
40〜64歳の介護保険料、令和8年度は月6,360円へ|協会けんぽ・健保組合別に読み解く
厚労省が公表した令和8年度の第2号被保険者(40〜64歳)1人当たり介護保険料は月6,360円、年76,317円で過去最高。協会けんぽ1.62%・健保組合の料率動向、試算の根拠、家計への影響まで公的資料で解説。
要点サマリー|6,360円という数字が意味すること
厚生労働省が2026年3月9日に公表した「令和8年度介護納付金の算定について(報告)」によると、40〜64歳の第2号被保険者が負担する介護保険料の1人当たり月額(事業主負担・公費分を含む)は6,360円、年額では76,317円に達し、2000年の介護保険制度創設以来過去最高を更新する見込みです。令和7年度の6,202円から1年で158円の増加で、1号保険料(65歳以上、第9期全国平均6,225円)をついに上回りました。全国健康保険協会(協会けんぽ)の介護保険料率は1.59%から1.62%へ0.03ポイント引き上げられ、健康保険組合連合会の早期集計でも予算平均料率1.74%前後で推移しています。現役世代に広がる「負担の限界」という声と、算定の仕組みを公的資料ベースで整理します。
一目でわかるポイント
- 第2号保険料の1人当たり月額見込額:6,360円(令和7年度比+158円、年額76,317円)
- 算定式:介護納付金総額 ÷ 第2号被保険者の標準報酬総額の見込額 ÷ 月数/人数
- 協会けんぽ料率:1.62%(前年1.59%、労使折半で本人0.81%)
- 健保組合の予算早期集計平均:約1.74%(※令和7年度実績ベース/組合により幅広い)
- 国保加入の第2号は各市区町村が独自計算(所得割+均等割等)
- 根拠資料:厚労省・社会保障審議会介護保険部会、協会けんぽ支部評議会資料
本記事は既報「2026年4月から介護保険料率が引き上げ」と切り口を分け、「6,360円という1人当たり月額の内訳」「第2号被保険者という枠組み」「協会けんぽと健保組合の試算の違い」「国民健康保険加入者の第2号負担」の4点を中心に、数字の根拠に踏み込んで解説します。
目次
「6,360円」はどうやって決まるのか|厚労省の算定プロセスを読み解く
「令和8年度、40〜64歳は月6,360円」という数字は、厚生労働省が毎年1月に告示する介護納付金の算定諸係数と、支払基金に報告される医療保険者別の加入者数・標準報酬総額から機械的に計算されます。福祉新聞のスクープでも強調されていたとおり、2026年度は制度開始後で最高額を更新しており、その意味を理解するには「1人当たり負担額」がどの分子・分母で構成されているのかを押さえることが欠かせません(出典:福祉新聞WEB「現役層の介護保険料、全国平均で月6300円超へ」)。
第2号被保険者とは|40歳以上65歳未満の医療保険加入者
介護保険の被保険者は、年齢で2つに区分されます。厚生労働省老健局のリーフレット「介護保険制度について」によると、40歳以上65歳未満の医療保険加入者が第2号被保険者で、健保組合・協会けんぽ・共済組合・市町村国保など、それぞれが加入する医療保険を通じて医療保険料と一体的に介護保険料を徴収されます。原則、40歳になった月から徴収が始まり、65歳の誕生日月に自動的に第1号被保険者に切り替わります。
重要なのは、第2号保険料の使途が介護給付費の27%(※令和6年度第2号被保険者負担率)に相当する「介護納付金」として社会保険診療報酬支払基金にプールされ、そこから市町村(保険者)へ配分されるという構造です。つまり各個人が「自分の介護のために積み立てる」のではなく、制度全体の給付費を現役世代全員で面で支える仕組みになっています(出典:厚生労働省「介護保険制度について(40歳になられた方へ)」)。
「月6,360円」の計算ロジック
令和8年度の算定報告書で示された主要な諸係数は次のとおりです(出典:厚生労働省「令和8年度 介護納付金の算定について(報告)」)。
| 項目 | 数値 | 意味 |
|---|---|---|
| 令和8年度 概算納付金総額 | ― | 全医療保険者合計で見込まれる介護納付金の額 |
| 1人当たり納付見込額(平均) | 年76,317円 | 第2号被保険者1人当たりの年間拠出額 |
| 令和6年度 第2号被保険者1人当たり負担額 | 74,535円 | 前々年度の確定負担額(精算に使用) |
| 総報酬割概算負担率 | 0.01884599 | 被用者保険が総報酬額に乗じる率(概算) |
