介護ICTとは

介護ICTとは

介護ICTは、介護記録・情報共有・請求業務をデジタル化し職員負担を軽減する仕組み。厚労省は「介護テクノロジー導入支援事業」(2025年度〜)で補助率最大3/4を提供。導入効果と仕組みをやさしく解説します。

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この記事のポイント

介護ICT(Information and Communication Technology)とは、介護記録・情報共有・請求業務などをタブレット・スマートフォン・介護ソフト・クラウドサービスでデジタル化し、職員の業務負担を軽減して直接ケアの時間を増やす取り組みです。厚生労働省は2019年度から導入支援を実施し、2025年度からは「介護テクノロジー導入支援事業」として介護ロボット導入支援と一本化、補助率は最大3/4に拡充されました。

目次

介護ICTの定義と国の推進政策

介護ICTとは、Information and Communication Technology(情報通信技術)を介護現場の業務に活用する取り組みの総称です。具体的には、紙の介護記録や手書きケアプランをタブレット・スマートフォン・介護ソフトに置き換え、職員間の情報共有をクラウドや業務用チャットで行い、レセプト(介護給付費請求)を電子化する一連のデジタル化を指します。

厚生労働省は介護現場の人材不足と業務負担の高さを背景に、2019年度から「介護現場におけるICT導入支援事業」を都道府県を実施主体として展開してきました。2024年度までは介護ロボット導入支援事業と並走していましたが、2025年度(令和7年度)から両事業を一本化した「介護テクノロジー導入支援事業」に再編。補助率は要件充足時で最大3/4、上限額は事業所規模に応じ100万円〜260万円程度(都道府県により異なる)となり、財政支援が大幅に拡充されました。

厚生労働省「介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き」(老健局高齢者支援課介護業務効率化・生産性向上推進室)では、ICT導入を「テクノロジーの活用と業務改善で職員の負担を減らし、生み出された時間を利用者との直接ケアに充てること」と定義しています。単なるデジタル化ではなく、ケアの質向上が目的であることが強調されている点が重要です。

介護ICTの主な領域と代表的な機器・ソフト

介護ICTは大きく5つの領域に分けられ、それぞれに代表的な機器・ソフトが存在します。

  • 介護記録の電子化:タブレット・スマホでバイタル・食事・排泄・入浴等を入力。代表例は「ほのぼのNEXT」「ケアコラボ」「ナーシングネットプラスワン」「ワイズマン」「楽すけ」等の介護記録ソフト。
  • 請求業務の電子化(介護給付費請求):国保連合会への請求データをソフトで自動生成。多くの記録ソフトが請求機能と一体化しています。
  • 情報共有・コミュニケーション:職員間連絡を業務用チャット(LINE WORKS、Chatwork等)やインカム(BONX、トランシーバー)で効率化。家族との連絡もアプリ化。
  • 見守り・センサー連携:ベッドセンサー・カメラ・離床センサーが介護記録ソフトに自動連携し、夜間巡視の負担を軽減(介護ロボットと重なる領域)。
  • 科学的介護情報システム(LIFE)連携:厚労省が運用するLIFEへのデータ提出・フィードバック受信を記録ソフト経由で行い、科学的介護推進体制加算の取得につなげる仕組み。

これらは独立したツールではなく、介護記録ソフトを中核に互いに連携することで真価を発揮します。たとえばセンサーが感知した離床情報が自動で記録に反映され、職員が手書きする時間がゼロになるといった統合的な業務改善が可能になります。

介護ICT導入の効果(厚労省・公的データ)

厚生労働省の実証事業や調査では、介護ICT導入による具体的な効果が報告されています。代表的な数値を整理します。

指標導入効果出典
間接業務時間の削減導入済み事業所の9割超で減少を確認厚労省「介護現場におけるICT利用促進」調査
記録業務の時間削減1人1日あたり約30〜60分の削減事例多数厚労省「介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き」
夜勤業務の負担軽減見守りセンサー導入で巡視回数を半減した事例厚労省「テクノロジー等を活用した介護現場における生産性向上」資料
残業時間削減訪問介護で帰所不要となり残業時間が大幅減厚労省「介護現場のICT化」事例集
職員満足度記録の手間軽減で職員満足度向上、離職予防効果独立行政法人福祉医療機構「介護労働実態調査」分析

