い込みを減らせます。

4. 多職種連携の共通言語として使う

『非薬物的介入を先に』という方針は、医師・薬剤師・リハ職・看護職と共有されています。BPSDに対していきなり薬を増やすのではなく、『まず園芸を含む活動で様子を見たい』と提案できる根拠として、本記事の研究知見は使えます。その際は『効くと証明されている』ではなく『非薬物を優先する方針に沿った、安全で前向きな選択肢』という正確な言い方をすると、信頼を損ないません。

5. 介護職のキャリアにとっての意味

エビデンスの強弱を理解したうえでアクティビティを設計できる介護職は、これからますます価値が高まります。『良さそうだからやる』ではなく『どこまで言えてどこからは言えないかを説明できる』ことは、認知症ケアの専門職としての差別化になります。園芸療法のような『効きそうだが証拠は発展途上』のテーマを正しく扱えることは、研修講師・ユニットリーダー・ケア改善の旗振り役といったキャリアにもつながります。

安全に取り入れるための長所と注意点|誤食・転倒・過大な期待に気をつける

園芸療法は比較的安全な活動ですが、認知症の人を対象にする以上、配慮すべき点があります。『前向きな活動だから何をしてもよい』ではありません。導入時に押さえたい長所と注意点を整理します。

取り入れる側から見た長所

  • 道具や植物が安価で、特別な機器がなくても始めやすい
  • 季節・天気・植物の成長など、自然な会話のきっかけが生まれやすい
  • 『世話をする』という役割が、その人の尊厳や手ごたえにつながりやすい
  • 手指を動かす・歩く・しゃがむなど、自然なかたちで体を使える

見落としやすい注意点

  • 誤食・誤飲:認知症の人は土・肥料・種・球根を口に入れてしまうことがある。スイセン・キョウチクトウなど有毒な植物は使わない。食べられるハーブや野菜でも、見守りを欠かさない。
  • 転倒・熱中症:屋外では足元の段差・濡れた地面に注意し、夏場は時間帯・水分補給・日よけを徹底する。立ち作業がつらい人には座ったままできる方法を用意する。
  • 道具によるけが:はさみ・スコップなどは先のとがり方や切れ味を確認し、必要に応じて子ども用の安全な道具に置きかえる。
  • 皮膚・アレルギー:土や植物でかぶれることがある。手袋を使い、作業後の手洗いを習慣にする。既往やアレルギーを事前に確認する。
  • 『効果がある』と言いすぎない:本人・家族に説明するとき、研究が示すのは『興奮がやわらぐ可能性』であって治療効果の保証ではない。過大な期待を持たせる説明は避ける。これは効果の誇張を防ぐうえで、安全面と同じくらい大切な配慮です。

安全に配慮しさえすれば、園芸療法は『やってみて損のない、前向きな関わり』です。効果が出る人にはQOL向上の後押しになり、出なくても本人の楽しみや役割になりえます。その手応えを『記録して多職種で共有する』ところまでをセットにすると、研究の弱さを現場の観察で補えます。

現場ですぐ使える、園芸を使った関わりのヒント

最後に、明日からの現場でそのまま試せる、園芸を使った関わりのヒントを挙げます。研究の『参加型が効きそう・記録して見直す』という方向に沿った、無理のない工夫です。

  • 『眺める』より『触れる』を一つ足す:飾ってある花を、本人に水やり・花がら摘みなど一手間お願いする役割に変える。
  • 昔やっていた園芸を聞き取る:以前畑や庭いじりをしていた人は多い。その記憶に沿った作業(野菜づくりなど)は手応えにつながりやすく、回想のきっかけにもなる。
  • 座ったままできる形にする:高めのプランターやテーブル上のポットなら、立てない人も参加できる。『参加できる形』を先に整える。
  • 有毒植物リストを掲示する:使ってよい植物・避ける植物をユニットで共有し、誤食を防ぐ。
  • 導入前後をひと言記録する:『作業中の表情』『そわそわが減ったか』『どれくらい参加できたか』を一行メモに。点数化しなくても、続けて見返すと合う・合わないが見えてくる。
  • 合わなければ潔く変える:園芸が向かない人もいる。無理に続けず、音楽・回想・散歩など別の関わりへ切り替える判断も専門性のうち。

よくある質問(FAQ)