| 総報酬割確定負担率 | 0.01631540 | 令和6年度分の確定率 |
| 参考料率 | 0.01614637 | 被用者保険等の納付金総額÷標準報酬総額 |
この「年76,317円」を12か月で割ると月6,360円(端数調整後)となり、これが冒頭の数字の出所です。また、2000年度(第1期)の第2号保険料は月2,075円でしたから、26年間で約3.1倍に膨らんでいる計算になります。
既報との違い|「料率」と「1人当たり金額」は別物
当サイトの既存記事「2026年4月から介護保険料率が引き上げ|現役世代の負担増はいくら?」では、協会けんぽの保険料率(1.62%)が引き上げられたことに焦点を当てました。一方、本記事で扱う「月6,360円」は、全医療保険者平均の1人当たり金額であり、料率(パーセンテージ)ではなく「事業主負担分と公費分も含めた第2号被保険者1人当たりの介護にかかるコスト」を示す別指標です。両者は連動していますが、制度設計を理解するうえでは区別して捉える必要があります。
過去最高の軌跡|第2号保険料と第1号保険料の推移を並べて検証
令和8年度の6,360円がどれだけ突出した水準なのかを把握するには、制度創設以来の推移を並べて見るのが有効です。以下は厚生労働省「令和8年度 介護納付金の算定について(報告)」に掲載された公式データから抜粋した、第1号・第2号保険料の1人当たり月額の推移です。
第2号保険料(40〜64歳)1人当たり月額の推移
| 計画期 | 年度 | 第2号保険料(月額) | 第1号保険料(全国平均) |
|---|---|---|---|
| 第1期 | 平成12年度(2000) | 2,075円 | 2,911円 |
| 平成13年度 | 2,647円 | ||
| 平成14年度 | 3,008円 | ||
| 第2期 | 平成15年度 | 3,196円 | 3,293円 |
| 平成16年度 | 3,474円 | ||
| 平成17年度 | 3,618円 | ||
| 第3期 | 平成18年度 | 3,595円 | 4,090円 |
| 平成19年度 | 3,777円 | ||
| 平成20年度 | 3,944円 | ||
| 第4期 | 平成21年度 | 4,093円 | 4,160円 |
| 平成22年度 | 4,289円 | ||
| 平成23年度 | 4,463円 | ||
| 第5期 | 平成24年度 | 4,622円 | 4,972円 |
| 平成25年度 | 4,871円 | ||
| 平成26年度 | 5,125円 | ||
| 第6期 | 平成27年度 | 5,081円 | 5,514円 |
| 平成28年度 | 5,192円 | ||
| 平成29年度 | 5,190円(9月まで)/5,397円(10月〜) | ||
| 第7期 | 平成30年度 | 5,353円 | 5,869円 |
| 令和元年度 | 5,532円 | ||
| 令和2年度 | 5,669円 | ||
| 第8期 | 令和3年度 | 5,788円 | 6,014円 |
| 令和4年度 | 5,825円 | ||
| 令和5年度 | 6,005円 | ||
| 第9期 | 令和6年度 | 6,211円 | 6,225円 |
| 令和7年度 | 6,202円(見込額) | ||
| 令和8年度 | 6,360円(見込額) |
出典:厚生労働省「令和8年度 介護納付金の算定について(報告)」(第5回介護保険部会資料)
データから読み取れる3つの事実
事実1:2号保険料が1号保険料を初めて明確に上回る年度
第9期(令和6〜8年度)は、第1号保険料の全国平均基準額が6,225円で3年間固定されています(3年に1回改定のため)。一方、毎年改定される第2号保険料は令和6年度6,211円・令和7年度6,202円と1号を下回る時期もありましたが、令和8年度は6,360円と1号保険料を135円上回る形になりました。現役世代の1人当たり負担が高齢者の標準ラインを超えた、象徴的な転換点といえます。
事実2:26年で約3.06倍、直近5年で月額約570円の増
2000年度(2,075円)比で約3.06倍、令和3年度(5,788円)比でも572円増です。単年の引き上げ幅は微増でも、複利的に効いてくる累積負担は無視できません。
事実3:総報酬割(賃金比例)への移行が影響
