介護現場の動画記録活用|ケア手順動画・事故振り返り・利用者の同意取得の実務
介護職向け

介護現場の動画記録活用|ケア手順動画・事故振り返り・利用者の同意取得の実務

介護施設で動画を業務改善に活用するための実務ガイド。OJTケア手順動画・事故/転倒の検証用動画・利用者状態変化の記録から、個人情報保護法に基づく同意取得・保管・廃棄・共有制限、家族フィードバック活用まで体系的に解説します。

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介護現場の動画記録は、ケア手順のOJT教材化・事故/転倒の振り返り検証・利用者状態のビフォーアフター記録・家族フィードバックの4用途で業務改善に直結します。一方で映像は要配慮個人情報を含むため、撮影前の書面同意・利用目的の明示・院内サーバー保管・閲覧権限制限・利用後5年以内の確実な廃棄が、個人情報保護法と医療・介護関係事業者ガイダンス(2026年4月改訂版)に基づく実務の最低ラインです。

目次

介護現場では「申し送りやテキスト記録だけでは伝わらないもの」が想像以上に多い。たとえば移乗時の手の添え方、認知症利用者への声かけの間合い、転倒直前の重心の崩れ方──いずれも文章では再現が難しく、写真ですら時間軸が失われる。そこで急速に普及しているのが業務用スマートフォンやタブレットを使った動画記録(短時間の録画)の活用だ。

厚生労働省は2024年度の介護報酬改定以降、ICT活用や生産性向上を「人員配置基準の柔軟化」と結びつけて評価しており、動画を含む記録のデジタル化は加算要件にも影響し始めている。一方で動画は本人の顔・声・身体・要介護状態など要配慮個人情報を必然的に含むため、「便利だから撮る」だけで運用するとガイダンス違反・家族トラブル・SNS流出といった重大事故につながる。

本記事では、現場で「明日から使える動画記録のルール」を、(1)用途別の撮影方法、(2)個人情報保護法に基づく同意取得、(3)保管・共有・廃棄の実務、(4)家族フィードバックへの活用、の4視点で整理する。

介護現場の動画記録とは|4つの用途と「業務用動画」の定義

「介護現場の動画記録」は、日常のスナップショット撮影とは目的も扱いも異なる業務記録の一形態である。一般に以下の4用途で運用される。

1. OJTケア手順動画(教材化)

移乗・入浴・口腔ケア・吸引・体位変換・徘徊対応など、手順が複雑かつ施設の標準化したい技術を10秒〜2分程度で撮影し、新人研修教材や統一マニュアルとして使う。テキスト+写真の研修資料を補完する「動く手順書」として、認定特定行為業務従事者の指導や、リーダーが手技を見せる場面の代替にも活用される。

2. 事故・ヒヤリハット振り返り動画

転倒・ベッドからの転落・誤嚥・離設未遂などインシデント発生時に、再現映像や事故直後のフロア状況(CCTV含む)を保存し、事故委員会・リスクマネジメント会議で「なぜ起きたか」「環境要因はどこか」を多職種で検証する。動画は文章報告では見逃される時系列の動作・声かけのタイミング・他職員の位置を可視化する強力な資料となる。

3. 利用者状態のビフォーアフター記録

リハビリ前後の歩行・拘縮・関節可動域、認知症の行動心理症状(BPSD)の変化、口腔機能の改善などを、月1回程度の固定アングル動画で記録する。介護報酬の「個別機能訓練加算」「ADL維持等加算」を取得する事業所では、ADL評価(Barthel Index等)の数値裏付け資料として有効。LIFEへの提出データの内部根拠としても使える。

4. 家族フィードバック・看取り共有

遠方の家族や面会制限期(感染症流行下など)に、レクリエーション参加状況・食事の様子・覚醒度の変化を短い動画で共有する。看取り期には、本人が穏やかに過ごしている様子を家族に届ける「お別れ前の記憶」として位置付ける施設も増えている。

「業務用動画」の定義(個人的撮影との線引き)

本記事で扱う動画記録は「業務目的で施設が管理する映像データ」に限定し、職員個人のスマートフォン端末で撮影し個人クラウドに保存するような映像は対象外とする。後者は重大な情報漏えいインシデントの原因となるため、就業規則上明確に禁止し、業務用デバイス(MDM管理下のタブレット等)でのみ録画する運用が大前提である。

