2027年度の障害福祉報酬改定、議論スタート|財務省「更なる適正化を」総費用4.2兆円・10年で倍増が焦点【2026年4月】
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2027年度の障害福祉報酬改定、議論スタート|財務省「更なる適正化を」総費用4.2兆円・10年で倍増が焦点【2026年4月】

厚生労働省は2026年4月28日の第55回障害福祉サービス等報酬改定検討チームで、令和9年度(2027年度)報酬改定に向けた議論を開始。同日の財政制度等審議会では財務省が総費用額4兆2000億円・10年で約2倍の膨張を問題視し『更なる適正化を』と要請しました。論点・スケジュール・介護報酬改定との連動まで解説します。

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この記事のポイント

厚生労働省は2026年4月28日の第55回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」で、令和9年度(2027年度)の障害福祉サービス等報酬改定に向けた議論を開始しました。同じ日に開かれた財政制度等審議会・財政制度分科会では、財務省が障害福祉サービスの総費用額が2024年度時点で4兆2000億円に達し、過去10年で約2倍に膨らんでいることを問題視。来年度改定で「更なる適正化策を講じる必要がある」と踏み込みました。検討チームは6月から53団体へのヒアリングに入り、年末に改定の方向性を固める日程です。介護現場で働く方にとっては、就労支援・グループホーム・障害児通所など隣接サービスの報酬がどう動くかが、職場の安定性や処遇の先行きを読む材料になります。

目次

解説動画

障害福祉サービスは、いまや介護分野と並んで「費用の膨張」が国の財政上の論点になっています。2024年度の総費用額は4兆2000億円。障害者自立支援法が施行された2006年度と比べると4倍以上、直近10年でも約2倍という急角度で伸び続けてきました。利用者数の増加だけでなく、1人当たり費用の上昇や営利事業者の参入拡大が重なった結果です。

こうした状況を背景に、2026年4月28日、厚生労働省と財務省がそれぞれ別々の会議で「次の改定」に向けた一歩を踏み出しました。厚労省は報酬の中身を議論する検討チームを、財務省は財政の観点から注文をつける財政制度等審議会を、同じ日に動かしたかたちです。

障害福祉と介護の報酬改定は、財源・処遇改善の枠組み・財政上の扱いまで密接に連動しており、障害福祉の改定議論は介護の現場で働く人にとっても無関係ではありません。この記事では、2027年度(令和9年度)障害福祉サービス等報酬改定に向けて何が論点になっているのか、財務省が求める「適正化」とは具体的に何を指すのか、そして同時並行で進む介護報酬改定とどう連動するのかを、一次資料にもとづいて整理します。障害福祉や介護の現場で働く方が、自分の職場とキャリアに引きつけて読めるよう、影響の見立てまで踏み込みます。

2027年度改定に向けた検討チームが始動

第55回検討チームで「議論開始」を宣言

厚生労働省は2026年4月28日、第55回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」を開催しました。この日の議題には「令和9年度障害福祉サービス等報酬改定に向けた今後の検討の進め方について」が盛り込まれ、次期改定に向けた本格的な議論のスタートを切るものとなりました。検討チームの主査は神谷政幸・厚生労働大臣政務官が務めています。あわせて「令和8年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査の実施について」も議題に上り、処遇改善加算が実際の賃上げにつながっているかを検証するためのデータ収集も並行して進められます。

検討チームは、障害福祉サービスの報酬を有識者の参画を得て公開の場で議論する厚労省内の会議体です。2024年度(令和6年度)の前回改定でも、客観性・透明性を高めるために設けられ、今回も同じ枠組みで次期改定の論点を詰めていきます。障害福祉サービスはこども家庭庁が所管する障害児支援(児童発達支援・放課後等デイサービスなど)と一体で報酬が設計されるため、検討チームには厚労省障害保健福祉部とこども家庭庁支援局の双方が参画している点も特徴です。

夏のヒアリングから年末の方向性決定まで

厚労省が示した検討スケジュールは、おおむね次の流れです。まず2026年6月から関係団体へのヒアリングを始め、夏までに具体的な論点を整理。秋ごろから個別の施策を詰め、年末に来年度改定の方向性を固めます。その後、2027年2月ごろに報酬改定案をまとめる日程が想定されています。改定率そのものは、年末の予算編成過程での大臣折衝を経て決まるのが通例です。