平成29年度から、被用者保険の介護納付金の配分が段階的に総報酬割(収入に応じた配分)に切り替えられ、令和2年度に完全移行しました。これにより、大企業の健保組合(平均報酬が高い)の負担割合が増え、中小企業の協会けんぽ・共済組合間の財政力格差の調整が進んでいます。料率や月額の変動には、この総報酬割の要素も絡んでいます。
協会けんぽ・健保組合・共済・国保で違う|加入先別の試算を比較
「月6,360円」は全医療保険者の平均値であり、実際に自分の給与から引かれる金額はどの医療保険に加入しているかで大きく異なります。本セクションでは、主要な4類型(協会けんぽ/健保組合/共済組合/国民健康保険)について、公的資料をもとに令和8年度の試算を比較します。
1. 協会けんぽ(中小企業の被用者):料率1.62%
全国健康保険協会(協会けんぽ)は、主に中小企業の会社員約4,000万人(被保険者+被扶養者)が加入する、日本最大の医療保険者です。介護保険料率は全国一律で、令和8年度は1.62%(労使折半で本人0.81%)。令和7年度の1.59%から0.03ポイント引き上げとなりました。
協会けんぽ千葉支部の評議会資料によると、料率を1.59%から1.62%に引き上げた場合、標準報酬月額34万円のモデルケースで労使折半後の本人負担は月額2,703円→2,754円(+51円)の増加です(出典:協会けんぽ千葉支部「令和8年度 介護保険料率について」)。
背景には協会けんぽ介護分の厳しい収支があります。令和8年度の見込みは以下のとおりです。
| 項目 | 令和6年度(決算) | 令和7年度(直近見込) | 令和8年度(予算案ベース) |
|---|---|---|---|
| 保険料収入 | 10,555億円 | 10,919億円 | 11,432億円 |
| 介護納付金(支出) | 10,835億円 | 11,125億円 | 11,485億円 |
| 単年度収支差 | ▲279億円 | ▲205億円 | ▲52億円 |
| 準備金残高 | 262億円 | 57億円 | 5億円 |
準備金が5億円まで枯渇する見通しのため、料率引き上げは事実上不可避だったことが分かります(出典:協会けんぽ埼玉支部「2026(令和8)年度 保険料率について」)。
2. 健康保険組合(大企業):組合ごとに大きな幅
健康保険組合は、大企業や業種別に設立される公的医療保険で、料率を自主的に決められます。生命保険文化センターの整理によると、健康保険組合連合会の「令和7年度健康保険組合予算早期集計結果」で、介護保険料率の予算平均は約1.74%(事業主負担分含む)とされています(出典:生命保険文化センター「公的介護保険への加入はいつから?」)。協会けんぽより高めの水準ですが、これは健保組合全体で高額な介護納付金(総報酬割による増加)を負担しているためです。
個別組合の例として、東プレ健康保険組合では2026年3月以降、介護保険料率13.6/1000(=1.36%、労使折半で本人0.68%)が承認されています(出典:東プレ健康保険組合「2026年度 健康保険料率及び介護保険料率の変更について」)。平均1.74%より低い組合もあれば、2%超の組合もあり、組合間の格差は依然として大きい状況です。
3. 共済組合(公務員等):独自料率で被用者保険扱い
国家公務員共済・地方公務員共済・私立学校振興・共済事業団などの共済組合も、被用者保険等保険者として総報酬割の算定対象です。料率は各共済で個別に設定され、概ね1.5〜1.9%の範囲で推移しています。いずれも労使折半(事業主=使用者負担分を含む)である点は協会けんぽと同じです。
4. 国民健康保険(自営業・フリーランス等):均等割+所得割で世帯単位
国民健康保険に加入する40〜64歳の第2号被保険者は、市区町村ごとに定められた介護分の保険料を国民健康保険料(税)と一体で負担します。算定方式は自治体により異なりますが、概ね「所得割+均等割(+平等割・資産割)」の組合せです。世帯内に複数の第2号被保険者がいる場合、均等割が人数分かかるため、被用者保険より負担が重くなるケースもあります。
加入先別・月額負担イメージ(標準報酬月額30万円の40代会社員で試算)
| 加入先 | 料率(本人負担分) | 本人負担/月 | 事業主負担/月 |
|---|---|---|---|
| 協会けんぽ(令和8年度) | 0.81% | 2,430円 | 2,430円 |