動画記録導入の現状|介護事業所のICT・テクノロジー活用状況

介護現場でのICT・テクノロジー活用は年々進んでいる。介護労働安定センターの実態調査では、ICT活用に取り組む事業所の割合は年々上昇傾向で、特に介護記録ソフト導入は8割を超える事業所で導入済みまたは導入予定とされている。動画活用はこの延長線上にある「次の一歩」として位置付けられる。

動画活用が進む背景にある3つの環境変化

  • 業務用端末の普及:介護記録ソフト導入と同時に職員1人1台のタブレット配布が広がり、撮影機材の追加投資が不要になった。
  • クラウド型動画管理ソフトの低価格化:医療・介護向けの動画管理SaaSが月数千円〜利用可能となり、サーバー構築の負担なく安全管理措置を実装できるようになった。
  • 介護報酬での生産性向上評価:2024年度報酬改定で生産性向上推進体制加算が新設され、ICT・テクノロジー活用が報酬要件に組み込まれた。動画記録は加算対象の取り組みの一つとして位置付けられる。

一方で、安全管理措置・同意取得・職員教育の3点で運用ルールが整っていない事業所では、便利さよりリスクが先に顕在化する。本記事の各章を施設マニュアルに落とし込むことで、運用立ち上げ期のトラブルを最小化できる。

用途別の撮影方法|OJT動画・事故振り返り・ビフォーアフターの実務手順

OJTケア手順動画の撮影手順(10ステップ)

  1. 撮影テーマを決める:「ベッドから車椅子への移乗(半介助)」など、一つの手技に絞る。「介護全般」のような曖昧テーマは禁止。
  2. 手順書を準備:撮影前に文章・写真の手順書を作り、撮影はその補完と位置付ける。
  3. 演者・撮影者・指導者の3名体制:演者は熟練職員、撮影者は手元と全身が映る位置取り、指導者は手順の抜けをその場で指摘する。
  4. 利用者の同意・モデル選定:実利用者を撮る場合は事前の書面同意必須。同意が取りにくい場合は職員同士のロールプレイで代替。
  5. 背景の個人情報を排除:壁の氏名札・申し送りボード・他利用者のベッドネームなどが映り込まないようカメラ位置を調整。
  6. 横画面・固定アングル:縦動画は教材化に不向き。三脚またはタブレットスタンドで固定。
  7. 1カット2分以内:長尺は集中力が切れる。複数手技は分割撮影。
  8. 音声で要点を解説:手技中に「ここで膝に体重を載せ替えます」とリアルタイムナレーション。テロップ化の手間が省ける。
  9. 撮影直後にチェック:他利用者の映り込み・個人情報の音声混入(「○○さん、また転んだの?」等)がないか必ず確認。
  10. 所定の動画管理台帳に登録:撮影日・テーマ・出演者・保管場所・廃棄予定日を記録。

事故・ヒヤリハット振り返り動画の運用手順

事故発生時の動画は「撮影」と「保存」を分けて考える必要がある。

  • CCTV(既設の見守りカメラ等)の場合:通常上書き保存されるため、事故発覚から24時間以内に対象時間帯の映像を専用フォルダにコピーし、自動上書きから退避させる。
  • 再現動画の場合:事故再発防止検討委員会で「同じ環境・同じ介助手順」を演技で再現し撮影。実利用者は出演させない。
  • 事故委員会での視聴ルール:閲覧は委員会メンバーのみ、視聴室を出る際はファイルを残さない、議事録に「映像視聴日時・視聴者」を記録する。
  • 家族説明への活用:本人・家族から請求があれば事故発生時のCCTV映像を開示する義務がある(個人情報保護法第33条 開示請求権)。開示時は他利用者をマスキング処理する。
  • 保存期間:事故記録は介護保険法上、最低2年(条例により5年)の保管義務がある。事故関連動画はこれに合わせる。

利用者ビフォーアフター記録の撮影手順

  • 撮影頻度を固定:「毎月第1月曜の午前10時、リハビリ室入口」のように条件を統一。条件が違うと比較資料として使えない。
  • 固定アングル・固定距離:床にビニールテープでカメラ位置と被写体位置をマーキングする施設も多い。
  • 撮影内容の標準化:「10メートル歩行」「立ち上がり3回」など評価指標とリンクさせる。
  • 音声で日付・利用者ID・項目を読み上げる:後から動画ファイル名が消えても識別できるよう冒頭でアナウンスする。
  • 家族閲覧用の編集版を別途用意:家族提供時は他利用者が映る部分を必ずカット編集する。

