脳血管性認知症の利用者のケア|まだら症状・感情失禁・意欲低下への関わりと再発予防
介護職向け

脳血管性認知症の利用者のケア|まだら症状・感情失禁・意欲低下への関わりと再発予防

脳血管性認知症の利用者を施設で介護する介護職向けに、できる力を活かすまだら認知症への関わり、感情失禁への落ち着いた対応、意欲低下(アパシー)への役割づくり、片麻痺・嚥下・高次脳機能障害の生活支援と誤嚥・転倒予防、そして血圧・服薬など再発予防の観察と多職種連携までを公的資料に基づき実務目線で解説します。

Quick Diagnosis

45

全6問・動画ガイド付き

性格から、合う働き方をみつける。

介護の仕事を嫌いになる前に。施設タイプや転職サービスの選び方を、6つの質問と45秒の動画で整理できます。

無料で診断を始める
ポイント

この記事のポイント

脳血管性認知症の利用者ケアで介護職がまず押さえたいのは、症状を一律に見ないことです。できることとできないことの差が大きい「まだら認知症」では残っている力を活かし、感情失禁には否定せず落ち着いて寄り添い、意欲低下(アパシー)には小さな役割で成功体験を積みます。加えて脳血管性ならではの視点として、血圧や服薬、生活習慣の変化を日々観察し、脳卒中の再発予防を看護・リハビリ職と一緒に支えることが、日常ケアの土台になります。

目次

脳血管性認知症は、アルツハイマー型に次いで多い認知症の原因疾患の一つで、施設でもよく出会います。脳梗塞や脳出血の後遺症とあわせて生活支援が必要になる方が少なくありません。

この認知症の難しさは、症状が「その人らしさの問題」ではなく「脳のどこが傷ついたか」で決まる点にあります。計算は苦手でも昔の仕事の話は的確、午前は穏やかでも夕方は反応が鈍い、といった波が一人の中に同居します。介護職がこの仕組みを理解しないまま接すると、「さっきはできたのに」と本人を追い込み、感情失禁や意欲低下を強めてしまうことがあります。

この記事は、施設で働く介護職が脳血管性認知症の利用者にどう関わるかを、まだら認知症・感情失禁・意欲低下(アパシー)・身体症状の生活支援・再発予防という順で、日々の観察と記録、多職種連携の動線に沿って整理します。特定の医療行為を指示するものではなく、生活の場でできる関わりに焦点をあてます。

脳血管性認知症とは|介護現場で出会う特徴

脳血管性認知症とは、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血などの脳血管障害によって脳の細胞が傷つき、認知機能が低下した状態を指します。血管が詰まったり破れたりして酸素や栄養が届かなくなった部分の働きが失われるため、どの機能がどれだけ障害されるかは「損傷した場所と範囲」によって変わります。

原因となる脳の障害はさまざま

ひとくちに脳血管性認知症といっても、原因となる脳の障害には幅があります。太い血管が詰まる大きな脳梗塞、細い血管が詰まる小さなラクナ梗塞の積み重ね、脳の深部の血流が慢性的に不足するタイプ(ビンスワンガー型と呼ばれることもあります)などです。小さな梗塞が少しずつ増えていくタイプでは、はっきりした発作の自覚がないまま進むため、周囲も本人も気づきにくいのが特徴です。

施設で出会う脳血管性認知症の姿

介護現場で出会う脳血管性認知症の方は、大きく次の二つの経過をたどっていることが多いです。一つは、大きな脳卒中を起こして片麻痺や失語などの後遺症とともに認知症が現れたタイプ。もう一つは、小さな脳梗塞が積み重なり、はっきりした発作の自覚がないまま少しずつ進んだタイプです。前者は身体介助のニーズが前面に出やすく、後者は意欲低下や物忘れが「年のせい」と見過ごされやすい違いがあります。

介護職が知っておきたい基本の特徴

脳血管性認知症には、ケアに直結する共通の特徴があります。国立長寿医療研究センターの解説などによれば、初期には物忘れよりも意欲低下や自発性の低下、そして計画を立てて段取りよく物事を進める力(遂行機能)の低下が目立ちやすく、感情のコントロールが難しくなる感情失禁が起こりやすいこと、そして本人が「うまくできない」ことを自覚している(病識が保たれやすい)ことが挙げられます。この「自覚があるからこそのつらさ」を理解しておくことが、関わりの出発点になります。また夜間にせん妄(一時的な混乱や落ち着かなさ)を起こしやすい傾向もあり、夕方から夜にかけての様子にも目を配ります。