| 健保組合(連合会予算平均・試算) | 約0.87% | 約2,610円 | 約2,610円 |
| 東プレ健保組合(例) | 0.68% | 2,040円 | 2,040円 |
| 国民健康保険(世帯・自治体により異なる) | ― | 世帯全体で加算 | なし(全額自己負担) |
同じ40〜64歳でも、加入先によって月数百円単位で差が出るのが実態です。「6,360円」という平均値は、これらの多様な試算を平均化した指標であることを理解しておきましょう。
現役世代の「負担は限界」|社会保障審議会で上がった声と論点
月6,360円という水準は、単なる数字の更新ではありません。現役世代の保険料負担がいよいよ許容の限界を超えつつあるという社会的メッセージでもあります。令和7〜8年にかけて開催された社会保障審議会介護保険部会では、現役世代を代表する委員から、繰り返し危機感が表明されました。
「負担は限界」|ケアマネドットコムが伝えた議論の温度感
介護専門メディアのケアマネドットコムは、令和8年度の介護保険料について「現役世代の介護保険料、過去最高の月6360円へ 新年度 審議会で『負担は限界』との声も」と題して報じました(出典:ケアマネドットコム)。審議会では、健康保険組合連合会など被用者保険側の委員から以下のような意見が継続的に出ています。
- 現役世代の保険料負担は既に限界に達しており、将来への不安にもつながっている
- 公費(税財源)の追加投入を含む、負担構造の抜本見直しが不可欠
- 介護給付費の効率化(軽度者への給付見直し、利用者負担2割対象の拡大)を急ぐべき
- 第2号被保険者対象年齢の引き下げ(30歳〜)は、受益と負担の関係が希薄で困難
第133回介護保険部会(2025年12月25日)のとりまとめ
令和7年12月25日の第133回社会保障審議会介護保険部会では、「介護保険制度の見直しに関する意見」がとりまとめられました。ポイントは次のとおりです(出典:社会保険研究所「第133回社会保障審議会介護保険部会」)。
- 2割負担の対象拡大は結論先送り。第10期介護保険事業計画スタート(2027年度)前までに結論
- 補足給付(低所得の施設入所者への居住費・食費補助)の所得区分精緻化を2026年8月から段階的に実施
- 地域差(中山間・人口減少地域/大都市部/一般市)に応じたサービス提供体制の再構築
- 金融所得・金融資産の保険料算定への反映については、引き続き検討
部会長の菊池馨実・早稲田大学理事(法学学術院教授)は総括で、「介護保険制度は、現役世代である第2号被保険者が払う保険料のほとんどが第1号被保険者への給付に使われるため、世代間の対立構造を招きやすい」と指摘し、制度の持続可能性を高めるには「関係者が深い知恵を出し合い、将来に渡って持続可能な改革を少しずつ重ねていくしかない」と述べました。
補足給付の見直し(2026年8月〜)
GemMedの報道によると、厚労相・財務相折衝で合意された補足給付の見直しにより、以下の変更が順次行われます(出典:GemMed「介護保険利用料『2割』の高齢者を拡大すべき?」)。
- 2026年8月から:年金収入等120万円超の所得区分の居住費の負担限度額を月3,000円引き上げ
- 2027年度中:所得区分の設定を精緻化し、年金収入等100万円超120万円以下、140万円超の区分で負担限度額の見直し
これらは直接的には第1号被保険者(高齢者)への影響ですが、給付費の抑制を通じて第2号保険料の上昇圧力を弱める効果が期待されています。
第2号被保険者対象年齢の引き下げ論
一部の議論では「40歳開始を30歳に引き下げてはどうか」という提案も出ていますが、介護保険部会では「若年層は子育て等の負担があり、受益と負担の関係性も希薄で反対意見が多い」として慎重論が支配的です。当面、40歳以上の現役世代に負担を依存する枠組みは続く見通しです。
家計への影響|月額・年額・ライフタイムで考える6,360円のインパクト
「月6,360円」は事業主負担・公費分も含む数字なので、実際に会社員の給与明細に現れる本人負担はこの半分以下です。ただし、年額・生涯ベースで捉えると、家計に与えるインパクトは決して小さくありません。ここでは複数の視点から家計影響を検証します。
視点1:本人負担ベースの月額・年額
40〜64歳の協会けんぽ加入会社員(労使折半)の本人負担は、料率1.62%の半分=0.81%です。標準報酬月額別に整理すると次のとおりです(賞与にも同率で課されるため、年額は月×12+賞与分で計算)。
