
アルツハイマー病の脳内炎症を血液で捉える|長寿研の血液バイオマーカー研究と早期発見の展望
国立長寿医療研究センターが見出した、アルツハイマー病の脳内炎症を反映する血液バイオマーカー候補(ニコチンアミド)の研究を一次ソースで解説。p-tau217など血液検査の最新動向と、まだ研究段階である点、早期発見が介護現場・本人家族にもたらす意味まで介護職向けに整理します。
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この記事のポイント
国立長寿医療研究センターは2024年、アルツハイマー病モデルマウスの血液(血漿)を解析し、脳内の慢性炎症を反映して減少する代謝物「ニコチンアミド」を、脳内炎症を捉える血液バイオマーカーの候補として見出しました。これはアミロイドの蓄積そのものではなく、蓄積が引き起こす「脳の炎症」を血液から推し量れる可能性を示した点が新しい成果です。ただし現時点ではマウスでの基礎研究段階であり、確立した検査ではありません。介護職にとっては、将来の早期発見が予防的介入や本人・家族の備えにつながる動きとして押さえておきたいテーマです。
目次
「血液検査でアルツハイマー病がわかる」。近年、こうした見出しのニュースを目にする機会が増えました。介護の現場で利用者やご家族から「血を採れば認知症がわかるんですよね」と尋ねられ、答えに迷った経験のある方もいるのではないでしょうか。
実際、認知症の血液バイオマーカー研究は世界的に急速に進んでいます。その中でも、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)が2024年に報告した研究は、これまでの「アミロイドの蓄積を捉える」方向とは少し違う切り口で注目されました。アミロイドそのものではなく、アミロイドの蓄積が引き起こす「脳内の炎症(神経炎症)」を血液から捉えようとする研究です。
この記事では、長寿研の血液バイオマーカー研究の内容を一次ソースにもとづいて整理し、あわせて血液バイオマーカー全体の最新動向(p-tau217など)も公的資料から確認します。そのうえで、まだ研究段階であるという限界を正確に押さえつつ、早期発見が介護の現場や本人・家族の備えにどんな意味を持つのかを、介護職の視点で考えていきます。
そもそもアルツハイマー病の血液バイオマーカーとは|アミロイドと脳内炎症
まず前提として、アルツハイマー病で脳に何が起きているのかを整理します。アルツハイマー病では、発症する20〜30年以上前から「アミロイドβ」という異常なタンパク質が脳に少しずつ蓄積し始めるとされています。この蓄積が「アミロイド斑(老人斑)」をつくり、やがて神経細胞の障害や脳の萎縮、認知機能の低下につながっていくと考えられています。
なぜ「血液」で捉えることが重要なのか
この脳内の変化を生前に捉える方法として、これまでは脳脊髄液検査(腰に針を刺して髄液を採取する)か、アミロイドPET検査(放射性の薬剤を使った画像検査)といった特殊な検査しかありませんでした。いずれも精度は高いものの、身体的な負担が大きく、費用も高額で、実施できる施設も限られます。高齢者の検診のような大規模な場面には向きません。そこで、採血だけで済む「血液バイオマーカー」が、負担が少なく費用も抑えられ、広く使える方法として強く期待されているのです。
「アミロイドを捉える」従来の血液バイオマーカー
これまでの血液バイオマーカー研究の主流は、この「アミロイドの蓄積」を血液から間接的に捉えようとするものでした。代表的なのが血中のアミロイドβ関連ペプチド(Aβ42/40比)や、リン酸化タウ(p-tau217、p-tau181など)です。脳にたまった病変を反映して血液中で変化するこれらの物質を測ることで、脳脊髄液検査やアミロイドPET検査の代わり、あるいは事前のふるい分け(スクリーニング)に使えないかと研究されてきました。
アミロイドの「次に起きること」=脳内炎症
一方で、アミロイドの蓄積そのものだけでなく、その蓄積が引き起こす「脳内の炎症(神経炎症)」も、認知機能の低下や神経細胞死に深く関わると考えられています。脳の中では、アミロイド斑の周りで「アストロサイト」や「ミクログリア」と呼ばれるグリア細胞(神経を支える細胞)が活性化し、慢性的な炎症状態が続くことが知られています。