ヒアリングの対象は、当事者団体や事業者団体など合計53団体にのぼります。この中では、持続可能な制度をつくるための課題や対処策を尋ねるほか、多様な主体が参入してサービスの質にばらつきが見られることへの対処策も聞き取る方針です。あわせて、職員の賃上げや職場環境の改善、業務の効率化、物価高の影響、地域のサービス提供体制、利用者の重度化・高齢化など、幅広いテーマで現場の課題感を集める構えです。当事者・事業者の双方から意見を吸い上げることで、財政規律一辺倒ではない論点形成を図るねらいがあります。

論点は「処遇改善・質の確保・持続可能性」

厚労省が掲げる主な論点は、(1)職員の処遇改善と物価高への対応、(2)サービスの質の確保、(3)制度の持続可能性の確保、の3本柱に整理できます。とりわけ「制度趣旨に沿わない形で加算を算定する事業者が散見される」という質の問題と、後述する費用の急増という持続可能性の問題が、今回の改定議論の中心に据えられています。eスポーツと称したゲーム遊びや、就労能力の向上につながらない自習だけの活動など、本来の支援とかけ離れた運営事例も一部で確認されており、こうした「質の担保」が改定の通奏低音になっています。

背景には、2026年度(令和8年度)に行われた臨時応急的な見直しがあります。就労継続支援B型など4サービスで、急増する新規事業所に限って基本報酬を引き下げる措置が2026年6月から導入されました。これは令和9年度改定までのつなぎの措置であり、次期改定ではその恒久的な扱いが論点になります。2026年度改定全体の改定率はプラス1.84%で、処遇改善を軸とした引き上げでしたが、その一方で費用膨張への歯止めも同時に打たれたかたちです。

財務省「更なる適正化を」費用膨張への注文

総費用4兆2000億円、10年で約2倍

厚労省の検討チームと同じ2026年4月28日、財務省は財政制度等審議会・財政制度分科会で障害福祉分野を取り上げました。財務省が問題視したのは、費用の急激な膨張です。公費と利用者負担を合わせた障害福祉サービスの総費用額は2024年度時点で4兆2000億円に達し、過去10年で約2倍に拡大しています。障害者自立支援法の施行時と比べれば4倍以上です。費用増の要因として財務省は、利用者数の増加に加えて、1人当たり費用の上昇、営利事業者の参入拡大を挙げました。

こうした状況を踏まえ、財務省は来年度の改定で「更なる適正化策を講じる必要がある」と踏み込みました。「更なる」という言葉には、2026年度にすでに行った新規事業所への報酬引き下げに続いて、2027年度改定でも費用抑制を進めるべきだという財務省の姿勢がにじんでいます。社会保障費全体が高齢化で膨らみ続けるなか、財務省は医療・介護・障害福祉の各分野で「公定価格の適正化」を一貫して求めており、障害福祉もその例外ではないという立場です。

就労継続支援B型・障害児通所の高い収支差率を指摘

財務省は、個別サービスの収益状況にも具体的に切り込みました。就労継続支援B型については、利用時間が4時間未満の事業所の収支差率が17%と全事業所平均を大きく上回っている点を問題視し、「現行報酬が過大になっている」と指摘。サービスの質をきめ細かく評価する報酬体系へ見直すべきだとしています。短時間の利用でも高い報酬が得られる構造が、本来の就労支援とは別の動機での事業運営を招いているのではないか、という問題意識です。

障害児支援では、児童発達支援と放課後等デイサービスの事業所数がこの10年でいずれも約4倍に増加し、放課後等デイの収支差率も7.6%と高水準にあることから、費用抑制に取り組む考えを示しました。グループホーム(共同生活援助)についても、高齢者分野と異なり代表者や管理者に資格要件や研修受講義務がない点を挙げ、安易な事業参入やサービスの質低下につながっているとして基準の見直しを求めています。いずれも「急増している=ニーズに応えている」とは単純に言えず、報酬設計が参入を過剰に誘導していないかを問う指摘です。

配置基準の厳格化と「総量規制」への評価

今後の改革の方向性として、財務省は報酬体系の見直しに加えて、配置基準の厳格化も含めた検討を進めたい考えです。一方、サービス供給が地域ニーズを上回らないよう自治体が事業所指定を制限できる「総量規制」については、サービス費用の伸び抑制には効果が限定的との認識も示しました。費用を抑えるには、参入を絞るだけでなく報酬そのものの設計に手を入れる必要がある、という見立てです。