| 標準報酬月額 | 本人負担/月 | 年収(賞与2か月含む・14か月換算) | 年間本人負担 |
|---|---|---|---|
| 22万円 | 1,782円 | 308万円 | 約24,948円 |
| 30万円 | 2,430円 | 420万円 | 約34,020円 |
| 38万円 | 3,078円 | 532万円 | 約43,092円 |
| 50万円 | 4,050円 | 700万円 | 約56,700円 |
| 65万円 | 5,265円 | 910万円 | 約73,710円 |
視点2:40歳から65歳までの生涯負担
仮に年収500万円前後の会社員が40歳から65歳まで25年間、令和8年度の料率(本人0.81%)を支払い続けた場合、本人負担の累計は約100万円〜125万円になります。事業主負担分を合わせると約200〜250万円が1人あたりの介護保険への総拠出額です。
ただし、第2号保険料は毎年改定されるため、現状の上昇トレンドが続けば、若い世代ほど生涯負担は重くなります。2040年頃に40代となる現在の20代は、より高い料率での支払いが見込まれる点に注意が必要です。
視点3:他の社会保険料との合計インパクト
2026年4月からは介護保険料率の引き上げに加え、子ども・子育て支援金(協会けんぽで0.23%、労使折半で本人0.115%)の徴収も始まります。手取りベースでの負担増は、介護保険料単独で見るよりも大きくなります。
| 項目 | 令和7年度(本人負担/月・30万円) | 令和8年度(本人負担/月・30万円) |
|---|---|---|
| 健康保険料(東京・全国平均ベース) | 約14,925円 | 約14,775円(全国平均9.90%想定) |
| 介護保険料 | 2,385円 | 2,430円 |
| 子ども・子育て支援金 | 0円 | 345円 |
| 厚生年金保険料 | 27,450円 | 27,450円(18.3%固定) |
| 社会保険料合計 | 44,760円 | 45,000円 |
全体としては月240円の増加ですが、健康保険料率の引き下げが介護保険料の引き上げと支援金新設を一部相殺している構図です。健康保険料率が据え置きまたは引き上げになった場合、負担増はもっと大きくなります。
視点4:国民健康保険加入者(自営業・フリーランス)の場合
自営業者やフリーランスの40〜64歳は、市区町村の国民健康保険を通じて介護分を負担します。例えば東京都新宿区の令和7年度介護分の試算(総所得250万円の単身世帯)では、年間約5〜6万円(月約4,200〜5,000円)程度が目安ですが、労使折半がないため、同じ収入水準の会社員と比べ、手取りベースでの負担感は大きくなります。
視点5:社会保険料控除の活用
納付した介護保険料は、全額が社会保険料控除の対象となり、所得税・住民税が軽減されます。会社員は年末調整で自動処理されますが、国民健康保険加入者や、配偶者の介護保険料を代わりに支払った場合は、確定申告で忘れずに申告しましょう。所得税率20%の方なら、年間介護保険料6万円に対して約1.8万円(所得税12,000円+住民税6,000円)の節税効果があります。
第2号被保険者の「受給要件」に潜む落とし穴|16特定疾病を把握する
第2号保険料を払っていれば介護サービスを受けられると考えがちですが、40〜64歳の受給要件は65歳以上とは大きく異なります。「月6,360円」を負担する以上、いざという時に使える条件を正確に理解しておくことは、制度を納得して支えるためにも重要です。
第2号被保険者は「16特定疾病」が原因の場合のみ受給可能
厚生労働省老健局のリーフレットによると、第2号被保険者(40〜64歳)が介護サービスを受けられるのは、加齢に起因する「16種類の特定疾病」が原因で要介護(要支援)状態になった場合に限定されます(出典:厚生労働省「介護保険制度について」)。これは65歳以上(第1号被保険者)が原因を問わず要介護認定を受けられるのと対照的です。
16特定疾病の一覧
- がん(末期:医師が回復の見込みがないと判断したもの)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症(若年性認知症を含む)
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症(ウェルナー症候群等)
