透析を受ける利用者の介護|シャント観察・水分制限・透析日の体調管理を介護職向けに解説
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透析を受ける利用者の介護|シャント観察・水分制限・透析日の体調管理を介護職向けに解説

透析(血液透析・腹膜透析)を受ける利用者を施設で介護する際のポイントを介護職向けに解説。シャント側での血圧測定・駆血を避ける観察手順、水分・食事制限の生活支援、透析後の体調変動、通院対応、看護師連携まで、介護職ができることと医療職に任せる線引きを整理します。

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この記事のポイント

透析を受ける利用者の介護で介護職がまず押さえるべきは、シャント側の腕で血圧測定や駆血(止血帯による締めつけ)をしないこと、シャント音や腫れ・熱感を毎日観察して異常を看護師へすぐ報告すること、そして水分・食事制限と透析後の体調変動を生活面で支えることです。除水量の判断や穿刺などの医療行為は看護師・医療職の領域であり、介護職は「観察」と「生活支援」「即報告」に徹するのが原則です。

目次

高齢化にともない、透析を受けながら特別養護老人ホームや介護老人保健施設、有料老人ホームなどで生活する利用者は珍しくありません。日本透析医学会の統計では、2024年末時点の透析患者数は約33万7千人で、患者の平均年齢は70.27歳に達しています。週3回の通院透析を続ける高齢者を施設で支える場面は、今後さらに増えていきます。

透析患者の介護は「医療と生活の境目」にある仕事です。シャントという命綱を守り、水分・食事制限を生活の中で支え、透析日の体調変動に気づいて看護師につなぐ——どれも介護職の観察力と気配りが直接ケアの質を左右します。一方で、除水量の調整や穿刺、血圧の医療的評価などは医療職の役割であり、線引きを誤ると利用者の安全を脅かします。

この記事では、施設で透析利用者を担当する介護職に向けて、シャント観察の具体的な手順、やってはいけないこと、水分・食事制限の生活支援、透析日の体調管理、通院対応、看護師との連携のコツを、公的資料と医療機関の情報をもとに整理します。在宅で家族として支える視点は慢性腎臓病・透析の親を在宅で支えるの記事も参考にしてください。

透析とは|血液透析(HD)と腹膜透析(PD)の違い

透析とは、腎臓の機能が低下して老廃物や余分な水分を体外に排出できなくなったとき、人工的に血液を浄化する治療です。腎臓のはたらきが正常の10〜15%以下まで落ちると導入されることが多く、透析を始めると原則として生涯続けることになります。介護現場で出会う透析には大きく2種類があり、それぞれ介護職が気をつけるポイントが違います。

血液透析(HD)

もっとも一般的な方法で、透析患者の大多数が受けています。腕などに作ったシャント(後述)に針を刺し、血液を体外のダイアライザー(人工腎臓)に通して浄化し、体に戻します。通常は週3回・1回4時間前後、透析クリニックや病院に通院して行います。施設利用者の場合、送迎車での通院や施設職員の付き添いが必要になることが多く、透析日のスケジュール調整が介護の大きな要素になります。

腹膜透析(PD)

お腹の中に透析液を一定時間ためて、腹膜を通して老廃物や水分を除去する方法です。自宅や施設で行えるのが特徴で、日中に手動で交換する方法(CAPD)と、夜間に機械で自動的に行う方法(APD)があります。通院は月1〜2回程度で済む一方、お腹に留置したカテーテルの出口部を清潔に保つ管理が欠かせず、腹膜炎のリスク(透析液が濁る、腹痛、発熱)に注意が必要です。バッグ交換や排液量の確認は医療行為にあたるため、施設では看護師が担当し、介護職は出口部の様子や排液の濁り・体調変化の観察と報告を担います。

どちらの方法でも、介護職が直接「透析そのもの」を行うことはありません。介護職の役割は、治療を安全に続けられるよう生活面を整え、異変の芽を早く見つけて医療職につなぐことです。