この「脳内炎症」を血液から捉えられれば、アミロイドの量だけではわからない「病気がどれだけ進行・悪化しているか」という側面を別の角度から把握できる可能性があります。国立長寿医療研究センターの2024年の研究は、まさにこの脳内炎症を反映する血液中の物質を探した研究でした。
長寿研の研究内容|脳内炎症を映す「ニコチンアミドの減少」
国立長寿医療研究センター研究所(認知症先進医療開発センター 神経遺伝学研究部)の研究グループは、2024年、アルツハイマー病の脳内で起こる炎症状態を反映する血液バイオマーカーの候補を見出したと報告しました。研究成果は学術誌「Neurobiology of Disease」(202巻 106694、2024年)に掲載され、センターからは2025年1月にプレスリリースとして公表されています。
どんな研究だったか(対象と手法)
この研究で使われたのは、アミロイド病理と脳内炎症を再現する「アルツハイマー病モデルマウス」です。研究グループは、このマウスの血液(血漿)を、キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)という手法を使って網羅的に解析しました。血液中に含まれる数百種類の代謝物を一度に測定し、アルツハイマー病モデルマウスと正常なマウスで何が違うのかを比べる「メタボローム解析」です。
見つかったバイオマーカー候補=ニコチンアミドの減少
解析の結果、アルツハイマー病モデルマウスの血漿では「ニコチンアミド(ナイアシン、ビタミンB3の一種)」の量が顕著に減少していることがわかりました。ニコチンアミドは、細胞のエネルギー代謝や修復、炎症反応、神経保護作用などに関わる重要な物質「NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」の原料になります。
さらに研究グループは、脳内でアミロイド斑の周りのアストロサイトが活性化し、「CD38」というNAD+を分解する酵素が強く誘導されていることを突き止めました。CD38によってNAD+が消費されると、その材料であるニコチンアミドも巻き込んで代謝が変化し、結果として血液中のニコチンアミドが減少すると考えられます。つまり、血液中のニコチンアミド量の低下は、「脳の中でアミロイド斑に対する炎症が亢進している状態」を映し出すサインになりうる、というのがこの研究の核心です。
治療標的としての可能性
この研究にはもう一つ重要な含意があります。CD38によるNAD+の分解を抑えることができれば、アストロサイトの活性化による脳内炎症を抑えられるだけでなく、神経を保護する働きを持つNAD+を脳内で増やせる可能性がある、という点です。これは、脳内炎症の制御がアルツハイマー病の進行を抑える治療標的になりうることを示唆しており、診断(バイオマーカー)と治療の両面で注目されています。
この研究の何が新しいのか|そして「研究段階」という限界
この研究の「新しさ」を正確に理解しておくことは、利用者やご家族に説明するうえでも大切です。ポイントは3つあります。
1. アミロイドではなく「炎症」を狙った
従来の血液バイオマーカー研究の多くは、アミロイドβやリン酸化タウといった「脳にたまる病変そのもの」を血液から捉えようとしてきました。これに対し長寿研の研究は、アミロイドの蓄積が引き起こす二次的な変化である「脳内炎症」を反映する物質を探した点が異なります。脳内炎症は認知機能の低下や神経細胞死に深く関わるとされるため、病気の「進行・悪化の度合い」を別の角度から捉えられる可能性があります。
2. メタボローム解析で炎症の代謝シグナルを同定した
脳内炎症と認知機能低下の相関はこれまでも報告されてきましたが、それを「血液中で測れる具体的な代謝物」として同定し、CD38・NAD+というメカニズムまで結びつけた点が新しい成果です。なぜニコチンアミドが減るのか、その背景にある分子の仕組みまで示したことで、単なる相関にとどまらない説得力を持ちます。
3. 診断と治療の「橋渡し」になりうる
血液中のニコチンアミドはバイオマーカー(診断の指標)になりうると同時に、CD38を抑えるという発想は治療標的にもつながります。一つの発見が早期発見と新薬開発の両方に道を開く可能性を持つ点も、この研究が注目される理由です。