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患(脳梗塞・脳出血等)
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 両側の膝関節・股関節の著しい変形を伴う変形性関節症
事故・外傷では介護保険は使えない
たとえば交通事故で脊髄を損傷して介護が必要になっても、原因が「加齢に起因する疾病」ではないため、40〜64歳の第2号被保険者は介護保険サービスの対象外となります。この場合、障害者総合支援法による障害福祉サービスや、自動車損害賠償責任保険(自賠責)、労災保険などでカバーすることになります。
「保険料を払っているのにサービスを受けられない」という不満の背景には、この受給要件の制約があります。逆にいえば、第2号保険料は主に第1号被保険者(65歳以上の高齢者)の介護給付費を支えるための現役世代からの仕送りという性格が強いということです。
末期がんも対象|若い世代の認識を改めたいポイント
特定疾病の中でも「がん(末期)」は、比較的若い年齢でも介護保険サービスの対象となる代表例です。医師が「回復の見込みがない」と判断した段階で、要介護認定の申請が可能になります。在宅での訪問看護・訪問介護・特殊寝台のレンタルなど、終末期を自宅で過ごすための支援を介護保険で受けられる点は、40〜64歳にとっても実用的な利用シーンです。
認定申請に必要な書類
第2号被保険者が要介護認定を申請する際、第1号被保険者が「介護保険被保険者証」を提示するのに対し、医療保険の被保険者証が必要となります。そのうえで主治医意見書により特定疾病に該当することが確認されると、認定調査へ進みます。認定プロセスは第1号被保険者と共通です。
被扶養者の第2号保険料
40〜64歳の会社員の配偶者が専業主婦(夫)で被扶養者の場合、被扶養者本人から別途介護保険料を徴収することはありません(協会けんぽの場合)。ただし、健保組合によっては「特定被保険者制度」として、40歳未満・65歳以上の被保険者でも、40〜64歳の被扶養者がいると介護分の保険料が徴収されるケースがあります。自分の加入する健保の取り扱いは、事業主または組合に確認しておきましょう。
よくある質問|「6,360円」をめぐる疑問をQ&Aで整理
Q1. なぜ2026年度の6,360円は「過去最高」と呼ばれるのですか?
介護保険制度が2000年度に始まって以来、第2号保険料(40〜64歳の1人当たり月額・事業主負担と公費を含む)は2,075円からスタートし、年度ごとに改定されてきました。直近では令和6年度6,211円、令和7年度6,202円(見込)と推移していましたが、令和8年度は6,360円で過去最高を更新します。厚労省の算定報告書に掲載された公式データでも、2000年度以降で最も高い水準です(出典:厚生労働省「令和8年度 介護納付金の算定について(報告)」)。
Q2. 6,360円は全員が実際に払う金額ですか?
いいえ。6,360円は事業主負担分と公費(国・都道府県・市町村の税財源)を含めた1人当たりの月額です。会社員(被用者保険加入者)の場合、本人が給与から天引きされるのは労使折半後の半額+α程度で、標準報酬月額30万円の協会けんぽ加入者なら、本人負担は月額2,430円(1.62%÷2×30万円)となります。
Q3. 第2号保険料は何に使われるのですか?
第2号保険料は社会保険診療報酬支払基金にプールされ、各市区町村(保険者)の介護給付費の約27%に充当されます。残りは、公費50%(国25%・都道府県12.5%・市町村12.5%)と、第1号被保険者(65歳以上)の保険料23%で賄われます。つまり第2号保険料は、主に高齢者の介護サービスを支える現役世代の拠出です(令和6年度第2号負担率は標準給付費等の27%)。
Q4. 1号保険料(6,225円)と2号保険料(6,360円)、なぜ金額が違うのですか?
算定方法が根本的に異なるためです。第1号保険料は3年に1回、市区町村ごとに設定される基準額(第9期全国平均6,225円)を所得段階で乗じた金額で、利用者自身の年金等から徴収されます。第2号保険料は毎年改定される1人当たり年間拠出額(76,317円÷12≒6,360円)で、事業主負担と公費を含んだ指標です。両者は比較対象として並べて語られますが、性格が異なります。
Q5. 協会けんぽ1.62%と健保組合1.74%、なぜ健保組合のほうが高いのですか?