財政制度等審議会の意見は、年末の予算編成や改定率の決定に向けて強い影響力を持ちます。厚労省の検討チームが現場の課題を拾い上げる一方で、財務省は財政規律の観点から「適正化」を求める。この2つの力学のせめぎ合いの中で、2027年度改定の中身が固まっていきます。前回の2024年度改定がプラス1.84%の引き上げだったことを踏まえると、次回は費用抑制圧力がより前面に出る改定になる可能性があります。

編集部の視点|「適正化」が現場と介護報酬に何をもたらすか

ここからは、財務省が求める「適正化」が障害福祉の現場・職員・利用者に何をもたらすのか、そして同時に走る介護報酬改定とどう連動するのかを、報道や公的資料の数字を手がかりに編集部の視点で読み解きます。報酬改定は専門的で遠い話に見えますが、職場の安定や賃金の先行きに直結するテーマです。

「適正化」は処遇改善とトレードオフになりやすい

注意したいのは、「適正化」という言葉が必ずしも一律のマイナス改定を意味しないことです。財務省が指摘しているのは、収支差率が突出して高いサービス類型や、資格要件のない参入のしやすさといった「歪み」の是正です。裏を返せば、重度の利用者を支える事業所や、専門性の高い職員を抱える事業所がただちに減収になるわけではありません。むしろ「サービスの質をきめ細かく評価する報酬体系へ」という方向性は、質の高い支援を提供している現場にとっては評価が手厚くなる余地もあります。

とはいえ、総費用の伸びを抑えるという大目標が掲げられている以上、改定の全体パイは膨らみにくくなります。職員の賃上げ原資と費用抑制は本質的にトレードオフの関係にあり、限られた財源の中で「どのサービス・どの職員に重点配分するか」というメリハリがこれまで以上に強まると見るのが自然です。就労支援や障害児通所のような収支差率の高い分野で報酬が抑えられれば、その分が処遇改善や重度対応に回る——そうした再配分の構図が、2027年度改定の基調になる可能性があります。

現場の職員・利用者への波及

事業所側から見れば、収支差率の高さを理由に基本報酬が抑えられると、経営の余裕が削られます。とくに新規参入や規模拡大で成長してきた事業所では、これまでの収益を前提とした人員配置や賃金設計の見直しを迫られる場面が出てくるでしょう。働く側にとっては、「数が増えていて求人も多い分野」が、必ずしも「長く安定して働ける分野」と一致しなくなる可能性を意味します。職場を選ぶ際には、報酬区分や加算への依存度、利用者の重度化への対応力といった「改定に強い事業所か」という視点が重要になります。

利用者の側では、配置基準の厳格化や質の評価強化は、支援の質の底上げにつながる一方で、要件を満たせない小規模事業所の撤退・統廃合を招くリスクもはらみます。地域によってはサービスの選択肢が狭まる懸念があり、「適正化」と「アクセスの確保」をどう両立させるかが、ヒアリングを通じて問われることになります。

介護報酬改定との連動――同じ「適正化」の波

見逃せないのは、財務省が同じ時期に介護分野に対しても「適正化」を求めている点です。財政制度等審議会では、介護サービスについても「利益率が高い」として2027年度改定での報酬適正化を要請し、訪問介護・通所介護の賃上げにテクノロジー導入を要件として課すこと、ケアマネジャーの新類型「施設介護支援」の報酬を適正化することなどが論点に挙がっています。障害福祉と介護は、報酬改定のタイミングも、処遇改善加算の枠組みも、財政上の扱いも連動しています。

つまり、2027年度は「介護」と「障害福祉」が同じ財政規律の波を同時に受ける改定になります。障害福祉で営利事業者の参入拡大が問題視される構図は、介護で訪問・通所の事業者急増(いわゆるケアプー問題)が問題視される構図とよく似ています。両分野をまたいで働く職員や、将来どちらの分野でキャリアを築くか迷っている方にとっては、「片方だけを見ていては全体像を読み違える」改定だと言えます。

さらに、処遇改善加算は介護と障害福祉でほぼ共通の枠組みで設計されており、片方で加算の要件や水準が見直されれば、もう片方にも波及するのが通例です。賃上げの原資をどこから捻出するかという議論も、両分野で同時に進みます。障害福祉の利用者が高齢化して介護保険サービスへ移行していく「65歳の壁」の問題も、両制度の接続点として改定論議に影を落とします。介護職・障害福祉職のいずれで働く人にとっても、2027年度改定は「自分の分野だけの話」ではなく、隣の制度の動きとセットで読み解くべきテーマだと言えるでしょう。