シャント観察の手順|介護職の「見る・聴く・触れる」

シャントとは、血液透析のために腕の動脈と静脈を手術でつなぎ合わせ、十分な血流量を確保した血管のことです(バスキュラーアクセスとも呼びます)。多くは前腕の橈側(親指側)に作られます。シャントは透析を続けるための「命綱」であり、いったん詰まると再手術が必要になるため、毎日の観察が極めて重要です。原泌尿器科病院をはじめ多くの透析施設は「シャントは1日1回は観察する」ことを基本に挙げています。

介護職が行うのは医療的な評価ではなく、日々の関わりの中での「見る・聴く・触れる」の観察と、異常の早期発見・報告です。看護roo!(エキスパートナース)では、シャント観察で見抜くべきトラブルとして「狭窄(細くなる)」「閉塞(詰まる)」「感染」の3つが挙げられています。

見る(視診)

  • シャントのある腕の皮膚の色を見る。赤み・紫色・白っぽさなど、いつもと違う色は異常のサイン。
  • 腫れ・むくみがないか。穿刺部の周囲が腫れている、こぶ(瘤)のように膨らんできた場合は要注意。
  • 穿刺部に出血・にじみ・かさぶたの異常、ジュクジュクした浸出液(感染の疑い)がないか。
  • 透析後に貼られたガーゼやテープが翌日まで残っていないか(長時間の圧迫は避けたいので、看護師に確認のうえ対応)。

聴く(聴診)

  • シャント血管に耳や聴診器を当てると、血液が流れる「ザーザー」「ゴーゴー」という連続した音(シャント音・血管雑音)が聞こえます。これが正常な状態です。
  • 東京医科大学病院腎臓内科の解説では、「ピューピュー」という高い音が混じる場合は狭窄が、音が途切れる・弱い場合は閉塞寸前が疑われるとされています。
  • 音が聞こえなくなった場合は閉塞の可能性が高く、緊急対応が必要です。すぐに看護師へ報告してください。

触れる(触診)

  • シャント血管にそっと指の腹を当てると、血流の振動(スリル)をザーザーと感じます。これが触れることが正常の目安です。
  • スリルが弱い・感じない、または拍動だけが強く触れる場合は狭窄・閉塞のサインのことがあります。
  • シャント部やその周囲に熱感(熱っぽさ)・痛み・硬いしこりがないか。熱感+赤み+腫れは感染の疑いが強く、放置すると重篤化するため速やかに報告します。

これらの観察は、整容・更衣・入浴介助・血圧測定(健側で行う)など日々のケアの流れの中で自然に行えます。「いつもと違う」と感じたら、自己判断せず看護師に伝えることが介護職の最重要の役割です。なお、シャント音の聴診や評価そのものは、聴診の習熟度や施設の方針によって看護師の業務とする場合もあります。自施設のルールを必ず確認してください。

シャントを守るためにしてはいけないこと|介護行為の線引き

シャントを守るうえで、介護職が「してはいけないこと」は明確に決まっています。これらは利用者の命綱を一瞬で損ないかねないため、ケアに入る全員が共有しておく必要があります。すだクリニックなど複数の透析施設が、シャント保護の注意点として次の項目を挙げています。

シャント側の腕でやってはいけないこと

  • 血圧測定をしない:マンシェット(腕帯)でシャントを圧迫すると血流が止まり、閉塞の原因になります。血圧は必ず反対側(健側)の腕で測ります。両腕ともシャントや事情がある場合は看護師に確認します。
  • 駆血(止血帯で締める)・採血・点滴をしない:透析以外の採血や点滴をシャント側で行うのは禁忌です。介護職が駆血帯を巻く場面は通常ありませんが、医療職が来訪した際にうっかりシャント側を案内しないよう、どちらの腕がシャントかを把握しておきます。
  • 腕枕・腕の下敷きにしない:就寝時にシャント側の腕を体の下にして長時間圧迫しないよう、ポジショニングで配慮します。
  • 重い荷物を持たせない・ぶら下げさせない:買い物袋やリハビリ器具などをシャント側に持たせない。
  • 腕時計・きつい袖・ゴムで締めつけない:時計やきつい衣類でシャント血管を圧迫しないよう、更衣の際に確認します。
  • ぶつけない・強くこすらない:移乗や車いす操作の際にシャント部をぶつけないよう動線に注意します。