アルツハイマー型認知症との違いとケアへの影響

脳血管性認知症へのケアは、アルツハイマー型と同じ発想で進めるとかみ合わないことがあります。両者の違いを介護職の関わり方の観点で整理します。

観点脳血管性認知症アルツハイマー型認知症
進行の仕方脳卒中の再発ごとに悪化する階段状。落ち着いている時期があるゆるやかに連続して進む
症状のばらつきできる・できないの差が大きい(まだら認知症)。時間帯でも変動比較的一様に低下する
初期に目立つもの意欲低下・自発性低下・遂行機能の低下近時記憶の障害(新しいことを覚えにくい)
病識(自覚)保たれやすく、失敗に落ち込みやすい進行とともに薄れやすい
身体症状片麻痺・嚥下障害・言語障害・歩行障害を伴いやすい初期は目立ちにくい
感情面感情失禁・抑うつが出やすい不安・取り繕いが出やすい

ケアへの示唆は明確です。アルツハイマー型では「覚えていない前提で環境を整える」ことが軸になりますが、脳血管性では「できる力が残っている前提で、それを奪わずに引き出す」ことが軸になります。本人は自分の変化に気づいているため、できないことを指摘するより、できることに焦点をあてる関わりが感情の安定につながります。なお両者が併存する混合型も多く、実際には一方の型に決めつけず、目の前の反応から関わりを調整する姿勢が現実的です。

まだら認知症:できる力を活かす関わり

まだら認知症とは、脳の傷ついた部分の機能は落ちる一方で、傷ついていない部分の機能は保たれるために、「できること」と「できないこと」の差が大きくなる状態です。症状の名前であって、認知症の種類ではありません。介護職がこの差を読み違えると、「気分でやったりやらなかったりする人」と誤解し、関係がこじれてしまいます。

「できる力マップ」で残った力を見える化する

おすすめしたいのは、その人の「できること」を業務の中で意識的に記録し、チームで共有することです。食事は自分で食べられる、服のボタンは苦手だが袖通しはできる、昔の職業の話は流暢、計算や日付はあいまい、といった具合に、生活動作と認知機能を分けて棚卸しします。特別な様式は要りません。既存のケア記録やカンファレンスの場で「今日この方ができていたこと」を一言添えるだけでも、残存機能の地図が少しずつ描けます。

できる力を奪わない関わりの具体

  • 先回りしすぎない:時間がかかっても自分でできる動作は待つ。介助は「できない部分だけ」に絞る。
  • 時間帯を合わせる:調子の良い時間に、本人が得意なこと(配膳の手伝い、洗濯物たたみ、会話など)をお願いする。
  • 成功で終える:難しい課題の途中でやめず、できるところまでで区切って「助かりました」と伝える。
  • 指摘しすぎない:一部できなかったことを取り上げて注意しない。本人が一番わかっている。

まだらな状態は日や時間で揺れます。「昨日できたのに今日はできない」を能力の低下と決めつけず、体調・睡眠・血圧・環境の変化がなかったかを先に振り返ることが、脳血管性ならではの見方です。

感情失禁への落ち着いた対応

感情失禁とは、自分の意思とは関係なく、ささいなきっかけで急に泣いたり怒ったり笑ったりと、感情のコントロールが難しくなる状態です。脳の感情を調整する回路が障害されて起こるもので、脳血管性認知症に特徴的にみられます。大切なのは、これが「わがまま」でも「性格が変わった」わけでもなく、症状だと理解することです。

その場でできる落ち着いた対応

  • 止めようとしない:泣きやませよう、なだめて抑えようと急がない。感情そのものを否定しない。
  • 穏やかに、静かに寄り添う:声のトーンを落とし、そばで落ち着くのを待つ。周囲がざわついていれば静かな場所へ移る。
  • 短い言葉で受け止める:「つらかったですね」「大丈夫ですよ」と、長い説明より短い共感の言葉を。
  • 介護職自身が動じない:驚いて表情を変えると本人の不安が増す。まず自分が落ち着く。

トリガー(引き金)を記録して先回りする

感情失禁は一見唐突に見えても、特定の話題・時間帯・場面が引き金になっていることがあります。「いつ・どんな場面で・その前に何があったか」を短く記録し、チームで見比べると、入浴の声かけの直前に多い、家族の話題で涙が出やすい、夕方に増える、といったパターンが浮かぶことがあります。わかったパターンは、その場面の進め方を変えたり、事前に一声かけたりして負担を減らす手がかりになります。感情変化のきっかけは人によって違うため、介護職の観察がそのまま個別ケアの質を左右します。