ただし「まだ研究段階」=ここを誤解しないこと
ここで強調しておかなければならないのは、これがあくまで「アルツハイマー病モデルマウス」を使った基礎研究の段階だということです。プレスリリースでも「可能性が示された」「開発につながる可能性がある」という表現にとどまっており、ヒトでの有効性が証明されたわけではありません。「血液でアルツハイマー病の炎症がわかる検査がもうある」と受け取るのは誤りです。実際の血液検査として使えるようになるには、ヒトでの大規模な検証や測定法の確立、保険適用の議論など、多くの段階を経る必要があります。確立した検査と研究段階の発見は、はっきり区別して伝えることが重要です。
血液バイオマーカー全体の最新動向|p-tau217はどこまで来たか
長寿研の脳内炎症マーカーの研究を理解するには、認知症の血液バイオマーカー全体がいまどこまで来ているのかを知っておくと役立ちます。公的資料や研究機関の発表をもとに整理します。
最も実用化に近い「p-tau217」
現在、血液バイオマーカーの中で最も実用化に近いとされるのが「p-tau217(血漿中の217番目がリン酸化されたタウタンパク質)」です。アルツハイマー病では異常にリン酸化されたタウが脳から血液中へ漏れ出ると考えられており、これを高感度に測ることで脳内のアミロイド病理を間接的に捉えます。
新潟大学脳研究所などの研究グループは、日本人を対象とした多施設共同研究J-ADNIの172名の血漿を解析し、血漿p-tau217が脳内アミロイド病理を90%以上の高い精度で検出できることを報告しました(論文は2026年2月、Journal of Prevention of Alzheimer's Diseaseに掲載)。J-ADNIは全国の医療機関が協力し、認知機能正常者・軽度認知障害(MCI)・早期アルツハイマー病の人を縦断的に追跡した日本の大規模研究です。さらにこの解析では、MCIの段階でp-tau217が高い人は、低い人と比べて約5倍の頻度(ハザード比4.717)でアルツハイマー病へ移行することも示されました。一方で、体格指数(BMI)や腎機能が測定値に影響することも確認されており、実臨床で使うには注意点もあります。
海外でも実用化が進む
血液バイオマーカーの実用化は海外でも加速しています。たとえば血漿p-tau217を用いたアルツハイマー病の早期診断補助の検査薬は、米国FDAから迅速審査の対象(ブレークスルーデバイス)に指定されるなど、診断ツールとしての開発が国際的に進んでいます。背景には、レカネマブやドナネマブといったアミロイドを標的とする治療薬が登場し、「治療を始める前に、本当にアミロイドが蓄積しているか」を確かめる必要性が高まったことがあります。早期診断と早期治療がセットで現実味を帯びてきたことが、血液バイオマーカー研究を後押ししているのです。
「確立した検査」と「研究段階」の違い
公益財団法人長寿科学振興財団の健康長寿ネットによれば、アルツハイマー病の診断バイオマーカーは大きく、画像(アミロイドPET)、脳脊髄液、血液、感覚器、デジタルに分類されます。このうち脳脊髄液のp-tau181などは「確立した検査」と位置づけられており、アミロイドPETは2023年12月よりレカネマブ投与判断時に保険適用となっています。これに対し、血液バイオマーカーは高感度測定技術の進歩で実用化が急速に近づいているものの、多くはまだ検証・実装の途上にあります。
つまり、血液バイオマーカー研究は「アミロイドを捉えるp-tau217が実用化目前」という段階にあり、長寿研の「脳内炎症を捉えるニコチンアミド」はさらにその先、基礎研究の段階にある、という位置づけです。それぞれが捉えようとしている対象(アミロイドか、炎症か)も、研究の成熟度も異なる点を区別して理解しておくと、ニュースに振り回されずに済みます。
【独自見解】早期発見が介護現場・本人家族にもたらす意味
「マウスの基礎研究なら、現場の自分たちには関係ない」と感じるかもしれません。しかし、こうした血液バイオマーカー研究が進み、将来的に低侵襲で早期発見ができるようになることは、介護の現場と本人・家族の双方にとって大きな意味を持ちます。当サイトとして、介護職の視点から3つの観点を整理します。
1. 「予防的介入」のタイミングが前倒しになる