介護職が「やらない」医療行為の線引き

透析に関わるケアのうち、次は医療行為であり介護職は行いません。施設では看護師・医療職が担当します。

  • シャントへの穿刺・抜針、止血の医療的判断
  • 除水量(どれだけ水分を抜くか)の決定・ドライウェイトの設定
  • 腹膜透析のバッグ交換・排液量の医療的評価
  • 透析にともなう薬剤(リン吸着薬・降圧薬など)の調整判断

介護職ができるのは、これらが安全に行われるよう生活を整え、観察した変化を正確に伝えることです。なお、原則として血圧・体温・脈拍の測定は、一定の条件下では介護職員が行える行為とされていますが(厚生労働省通知)、透析患者の血圧測定はシャント側を避けるという追加の注意が必須です。判断に迷う場面は必ず看護師に確認しましょう。

水分・食事制限の生活支援|塩分・カリウム・リンと水分管理

透析患者の生活支援で、シャント観察と並んで重要なのが水分・食事制限のサポートです。腎臓が働かないため、摂りすぎた水分や老廃物を体が排出できず、体内にたまります。制限の数値は医師が個別に指示しますが、介護職は「なぜ制限が必要か」を理解し、利用者が無理なく守れるよう生活面で支えます。

水分制限とドライウェイト

透析患者は尿量が大きく減るため(無尿の人も多い)、摂った水分はほとんど体にたまります。透析で抜ける水分量には限界があるため、透析と透析の間の体重増加を一定に抑える必要があります。じんラボ(腎臓専門医監修)によれば、目安は中1日でドライウェイトの+3%まで、中2日で+5%未満とされています。ドライウェイトとは、体の余分な水分を取り除いた透析終了後の目標体重のことです。

介護職にできる支援は次のとおりです。

  • 医師・看護師から指示された1日の飲水量の範囲を把握し、コップの容量を「見える化」して提供量を調整する。
  • 水分は食事(汁物・麺類・鍋・果物)にも多く含まれることを意識し、献立とあわせて声かけする。
  • 口の渇きを訴える利用者には、氷を少量なめてもらう・うがいで口を潤す・レモン水で口腔ケアするなど、少ない水分で満足感を得られる工夫をする。
  • 毎日の体重測定を習慣化し、急な増加に気づいたら看護師へ報告する。

ただし高齢者は脱水のリスクも高く、「制限=とにかく飲ませない」ではありません。発熱・下痢・夏場などは脱水に傾くこともあり、水分量の判断は必ず看護師・医師の指示に従います。

食事制限(塩分・カリウム・リン・たんぱく質)

透析患者の食事は、制限と必要量のバランスが難しいのが特徴です。キッセイ薬品やじんラボなどの透析食解説をもとに、介護現場で押さえたいポイントを整理します。

  • 塩分:1日6g未満が目安。塩分を摂りすぎると喉が渇いて水分過多につながり、血圧も上がります。だし・酸味・香辛料を活かし、しょうゆは「かけずに小皿でつける」工夫を。
  • カリウム:血液透析では1日2,000mg以下が目安(腹膜透析では制限が緩いことが多い)。高カリウム血症は不整脈・心停止につながる危険があります。生野菜・果物(バナナ・メロン等)・いも類・100%ジュースに多く、野菜は「ゆでこぼし」「水にさらす」とカリウムを減らせます。
  • リン:摂りすぎると骨がもろくなったり血管の石灰化を招きます。乳製品・小魚・加工食品・インスタント食品に多く含まれます。食事に合わせてリン吸着薬が処方されることが多く、服薬のタイミング(食直前・食直後など指示どおり)を守る声かけが大切です。
  • たんぱく質・エネルギー:制限ばかりに目が向きがちですが、透析患者は低栄養・サルコペニア(筋肉減少)に陥りやすく、適切なたんぱく質とエネルギーの確保も重要です。食事量が落ちている利用者は、制限以前に「食べられているか」を看護師・管理栄養士に共有します。