頻度や程度が強く生活に影響する場合は、抑うつが背景にあることもあります。抱え込まず、看護職や医師に観察した事実を共有し、必要に応じて医療的な対応につなげます。

意欲低下(アパシー)への役割づくり

脳血管性認知症では、初期から意欲低下(アパシー)や自発性の低下が目立ちやすいのが特徴です。何にも興味を示さず、誘っても「いい」と断り、一日中座って過ごす。こうした姿は「元気がないだけ」と見過ごされがちですが、放っておくと動かない時間が増え、身体機能まで落ちる廃用のリスクが高まります。

アパシーと「怠け」「うつ」を分けて考える

アパシーは、本人が「やりたいのにできない」と苦しんでいるうつ状態とは異なり、意欲そのものが湧きにくくなっている状態です。無理に励ましたり「頑張りましょう」と急かしたりすると逆効果になることがあります。一方で、脳血管性では抑うつも合併しやすいため、表情の暗さ、食欲や睡眠の変化、悲観的な言葉が続くときは、うつの可能性として看護・医療につなぐ視点も持っておきます。

小さな役割で成功体験を積む

  • ハードルを下げて誘う:「体操しましょう」より「この花、水やり手伝ってもらえますか」と、具体的で短い頼み方にする。
  • 役割をつくる:おしぼり配り、テーブル拭き、洗濯物たたみなど、本人ができて誰かの役に立つ作業を用意する。
  • 結果より過程をねぎらう:「ありがとう、助かりました」と感謝を言葉にし、プライドと自己有用感を支える。
  • 本人の歴史から入り口を探す:昔の仕事や趣味は保たれていることが多い。得意分野を糸口に活動へ誘う。

デイの活動やレクへの参加も、集団の中に居場所ができると意欲の呼び水になります。ポイントは、量をこなすことではなく、小さな「できた」と「ありがとう」を毎日積み重ねることです。

片麻痺・嚥下・高次脳機能障害への生活支援と誤嚥・転倒予防

脳血管性認知症は脳卒中を土台に起こるため、認知面だけでなく身体の後遺症を伴うことが多いのが、他の認知症と大きく違う点です。片麻痺・嚥下障害・言語障害・高次脳機能障害などが認知症と重なり、転倒や誤嚥のリスクを高めます。生活の場での支援ポイントを整理します。

片麻痺・歩行障害と転倒予防

麻痺のある側は感覚も鈍く、本人が危険に気づきにくいことがあります。移乗や歩行の介助は健側を活かし、麻痺側を保護する基本を守ります。小刻み歩行やふらつきがある場合は、履物・床の段差・車いすのブレーキなど環境を整え、あわてて動く場面(トイレ・起床時)を先読みして見守ります。まだら認知症により「できる時とできない時」があるため、いつもできているからと油断せず、その日の状態を確認してから介助量を決めます。

嚥下障害と誤嚥予防

嚥下障害があると誤嚥性肺炎の危険が高まります。食事はむせの有無、飲み込みの様子、食事形態(きざみ・とろみ)が本人に合っているかを観察し、姿勢(あごを引いた座位)を整えます。食後の口腔ケアは誤嚥性肺炎予防の要です。少しでも「いつもと違うむせ方」「食事に時間がかかる」「声が変わった」と感じたら、自己判断で形態を変えず、看護職や言語聴覚士(ST)に相談します。

言語障害・高次脳機能障害への配慮

失語があると、言いたいことが出てこない、聞いた言葉が理解しにくいといった困りごとが起こります。ゆっくり短く、はい・いいえで答えられる聞き方をし、絵カードやジェスチャー、指さしを併用します。また高次脳機能障害として、見えているのに認識できない失認や、動作の手順が組み立てられない失行が現れることもあります。「わざとやらない」のではなく脳の症状であることを前提に、手順を一つずつ示す、動作のきっかけをつくるなどの支援を行います。

信頼を築くコミュニケーションと家族との連携

脳血管性認知症の方は病識が保たれやすく、失敗を敏感に感じ取ります。だからこそ、急かさない、否定しない、できたことを言葉にして返す、といった基本の積み重ねが信頼につながります。麻痺や失語で思うように伝えられないもどかしさが、いらだちや感情失禁の背景にあることも少なくありません。うまく伝わらないときは責めず、時間をかけて意図をくみ取る姿勢が安心を生みます。家族に対しては、施設での様子(できていること、穏やかに過ごせた場面)を具体的に伝えると、家族の不安がやわらぎ、本人の生活歴や好みなどケアのヒントも引き出しやすくなります。

