
特定技能「介護」訪問系サービスへ解禁、4月21日から運用|2026年4月の受験料倍増・国試外国人2倍を読む
厚労省は2025年4月21日から特定技能「介護」の訪問系サービス従事を解禁、2026年4月から介護技能・日本語評価試験の受験料を2倍に改定。第38回介護福祉士国試では特定技能受験者が10,406人と倍増。現場の運用と日本人職員のキャリアへの示唆を解説。
この記事のポイント
厚生労働省は2025年4月21日から特定技能「介護」の訪問系サービス従事を解禁し、2026年4月1日からは介護技能評価試験・介護日本語評価試験の受験料をそれぞれ1,000円から2,000円へ引き上げる。第38回介護福祉士国家試験(2026年1月実施)では外国人受験者が16,580人(全体の21.1%)に達し、特定技能ルートは10,406人と前年から2倍超に急増。訪問介護解禁の運用条件は「初任者研修修了+実務経験1年以上」を原則に、サービス頻度別に最大6ヶ月の同行訪問が義務づけられる。現場管理者には研修体制・OJT計画・ICT環境整備の同時準備が求められる。
目次
外国人介護人材の制度設計が同時に動く2026年春
2025年から2026年にかけて、外国人介護人材を巡る制度が立て続けに動いている。施設介護に限定されてきた特定技能「介護」の活動範囲が訪問系サービスへ広げられ、技能と日本語の評価試験も2026年4月から受験料が一斉に改定される。さらに2026年1月の第38回介護福祉士国家試験では、外国人受験者が初めて全体の2割を超え、特定技能ルートだけで1万人を突破した。
これらは「現場の人手不足を補うための便宜的な変更」ではない。訪問介護解禁は同行OJTやICT環境整備をワンセットで求める運用設計、受験料改定は試験を継続させるための財源確保、国家試験の外国人比率上昇はキャリアパスの構造変化を示している。受け入れる側の管理者・採用担当・現場職員にとっては、外国人材を「補充戦力」と捉える時代から、「事業計画と教育体制で組み立てる戦略人材」へ位置づけ直す転換点になる。
本稿では一次資料に当たりながら、訪問介護解禁の運用条件、受験料改定の影響、国家試験データから見えるキャリア形成の現在地を整理する。後半では2026年6月の処遇改善臨時改定との連動、訪問介護現場の体制変化、日本人介護職員のキャリアへの示唆を独自の視点で読み解く。
訪問系サービス解禁の制度設計|2025年4月21日に運用開始
解禁日と対象サービス
厚生労働省は外国人介護人材の訪問系サービス従事を、技能実習について2025年4月1日から、特定技能について2025年4月21日から運用開始した。これまで施設サービスに限定されてきた活動範囲が、訪問介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、共生型訪問介護といった訪問系サービス全般に拡張された形だ。
対象には個別住宅への単独訪問だけでなく、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や住宅型有料老人ホームでの訪問介護も含まれる。地域包括ケアシステムの「住まい」軸を担うサービス種別が、外国人材の働き場所として正式に開放された意味は大きい。
従事者に求められる基本要件
訪問系サービスに従事する外国人介護人材は、原則として「介護職員初任者研修課程等の修了」と「介護事業所等での実務経験1年以上」を満たす必要がある。施設介護で経験を積んだ特定技能1号者がステップアップで訪問介護へ移行する設計だ。
例外として、N2相当以上の日本語能力を有し、利用者ごとに同行訪問を行う場合に限り、実務経験1年未満でも従事できる。日本語能力でリスクをカバーする運用が想定されている。
受け入れ事業所が遵守すべき5項目
厚労省は事業所側に5つの遵守事項を課している。第一に「訪問介護等の業務の基本事項等に関する研修」の実施。生活支援技術、コミュニケーション、日本の生活様式、緊急時対応などをカバーするよう求められる。