これらの制限値はあくまで一般的な目安で、利用者ごとに医師の指示が異なります。施設では管理栄養士が透析食を整えるため、介護職は「決められた食事をきちんと食べられているか」「制限を破る間食をしていないか」「食欲・体重の変化」を観察して報告する役割が中心になります。

透析日の体調変動と介護スケジュール

血液透析は短時間で体内の水分・老廃物を一気に除去するため、体に大きな負担がかかります。特に透析直後から当日夜にかけて体調が変動しやすく、施設では「透析から帰ってきてからが勝負」と言われるほどです。介護職はこの時間帯の変化を見逃さないことが求められます。

透析後・透析中に起こりやすい体調変動

  • 血圧低下:除水によって血圧が急に下がり、ふらつき・立ちくらみ・冷や汗・生あくび・気分不良・吐き気を起こすことがあります。LIFULL介護の解説でも、冷や汗・生あくび・目の前が暗くなるなどの症状は早めに医療スタッフへ申し出るべきサインとされています。
  • 強い倦怠感(だるさ):透析後はぐったりと疲れ、横になりたがる利用者が多くいます。無理に活動を促さず、休息を優先します。
  • 不均衡症候群:透析導入初期などに、頭痛・吐き気・倦怠感が起こることがあります。
  • こむら返り(筋けいれん):除水しすぎた際などに足がつることがあります。
  • 転倒リスクの上昇:血圧低下・ふらつき・脱力により、透析後は転倒しやすくなります。歩行介助・見守りを強化します。

透析日の介護スケジュールの組み立て

週3回の透析日は、生活リズムを透析に合わせて設計します。

  • 透析前:体重測定、体調確認、排泄を済ませる、忘れ物(保険証・お薬手帳・必要物品)の準備、送迎時間に合わせた整容・更衣。
  • 送り出し:シャント側の腕を圧迫しない服装か確認。シャント音・体調を最終チェック。
  • 帰所後:血圧低下・ふらつきに注意して移乗・歩行を介助。穿刺部の止血状態とガーゼ、シャント音を確認。倦怠感が強ければ休息を優先し、入浴は原則控える(透析直後の入浴は穿刺部からの感染・出血リスクがあるため、施設のルールと看護師の指示に従う)。
  • 非透析日:体重・水分・食事の管理を継続し、次の透析までの体調を整える。

透析の有無で同じ利用者でも1日の負担がまったく変わります。透析日と非透析日でケアプランの活動量・入浴日を調整するのは、施設介護ならではの重要な工夫です。

通院送迎と付き添いの対応

血液透析の利用者は週3回の通院が必要で、施設にとって通院送迎は大きな負担になります。送迎手段・付き添い・責任の所在をどう整えるかは、受け入れ可否を左右する現実的な課題です。介護職が関わる場面と工夫を整理します。

通院の主なパターン

  • 透析クリニックの送迎サービス:多くの透析クリニックが患者送迎を行っており、施設玄関までの送迎で職員の付き添い負担を減らせます。受け入れ前に送迎範囲・対応可否を確認します。
  • 施設の送迎・職員付き添い:施設車両や職員が同行するパターン。人員と時間の確保が課題になります。
  • 介護タクシー・家族対応:状況に応じて組み合わせます。