アミロイドの蓄積は発症の20〜30年前から始まるとされます。もし採血だけで脳内の病変や炎症の兆候を早期に捉えられるようになれば、症状が出る前の段階で生活習慣の改善や多因子介入(運動・栄養・認知トレーニングなど)に取り組む人が増える可能性があります。長寿研などが進めるJ-MINTのような多因子介入研究は、リスクの高い人への早期アプローチで認知機能の改善が期待できることを示しています。早期発見は「早期介入」とセットになって初めて意味を持ち、その介入の多くは介護予防・地域支援の領域、つまり介護職や地域包括支援センターが関わる現場と地続きです。
2. 本人・家族が「備える時間」を得られる
早期にリスクや病態がわかることは、本人と家族が将来に備える時間を確保できることを意味します。財産管理(成年後見・家族信託)の準備、運転免許の扱い、住まいや仕事の調整、そして本人の意思が明確なうちに今後のケアの希望を話し合う「意思決定支援(ACP)」。これらはいずれも、診断が遅れて症状が進んでからでは選択肢が狭まってしまうものです。介護職は、こうした備えの相談を最初に受ける立場になることが少なくありません。「血液検査でわかるかもしれない」という情報の正確な温度感を持っておくことは、過度な期待も不安もあおらずに寄り添うために役立ちます。
3. ケアプランや関わり方の個別化につながる
長寿研が掲げる将来像の一つは、複数の血液バイオマーカーを組み合わせて、認知症の人を背景の病理や進行の状態に応じて「層別化」することです。これが実現すれば、同じ「認知症」でも、進行が速いタイプか、炎症が強いタイプか、といった違いに応じたケアの個別化が可能になるかもしれません。脳内炎症のように「進行の度合い」を映すマーカーは、治療効果やケアの見直しのタイミングを判断する材料にもなりえます。科学的介護(LIFE)やデータに基づくケアが広がるなかで、こうしたバイオマーカーの知見は、将来のケアプラン設計の前提知識として介護職にも関わってくるでしょう。
現場で大切にしたい姿勢
一方で、早期発見が常に本人のためになるとは限らない、という視点も忘れてはなりません。確立していない検査の結果が一人歩きして、不要な不安や偏見(スティグマ)を生むリスクもあります。介護職にできるのは、最新の研究を「確立した検査」と混同せず、研究段階のものは研究段階として正確に伝えること、そして検査の数値ではなく目の前の本人の暮らしと意思を中心に置き続けることです。バイオマーカーが進歩しても、その人らしい生活を支えるケアの本質は変わりません。
介護職が利用者・家族に説明するときのポイント
利用者やご家族から血液バイオマーカーについて尋ねられたとき、介護職として押さえておくと安心な点をまとめます。
- 「研究段階」と「使える検査」を区別して伝える。脳内炎症を捉えるニコチンアミドのマーカーはマウスでの基礎研究段階です。「もうそういう検査がある」と断定せず、「研究が進んでいる段階」と正確に伝えましょう。
- 断定や診断は医療職の領域。検査の必要性や結果の解釈は医師の判断です。介護職は不安に寄り添い、もの忘れ外来や認知症初期集中支援チーム、かかりつけ医など適切な相談先につなぐ役割に徹します。
- 早期発見の価値は「次の一手」とセット。早く気づくこと自体が目的ではなく、生活習慣の見直しや備え、相談につながって初めて意味があると伝えると、過度な不安をやわらげられます。
- 「血液でわかる=すぐ治る」ではない。早期発見が進んでも、現時点でアルツハイマー病を完治させる方法はありません。レカネマブなどの新薬も進行を遅らせることを目指す段階です。検査と治療の現実的な到達点をふまえて説明すると、期待と落胆の振れ幅を抑えられます。
- 情報源は一次ソースで確認する。SNSやまとめ記事には誇張も多いため、国立長寿医療研究センターや厚生労働省など公的機関の発表で確認する習慣をつけると、現場での説明に説得力が出ます。
よくある質問(FAQ)
Q. 血液検査でアルツハイマー病の脳の炎症がわかるようになったのですか?
まだです。国立長寿医療研究センターが2024年に報告したのは、アルツハイマー病モデルマウスの血液で「ニコチンアミド」という物質が減ることが脳内炎症を反映する可能性がある、という基礎研究の成果です。ヒトで使える確立した検査ではありません。
