
認知症のBPSDに抗精神病薬を使うリスクと「やめる」研究エビデンス|CATIE-AD・DART-AD・Cochraneを介護現場目線で読む
認知症の行動・心理症状(BPSD)に抗精神病薬を使うと何が起きるのか。効果は限定的で死亡リスクが上がるとした国際試験(CATIE-AD・DART-AD)、FDAの警告、多くの人で安全にやめられるとしたCochraneレビュー、日本の向精神薬使用ガイドライン第3版を一次ソースで確認し、処方権を持たない介護職が観察・非薬物ケア・多職種連携でできることに落とし込みます。
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結論:抗精神病薬は限定的・短期が原則、第一選択はケア
認知症の行動・心理症状(BPSD=暴言・興奮・幻覚・妄想・徘徊など、認知症に伴って現れる行動面・心の面の症状)に対して、興奮や攻撃性を抑える「抗精神病薬」が使われることがあります。しかし国際的な研究では、その効き目は限られている一方で、転倒・誤嚥・脳血管障害・死亡といった重い害が効果を上回りやすいことが繰り返し示されてきました。アメリカのFDA(食品医薬品局)は、認知症の高齢者にこれらの薬を使うと亡くなるリスクが高まるとして、最も強い警告(黒枠警告)を出しています。
だからこそ、日本でも国際的にも、BPSDへの対応はまず非薬物的なケア(環境調整・声かけ・生活リズムの見直しなど)が第一選択で、薬は「やむを得ないときに、低用量で、短期間、リスクを説明したうえで」という限定的な位置づけです。さらに、すでに飲んでいる薬の多くは、症状が落ち着いていれば医師の管理のもとで安全にやめられる可能性があることも研究で示されています。
介護職は薬を処方したり中止したりする立場ではありません。だからこそ価値があるのは、「薬が効いているのか・副作用が出ていないか」を毎日いちばん近くで観察し、記録し、非薬物ケアを実践し、その情報を医師・看護師・薬剤師につなぐこと。本記事は、この役割を研究の裏づけとともに整理します。
目次
なぜ介護職が「薬のリスク」を知っておくべきか
夕方になると落ち着かなくなり、声を荒げる。夜になると眠らず動き回る。介護を強く拒む。認知症のある方を支える現場では、こうした行動・心理症状(BPSD)に日々向き合います。本人もつらく、周囲も疲弊するこの状況で、医療機関では「気持ちを落ち着けるため」として抗精神病薬が処方されることがあります。
薬を出すか・やめるかを決めるのは医師であり、介護職の仕事ではありません。それでも介護職がこの薬のリスクを知っておくべき理由は、はっきりしています。薬が効いているのか、副作用でぼんやりしていないか、転びやすくなっていないか、食事の飲み込みが悪くなっていないか。それを一日のうちで最も長く、最も近くで見ているのは介護職だからです。その観察と記録が、医師の「続けるか・減らすか・やめるか」の判断材料になります。
この記事では、抗精神病薬とBPSDをめぐる代表的な研究を一次ソースで確認します。具体的には、効果と害を天秤にかけた大規模試験、薬を続けた人と中止した人を長期間追った試験、各国の警告、そして「多くの人で安全にやめられる」とした系統的レビュー、さらに日本の最新ガイドラインです。そのうえで、処方権を持たない介護職が現場で何をできるのかに落とし込みます。なお、本記事は特定の薬の服用・中止を読者にすすめるものではありません。薬に関する判断は必ず主治医・薬剤師にご相談ください。
抗精神病薬とBPSD:何のために使われ、なぜ問題になるのか
抗精神病薬は、もともと統合失調症などの幻覚・妄想・強い興奮を抑えるために開発された薬です。大きく、古くからある「定型(第一世代)」と、比較的新しい「非定型(第二世代)」に分かれます。代表的な非定型にはリスペリドン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールなどがあります。
認知症のある方の多くは、進行のどこかで行動・心理症状(BPSD)を経験します。日本のガイドラインは、認知症のある人のおよそ6〜9割が何らかのBPSDを経験するとしています。具体的には、幻覚や妄想(「物を盗られた」など)、焦りや興奮、攻撃性、徘徊、昼夜逆転、介護への抵抗などです。こうした症状は本人の尊厳を傷つけ、介護負担を増やし、施設入所を早め、本人と介護者双方の生活の質(QOL)を下げる要因になります。