送迎・付き添いで介護職が気をつけること

  • 持ち物の管理:健康保険証・特定疾病療養受療証(後述)・お薬手帳・透析手帳・着替えなどを毎回確実に持参する。
  • 申し送りの徹底:施設での体調・体重・食事・服薬状況を透析施設に伝え、透析施設からの指示(除水量の変化、体調注意点)を施設に持ち帰る。連絡ノートやFAXでの情報共有体制を整える。
  • 移動中・待ち時間の体調観察:透析後の帰路はふらつきや気分不良が起きやすいため、車内でも見守る。
  • 経済面の知識:透析は医療費が高額ですが、特定疾病療養受療証を提示すると医療費の自己負担が原則月1万円(上位所得者は2万円)に抑えられます。利用者・家族から相談を受けたら、医療ソーシャルワーカーや生活相談員につなぎます。

看護師・医療職との連携と報告基準

透析利用者の介護は、介護職と看護師・医療職の連携なしには成り立ちません。安心介護の解説でも「施設とクリニックの連携の溝」が受け入れの壁の一つに挙げられています。介護職が観察した変化を、いかに正確・迅速に看護師へ伝えられるかがケアの安全を決めます。

すぐに看護師へ報告すべきサイン

次のサインに気づいたら、自己判断で様子を見ず、ただちに看護師へ報告します。

  • シャント音が聞こえない・弱い・高い音が混じる/スリルを触れない
  • シャント部の熱感・赤み・腫れ・痛み・排膿(感染の疑い)
  • 穿刺部からの出血が止まらない
  • 透析後の強い血圧低下・冷や汗・生あくび・意識がもうろう
  • 体重の急な増加、強いむくみ、息苦しさ(水分過多・心不全の疑い)
  • 動悸・脱力・しびれ(高カリウム血症の疑い)
  • 腹膜透析で排液が濁る・腹痛・発熱(腹膜炎の疑い)

報告は「いつもと比べてどうか」を具体的に

看護師が判断しやすいよう、観察した事実を具体的に伝えます。医療現場で使われるSBAR(状況・背景・評価・依頼)の考え方が参考になります。

  • いつ:透析から帰った直後/夕食後 など時間を明確に
  • 何が、どう違うか:「いつもはザーザー聞こえるシャント音が今日は弱い」「体重が前回より2kg増えている」など、平常との差で伝える
  • バイタル・状態:測定した血圧・体温・脈拍(シャント側を避けて測定した値)、顔色・受け答え
  • 自分の判断と依頼:「転倒が心配なので見守りを強化しています。確認をお願いします」

日々のシャント観察結果や体重・水分・食事の記録を残し、看護師・透析施設と共有することで、トラブルの早期発見と、同じシャントを長く使い続けることにつながります。

透析利用者の介護は介護職のキャリアにどう関わるか(当サイトの視点)

透析利用者の介護は、ここまで見てきたように「医療的ケアの観察」「生活制限の支援」「透析日の体調管理」「通院対応」と、通常の介護に専門的な知識と気配りが上乗せされる仕事です。これは介護職にとって負担であると同時に、キャリア上の強みになり得ると私たちは考えます。

日本透析医学会の統計では透析患者の平均年齢は70歳を超え、高齢化が進んでいます。今後、特養・老健・有料老人ホームなどで透析利用者を受け入れる場面はさらに増え、シャント観察や透析後の体調管理を理解している介護職の価値は高まる方向にあります。実際、安心介護の解説が指摘するように「医療ケアの壁」「連携の壁」を越えられる施設は限られており、それを支えられる人材は重宝されます。

一方で、透析利用者のケアは観察項目が多く、緊張感のある場面も少なくありません。看護師が常駐し連携体制が整った施設か、夜間のシャントトラブル時の対応ルールが明確かは、介護職が安心して働けるかを大きく左右します。透析を含む医療依存度の高い利用者を扱う職場では、看護配置・医療連携体制・夜勤時のバックアップを就職・転職前に確認することが、自分を守ることにつながります。「医療的な観察に強くなりたい」「逆に医療依存度の低い職場で腰を据えたい」——どちらの方向を望むかは人それぞれです。自分に合う働き方を整理したい方は、働き方診断で適性や希望条件を見つめ直してみてください。