Q. ニコチンアミドはアミロイドそのものを測っているのですか?
いいえ。アミロイドの蓄積そのものではなく、その蓄積が引き起こす「脳内の炎症」を反映していると考えられる点が、従来のアミロイド系マーカーとの違いです。
Q. p-tau217の検査は受けられますか?
血液p-tau217は実用化に最も近いとされる血液バイオマーカーですが、日本での臨床実装に向けた検証段階です。一方、脳脊髄液のp-tau181などは確立した検査で、アミロイドPET検査はレカネマブの投与判断時に2023年12月から保険適用されています。受けられる検査や適応は医療機関・医師の判断によります。
Q. ニコチンアミド(ビタミンB3)を摂れば認知症を防げますか?
そうは言えません。今回の研究は「血液中のニコチンアミドの低下が脳内炎症のサインになりうる」ことを示したもので、サプリメントで補えば予防できる、という話ではありません。むしろ脳内ではNAD+を分解するCD38の働きが関係しており、単純な補充で解決する仕組みではないと考えられています。自己判断での大量摂取は避け、予防は運動・栄養・社会参加など多因子のアプローチが基本です。
Q. 介護職として、この話題をどう扱えばいいですか?
「研究が進んでいる段階」であることを正確に伝え、診断や検査の判断は医療職につなぐのが基本です。早期発見は予防的介入や本人・家族の備えとセットで価値を持つ、という前向きな文脈で共有すると、不安をあおらずに済みます。
参考文献・出典
- [1]アミロイド病理が引き起こす脳内炎症を反映する血液バイオマーカーの候補をアルツハイマー病モデルマウスの血漿メタボローム解析から見出しました- 国立長寿医療研究センター
本記事の主軸となる原報プレスリリース。ニコチンアミド減少・CD38・NAD+・CE-TOFMS・モデルマウスでの基礎研究段階という位置づけを確認
- [2]Decreased plasma nicotinamide and altered NAD+ metabolism in glial cells surrounding Aβ plaques in a mouse model of Alzheimer's disease(Neurobiology of Disease 202:106694, 2024)- Neurobiology of Disease(査読付き原著論文)
長寿研の研究の原著論文。DOI: 10.1016/j.nbd.2024.106694
- [3]
- [4]血液バイオマーカー p-tau217 は脳内病理を高精度に検出し、アルツハイマー病の発症を予測する- 新潟大学脳研究所
J-ADNI 172名・アミロイド病理90%以上検出・MCIからADへの移行ハザード比4.717(約5倍)。論文 Journal of Prevention of Alzheimer's Disease, DOI 10.1016/j.tjpad.2026.100502
- [5]アルツハイマー病早期診断:画像・体液・感覚器・デジタルバイオマーカー- 健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)
バイオマーカーの分類、確立した検査(脳脊髄液p-tau181)とアミロイドPET保険適用(2023年12月)、血液マーカーの実用化動向の確認
- [6]血液バイオマーカーの認知症診療や検診への応用- 国立高度専門医療研究センター 医療研究連携推進本部(JH)
中村昭範部長らによる血液バイオマーカーの診療・検診応用研究。実用化に向けた段階と予防医療への展望を確認
まとめ|研究段階だからこそ、正確な理解で現場に活かす
国立長寿医療研究センターが2024年に報告した研究は、アルツハイマー病モデルマウスの血液で「ニコチンアミド」が減少することを手がかりに、脳内のアミロイド斑が引き起こす慢性炎症を血液から捉える可能性を示しました。アミロイドそのものではなく「炎症」を狙い、CD38・NAD+というメカニズムまで結びつけた点に新しさがあり、診断と治療の両面で注目される成果です。
ただし、これはあくまでマウスを使った基礎研究の段階であり、ヒトで使える確立した検査ではありません。実用化に最も近いとされるp-tau217でさえ、日本での臨床実装に向けた検証段階にあります。「血液でアルツハイマー病がわかる」というニュースに触れたときは、それが研究段階なのか確立した検査なのかを区別して受け止めることが大切です。
それでも、こうした研究の進歩は介護の現場と無縁ではありません。低侵襲な早期発見が現実になれば、予防的介入のタイミングが前倒しになり、本人と家族が備える時間を得られ、将来的にはケアの個別化にもつながっていきます。介護職に求められるのは、最新の知見を正確な温度感で受け止め、不安をあおらず適切な相談先につなぎ、そして検査の数値ではなく目の前の本人の暮らしと意思を中心に置き続けることです。バイオマーカーがどれだけ進歩しても、その人らしい生活を支えるケアの価値は変わりません。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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