抗精神病薬は、このうち興奮・攻撃性・幻覚・妄想を抑える目的で使われることがあります。しかし重要な前提が二つあります。ひとつは、BPSDに対する抗精神病薬の使用は、日本では多くが「適応外使用」(本来その病気のために承認された使い方ではない使い方)にあたること。もうひとつは、効果が限定的である一方、高齢の認知症のある方では重い副作用が起きやすいことです。次の章から、この「効果と害のバランス」を実際の研究データで確認していきます。
研究データで見る「効果」と「害」のバランス
抗精神病薬とBPSDをめぐっては、世界的に影響の大きかった研究がいくつかあります。それぞれを、専門用語をかみくだいて見ていきます。数字の向きに注意してください。
CATIE-AD(2006年・米国/NEJM):効果はあっても害が打ち消す
アルツハイマー型認知症で幻覚・攻撃性・興奮のある外来患者421人を、くじ引きで4グループ(リスペリドン/オランザピン/クエチアピン/偽薬)に分けて比べた試験です(こうした「くじ引きで分けて比べる試験」をランダム化比較試験=RCTと呼び、薬の効果を最も確かめやすい方法とされます)。最長36週間追いました。
結論はシンプルで、論文は「副作用が、抗精神病薬の効果という利点を打ち消した」と述べています。実際、副作用や使いにくさが理由で薬をやめた人の割合は、偽薬の5%に対し、オランザピンで24%、リスペリドンで18%、クエチアピンで16%と高くなりました。つまり「多少効く人もいるが、その分つらい副作用で続けられない人が増える」という結果です。
DART-AD(2009年・英国/Lancet Neurology):飲み続けると命の差が開く
すでに抗精神病薬を3か月以上飲んでいた認知症のある方165人を、くじ引きで「そのまま続ける」グループと「偽薬に切り替える(=実質的に中止する)」グループに分け、長期間その後を追いました。最も重い結果は、飲み続けたグループのほうが、生き残った人の割合(生存率)が低かったことです。
具体的には、続けたグループと中止したグループで生存率は、1年後で70%対77%、2年後で46%対71%、3年後で30%対59%と、時間が経つほど差が広がりました。統計的にも偶然では説明しにくい差で、論文は「認知症のある人に抗精神病薬を処方することは、長期の死亡リスクを高める」と結論づけています。なお、この研究は人数が165人と多くはなく、すでに薬を飲んでいた人を対象にした特定の集団での結果である点は割り引いて読む必要があります。
FDAの黒枠警告(2005年・2008年・米国):最も強いレベルの注意喚起
アメリカのFDAは2005年、非定型抗精神病薬について、17件の偽薬比較試験(平均およそ10週間)をまとめた解析から、認知症の高齢者では死亡リスクがおよそ1.6〜1.7倍に高まると判断し、添付文書に最も強い「黒枠警告(boxed warning)」を付けました。2008年には、古いタイプの定型抗精神病薬にも同じ警告を広げています。「1.6〜1.7倍」は相対的な差を表す数字で、もともとの死亡率にこの倍率がかかるという意味です。
Cochraneレビュー(2018年):多くの人で「安全にやめられる」可能性
複数の研究を統合して評価した系統的レビュー(Cochraneレビュー。世界的に信頼されている評価のひとつ)は、抗精神病薬を3か月以上飲んでいた認知症のある高齢者について、多くの場合は薬をやめても、BPSDが大きく悪化することなく中止できる可能性があるとまとめました。ただし証拠の確実性は「低い」とされ、死亡率への影響まではこの研究群からは判断できないとしています。また後述のとおり、もともと症状が重い人や薬がよく効いていた人では、やめると症状がぶり返すことがある点も併せて示されています。
| 研究/文書 | 発表(誌・年) | 対象・規模 | 要点(かみくだき) |
|---|---|---|---|
| CATIE-AD | NEJM・2006 | AD外来 421人・RCT・最長36週 | 効果はあっても副作用が打ち消す。副作用での中止が偽薬より多い |