現場で役立つ5つの実践ポイント

1. どちらの腕がシャントかを全職員で共有する

ベッドサイドやケア記録に「シャント=右腕」など明示し、血圧測定・点滴の案内・腕枕を間違えないようにします。新任職員や応援職員にも必ず申し送ります。

2. 透析日・非透析日でケアの組み立てを変える

透析日は入浴を避け、活動量を控えめにして休息を優先。非透析日に入浴やレクを設定するなど、週単位で負担を平準化します。

3. 「いつもの状態」を記録しておく

正常なシャント音・スリル・平常の血圧や体重を記録しておくと、「いつもと違う」に気づきやすくなります。変化の早期発見が命綱を守ります。

4. 口の渇き対策で水分制限のつらさを和らげる

氷をなめる、レモン水でうがい、こまめな口腔ケアなど、少ない水分で満足感を得る工夫で、制限のストレスと隠れ飲水を減らします。

5. 迷ったら必ず看護師に確認する

透析は医療と生活が密接に絡みます。「これは介護がやってよいことか」迷ったら、自己判断せず看護師に確認する習慣が、利用者と自分を守ります。

よくある質問(FAQ)

Q. 介護職は透析利用者のシャントの観察をしてもいいですか?

日々のケアの中で「見る・聴く・触れる」による観察を行い、異常に気づいて看護師へ報告することは介護職の重要な役割です。ただし聴診器を使った評価やトラブルの医療的判断は、施設の方針により看護師の業務とする場合があります。自施設のルールを確認してください。

Q. 透析利用者の血圧はどちらの腕で測ればいいですか?

必ずシャントのない側(健側)の腕で測ります。シャント側でマンシェットを巻くと血流が止まり、閉塞の原因になります。両腕に事情がある場合は看護師に相談してください。

Q. 透析後に入浴させてもいいですか?

透析直後は穿刺部からの出血・感染リスクと血圧低下があるため、当日の入浴は原則控えます。入浴日の設定は看護師の指示と施設のルールに従い、非透析日に調整するのが一般的です。

Q. 水分制限中でも、暑い日は水を飲ませた方がいいですか?

透析患者でも発熱・下痢・猛暑では脱水に傾くことがあります。水分量は一律ではなく医師・看護師の指示によります。体重や体調を見ながら、判断は必ず医療職に確認してください。

Q. 腹膜透析の利用者は介護施設で受け入れられますか?

腹膜透析は施設内で行え通院も少ない一方、バッグ交換・排液評価などの医療管理が必要なため、看護師の配置と医療連携が整っているかが受け入れの鍵になります。介護職は出口部の清潔保持の見守りと、排液の濁り・腹痛・発熱などの異常報告を担います。

参考文献・出典

まとめ|観察と生活支援、そして「すぐ報告」で命綱を守る

透析を受ける利用者の介護は、シャントという命綱を守り、水分・食事制限を生活の中で支え、透析日の体調変動に気づいて看護師につなぐ——介護職の観察力と気配りが直接ケアの質を決める仕事です。要点を振り返ります。

  • シャント側の腕で血圧測定・駆血・採血・腕枕・圧迫をしない。これは絶対のルール。
  • 毎日「見る・聴く・触れる」でシャントを観察し、音が弱い・熱感・腫れなどの異常はすぐ看護師へ報告する。
  • 水分(中1日+3%・中2日+5%未満が目安)と食事(塩分・カリウム・リン)の制限を、生活の中で無理なく支える。
  • 透析後は血圧低下・倦怠感・転倒に注意し、入浴は控え、休息を優先する。
  • 除水量の決定や穿刺などの医療行為は行わず、観察と生活支援、即報告に徹する。

透析利用者を支えられる介護職は、高齢透析患者が増えるこれからの現場でますます求められます。同時に、安心して力を発揮するには看護配置や医療連携体制の整った職場を選ぶことも大切です。自分に合う働き方を整理したい方は、働き方診断を活用してみてください。在宅で家族として支える視点は慢性腎臓病・透析の親を在宅で支えるもあわせてご覧ください。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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