高齢者が何もしたがらない「アパシー」|うつとの違い・家族の関わり方と受診の目安
ご家族・ご利用者向け

高齢者が何もしたがらない「アパシー」|うつとの違い・家族の関わり方と受診の目安

高齢者が急に何もしたがらない・意欲がないのは「アパシー(意欲低下)」かもしれません。つらさを伴ううつとの違い、認知症・脳卒中・薬剤性など原因、なまけと誤解しないための家族の関わり方、受診の目安と何科かを医療監修で解説します。

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高齢者が急に何もしたがらない・意欲がないとき、その多くは「アパシー(意欲・自発性の低下)」です。アパシーは、つらい・悲しいといった苦痛を本人が感じている「うつ」とは違い、本人に苦しさの自覚が乏しいのが特徴です。背景には認知症(特にアルツハイマー型・前頭側頭型)、脳卒中後、パーキンソン病、薬の影響、甲状腺機能の低下、難聴による閉じこもりなどがあります。「なまけ」と決めつけて叱るのは逆効果です。生活リズムを整え、小さな役割や「できること」に注目しながら、もの忘れ外来・精神科・脳神経内科への受診を検討しましょう。

目次

「最近、親が何もしたがらない」「テレビをぼんやり見るだけで、趣味も外出もやめてしまった」「声をかけても生返事ばかり」。そんな高齢のご家族の変化に、戸惑っていませんか。やる気のなさが続くと、家族はつい「なまけている」「わざとやらない」と感じてしまいがちです。しかし、その意欲の低下は本人の性格や努力不足ではなく、「アパシー」と呼ばれる脳の状態のサインであることが少なくありません。

アパシーは「うつ」とよく混同されますが、別の状態です。見分け方を知らないまま接すると、励ましや叱責がかえって本人を追い込んだり、必要な受診が遅れたりすることがあります。この記事では、利用者・ご家族の立場に立って、アパシーとうつの違い、背景にある原因、家族の関わり方、そして「いつ・何科を受診すればよいか」を、医療・介護監修のもとで整理します。なお、本記事は一般的な情報提供であり、診断は医療機関で受けてください。

アパシー(意欲低下)とは|「何もしたがらない」の正体

アパシーとは、意欲や自発性、関心が低下した状態を指します。語源はギリシャ語の「アパテイア(感情の欠如)」で、わかりやすく言えば「自分から何かをしようという気持ちが起きにくくなった状態」です。医学的には、認知症やフレイル(加齢にともなう心身の衰え)、脳の病気に付随してあらわれる症状の一つと位置づけられています。

家族が気づきやすいサイン

アパシーは、次のような日常の変化としてあらわれます。一つひとつは「年のせい」「気分の問題」と見過ごされやすいものばかりです。

  • 趣味や好きだったこと(園芸、テレビ、新聞、人との会話)に興味を示さなくなった
  • 外出や人と会うのを面倒がり、家にこもりがちになった
  • 入浴・歯みがき・着替え・整容をしなくなり、身だしなみに無頓着になった
  • 声をかけても「はい」「そうね」と生返事で、自分から話さない
  • 表情が乏しく、うれしい・悲しいといった感情の動きが見えにくい
  • 部屋が片づかなくなり、食事や生活のリズムが乱れてきた

「低活動」のサインは見落とされやすい

認知症にともなう症状というと、徘徊や興奮、暴言といった「目立つ症状(過活動性)」に注意が向きがちです。しかし厚生労働省の研修資料でも、アパシーのような「低活動性」の症状は高頻度に存在するにもかかわらず見落とされやすいと指摘されています。静かで手がかからないぶん、家族も「落ち着いてきた」と受け取ってしまい、対応が遅れることがあるのです。

大切なのは、アパシーは本人の「やる気のなさ」や「性格」ではなく、脳の働きの変化によって「やろうとする力」そのものが出にくくなっている状態だと理解することです。

うつとの違い|「苦痛があるか」が最大の見分けポイント

アパシーとうつ(老年期うつ病)は、どちらも「活動が減る」「意欲がなくなる」という点が似ているため、家庭でも医療現場でも混同されやすい状態です。しかし両者は本質的に異なります。最大の違いは、本人が「つらさ・苦痛」を感じているかどうかです。