Q. 結局、園芸療法は認知症に効くのですか?
A. 『興奮がやわらぐ可能性が示唆されているが、強いエビデンスとは言えない』が正確な答えです。複数研究を束ねたメタ解析では興奮の点数が中くらいの大きさで下がり、活動への参加時間も増えたと報告されています。ただし、最も確かめやすいRCTがほとんど束ねられておらず、研究ごとに内容もバラバラなので、『確実に効く治療』とは言い切れません。
Q. 庭をきれいに整えれば、それで効果がありますか?
A. 研究の傾向は『眺めるだけでは効きにくい』方向です。Zhao らのレビューでは、自分で土に触れて世話をする参加型では良い報告が見られた一方、庭を眺めるだけ・自然の映像を見るだけでは興奮や感情の改善は確認されませんでした。環境整備そのものより、本人が手を動かして関われる仕組みづくりが鍵になりそうです。
Q. 園芸療法に専用のCochraneレビューはありますか?
A. 現時点ではありません。2022年のある系統的レビューが、研究計画の登録簿(PROSPERO)とCochraneの図書館を調べ、園芸療法×認知症の既存・準備中のCochraneレビューは見当たらなかったと明記しています。音楽療法やアロマと比べ、まとめの整備が遅れている発展途上の領域だと理解しておくとよいです。
Q. 薬の代わりに園芸療法をすすめてよいですか?
A. 『薬の代わりに確実に効く』とは言えません。ただし国内外のガイドラインは、BPSDに対してまず非薬物的介入を試み、改善しない場合に薬物療法を検討する順序を示しています。園芸療法はその『まず非薬物』の枠の中の、安全で前向きな選択肢の一つと位置づけるのが妥当です。判断は必ず多職種・主治医と共有してください。
Q. どんな人に向いていますか?
A. もともと園芸や畑仕事に親しんでいた人は、手応えや回想につながりやすく相性が良い傾向があります。一方で誰にでも効くわけではないので、合わない場合は無理に続けず、音楽・回想・散歩など別の関わりに切り替える柔軟さが大切です。
Q. 安全面でいちばん気をつけることは?
A. 誤食・誤飲です。認知症の人は土・種・球根・肥料を口に入れてしまうことがあるため、有毒な植物は使わず、作業中は見守りを欠かさないでください。あわせて屋外での転倒・熱中症、道具によるけが、土や植物でのかぶれにも配慮します。

参考文献・一次情報

まとめ|『効きそう』を、過不足なく現場に活かす

園芸療法は認知症のBPSD・QOLに効くか。この記事の結論を、過不足なくまとめます。

  • 複数研究を束ねたメタ解析では、園芸の活動を続けた認知症の人は興奮の点数が中くらいの大きさで下がり(CMAI SMD−0.59)、活動への参加時間が増え、ぼんやり過ごす時間が減ったと報告されている。
  • ただし最も確かめやすいRCTがほとんど束ねられておらず、研究ごとに『園芸療法』の中身もバラバラ。活動時間の増加は研究間の差が極端に大きい。『効果が示唆された』とは言えても『確立した』とは言えない
  • 園芸療法×認知症の専用Cochraneレビューは現時点で存在せず、ほかの非薬物療法に比べてまとめの整備が遅れた発展途上の領域である。
  • 『庭を眺めるだけ』では効きにくく、『自分で手を動かして世話をする参加型』に意味がありそうだという質的な違いが見えている。

現場の介護職にとって大切なのは、この温度感を保ったまま活かすことです。園芸療法は『安全で前向きな、興奮をやわらげる可能性のある選択肢』であり、『見せる緑』ではなく『関わる緑』を設計し、導入前後を記録して多職種で見直すことで、エビデンスの弱さを現場の観察で補えます。効く人にはQOLの後押しになり、合わなければ別の関わりに切り替える。その判断ができることこそ、認知症ケアの専門職としての価値です。

『良さそうだからやる』で終わらせず、『どこまで言えて、どこからは言えないか』を説明できる介護職へ。園芸療法のような発展途上のテーマを正しく扱う姿勢が、これからの科学的介護とあなたのキャリアを支えます。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

続けて読む

このテーマを深掘り

関連トピック

ご家族・ご利用者の視点

同じテーマをご家族・ご利用者の方の視点から書いた記事。視野を広げるためのヒントとして。