今後の焦点|つなぎ措置の恒久化と条件付き処遇改善

2026年度の「つなぎ措置」が恒久化するか

2027年度改定の最大の焦点の一つは、2026年6月に始まった「応急的な報酬単価」の扱いです。これは、収支差率が高くかつ事業所が急増しているサービス類型(就労継続支援B型、共同生活援助の一部、児童発達支援、放課後等デイサービス)について、新規指定の事業所に限り、令和9年度改定までの間だけ基本報酬を引き下げるという時限措置でした。対象は、年間総費用額全体に占める割合が1%以上で、令和6年度の収支差率が5%以上、かつ事業所の伸び率が過去3年間で5%以上続いているサービスに絞られています。次期改定では、この引き下げを既存事業所も含めて恒久化するのか、別の報酬体系に組み替えるのかが議論されます。財務省の「更なる適正化を」という要請は、この恒久化の方向を後押しするものと読めます。

同じく2026年度改定で見直された就労移行支援体制加算についても、「令和9年度報酬改定に向けて、加算のあり方については改めて議論する」と明記されています。一事業所で算定できる就職者数に上限(定員数まで)を設けるなどの適正化が先行的に入っていますが、その効果検証を踏まえて次の手が検討される見通しです。

処遇改善の行方と人材確保

一方で、障害福祉の現場も介護と同様に深刻な人材不足を抱えており、賃上げの継続は外せないテーマです。検討チームの論点にも「職員の処遇改善」「物価高への対応」が明記されています。費用抑制と賃上げという相反する要請を同時に満たすには、生産性向上やICT・テクノロジーの活用、経営の協働化といった「効率化を条件とした賃上げ」のかたちが強まると予想されます。介護分野ですでに「賃上げにテクノロジー導入を要件化」という議論が出ていることを踏まえれば、障害福祉でも同様の条件付き処遇改善が検討される可能性は高いでしょう。

2024年度改定では、医療・介護・障害福祉の処遇改善加算について、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップへ確実につなげることが大臣折衝で確認されていました。令和8年度以降の対応は実態把握を通じた処遇改善の実施状況や財源とあわせて予算編成過程で検討するとされており、2027年度改定はこの「実態把握の結果」を反映する最初の本格改定にあたります。処遇改善が現場の賃金にどれだけ届いたかを示すデータが、改定の説得力を左右します。

働く人が今からできる備え

改定の方向性が固まるのは2026年末、施行は2027年度です。まだ時間はありますが、現場で働く人にとって意味があるのは「自分の職場が改定に強いか」を見極めることです。具体的には、(1)収支差率の高さだけに依存していないか、(2)重度の利用者や専門性の高い支援に対応できる体制があるか、(3)ICT活用や業務効率化に取り組み、賃上げの要件に対応できるか、といった観点です。これらは、職場を選ぶときにも、いまの職場に残るかを考えるときにも使える物差しになります。

2027年度改定は、障害福祉と介護がそろって「量から質へ」の転換を迫られる節目になりそうです。費用の膨張に歯止めをかけつつ、本当に支援を必要とする人と、その人を支える専門職に資源を振り向けられるか。ヒアリングと議論の行方を、現場の視点から注視していく価値があります。

参考文献・出典

まとめ

2026年4月28日、厚生労働省は第55回検討チームで令和9年度(2027年度)障害福祉サービス等報酬改定に向けた議論を開始し、同日の財政制度等審議会では財務省が総費用4兆2000億円・10年で約2倍という費用膨張を問題視して「更なる適正化を」と要請しました。検討チームは6月から53団体へのヒアリングに入り、夏に論点整理、年末に方向性決定というスケジュールで進みます。就労継続支援B型や障害児通所の高い収支差率、グループホームの参入基準などが財務省の指摘ポイントであり、2026年度に導入された新規事業所への報酬引き下げを恒久化するかが大きな焦点であり、就労移行支援体制加算のあり方も改めて議論される見通しです。

「適正化」は一律のマイナス改定ではなく、質の高い支援への重点配分とのセットで進む可能性が高い一方、賃上げと費用抑制のトレードオフの中で「改定に強い事業所か」を見極める力が、働く人にますます求められます。障害福祉と介護が同じ財政規律の波を同時に受ける2027年度。自分のキャリアをどの分野・どんな職場で築くかは、改定の行方を見据えて考えたいテーマです。制度の変化を先回りして職場選びの軸を持っておくことが、これからの安定につながります。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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