
一人ケアマネ事業所とは
一人ケアマネ事業所は常勤介護支援専門員1名で運営する居宅介護支援事業所。事業所数の約4割を占め、地域の介護インフラを担う一方、主任ケアマネ要件への対応・休暇取得困難・経営不安定等の構造課題を抱える。
この記事のポイント
一人ケアマネ事業所は、常勤の介護支援専門員(ケアマネジャー)1名で運営される居宅介護支援事業所。全国の居宅介護支援事業所の約4割を占め、地域の介護インフラを担う重要な存在だが、主任ケアマネ要件(2027年4月完全義務化)への対応・休暇取得困難・経営不安定・後継者不在等の構造的課題を抱える。事業所間連携・バックオフィス共同化が今後の鍵となる。
目次
一人ケアマネ事業所の定義と現状
居宅介護支援事業所の指定基準では、最低1名の常勤介護支援専門員が必要。一人ケアマネ事業所は、その最低要件で運営される小規模事業所を指す。法人格は株式会社・合同会社・個人事業(社会福祉法人格なし)が多く、独立開業したケアマネが運営するケースが典型。
厚生労働省の調査によれば、居宅介護支援事業所の約4割が常勤ケアマネ1名で運営されている。地域に密着した小回りの利く支援が強みだが、人員配置基準を1人で満たす分、業務負担・経営リスクが集中する構造を持つ。
一人ケアマネ事業所の課題4つ
- 主任ケアマネ要件への対応:2027年4月から居宅介護支援事業所の管理者は主任介護支援専門員必須。一人ケアマネ事業所は管理者=唯一のケアマネのため、主任ケアマネ資格取得が事業継続の前提に
- 休暇取得困難:本人不在時の代替がいない。インフルエンザ・冠婚葬祭・家族介護等で長期休業が事業継続を脅かす
- 経営不安定:担当件数の上限(標準35件)に到達しても収入頭打ち。物価高・燃料費高騰で経営圧迫
- 後継者不在:本人引退時の事業承継が困難。地域の利用者が突然ケアマネを失うリスク
複数ケアマネ事業所との違い
| 項目 | 一人ケアマネ事業所 | 複数ケアマネ事業所 |
|---|---|---|
| 常勤ケアマネ数 | 1名 | 2名以上 |
| 担当件数上限 | 35件目安 | 人数×35件 |
| 事業所件数 | 全体の約4割 | 約6割 |
| 特定事業所加算 | 原則算定困難 | 算定要件を満たしやすい |
| 休暇取得 | 困難 | 相互カバー可能 |
| 主任ケアマネ要件 | 2027年4月までに本人取得必須 | 1名取得で要件充足 |
| 経営安定性 | 個人スキルに依存 | 分散化 |
一人ケアマネ事業所が継続するための3戦略
2027年4月の主任ケアマネ義務化までに、一人ケアマネ事業所が継続するための戦略。
戦略1:主任ケアマネ資格取得。実務5年以上+主任介護支援専門員研修(70時間)の修了。研修受講枠は自治体ごとに限定的なため、早期申込みが必要。
戦略2:事業所連携・共同化。近隣の一人ケアマネ事業所と緩やかな連携を結ぶ。バックオフィス(給付管理票作成・国保連請求等)の共同化、緊急時のバックアップ体制、研修共同開催。社会福祉法人連携法人制度の活用も選択肢。
戦略3:地域包括支援センターとの連携強化。地域包括の研修参加、地域ケア会議への積極関与で、地域内での情報共有・後継者ネットワーク構築。包括支援センターから新規利用者紹介を受けやすくなる効果も。
よくある質問
Q1. 一人ケアマネ事業所は2027年4月以降存続できる?
A. 管理者が主任ケアマネ資格を取得すれば存続可能。資格取得が困難な場合は事業所統合・休廃止の判断が必要。
Q2. 主任ケアマネ研修は何回受講できる?
A. 各都道府県で年1〜2回開催、定員制限あり。早期申込みが必須。
Q3. 一人ケアマネ事業所の収入相場は?
A. 担当35件×介護報酬月13,000〜14,000円程度=月45〜49万円が売上ベース。経費差引で手取り月20〜30万円程度が現実。
Q4. バックアップなしで休暇は取れる?