うつでは、気分が沈み、悲しい・つらい・自分はだめだといった苦痛をともないます。一方アパシーでは、こうした悲哀感や自責感が乏しく、本人は「困っていない」「苦しくない」ように見えます。老年精神医学では、アパシーは「本人の苦悩が希薄である」ことが、うつとの重要な鑑別点とされています。

観点アパシー(意欲低下)うつ(老年期うつ病)
気分悲しみより「平板・無関心」。気分の落ち込みは目立たない気分が沈み、暗く憂うつ。日内変動(朝が悪い等)が出やすい
本人の苦痛・自覚つらさの自覚が乏しく「困っていない」ように見えるつらい・苦しいと感じ、本人も不調を自覚しやすい
感情の動きうれしい・悲しいの反応が乏しく、感情が平坦悲哀感・不安・焦りなど、つらい感情がはっきりある
自分を責める気持ち乏しい「迷惑をかけている」など自責感が強いことが多い
自殺の危険一般に低い「消えてしまいたい」など希死念慮を伴うことがあり注意が必要
抗うつ薬の効果効きにくいことが多い有効なことが多い

研究データで見る「どちらが多いか」

家族の感覚では「元気がない=うつ」と結びつけがちですが、認知症の方を対象にした研究では、実はアパシーのほうが高頻度です。熊本大学病院の専門外来で、認知症の方の精神・行動症状を評価尺度NPI(Neuropsychiatric Inventory)で調べた検討では、抑うつが35%に対し、アパシー(無関心)は65%にみられたと報告されています(日本精神神経学会誌, 藤瀬・池田, 2012)。同じ報告で、抑うつとアパシーは別々の独立した症状群と考えられるようになってきたと述べられています。

つまり、「何もしたがらない」高齢者を一律に「うつ」と捉えて抗うつ薬で対応しようとすると、アパシーには効きにくく、改善しないことがあります。だからこそ、家庭で見分けようと抱え込まず、専門医に相談して正しく評価してもらうことが大切です。

うつとアパシーが「重なる」こともある

注意したいのは、アパシーとうつは二者択一ではなく、同じ人に併存することがある点です。老年精神医学でも、両者は単独でみられることもあれば、重なって出ることもあるとされ、易疲労(疲れやすさ)や興味の喪失、動作の遅さなど共通して見える症状があるため、鑑別を難しくしています。「つらさの自覚が乏しいからアパシーだ」と決めつけると、背後に隠れたうつ(と、それに伴う自殺の危険)を見逃すおそれもあります。だからこそ、家庭での見分けはあくまで「受診のきっかけをつかむための目安」と考え、最終的な判断は専門医にゆだねるのが安全です。

家庭での簡単な目安

受診を考える前の整理として、次の3点を家族で確認してみてください。「①つらそう・悲しそうか(はい→うつより)」「②急に始まったか・日や時間で変動するか(はい→せん妄より)」「③ゆっくりと関心が薄れ、本人は困っていないように見えるか(はい→アパシーより)」。あくまで目安ですが、受診時に医師へ状況を伝える材料になります。

原因|認知症・脳卒中・パーキンソン病から「治る原因」まで

アパシーは「気の持ちよう」で起きるのではなく、脳の意欲をつかさどる部分(前頭葉の内側、前帯状回、基底核など)の働きが低下することで生じると考えられています。背景にある原因はさまざまで、なかには治療によって改善が見込めるものもあります。

1. 認知症(最も多い背景)

アパシーの背景として最も多いのが認知症です。認知症にともなう精神・行動症状(BPSD)のなかでも、アパシーは非常に高頻度にあらわれます。認知症のタイプ別にアパシーの出現頻度を調べた研究では、前頭側頭型(FTLD)で85%、アルツハイマー型(AD)で67%、脳血管性(VaD)で67%、レビー小体型(DLB)で50%と報告されています(日本精神神経学会誌, 2012)。日本神経学会の認知症診療ガイドライン2017でも、アパシーは前頭側頭型で高頻度、アルツハイマー型でもBPSDのなかで最もよくみられる症状とされています。意欲低下が、もの忘れより先に目立つこともあります。