総報酬割(賃金比例)で介護納付金を配分しているため、平均報酬が高い健保組合ほど1人当たりの納付金負担が大きくなる構造です。加えて、多くの健保組合は団塊世代の退職により支え手が減り、財政余力が低下しています。健康保険組合連合会「令和7年度予算早期集計結果」によると、予算平均料率は1.74%となっており、協会けんぽの1.62%を上回っています(出典:生命保険文化センター)。
Q6. 令和8年度の税制改正で介護保険料の計算方法も変わりますか?
はい、65歳以上の第1号被保険者については、給与所得控除の最低保障額引き上げ(55万円→65万円)に伴う保険料算定への影響を回避するため、令和8年度に限り税制改正前の基準で所得判定を行う特例が設けられています(出典:中野区「令和8年度の介護保険料について」)。第2号被保険者の料率計算(総報酬額ベース)には直接影響しません。
Q7. 共働き夫婦の場合、どう負担しますか?
共働きで2人とも40〜64歳の会社員なら、それぞれ自分の給与から介護保険料が天引きされます。標準報酬月額30万円ずつの共働き夫婦なら、世帯合計で月4,860円(本人負担分のみ)の負担です。片方が被扶養者(専業主婦等)の場合、協会けんぽでは被扶養者本人から追加徴収はなく、主たる被保険者の保険料に含まれる扱いです。
Q8. 令和9年度以降、第2号保険料はまだ上がりますか?
厚労省の推計では、介護給付費は2040年度に約25兆円(2026年度の約1.9倍)に達する見通しで、現行制度のままなら第2号保険料は月7,000円台に突入する可能性があります。社会保障審議会介護保険部会では、給付効率化(2割負担対象の拡大、補足給付の精緻化)や公費の追加投入を含む制度改革が継続議論されており、第10期計画(2027〜2029年度)の議論の中で方向性が示される見込みです。
参考文献・出典
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まとめ|6,360円の裏にある「支え合いの設計」を見つめ直す
厚生労働省が2026年3月9日に公表した令和8年度の介護納付金算定報告は、40〜64歳の第2号被保険者1人当たり月額保険料が6,360円(年76,317円)となり、制度創設以来の最高水準を更新することを明らかにしました。月158円という単年の増加幅は小さく見えますが、第1号保険料(6,225円)を初めて明確に上回り、2000年度比で約3.06倍に達したこの数字は、介護を支える世代と構造に関する重い問いを投げかけています。
本記事のキーポイント
- 令和8年度の第2号被保険者1人当たり月額:6,360円(過去最高更新)
- 年額:76,317円。労使折半・公費・総報酬割を反映した平均値
- 協会けんぽ:料率1.62%(前年1.59%、労使折半で本人0.81%)
- 健保組合:予算早期集計平均で約1.74%。組合間で料率に幅
- 国保加入の第2号:市区町村ごとに所得割+均等割で算定
- 第2号保険料は主に第1号被保険者(高齢者)の給付を支える「現役世代からの仕送り」
- 40〜64歳の受給要件は16特定疾病に限定。交通事故等は対象外
- 社会保障審議会では「現役世代の負担は限界」との声。公費追加投入・給付効率化の議論が継続
「数字を知る」から「構造を考える」へ
介護保険料が上がり続ける背景には、高齢化の進展、介護給付費の増大、現役世代の縮小、そして介護職の処遇改善という4つの力学が絡み合っています。6,360円という数字は、単なる家計の負担増ではなく、「誰が、どれだけ、どのように支えるのか」という社会保障の根本設計が問われている現れです。
短期的には、自身の給与から天引きされる保険料の仕組みを理解し、社会保険料控除などの節税制度を活用することが大切です。中長期的には、第10期介護保険事業計画(2027〜2029年度)に向けた議論の行方を注視し、制度の持続可能性と現役世代の負担軽減を両立させる知恵が社会全体に求められます。
介護保険料という数字を「取られているもの」として捉えるだけでなく、自分や家族、そして次世代が安心して年を重ねるための支え合いの仕組みとして読み解く視点が、これからの時代を生きる現役世代には必要なのではないでしょうか。
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