A. 短期休暇(数日)は事前にケアプラン・担当者会議のスケジュール調整で対応可能。長期休暇は近隣事業所との連携協定が必要。
参考資料
- [1]居宅介護支援事業所の指定基準- 厚生労働省
- [2]主任介護支援専門員研修- 厚生労働省
- [3]日本介護支援専門員協会- 日本介護支援専門員協会
- [4]居宅介護支援事業所の事業所数- 厚生労働省 介護給付費等実態統計
まとめ
一人ケアマネ事業所は居宅介護支援事業所の約4割を占める地域インフラだが、2027年4月の主任ケアマネ義務化を控え、構造課題への対応が急務。主任ケアマネ資格取得・事業所連携・地域包括連携の3戦略で継続性を担保する必要がある。事業所統合・休廃止も視野に入れた経営判断のタイミングが迫っており、ケアマネ本人と地域の利用者・行政の三者で対応を検討すべき節目を迎えている。
一人ケアマネ事業所の経営実態
一人ケアマネ事業所の典型的な経営構造を試算。
売上:担当35件×介護報酬月13,000〜14,000円(要介護度・特定事業所加算で変動)=月45〜49万円、年間540〜588万円。
主な経費:①事務所賃貸料3〜8万円、②水光熱・通信費1〜2万円、③ケアマネソフト・パソコン関連1〜2万円、④車両関連(移動経費)2〜3万円、⑤研修費・書籍代0.5〜1万円、⑥税理士・社労士費用1〜2万円、⑦保険料(事業者賠償保険等)0.5〜1万円。月額経費合計9〜19万円。
手取り月収:売上45万円-経費15万円=月30万円程度が現実線。法人税・所得税を考慮すると手取り月20〜25万円。担当件数35件をフル稼働しても、企業勤務のケアマネ(月給28〜32万円+賞与)と同水準か、それ以下になるケースも多い。
独立検討者が見落としがちな5項目
独立してケアマネ事業所を開設する際、見落とされがちな5項目。
- 主任ケアマネ資格:2027年4月から管理者必須。実務5年以上+研修70時間が必要、計画的取得を
- 事業所指定要件:法人格必須(株式会社・合同会社・NPO等)、事務所スペース(独立性確保)、運営規程
- 初期投資:法人設立20〜30万円、事務所敷金家賃前払い20〜50万円、PC・ソフト・備品20〜30万円、印刷物・名刺等10万円。合計70〜120万円が目安
- 運転資金:開設後3〜6か月は売上不安定、生活費+運転資金で200〜300万円の手元資金が必要
- 営業活動:地域包括支援センター・医療機関・他事業所への挨拶回り、口コミ形成に半年〜1年
2027年4月以降の事業所選択肢
- 主任ケアマネ資格取得+継続:2027年3月までに資格取得。最も望ましい選択肢
- 近隣事業所との合併・統合:複数の一人事業所が統合し、複数ケアマネ事業所として継続。バックオフィス共同化が前提
- 大手法人への事業譲渡:地域大手の介護法人に事業を譲渡。利用者・契約関係を引継ぎ、自身は雇用形態で従事継続
- 地域包括支援センターへの移籍:個人事業を畳み、自治体委託の包括支援センター職員として継続
- 休廃止+利用者引継ぎ:他事業所への利用者引継ぎを丁寧に行った上で事業終了。引退・転業
選択肢を早期に検討することで、利用者の支援継続性を担保できる。地域包括支援センター・自治体介護保険課への事前相談が重要。
一人ケアマネ事業所の1日のタイムテーブル
一人ケアマネ事業所の典型的な1日(35件担当・標準的な事業所)。
- 8:30 出勤・メール確認:医療機関・サービス事業所からの連絡、利用者・家族からの相談メール対応
- 9:00〜11:00 訪問1〜2件:モニタリング訪問、新規アセスメント、サービス担当者会議。1件あたり1時間程度
- 11:00〜12:00 移動・記録:訪問先で気付いた事項を即時記録
- 13:00〜15:00 訪問1〜2件:午後の訪問。緊急対応・新規利用者面談
- 15:00〜17:00 事務所作業:ケアプラン作成・更新、給付管理票、サービス事業所への連絡、月次レポート
- 17:00〜19:00 事務処理・電話対応:医療機関への連絡、家族相談、翌日準備
1日3〜5件の訪問が標準。月20営業日で60〜100件の訪問対応となり、35件の利用者全員に月1回モニタリング訪問を確保するペース。突発対応で残業も発生しやすい。
休暇取得・緊急対応の現実的対策
一人ケアマネ事業所の最大課題『休暇取得・緊急対応』への現実的対策。
- 事前計画的休暇:月単位・四半期単位で休暇予定を利用者・サービス事業所と共有。代替不可なため、長期休暇は1〜2週間前から準備
- 緊急時バックアップ協定:近隣の一人ケアマネ事業所2〜3か所と緊急時のバックアップ協定を締結。短期間(1〜3日)の代替対応を相互に行う
- 地域包括支援センターとの連携:1か月以上の長期休業時は、利用者を地域包括が一時引き受ける協力体制
- 家族・主治医への連絡網:休暇時の連絡先を利用者・家族・主治医・サービス事業所に明示。緊急時は地域包括へ
- 記録の整備:誰が見てもケース対応できる詳細な記録(フェイスシート・モニタリング記録・ケアプラン)を常に最新化
2027年4月主任ケアマネ義務化への準備タイムライン
- 2025年6月まで:実務経験5年以上を確認、主任ケアマネ研修受講申込み(自治体により申込時期異なる)
- 2025年9月〜2026年3月:主任介護支援専門員研修受講(合計70時間、概ね半年〜1年)
- 2026年4月〜2027年3月:主任ケアマネ資格取得、管理者要件充足の確認
- 2027年4月:管理者要件完全義務化施行。資格未取得の場合は事業所継続困難
- 緊急対応シナリオ:資格取得困難な場合の選択肢(事業所統合・事業譲渡・休廃止・移籍)を1年前から検討開始
2025年現在、主任ケアマネ研修の受講枠不足が一部地域で発生。早期申込みが事業継続の生命線となる。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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