2. 脳卒中(脳梗塞・脳出血)の後

脳卒中の後に、意欲や自発性が大きく低下することがあります。身体のまひはリハビリで回復しても、「自分から動こうとしない」状態が残ることがあり、これも脳の損傷によるアパシーと考えられます。

3. パーキンソン病

パーキンソン病では、手の震えや動作の遅さといった運動症状だけでなく、意欲の低下(アパシー)が高い頻度でみられることが知られています。

4. 見落とされやすい「治療可能な原因」

「認知症だから仕方ない」と思い込む前に、次のような改善が見込める原因がないかを確認することが重要です。

  • 薬剤性:服用中の薬の影響で、ぼんやりしたり意欲が落ちたりすることがあります。睡眠薬・抗不安薬・一部の精神科の薬などが関係する場合があり、薬の見直しで改善することがあります。自己判断で中止せず、必ず主治医・薬剤師に相談してください。
  • 甲状腺機能の低下:甲状腺ホルモンが不足すると、活気がなくなる・むくむ・寒がる・便秘・もの忘れなどが起こり、高齢者ではアルツハイマー病など認知症と間違えられやすいとされています。血液検査でわかり、ホルモン補充で改善が期待できます(内分泌内科・代謝内科)。
  • 難聴・閉じこもり:耳が聞こえにくいと会話がかみ合わず、人と関わるのがおっくうになり、閉じこもって活動が減る悪循環に陥ります。難聴は認知症の危険因子の一つとされ、国立長寿医療研究センターは、中年期の難聴で高齢期の認知症リスクが約2倍に上がるという海外データや、補聴器の活用で発症リスクが下がるという報告を紹介しています。補聴器で会話が戻ると、意欲や活動が回復することもあります(耳鼻咽喉科)。

このように、アパシーの背景には「進行する病気」も「対応で改善が見込めるもの」も含まれます。だからこそ、家庭で原因を決めつけず、医療機関で評価してもらうことが回復への近道になります。

「なまけ」と誤解しないために|せん妄も含めた見分け

家族がいちばん陥りやすいのが、アパシーを「なまけ」「わがまま」「わざとやらない」と受け取ってしまうことです。本人は苦しそうに見えず、「やればできるのにやらない」ように映るため、つい「しっかりして」「だらしない」と叱ってしまいがちです。しかしアパシーは、脳の「やろうとする力」が出にくくなっている状態であり、本人の努力不足ではありません。叱責は本人の自尊心を傷つけ、関係を悪くするだけで、意欲の回復にはつながりません。

急に始まった意欲低下は「せん妄」の可能性も

意欲が低下して見える状態には、アパシーやうつのほかに「せん妄」もあります。せん妄は、体の不調(脱水、感染症、便秘、痛み、薬の影響など)や入院・環境変化をきっかけに、注意力や意識がぼんやりと変動する状態で、数日から週単位で比較的急に始まり、日内で良くなったり悪くなったりするのが特徴です。国立長寿医療研究センターの資料でも、元気のない高齢者を考えるときは、うつ状態・せん妄・アパシーのいずれかを念頭に置くことが大切だとされています。

  • 数日で急にぼんやりし、日や時間帯で変動する → せん妄を疑い、早めに受診(背景の体の病気の治療で改善することが多い)
  • つらそう・悲しそうで本人も苦痛を訴える → うつを疑う
  • ゆっくりと意欲・関心が乏しくなり、本人は困っていないように見える → アパシーを疑う

これらは家庭で正確に見分けるのは難しく、また併存することもあります。判断を急がず、「いつから・どんなふうに変わったか」をメモして受診に持参すると、診断の大きな助けになります。

家族の関わり方|叱らず「小さな役割」と「できること」に注目

アパシーは、周囲のかかわり方しだいで活動や意欲がいくらか戻ることがあります。ポイントは、無理に頑張らせるのではなく、本人が「自分でできた」という小さな成功体験を積み重ねられるように環境を整えることです。

やってはいけないこと

  • 叱る・責める:「なまけないで」「どうしてやらないの」と責めるのは逆効果。本人の意欲はさらに下がります。
  • 強く急かす・無理強いする:本人のペースを無視して焦らせると、かえって拒否につながります。
  • 何でも先回りして代わりにやってしまう:手を出しすぎると「できること」まで奪い、活動の機会を減らしてしまいます。

