
訪問看護指示書とは
訪問看護指示書は主治医が訪問看護師に交付する医療指示文書。通常指示書(有効6か月)・特別指示書(14日)・精神科指示書の3種類があり、医療保険/介護保険の区分や別表第7該当性で運用が変わる。
この記事のポイント
訪問看護指示書は、主治医が訪問看護師に対して交付する医療指示文書。健康保険法・介護保険法に基づき、訪問看護サービス提供の必須要件となる。通常指示書(有効期間6か月)・特別訪問看護指示書(有効期間14日)・精神科訪問看護指示書の3種類があり、医療保険と介護保険のどちらが適用されるかは、利用者の状態・年齢・疾患(厚労省告示の別表第7該当性)で決まる。
目次
訪問看護指示書の基本
訪問看護を利用するには、必ず主治医が訪問看護指示書を交付する必要がある。訪問看護師は医師の指示の下で看護業務を行うため、指示書なしの訪問看護は法律上認められない。
指示書には主病名・現在の傷病の状態・処方薬・実施する処置・注意事項などが記載され、訪問看護師がそれに基づいてケアを提供する。指示書の交付は主治医の判断で行われ、医療機関は『訪問看護指示料』として診療報酬300点を算定できる。
3種類の指示書の比較
| 種類 | 有効期間 | 主な対象 | 適用保険 |
|---|---|---|---|
| 通常 訪問看護指示書 | 最大6か月 | 慢性疾患・在宅療養者 | 状態により医療/介護 |
| 特別 訪問看護指示書 | 14日 | 急性増悪・終末期・退院直後等 | 医療保険(頻回訪問可) |
| 精神科 訪問看護指示書 | 最大6か月 | 精神疾患患者 | 医療保険 |
特別指示書は通常指示書と併せて月1回(末期がん・気管カニューレ等は月2回)交付可能で、訪問頻度上限が緩和される(毎日訪問可)。
医療保険と介護保険の使い分け
訪問看護の保険区分は以下の優先順位で決まる:
- 医療保険が優先される場合:①40歳未満、②要介護認定なし、③厚労省告示『別表第7』の疾病等該当(末期の悪性腫瘍・多発性硬化症・重症筋無力症・スモン・筋萎縮性側索硬化症・脊髄小脳変性症・ハンチントン病・進行性筋ジストロフィー症・パーキンソン病関連疾患・多系統萎縮症・プリオン病・亜急性硬化性全脳炎・ライソゾーム病・副腎白質ジストロフィー・脊髄性筋萎縮症・球脊髄性筋萎縮症・慢性炎症性脱髄性多発神経炎・後天性免疫不全症候群・頸髄損傷・人工呼吸器使用状態)、④特別訪問看護指示書交付期間(14日間)、⑤精神科訪問看護
- 介護保険が適用される場合:上記以外で要介護認定(要支援含む)を受けている65歳以上、または40歳以上64歳以下で特定疾病該当者
指示書の依頼から交付までの流れ
- 主治医に依頼:本人・家族・ケアマネ・訪問看護ステーションから主治医へ依頼
- 主治医の判断:診察・状態評価の上で必要性を判断
- 指示書作成:主病名・処置・服薬・特記事項を記載
- 訪問看護ステーションへ交付:原本またはFAX・電子データで交付
- 訪問看護計画書作成:訪問看護師が指示書に基づき計画書を作成、主治医確認
- 訪問看護開始:契約・初回訪問・サービス提供開始
- 定期更新:通常6か月ごと、主治医の継続診察を経て更新
急性増悪時は主治医から特別訪問看護指示書を即時交付してもらい、頻回訪問体制に移行できる。
介護家族・ケアマネが知っておくべきこと
訪問看護指示書の運用は介護家族・ケアマネにも影響が大きいため、以下のポイントを押さえると安心:
- 主治医の選定:訪問看護指示書を継続的に交付してくれる主治医(特に在宅医療経験ある医師)を選ぶ。在宅療養支援診療所が望ましい
- 更新時期管理:通常指示書は有効6か月。期限切れで訪問看護が中断しないよう、ケアマネ・訪問看護師と更新スケジュール共有
- 急変時の特別指示書活用:急性増悪時・退院直後・看取り期は特別指示書で頻回訪問可能。主治医へ早めの相談
- 別表第7該当の確認:パーキンソン病・末期がん等の特定疾患は医療保険適用で訪問頻度・自己負担が変わるため、診断時に確認
よくある質問
Q1. 訪問看護指示書なしで訪問看護を受けられる?
A. 受けられない。法律上、医師の指示は必須。
Q2. 指示書の発行料は?
A. 医療機関は訪問看護指示料300点(3,000円)を医療保険で算定。利用者の自己負担は保険負担割合に応じて発生。
Q3. 主治医を変えると指示書も新たに必要?
A. 主治医変更時は新主治医からの指示書交付が必要。引継ぎ時の連絡調整は訪問看護師・ケアマネが補助。
Q4. 複数の訪問看護ステーションを使い分けることは?