同意取得の実務|書面同意・包括同意・撮影都度同意の使い分け

動画記録の本人・家族同意は、用途と被写体によって取得方法を変えるのが現実的だ。個人情報保護法では「あらかじめ本人の同意を得る」ことが原則だが、何をもって有効な同意とするかはガイダンスのQ&Aで具体例が示されている。

3つの同意取得パターン

パターン取得方法主な用途有効期間
包括同意(入所時/契約時)重要事項説明書・施設利用契約書に「業務改善のための撮影・記録」項目を明記し、署名で同意を得るOJT教材化・ビフォーアフター記録・家族向け日常映像契約期間中(更新時に再確認)
撮影都度同意(個別同意)撮影前にその都度、口頭または書面で「○月○日に△△を撮影し、××に使用します」と説明し同意を得る顔がアップで映る研修動画、外部研修会での教材活用その撮影のみ
事後同意(緊急時)事故発生時など事前同意が困難な場合、撮影・保存後速やかに本人・家族に説明し同意を得る事故CCTV映像・転倒直後の状況記録事後説明後、目的外利用は再同意

包括同意で「これだけは書いておく」7項目

  1. 撮影主体:誰が撮影するか(施設職員、業務委託先含む)
  2. 撮影目的:OJT教材/事故振り返り/状態記録/家族共有──を具体的に列挙
  3. 撮影対象:本人の顔・声・身体動作・居室空間
  4. 保管期間と方法:「施設内サーバーで○年保管、その後完全消去」
  5. 第三者提供の範囲:原則なし、ただし行政の指導監査時・本人/家族の開示請求時は提供することを明記
  6. 目的外利用の手続き:研修会発表など当初目的を超える場合は別途同意を取る旨
  7. 同意撤回の方法:いつでも撤回でき、過去映像の削除を申し出られる旨

判断能力が低下している利用者の同意

認知症等で本人の意思確認が困難な場合は、成年後見人または家族(キーパーソン)の同意で代替するのが一般的だ。ただし「家族の同意があれば何をしてもよい」わけではなく、(1)本人が嫌がる素振りを示せば撮影を中止する、(2)後日でも判断能力がある瞬間に本人意思を確認する、(3)身体に触れる場面の撮影は最小限にする──という配慮原則を運用マニュアルに明記する必要がある。

職員間ロールプレイ動画は「職員の肖像権」管理

OJT動画で職員同士がモデル役を務める場合も、業務命令として撮影を強制してはならない。「拒否権の保障」「退職時の映像削除依頼への対応」を就業規則・労使協定で明文化し、出演同意書を別途取得する施設が増えている。

動画記録のメリット・デメリットと現場ストレスへの配慮

動画記録の主なメリット

  • 暗黙知の可視化:ベテランの「手の添え方」「声かけのタイミング」など、文章化が難しい技術を新人に伝えられる。
  • 事故原因の客観的特定:「夜勤者の証言」だけでなく、映像という第三者的証拠で再発防止策を立てられる。
  • 多職種連携の促進:医師・看護師・PT/OT/ST・ケアマネが同じ映像を見て議論できる。
  • 家族信頼の獲得:日常の様子を共有することで「面会できない時の不安」を軽減し、苦情・トラブルが減少する効果が報告されている。
  • 加算算定の根拠資料:個別機能訓練加算・ADL維持等加算・科学的介護推進体制加算など、評価指標の根拠として活用できる。

動画記録のデメリットとリスク

  • 個人情報漏えいリスク:USBメモリでの持ち出し・私物スマホへの転送・誤ったクラウド設定によるネット流出。
  • 職員の心理的負担:「常に監視されている感覚」が現場ストレスとなり、離職要因になり得る。
  • 利用者の心理的負担:認知症利用者の中にはカメラに過剰反応し、症状が悪化するケースもある。
  • 運用工数の増加:撮影・編集・保管・廃棄の管理コストが膨らみ、本来の介護時間を圧迫する場合がある。
  • 誤用による懲戒・訴訟リスク:職員がSNSにアップして発覚した事例では、施設側が監督責任を問われる。