意欲を支える関わり方

  • 生活リズムを整える:起床・食事・就寝の時間を一定にし、朝は日光を浴びる、日中は座って過ごす時間を増やすなど、生活の型を作ります。
  • 小さな役割を用意する:洗濯物をたたむ、テーブルを拭く、植木に水をやるなど、負担が軽く「お願いね」と頼める役割を渡します。
  • できることに注目してねぎらう:できなかったことを指摘するより、できた一つを「ありがとう、助かった」と具体的にねぎらいます。
  • 選びやすい声かけにする:「何かしたい?」より「散歩とお茶、どっちにする?」のように、二択など答えやすい形で誘います。
  • 本人の好きだったことを入り口にする:昔の趣味・好きな音楽・なじみの場所など、関心が向きやすいものから少しずつ。
  • 一人で抱え込まない:デイサービスや地域の集まりなど、家族以外の人と関わる機会は、よい刺激になります。

すぐに大きな変化が出なくても、本人を責めず、できることを一緒に続ける姿勢そのものが、本人の安心と意欲の土台になります。家族が疲れ切ってしまわないよう、介護する側も無理をしないことが大切です。

環境調整|「やってみよう」が起きやすい場づくり

アパシーのある方は、自分から行動を起こす力が弱まっています。だからこそ、本人の意志に頼るより、「自然と体が動きやすい環境」をつくることが効果的です。家庭でできる工夫を紹介します。

  • 朝の光と決まった流れをつくる:朝はカーテンを開けて光を入れ、「起きる→顔を洗う→食卓につく」という一定の流れを作ると、考えなくても体が動きやすくなります。
  • 次の行動を目に見える形にする:着替えやタオルを取り出しやすい場所に置く、やることを大きな字でメモに書いて貼るなど、「次に何をするか」を考えなくて済むようにします。
  • 道具をワンステップ手前まで準備する:たとえば塗り絵なら鉛筆と紙を開いて置いておく、散歩なら靴と上着を玄関に出しておくなど、始めるハードルを下げます。
  • 静かすぎない、適度な刺激のある場をつくる:一日中テレビの前で無音・無刺激で過ごすより、好きな音楽を流す、家族の会話が聞こえる場所で過ごすなど、ほどよい刺激が活動のきっかけになります。
  • 役割の「定位置」をつくる:食事前にお箸を並べる、洗濯物をたたむ席を決めるなど、毎日同じ役割・同じ場所にすると習慣として定着しやすくなります。
  • できた記録を残す:カレンダーに「散歩できた日」に印をつけるなど、達成が目に見えると、本人も家族も小さな前進を実感しやすくなります。

こうした環境調整は、本人を変えようとするのではなく、行動が起こりやすいように周囲を整える発想です。うまくいかない日があっても自分や本人を責めず、続けられる範囲で取り入れてください。デイサービスや訪問リハビリなど専門職の力を借りると、その人に合った環境調整のヒントが得られます。

受診の目安と何科|もの忘れ外来・精神科・脳神経内科

「年のせい」と様子を見ているうちに、背景にある病気の発見や対応が遅れてしまうことがあります。次のようなときは、早めに受診を検討してください。

受診を検討する目安

  • 意欲・関心の低下が2週間以上続いている
  • 入浴・着替え・歯みがきなど身の回りのことをしなくなった
  • もの忘れや段取りの悪さなど、認知機能の低下も気になる
  • つらそう・悲しそうにしている、または「消えたい」といった言葉が出る(うつが疑われ、急ぎの受診が必要)
  • 数日のうちに急にぼんやりし、日や時間帯で様子が変わる(せん妄が疑われ、早めの受診が必要)
  • 食事・水分がとれていない、持病が悪化している

何科を受診すればよいか

気になる状態受診先の目安
もの忘れもあり、認知症が心配もの忘れ外来・認知症外来、または脳神経内科・精神科(老年精神科)
つらさ・気分の落ち込みが強い(うつが心配)精神科・心療内科(高齢者は老年精神科があればなお良い)
脳卒中の後の意欲低下、手の震えや動作の遅さ脳神経内科
むくみ・寒がり・便秘など全身症状を伴う内分泌内科・代謝内科(甲状腺などの検査)
耳の聞こえにくさが背景にありそう耳鼻咽喉科(聴力検査・補聴器の相談)