| DART-AD | Lancet Neurol・2009 | AD 165人・継続vs中止のRCT | 飲み続けた群で生存率が低い。差は年々拡大(3年後30%対59%) |
| FDA黒枠警告 | 米FDA・2005/2008 | 17試験・平均10週の解析 | 認知症高齢者で死亡リスク約1.6〜1.7倍。最も強い警告 |
| Cochraneレビュー | Cochrane・2018 | RCT統合(証拠の質は低) | 多くは安全に中止可能の可能性。重症・反応良好例は再燃に注意 |
| 向精神薬使用GL 第3版 | 日本・2025 | 学会監修ガイドライン | 非薬物療法が第一選択。やむを得ない時のみ低用量・短期・説明同意 |
数字の正しい読み方と、研究の限界
研究の結果を現場で使うには、数字を正確に、しかし過大にも過小にも受け取らないことが大切です。次の点を押さえておきましょう。
- 「効かない」ではなく「効果が限られ、害が上回りやすい」。 抗精神病薬がまったく無効というわけではありません。一部の人では興奮や攻撃性が和らぎます。問題は、その効果が小さめである一方で、転倒・誤嚥・過鎮静・脳血管障害・死亡といった重い害のほうが上回りやすいという「バランス」です。
- 「1.6〜1.7倍」「3年後30%対59%」は相対的な比較。 これらは集団全体での割合の差であって、目の前の特定の方が必ずそうなるという意味ではありません。逆に「自分の担当者は大丈夫だった」という一例から、リスク全体を否定することもできません。集団の傾向と個人の経過は分けて考えます。
- DART-ADは「すでに飲んでいた人」の継続vs中止を見た研究。 「最初から飲むかどうか」を直接比べたものではなく、対象も165人と限られます。それでも、長期に飲み続けることの危うさを示した重要な証拠です。
- 「やめられる」は「誰でも・いつでも勝手にやめてよい」ではない。 Cochraneレビューは多くの人で安全に中止できる可能性を示しましたが、証拠の質は低く、もともと症状が重い人や薬がよく効いていた人では中止で症状がぶり返すこともあります。減量・中止は必ず医師の管理のもと、計画的に少しずつ行うものです。
- 海外データをそのまま日本に当てはめない。 使われる薬の種類・量、ケア体制、施設環境は国によって異なります。ただし「非薬物療法が第一選択」「やむを得ない時のみ低用量・短期」という方向性は、後述の日本のガイドラインでも国際的な知見と一致しています。
- レビー小体型認知症では特に注意。 レビー小体型認知症のある方は抗精神病薬に対して過敏で、強い副作用が出やすいことが知られています。日本のガイドラインも、安易に抗精神病薬を使わないよう注意を促しています。
日本のガイドラインと、介護現場でできること
日本でも、認知症のBPSDに対する向精神薬の使い方は明確に整理されています。2025年に第3版が公表された「かかりつけ医・認知症サポート医のためのBPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン」(日本認知症学会・日本老年精神医学会・日本神経学会・日本精神神経学会・日本老年医学会・日本神経治療学会の監修)は、次の原則を示しています。
- BPSDの管理は非薬物療法が第一選択。 まず、せん妄や身体疾患(感染・脱水・痛み・便秘など)、薬剤性の要因を除外し、環境調整やケアの見直し、心理的な関わりを家族や介護スタッフと検討・実施する。それでも改善しない場合にのみ薬物治療を検討する。
- 薬を使う場合も、低用量で開始し、観察しながら少しずつ。 添付文書の最高用量を超えない。多剤併用はできるだけ避ける。
- 転倒・骨折・誤嚥性肺炎・死亡リスク上昇などの不利益と、適応外使用であることを十分に説明したうえで使う。
- 使い始めたら、効果と副作用を継続的に評価し、不利益が利益を上回ると考えられる場合は、再燃に注意しながら減量・中止を検討する。
ここで重要なのは、これらの判断(処方・用量・減量・中止)はすべて医師が行うということです。介護職が薬を出したり、勝手に飲ませなかったりすることはできません。では介護職は何をするのか。ガイドラインが繰り返し求める「非薬物的介入」と「効果・副作用の継続的な観察」こそ、介護職が現場で担える中心的な役割です。