第二に「サービス提供責任者等による一定期間の同行訪問」。サービス頻度別に同行期間が定められており、週1回サービスは6ヶ月、週2回は3ヶ月、週3回以上は2ヶ月が目安となる。週1回サービスについては、利用者同意と見守りカメラ等のICT活用を条件に、N2相当の日本語能力を持つ者は3ヶ月へ短縮できる。
第三に「キャリアアップ計画の共同作成」、第四に「ハラスメント対策(相談窓口設置を含む)」、第五に「ICT等の環境整備」。利用者宅という閉鎖空間で発生するリスクへの先回り対応が、運用条件として明文化された点が特徴だ。
受験料改定と国家試験データ|外国人受験者は16,580人で全体の21.1%
2026年4月1日施行の受験料改定
厚生労働省は介護技能評価試験および介護日本語評価試験の受験料を、2026年4月1日以降の実施分から改定する。介護技能評価試験は1,000円程度から2,000円程度へ、介護日本語評価試験も1,000円程度から2,000円程度へ。両試験を合わせた受験者の自己負担は実質2,000円から4,000円へと倍増する。
改定理由は「近年の試験運営のコストが増大していること」と説明されている。受験者数の急増と多言語対応・会場確保のコスト上昇が背景にある。価格は申し込み日ではなく実施日基準で適用されるため、2026年4月以降の試験申込分から実質的な負担増が始まる。
第38回介護福祉士国家試験の構造変化
2026年1月25日に実施され3月16日に発表された第38回介護福祉士国家試験では、受験者総数78,469人、合格者54,987人、合格率70.1%という結果が出た。注目すべきは外国人受験者の増加で、特定技能・養成校留学生・技能実習・EPAの4ルート合計で16,580人、全体の21.1%を占めた。およそ5人に1人が外国人受験者という構造になった。
特定技能ルートは前年度4,932人から10,406人へと倍増し、初めて1万人を突破。合格者は3,435人、合格率33.0%だった。養成校留学生は4,461人受験・1,540人合格(合格率34.5%)、EPA介護福祉士候補者は380人合格(合格率31.8%)、技能実習ルートの合格率は43.9%だった。
受験料倍増が外国人材の流入に与える影響
受験料の倍増は単発の負担増ではなく、特定技能1号として日本で就労を続ける限り更新時にも影響する継続コストとなる。送り出し国側の研修事業者・受け入れ事業所が一部を補助するケースも見られるが、財源の組み直しが各事業所で必要になる。
一方で、第38回国試で特定技能経由の受験者が倍増した事実は、特定技能1号から介護福祉士国家資格を経由して特定技能2号や永続的キャリアへ移行する流れが定着しつつあることを示している。受験料改定は流入の心理的ハードルを上げるが、制度設計上は「より本気度の高い人材」が国試にチャレンジする方向性を強めることになる。
2026年6月処遇改善臨時改定との連動|訪問介護の人員問題に二段構えで対処
訪問介護加算率28.7%の臨時改定との重なり
訪問系サービスへの特定技能解禁は、2026年6月に予定されている処遇改善加算の臨時改定と時期が重なる。臨時改定では訪問介護で28.7%という、サービス種別の中で突出した加算率が示される見通しだ。訪問介護は2024年度改定で基本報酬がマイナス改定となった影響を最も大きく受けた領域で、人手不足と廃業率の上昇が政策課題として顕在化していた。
厚労省が訪問介護への外国人材投入と臨時的な処遇改善を同時に走らせる構図は、「日本人介護職員の処遇底上げ」と「外国人材による絶対数確保」を二本立てで打ち出すメッセージと読み取れる。日本人サービス提供責任者は、外国人介護職員の同行訪問・OJT・相談対応で稼働時間の一定割合を割く必要が生じる一方、その人件費は処遇改善臨時改定で原資が増える設計だ。
サービス提供責任者の役割再定義
訪問介護解禁が現場に与える最も大きな構造変化は、サービス提供責任者(サ責)の業務内容の組み替えである。週1回サービスで6ヶ月、週2回で3ヶ月、週3回以上で2ヶ月という同行訪問期間中、サ責は単なる訪問業務ではなくOJT実施者・通訳者・利用者調整者の役割を兼ねることになる。