A. 原則1ステーション。ただし精神科訪問看護と一般訪問看護の併用、複数疾患で別ステーション利用の例外あり。
参考資料
- [1]訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法- 厚生労働省
- [2]訪問看護- 厚生労働省
- [3]訪問看護- 日本看護協会
- [4]指定訪問看護に係る厚生労働大臣の定める疾病等(別表第7)- 厚生労働省告示
まとめ
訪問看護指示書は訪問看護サービスの必須要件で、通常(6か月)・特別(14日)・精神科の3種類がある。医療保険/介護保険の使い分けは、年齢・要介護認定・別表第7該当性で決まる。介護家族・ケアマネは主治医選定・更新時期管理・急変時の特別指示書活用・別表第7該当の確認の4ポイントを押さえることで、訪問看護の継続性と頻度を確保できる。
指示書記載項目と医療保険/介護保険の請求体系
訪問看護指示書の主な記載項目:①利用者情報(氏名・住所・生年月日・主治医情報)、②現在の傷病名と現状、③現在の処方薬、④日常生活自立度(障害高齢者・認知症高齢者)、⑤要介護認定状況、⑥褥瘡の有無・部位、⑦留意事項・指示事項(療養生活・処置・服薬)、⑧緊急時の連絡先、⑨指示有効期間。
医療保険適用時は『訪問看護療養費』、介護保険適用時は『訪問看護費』として、訪問看護ステーションが請求する。利用者の自己負担は医療保険(1〜3割)/介護保険(1〜3割)の保険負担割合に応じて決定。
医療機関側は、訪問看護指示料300点(3,000円)を月1回算定可能。在宅患者訪問看護・指導料との併算定可能。
特別訪問看護指示書の効果的活用
特別訪問看護指示書(有効14日)は通常指示書より頻回訪問が可能になる強力な仕組み。以下のシーンで活用される。
- 急性増悪期:心不全悪化・脱水・感染症等で集中的観察と医療処置が必要なとき
- 退院直後:入院から在宅復帰の最初の2週間、状態安定までの集中ケア
- 終末期:看取り期の頻回訪問(毎日訪問可)でターミナルケアの質を担保
- 気管カニューレ管理:吸引・カニューレ交換等の頻回ケアが必要な利用者
- 真皮を越える褥瘡:処置の頻回実施が必要な深い褥瘡
主治医に『状態悪化のサイン』を共有し、特別指示書交付を早めに依頼することで、入院回避・在宅看取り実現に貢献する。月1回(末期がん・気管カニューレ等は月2回)まで交付可能。
ケアマネ・介護家族の依頼テクニック
- 主治医選定時の確認:訪問看護指示書を継続交付してくれる医師か。在宅療養支援診療所が望ましい
- 事前準備:訪問看護ステーション選定→主治医に意向伝達→指示書依頼の流れ。ケアマネが調整役
- 有効期限管理:通常指示書は最大6か月、期限切れ前に更新依頼。事業所側にリマインドを依頼するのも有効
- 状態変化時の即時連絡:症状悪化や治療方針変更時は主治医へ早期報告、特別指示書交付・指示内容変更を相談
- 別表第7該当の確認:パーキンソン病・末期がん等の特定疾患は別表第7該当で医療保険・頻度緩和の優遇あり。診断書・指示書記載を主治医に確認
3種類の指示書の比較表(詳細版)
| 項目 | 通常指示書 | 特別指示書 | 精神科指示書 |
|---|---|---|---|
| 有効期間 | 最大6か月 | 14日 | 最大6か月 |
| 交付頻度 | 1回/期間 | 月1回(末期がん・気管カニューレ等は月2回) | 1回/期間 |
| 訪問頻度上限 | 週3回(介護保険)/医療保険は別 | 毎日訪問可 | 週3回 |
| 適用保険 | 状態により医療/介護 | 医療保険 | 医療保険 |
| 主な対象 | 慢性疾患の継続管理 | 急性増悪・退院直後・終末期 | 精神疾患患者 |
| 主な処置内容 | バイタル管理・服薬・点滴・在宅医療機器管理 | 急性期の集中処置・看取り | 服薬管理・生活支援・家族支援 |
| 医療機関の算定 | 訪問看護指示料300点 | 特別訪問看護指示加算100点 | 精神科訪問看護指示料300点 |
3種類の指示書は併用可能で、利用者の状態変化に応じて使い分けることで、訪問看護の頻度・密度を柔軟に調整できる。
医療保険/介護保険切替時の実務注意
訪問看護の保険区分は利用者の状態・年齢で変動する。切替時の実務注意。
- 要介護認定取得:要介護認定を受けると介護保険優先(別表第7・特別指示書期間を除く)。認定取得タイミングで保険区分が切り替わる
- 別表第7該当の確認:パーキンソン病・末期がん等の特定疾患診断時は医療保険切替。診断書・指示書記載を主治医に確認
- 特別指示書交付期間:14日間は医療保険適用。介護保険利用者でも特別指示書交付期間は医療保険で請求
- 切替時の利用者・家族への説明:自己負担額が変わる場合あり(医療保険1〜3割/介護保険1〜3割の判定が異なる)。ケアマネ・訪問看護師から事前説明
- 事業所側の請求事務:医療保険/介護保険で請求先・請求方法が異なる。月途中切替時は日割計算
訪問看護指示書を巡る最新動向
- 電子指示書の普及:従来の紙・FAX中心から、医療機関と訪問看護ステーション間の電子データ連携が拡大。診療情報共有プラットフォームを介した運用
- 主治医不在地域への対応:医師不足地域での訪問看護指示書交付の柔軟化議論。在宅療養支援診療所間の連携強化
- 看護師の特定行為研修との連携:特定行為研修修了看護師は医師指示の包括的範囲で処置可能。訪問看護指示書の指示内容が拡大される傾向
- 看取り期の指示書緩和:人生最終段階医療指針との整合で、看取り期の指示書頻回交付の運用が柔軟化
- 精神科訪問看護の拡大:精神科訪問看護需要の拡大に対応した指示書交付要件・報酬の見直し議論
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
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