現場ストレスへの配慮ポイント

「監視される感覚」を減らすには、(1)撮影目的を職員会議で繰り返し共有する、(2)撮影される側にも事前告知する、(3)動画を「評価ツール」ではなく「学びのツール」として位置付ける、(4)撮影者と被写体を持ち回りでローテーションする──といった運用上の工夫が有効だ。「動画は職員管理のためではない」というメッセージを管理者が明示し続けることが、定着の鍵となる。

保管・共有・廃棄の実務ルール|「漏えいゼロ」のための7原則

動画は要配慮個人情報を含むため、安全管理措置(個人情報保護法第23〜25条)の徹底が事業者の義務となる。次の7原則を施設の動画管理規程に必ず盛り込む。

原則1:保管場所は院内サーバー or 業務用クラウドに限定

外付けHDDや個人クラウド(無料Googleドライブ等)への保存は禁止。業務用クラウドを使う場合はISMAP(政府情報システムのセキュリティ評価制度)相当またはISO27001取得済みのサービスを選定する。

原則2:アクセス権限は「業務上必要な職員」に限定

OJT動画は教育担当のみ、事故動画は事故委員会メンバーのみ、ビフォーアフター動画はサ責・PT/OT/ST・ケアマネのみ──のように用途別に閲覧権限を分ける。フォルダ単位でアクセス制御を設定する。

原則3:閲覧ログを必ず残す

「いつ・誰が・どの動画を・何分視聴したか」を記録する。閲覧ログは情報漏えい発生時の原因究明・責任追跡に不可欠。

原則4:持ち出し禁止・印刷物化禁止

動画ファイルのUSBコピー・スマホ撮影・スクリーンショット印刷を禁止。ノートPCに一時保存した場合も業務終了時に確実に削除する。

原則5:保管期間を用途別に設定

動画種別推奨保管期間根拠
OJT教材動画3〜5年研修教材として継続活用、内容陳腐化で更新
事故・ヒヤリハット動画5年介護保険法施行規則の記録保存義務(条例で5年指定の自治体多い)
ビフォーアフター記録2〜3年個別機能訓練加算等の根拠資料として
家族向け日常動画1〜3か月共有後速やかに削除、保存目的なし
CCTV常時録画2週間〜1か月事故発生時のみ別フォルダに退避

原則6:廃棄は「完全消去」を証拠化

単なるゴミ箱削除では復元可能。専用消去ソフト(米国国防総省方式DoD 5220.22-M等)でデータを上書き消去し、消去日時・担当者・対象ファイル名を「廃棄記録簿」に記録する。クラウドの場合はベンダーの完全消去証明書を取得する。

原則7:年1回の動画記録監査

「保管中の動画と動画管理台帳が一致しているか」「廃棄予定日を過ぎたファイルが残っていないか」「閲覧ログに不審な記録がないか」を年1回点検し、施設長に報告する。介護事業者の指導監査でも記録物の管理状況がチェックされる項目だ。

家族へのフィードバックに動画を使う実務|信頼を生む7つのコツ

家族との関係性を強化するツールとして動画を使う事業所が増えている。一方でやり方を誤ると「監視されている」「面会の代わりにされた」と不信感を招く。次の7つを守ることが信頼形成の鍵となる。

  1. 「同意取得+目的説明」を1枚紙にまとめる:家族に映像を送る前に、同意書の控えと「何のために共有するか」を文書で渡す。
  2. 連絡帳アプリ等の閉域共有を使う:LINEや一般メール送信は禁止。介護記録ソフトの家族向け連絡機能や、施設専用の家族ポータルを使う。
  3. 10秒〜30秒の短尺に編集する:長尺は家族の負担。「今日の体操の様子」「食事の様子」などピンポイントの短尺で。
  4. 他利用者は必ずマスキング:背景に他利用者が映ってしまった場合は、ぼかし処理または該当部分のカット編集を行う。
  5. 表情の良い瞬間だけを切り取らない:「いつもニコニコしています」演出は、後で容態急変したときに家族不信を招く。淡々と日常を伝える。
  6. 看取り期は特に慎重に:本人の意識レベル低下時の映像は、家族にとって重い記録となる。家族と事前に「どこまで撮るか・送るか」を相談する。
  7. 動画は家族側でダウンロード可とするか規約で明示:家族側保存を認める場合、SNS等への二次拡散リスクを家族にも告知し、規約同意を取る。

家族同意なしで撮影できる「例外」はない

「家族のためなら同意なしでも撮ってよい」という運用は法的に成立しない。包括同意の中に「家族共有用の撮影」を含めていない場合は、その都度同意が必要になる。「家族のため=本人同意不要」は典型的な誤解で、運用マニュアルに明記して職員教育を徹底する。

よくある質問(FAQ)

Q1. 入所時の包括同意書だけで、すべての動画撮影をカバーできますか?