これは現状のサ責配置基準(利用者40人につき1人)の前提を崩す可能性が高い。事業所側は外国人介護職員の採用計画を立てる際に、サ責の追加配置とOJT工数の見積りをセットで設計しなければならない。採用担当者にとっては「特定技能の人を1人入れる」のではなく「サ責の同行コストと教育プログラムをパッケージで導入する」発想が必要になる。
ICT環境整備が事実上の必須要件に
遵守事項に明記された「ICT等の環境整備」は、テレビ電話による遠隔指導、見守りカメラ、翻訳アプリ、緊急通報システムなどを指す。週1回サービスで同行期間を6ヶ月から3ヶ月へ短縮できる条件にも「見守りカメラ等のICT活用」が含まれる。事実上、訪問介護で外国人材を受け入れる事業所はICT投資が必須になる。
2026年度の介護現場のICT化を後押しするICT導入支援事業や地域医療介護総合確保基金の活用と組み合わせて、補助金申請とセットで体制構築を進める動きが広がる見込みだ。
日本人介護職員のキャリアへの示唆|「教える側」のスキルが評価軸に
OJT指導者・サ責の市場価値が上がる
外国人介護人材が訪問系サービスに広がることで、日本人介護職員のキャリアに直接的な影響が現れる領域がある。それは「教える側」「マネジメント側」のスキルだ。同行訪問期間中の業務指導、ハラスメント相談窓口の運営、キャリアアップ計画の共同作成といった業務は、これまで介護職の評価軸に明示的には組み込まれていなかった。
今後は介護福祉士資格に加えて、「外国人介護人材のOJT経験」「多言語コミュニケーション素養」「ICTツールを使った業務マネジメント」が転職市場で評価される項目になる可能性が高い。サービス提供責任者を経験している層、認知症介護実践リーダー研修修了者、喀痰吸引等研修指導者など、「指導・管理」の経験がキャリアアップの差別化要素になる。
介護福祉士国家試験の構造変化が示すもの
第38回国試で外国人受験者が21.1%を占めた事実は、養成校・通信教育・実務者研修の受講者層が日本人中心から多国籍化していることを意味する。介護福祉士養成校の留学生比率は地域差があるものの、首都圏・関西圏では既に受講者の多数を占める学校も出てきている。
これは日本人介護職員にとって「同期に外国人がいる」「上司や部下が外国人になる」現実が標準化することを意味する。職場の標準言語を「平易な日本語+やさしい日本語」へシフトさせ、業務マニュアルを多言語対応する作業は、現場リーダー層の重要な仕事になる。
地方・小規模事業所こそ早期準備を
大手チェーンは特定技能人材の受け入れノウハウを既に蓄積しているが、地方の小規模訪問介護事業所では情報・体制ともに不足しているケースが多い。訪問介護の廃業率は全国平均で年間約1割に達しており、地方事業所ほど人材確保のために特定技能の活用が現実的選択肢となる。
2025年4月の解禁から1年が経過した2026年春以降、地方の小規模事業所が「都市部に遅れて」体制整備に動き出すフェーズに入る。日本人介護福祉士の中で「特定技能受け入れの体制構築を経験した管理者」は、地方事業所の管理職候補として高い価値を持つことになる。
まとめ
2025年4月21日の特定技能「介護」訪問系サービス解禁、2026年4月1日の評価試験受験料倍増、第38回介護福祉士国家試験での外国人受験者21.1%という3つの動きは、それぞれ独立して見えるが「外国人介護人材を中長期の制度的働き手として位置づけ直す」という同じ方向性を示している。訪問介護解禁は事業所側のOJT・ICT・ハラスメント対策を運用条件として明文化し、受験料改定は試験制度の継続性を担保し、国家試験データはキャリアパスの構造変化を裏付けた。
受け入れる側の管理者・採用担当・現場職員にとっては、「人を採る」発想から「教育・運用体制を設計する」発想への切り替えが必要になる。日本人介護職員にとっては、OJT指導や多文化マネジメントの経験が新しいキャリア軸として評価される時代に入った。2026年6月の処遇改善臨時改定とあわせて、自分の働く事業所が外国人材受け入れと処遇底上げの双方を進められる体制かを、改めて見直すタイミングだといえる。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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