脳卒中の再発予防を支える観察と多職種連携

脳血管性認知症のケアで、他の認知症とはっきり違う独自の役割が、脳卒中の再発予防を日常から支えることです。この認知症は脳卒中の再発ごとに階段状に悪化するため、再発を防ぐことが、そのまま認知機能と生活を守ることにつながります。根本的に治す薬はなく、再発予防と生活習慣病の管理が治療の柱だと、複数の医療機関の解説が一致して述べています。医療行為は医療職の役割ですが、生活の場で最も長く本人を見ている介護職の観察が、その土台を支えます。

介護職ができる「気づきの観察」

  • 血圧の変化:施設で測る血圧がいつもより高い・低い日が続いていないか。ふらつきや頭痛の訴えと合わせて記録する。
  • 服薬の様子:血圧や血をサラサラにする薬などが処方されていることが多い。飲み込めているか、飲み忘れや拒否がないかを見守り、変化は看護職へ。
  • 水分と食事:脱水は脳梗塞の誘因になりうる。水分摂取量や食事量、便通の変化に気を配る。
  • 生活習慣:塩分の多い食事の偏り、運動量の低下、睡眠の乱れなど、生活習慣病を悪化させる要素に目を向ける。

再発のサインを見逃さない

脳卒中が再発すると、認知症状が急に悪化することがあります。「昨日まで話せていたのに呂律が回らない」「片側の手足が急に動きにくい」「顔の片方がゆがむ」「急に強い頭痛を訴える」といった変化は、緊急対応が必要なサインです。これらに気づいたら、ためらわず看護職・医療職に速やかに報告します。日々の「その人の普通」を知っている介護職だからこそ、わずかな異変に最初に気づけます。

多職種連携で支える

再発予防は一職種では成り立ちません。血圧や服薬は看護師、嚥下や麻痺の機能はリハビリ職(PT・OT・ST)、栄養は管理栄養士、生活全体はケアマネジャーと、それぞれの専門職が関わります。介護職の役割は、生活の中で見えた事実(食事量・血圧・気分・動作の変化)を、事実のまま正確に伝えることです。「なんとなく元気がない」で終えず、いつ・何が・どう変わったかを共有すると、チームの判断材料になります。

一日のケアに落とし込む観察と関わり

ここまでの関わりを、施設の一日の動線に落とし込むと、脳血管性認知症のケアは「観察して、記録して、つなぐ」の繰り返しになります。特別な時間を取らなくても、日常業務の中で意識を向けるだけで質は変わります。

  • 起床・整容:起き上がりや立ち上がりのふらつきを見守る。血圧が不安定になりやすい時間帯として、急がせない。表情や言葉のいつもとの違いをチェック。
  • 食事:むせ・飲み込み・食事量を観察。姿勢を整え、食後は口腔ケア。できる動作は自分で行ってもらう。
  • 日中の活動:調子の良い時間に、得意なことや小さな役割をお願いする。参加を強要せず、成功体験で終える。
  • 入浴・排泄:転倒しやすい場面を先読み。麻痺側を保護し、感情失禁が出やすい場面なら静かに、一声かけてから進める。
  • 夕方から夜間:疲れや変動で症状が強まりやすい。夜間せん妄や不穏に注意し、静かで安心できる環境を整える。
  • 記録・申し送り:血圧・気分・動作・食事の「いつもとの違い」を事実で残し、看護・リハビリ・ケアマネへつなぐ。

脳血管性認知症のケアは、劇的な工夫よりも、日々の小さな観察と関わりの積み重ねで支えられます。本人のできる力を奪わず、感情に寄り添い、再発の芽を早く拾う。その一つひとつが、利用者の穏やかな暮らしを守ります。

観察を「伝わる報告」に変える記録のコツ

脳血管性認知症のケアで介護職の力が最も活きるのが、日々の観察を「伝わる報告」に変える場面です。生活の中の小さな変化を、あいまいな印象ではなく事実で共有すると、看護・リハビリ・医療の判断が早くなり、再発予防や誤嚥予防に直結します。