用途によります。OJT教材化・ビフォーアフター記録・家族向け日常映像などあらかじめ目的を列挙しておけば包括同意でカバーできます。一方、外部研修会での教材公開や、施設のホームページ掲載など「当初の目的を超える利用」は別途同意が必要です(個人情報保護法第18条 目的外利用の制限)。

Q2. 認知症で同意能力が低下した利用者の撮影はどうすればよいですか?

家族(キーパーソン)または成年後見人の同意で代替します。ただし、本人が嫌がる素振りを見せた時点で撮影を中止する、判断能力が回復した瞬間に本人意思を確認する、といった配慮原則を運用マニュアルに明記してください。「家族OKなら何でも可」ではありません。

Q3. 職員のスマートフォンで撮影してもよいですか?

原則禁止です。私物デバイスでの撮影は、紛失時の漏えいリスク・私的クラウドへの自動同期リスク・退職後の削除確認困難という3つの致命的な問題があります。業務用デバイス(MDM管理下のタブレット等)でのみ撮影し、就業規則で私物撮影を禁止する旨を明示してください。

Q4. 動画記録は介護記録の代わりになりますか?

代わりにはなりません。介護保険法施行規則上「介護記録」は文書(電子記録含む)で残す必要があり、動画はあくまで補助資料の位置付けです。ただし、転倒事故の状況・身体拘束時の対応・看取り期のケアなど「文章では表現しきれない場面」では動画を併用することで記録の精度が大幅に上がります。

Q5. 家族から「事故時のCCTV映像を見せてほしい」と請求されました。応じる義務はありますか?

はい、本人または法定代理人(成年後見人等)からの開示請求には応じる義務があります(個人情報保護法第33条)。ただし、(1)他利用者が映っている部分はマスキング処理する、(2)開示記録を残す、(3)開示方法は施設内での閲覧か、DVD等の媒体提供かを家族と相談する、という運用が現実的です。第三者である家族からの請求は、本人同意の有無を確認する必要があります。

Q6. SNSで動画が流出した場合、施設はどんな責任を負いますか?

個人情報保護委員会への報告義務(個人情報保護法第26条)・本人への通知義務、行政指導、損害賠償請求、信用失墜による経営影響、と多重のリスクがあります。職員個人の故意・過失でも、施設は「監督責任」を問われます。「撮影は便利だが流出時のダメージは事業継続を脅かす」という認識のもと、安全管理措置を必ず徹底してください。

Q7. 動画記録の運用を始めるのに、どれくらいコストがかかりますか?

業務用タブレット(1台3〜8万円)・閲覧管理機能付きクラウドストレージ(月1万円〜)・編集ソフト(無料〜月数千円)・職員研修時間が初期投資の中心です。介護テクノロジー導入支援事業(厚労省・都道府県)や中小企業省力化投資補助金の対象になるケースもあり、補助金活用で初期負担を抑えられます。

参考文献・出典

まとめ|「業務改善のために撮る」と「個人情報を守る」を両立させる

介護現場の動画記録は、ベテランの暗黙知を新人に引き継ぎ、事故の真因を可視化し、利用者の改善を家族と共有する強力なツールである。ICTや介護テクノロジーの導入が報酬・加算と直結するようになった2026年以降、動画運用は「やる施設・やらない施設」の差がさらに開く分野になる。

一方で、動画は要配慮個人情報の塊である。同意取得、保管、共有制限、廃棄、職員教育のいずれかが欠ければ、漏えい・SNS流出・指導監査での指摘・損害賠償といった重大事故が起きる。「便利だから撮る」ではなく、「ルールを整えてから撮る」順番が必須だ。

本記事で示した(1)用途別の撮影手順、(2)3パターンの同意取得、(3)保管・共有・廃棄の7原則、(4)家族フィードバックの7コツ、を施設の動画管理規程に落とし込み、職員研修で繰り返し共有してほしい。動画記録は、施設のケアの質と職員の働きやすさを同時に底上げできる数少ない手段だ。個人情報保護への徹底配慮を土台に、明日からの一歩を進めてほしい。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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