非薬物ケアでできることの例:
- BPSDが出る時間帯・場面・きっかけ(誘因)を記録から探す。「夕方になると」「入浴の声かけのときに」など、引き金が見えると先回りの対応がしやすい。
- 痛み・便秘・空腹・尿意・脱水・発熱など、本人が言葉にできていない身体的な不快がBPSDの背景にないかを確認する。これらは薬より先に対処すべき原因になりうる。
- 視覚・聴覚の不自由、まぶしさ・騒音・室温など、環境面の負担を減らす。
- 日中の活動と日光、生活リズムを整え、昼夜逆転を防ぐ。
- 否定や説得で押し返さず、安心できる声かけ・関わり方(その人の馴染みの話題・ペースに合わせる)を選ぶ。
こうした非薬物的な工夫が、「そもそも薬を始めずに済む」「始めた薬を減らせる」状況づくりにつながります。実際、英国では非薬物ケアの普及と適正使用の推進により、2008年から2011年にかけて認知症のある人への抗精神病薬の処方が大きく減少したと報告されています(この数値は英国の医療体制での結果であり、日本にそのまま当てはまるものではありませんが、ケアの力で処方を減らせる余地があることを示しています)。
介護職の観察が、薬の「続ける・やめる」を動かす
研究が示す原則を現場で生かす最大のポイントは、介護職の観察と記録が、医師の意思決定の材料になるという点です。医師は短い診察の中だけで、薬が効いているか・副作用が出ているかを判断しきれません。日々の様子を最もよく知る介護職の情報が、薬を減らせるか・続けるべきかを左右します。
「効果」として記録したいこと
- 薬を始めた・増やした前後で、対象としていたBPSD(興奮・攻撃性・幻覚妄想など)が実際に減ったか、変わらないか。
- その変化が、本人の穏やかさ・生活のしやすさにつながっているか、それとも単にぼんやりして動かなくなっただけか。
「副作用・害のサイン」として見逃したくないこと(気づいたら看護師・医師へ)
- 過鎮静: 日中の強い眠気、ぼーっとして反応が鈍い、声かけに気づきにくい。
- 転倒・ふらつき: 立ち上がりや歩行が不安定になった、つまずきが増えた。
- 飲み込み・誤嚥: 食事中のむせ、食事に時間がかかる、痰がらみ、発熱。誤嚥性肺炎の入口になりうる。
- 体のこわばり・動きにくさ(錐体外路症状): 手足のふるえ、表情が乏しくなる、小刻み歩行。
- 急な変化: 脳血管障害を疑う片側の麻痺・ろれつ・意識の変化は緊急。
これらを「いつ・どんな場面で・どの程度」具体的に記録し、申し送りやカンファレンス、多職種連携(医師・看護師・薬剤師・リハ職)の場で共有することが、適正使用と脱処方を支えます。とりわけ薬剤師による服薬の見直しや、科学的介護情報システム(LIFE)に沿ったアセスメントの場面では、介護職が日々ためた観察データが「減らせる根拠」として力を持ちます。
キャリアの視点でも意味があります。BPSDを「薬で抑える対象」ではなく「原因を探ってケアでやわらげる対象」として捉え、根拠(エビデンス)に基づいて多職種に発信できる介護職は、現場で信頼される存在になります。認知症ケアの質を語れること、薬のリスクを理解して医療職と対話できることは、リーダーや認知症ケアの専門職へ進むうえでの確かな土台になります。
現場ですぐ使えるチェックの視点
- 薬が増えたら「観察を強める合図」。 新しい抗精神病薬が始まった・量が増えたときは、その後数日〜数週間、眠気・ふらつき・むせ・歩行を意識して見る。
- 「落ち着いた」を二通りで考える。 穏やかになったのか、過鎮静で動けないだけなのかを区別して記録する。後者は減量・中止を検討すべきサイン。
- BPSDの記録は「いつ・どこで・何の前後で」。 誘因が見えると非薬物ケアの的が絞れ、薬に頼らない対応の根拠になる。
- 身体の不快を先に疑う。 便秘・痛み・脱水・尿路感染などは興奮や落ち着かなさの背景になりやすい。バイタルと排泄・水分をまず確認。
- レビー小体型認知症の情報は共有を徹底。 抗精神病薬に過敏な方では特に副作用に注意し、気になる変化はすぐ報告する。
- 減薬・中止は必ず医師の管理下で。 自己判断で飲ませない・抜くことはしない。気づきは「報告」という形で医療職に渡す。
よくある疑問
- Q. 抗精神病薬は「使ってはいけない薬」なのですか?