  • 事実と印象を分ける:「元気がない」ではなく「朝食を半分残し、午前中は声かけに返事が少なかった」と、見たこと・数えられることで伝える。
  • いつもとの差で伝える:「普段は自分で立てるが、今日は立ち上がりにふらつきが2回あった」と、その人の平常との比較で示す。
  • 時間と場面をそえる:「14時ごろ、入浴の声かけの直後に涙が出た」と、いつ・どの場面かをセットで残す。
  • 緊急のサインは即時報告:呂律が回らない、片側の手足が急に動きにくい、顔がゆがむ、強い頭痛などは、記録を待たずその場で看護・医療へ。
  • チームで見比べる:感情失禁やまだらな変動は、複数の職員の記録を並べるとパターンが見えることがある。気づきを一人で抱えない。

こうした記録と報告は特別な技術ではなく、毎日の申し送りやケア記録の書き方を少し意識するだけで質が上がります。生活の場に一番近い介護職の観察が、脳血管性認知症のケアを支える情報源になります。

よくある質問(FAQ)

Q. まだら認知症で「できる時とできない時」があるのは、さぼっているのですか。

いいえ。脳の傷ついた部分と保たれた部分が混在し、体調や時間帯によって出方が変わるためで、意図的なものではありません。できない時を責めず、できる時に力を発揮してもらう関わりが大切です。

Q. 感情失禁で急に泣き出したら、どうすればよいですか。

止めようとせず、静かにそばで落ち着くのを待ちます。声のトーンを落とし、「つらかったですね」と短く受け止めます。周囲がざわついていれば静かな場所へ移り、介護職自身が動じないことが安心につながります。

Q. 意欲がなく一日中座っています。無理にでも活動に誘うべきですか。

無理な励ましは逆効果になることがあります。ハードルの低い具体的な頼みごと(おしぼり配りなど)で小さな役割をつくり、「ありがとう」で成功体験を積むほうが効果的です。ただし抑うつが疑われる様子があれば看護・医療に相談します。

Q. アルツハイマー型との関わり方の一番の違いは何ですか。

脳血管性では本人が自分の変化に気づいていることが多く、残っている「できる力」を奪わない関わりが軸になります。できないことを補うより、できることに焦点をあてる姿勢が感情の安定につながります。

Q. 介護職として再発予防にどこまで関われますか。

医療行為は行いませんが、血圧・服薬・食事・水分・生活習慣の変化を観察して記録し、異変を看護・医療職に正確に伝えることが重要な役割です。呂律や手足の動き、顔のゆがみなど急な変化は緊急のサインとして速やかに報告します。

参考文献・出典

  • [1]
    病院レター第59号 意外と身近な「血管性認知症」- 国立長寿医療研究センター

    血管性認知症の初期症状(意欲低下・自発性低下)、感情失禁、高次脳機能障害(失認・失行)、生活習慣病管理と脳卒中予防の重要性についての解説

  • [2]
    脳血管性認知症- 健康長寿ネット(長寿科学振興財団)

    脳血管性認知症の症状(感情失禁・意欲低下)と、脳血管障害の再発予防が特に重要であること、高血圧・糖尿病・心疾患の管理についての解説

  • [3]
    精神障害のある方への支援(研修教材)認知症性疾患の解説- 厚生労働省

    認知症の原因疾患のうちアルツハイマー型に次いで血管性認知症が多いこと、障害された部位で症状が異なる「まだら認知症」、症状が階段状に進む場合があることの記述

まとめ

脳血管性認知症の利用者ケアは、症状を一つずつ抑え込む発想ではなく、残っている力を活かしながら、脳血管性ならではのリスクに目を配る関わりが土台になります。

まだら認知症では「できる時・できない時」を能力の問題と決めつけず、できる力を奪わない関わりを。感情失禁には止めようとせず静かに寄り添い、引き金を記録して先回りを。意欲低下には小さな役割と「ありがとう」で成功体験を積みます。片麻痺・嚥下・高次脳機能障害には安全に配慮した生活支援を行い、そして血圧・服薬・生活習慣の変化を観察して脳卒中の再発予防を多職種と支えます。

介護職は、生活の中で最も長く本人を見ている存在です。日々の小さな「いつもとの違い」に最初に気づき、事実を正確につなぐことが、利用者の穏やかな暮らしと、その人らしさを守る力になります。一つひとつの関わりは地味に見えても、その積み重ねが安心できる毎日をつくります。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

続けて読む

このテーマを深掘り

関連トピック

ご家族・ご利用者の視点

同じテーマをご家族・ご利用者の方の視点から書いた記事。視野を広げるためのヒントとして。