どこにかかればよいか迷うときは、まずかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門科を紹介してもらうのが現実的です。介護や生活の不安も合わせて相談したいときは、お住まいの地域の地域包括支援センターが、医療機関や介護サービスへの橋渡しをしてくれます。

受診のときに伝えるとよいこと

本人はうまく説明できないことが多いため、家族が状況を整理して伝えると診断に役立ちます。「いつ頃から」「どんなことをしなくなったか」「急にか、ゆっくりか」「つらそうにしているか」「服用中の薬」「もの忘れの有無」などをメモにしておきましょう。

よくある質問

Q. アパシーとうつは、家庭で見分けられますか?

完全に見分けるのは難しく、専門医でも評価尺度や問診をもとに判断します。家庭での目安は「本人がつらそうか」です。つらい・悲しいと苦痛を訴えるならうつ、苦痛の自覚が乏しく「困っていない」ように見えるならアパシーの可能性があります。ただし両者は併存することもあるため、自己判断で終わらせず受診してください。

Q. 抗うつ薬を飲めば意欲は戻りますか?

うつには抗うつ薬が有効なことが多い一方、アパシーには効きにくいとされています。「何もしたがらない=うつ」と決めつけて服薬を続けても改善しないことがあるため、まずは医師に正しく評価してもらうことが大切です。薬の開始・変更・中止は必ず医師の指示に従ってください。

Q. 「ほっておけば治る」「年だから仕方ない」のでしょうか?

加齢のせいと思われがちですが、背景に認知症・脳卒中・甲状腺の病気・薬の影響・難聴など、対応で改善が見込めるものが隠れていることがあります。様子見で放置すると活動低下から心身の衰え(廃用)が進むこともあるため、気になる変化が続くなら受診をおすすめします。

Q. デイサービスなどを勧めても嫌がります。どうすれば?

無理強いは逆効果です。「見学だけ」「一度だけ」と負担の少ない形から始める、なじみのある活動や得意なことを入り口にする、信頼できる人から誘ってもらう、といった工夫が役立ちます。ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、本人に合う通い先を一緒に探すのもよい方法です。

Q. 介護している家族のほうが疲れて無気力になってきました。

介護者自身が意欲低下や抑うつに陥ることもあります。一人で抱え込まず、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、レスパイト(一時的に介護を代わってもらう仕組み)やデイサービスを活用してください。介護する側が休めることは、結果的に本人のケアの質にもつながります。

参考文献・出典

まとめ|「なまけ」ではなくサイン。気づきが第一歩

高齢のご家族が「何もしたがらない」とき、それは性格やなまけではなく、「アパシー(意欲・自発性の低下)」というサインであることが少なくありません。アパシーは、つらさを伴ううつとは異なり、本人に苦痛の自覚が乏しいのが特徴です。背景には認知症(特にアルツハイマー型・前頭側頭型)や脳卒中、パーキンソン病に加え、薬の影響・甲状腺の病気・難聴など、対応で改善が見込めるものも隠れています。

家族にできるのは、叱らず責めず、生活リズムを整えながら、小さな役割や「できること」に注目して支えることです。そして、意欲低下が続くとき、急に始まったとき、つらそうなときは、もの忘れ外来・精神科(老年精神科)・脳神経内科などへの受診を検討してください。迷ったらかかりつけ医や地域包括支援センターが相談先になります。「いつもと違う」という家族の気づきが、適切な評価と回復への第一歩です。なお本記事は一般的な情報であり、診断・治療は医療機関にご相談ください。

意欲の低下は、本人にとっても家族にとっても出口が見えにくく、孤立しやすいテーマです。けれども、原因を正しく知り、関わり方を少し変え、必要なときに専門家の手を借りることで、状況は動き出します。完璧を目指さず、本人の「できた」と家族の「気づき」を大切に、無理のないペースで歩んでいきましょう。

監修者

介護のハタラクナカマ 医療・介護監修チーム

医療・介護専門職チーム(看護師/介護福祉士/ケアマネジャー)

看護師介護福祉士ケアマネジャー

訪問看護・介護保険・医療保険に関する制度内容を、厚生労働省・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の一次ソースをもとに、医療・介護専門職チームが内容の正確性を確認しています。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。

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