- A. いいえ。効果と害を慎重に天秤にかけたうえで、ほかの手段で対応しきれない強い興奮・攻撃性・幻覚妄想などに対し、医師がリスクを説明して限定的・短期に使うことはあります。問題は「漫然と長く使い続けること」です。
- Q. 利用者が薬で眠ってばかりです。介護職が中止を提案してよい?
- A. 中止を決めるのは医師ですが、「日中の強い眠気で食事や活動に支障が出ている」という観察事実を、具体的に看護師・医師へ報告するのは介護職の大切な役割です。その情報が減量・中止の検討につながります。
- Q. 急に薬をやめると危なくないですか?
- A. もともと症状が重い人や薬がよく効いていた人では、中止で症状がぶり返すことがあります。だからこそ減量・中止は医師の管理のもと、計画的に少しずつ行います。介護職は中止後の様子(再燃の有無)を観察して伝えます。
- Q. 海外の研究の数字を、日本の利用者にそのまま当てはめてよい?
- A. 薬の種類・量やケア体制は国で異なるため、数字をそのまま当てはめることはできません。ただし「非薬物療法が第一選択」「やむを得ない時のみ低用量・短期」という方向性は、日本のガイドラインでも一致しています。
- Q. BPSDが強くて現場が限界です。薬以外に何ができますか?
- A. まず身体的な不快(痛み・便秘・脱水・感染など)や環境の負担を点検し、誘因を記録から探します。そのうえで安心できる関わり方を試し、チームと共有します。それでも対応が難しいときは、抱え込まず医師・看護師・認知症疾患医療センター等との連携を相談しましょう。
参考文献・一次ソース
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まとめ:薬を減らせる現場は、観察とケアでつくられる
認知症のBPSDに抗精神病薬を使うことをめぐる研究の核心は、シンプルです。効果は限られ、害(転倒・誤嚥・脳血管障害・死亡リスク上昇)が上回りやすい。だから対応は非薬物的なケアが第一選択で、薬は「やむを得ないときに、低用量で、短期間、リスクを説明したうえで」に限る。そして、すでに飲んでいる薬の多くは、症状が落ち着いていれば医師の管理のもとで安全にやめられる可能性がある。これがCATIE-AD・DART-AD・FDAの警告・Cochraneレビュー、そして日本のガイドライン第3版に共通する方向性です。
ただし、これらは「集団での傾向」であり「証拠の質が低い」部分も含みます。目の前の一人ひとりにどう当てはめるかは、医師が個別に判断します。介護職は薬を決める立場ではありません。
だからこそ、介護職にしかできない貢献があります。BPSDの誘因を探って非薬物ケアで先回りすること。薬の効果と副作用のサインを毎日いちばん近くで観察し、具体的に記録すること。その情報を医師・看護師・薬剤師に渡すこと。薬を減らせる現場は、こうした観察とケアの積み重ねからつくられます。エビデンスを理解し、根拠をもって多職種と対話できる介護職は、認知症ケアの質を引き上げる中心的な存在になれるはずです。
(本記事は研究の解説であり、特定の薬の使用・中止をすすめるものではありません。服薬に関する判断は必ず主治医・薬剤師にご相談ください。)
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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