ただし、導入即効果ではない点に注意が必要です。厚労省の手引きは「業務改善計画とセットで導入する」「現場職員の研修と運用ルール整備を行う」「導入後3〜6か月の効果測定で運用を見直す」ことを推奨しています。ハードを買うだけで成果が出るわけではなく、業務フローの再設計が前提となります。

介護ICT・介護ロボット・介護DXの違い

「介護ICT」「介護ロボット」「介護DX」は近接概念ですが、対象範囲が異なります。

用語対象範囲主な目的
介護ICT情報通信技術全般(記録・請求・情報共有・通信)業務の電子化・効率化
介護ロボット移乗支援・移動支援・排泄支援・見守り・コミュニケーションロボット等の身体的支援機器身体介助の負担軽減
介護テクノロジー介護ICT+介護ロボットの上位概念(厚労省2025年度〜)業務改善+身体支援の統合
介護DXテクノロジー導入だけでなく組織・業務プロセス全体のデジタル変革事業運営のあり方そのものの変革

厚生労働省は2025年度から「介護ロボット導入支援事業」と「ICT導入支援事業」を統合し「介護テクノロジー導入支援事業」としました。これは現場でICT・ロボット・センサーが相互連携する実態を踏まえた再編で、補助申請も一本化されています。介護DXはより広い概念で、ICT・ロボットを「手段」として、組織文化・人材育成・経営戦略まで含めた変革を指します。

介護ICT導入の流れ

厚生労働省の手引きが推奨する標準的な導入フローは次の5ステップです。

  1. 業務課題の棚卸し:記録・請求・情報共有・夜勤巡視など、どの業務に時間がかかっているかを職員ヒアリングと業務時間調査で可視化します。
  2. ICT機器・ソフトの選定:複数ベンダーの製品を比較し、デモを受けます。介護記録ソフトはLIFE連携対応・スマホ操作性・サポート体制で選ぶのが定石です。
  3. 補助金申請:都道府県の「介護テクノロジー導入支援事業」で計画書・見積を提出。要件(職員研修実施・効果測定・他事業所への成果共有等)を満たすと補助率3/4、満たさない場合は1/2が基本です。公募時期は都道府県ごとに異なり、年度内に1〜3回実施されます。
  4. 導入・職員研修:ハードウェア・ソフトウェアの初期設定後、全職員向けに操作研修を実施。導入直後は紙併用の移行期間を設けるのが現実的です。
  5. 運用と効果測定:導入後3〜6か月で業務時間削減・残業時間・職員満足度を測定。結果を都道府県に報告し、必要に応じて運用を見直します。

導入計画段階で現場職員を巻き込まないと「使われないICT」になりがちです。リーダー層だけで決めず、現場の声を反映する仕組みが成否を分けます。

介護ICTに関するよくある質問

Q1. 介護ICTを導入すると介護職員の仕事は減りますか?
記録や情報共有といった「間接業務」の時間は確実に減ります。一方で、削減された時間を直接ケアに振り向けるのが本来の目的です。職員がいなくなるのではなく、利用者と向き合う時間が増えるという理解が正しい姿です。実際に厚労省の調査でも「導入後に直接ケア時間が増えた」と回答する事業所が大多数です。
Q2. 高齢の職員はタブレット操作になじめないのではないですか?
多くの介護記録ソフトは50〜60代の職員も使いやすいUIに設計されており、ボタン操作中心で文字入力を最小化しています。導入時に2〜3時間の研修と、紙併用の移行期間を設ければ、ほとんどの職員が習熟するというのが厚労省の事例集の傾向です。むしろ手書きより楽になったという声も多くあります。
Q3. 補助金は事業所規模に関係なくもらえますか?
「介護テクノロジー導入支援事業」は介護保険指定事業所であれば原則対象ですが、補助上限額は事業所規模(職員数)によって変わります。20人以下の小規模で100万円程度、大規模で260万円程度が一般的なレンジ。補助率は要件充足で3/4、その他で1/2です。詳細は事業所所在の都道府県の公募要領を確認してください。
Q4. 介護記録ソフトの選び方の決め手は何ですか?
(1) LIFE連携対応の有無、(2) タブレット・スマホでの操作性、(3) サポート体制(電話・訪問支援の有無)、(4) 他のセンサー・見守り機器との連携可否、の4点が重要です。価格だけで選ぶと運用に苦労するケースが多く、複数製品のデモ・無料試用期間を活用するのが王道です。
Q5. 介護ICTと介護DXは同じものですか?
違います。介護ICTは情報通信技術を介護業務に活用すること、介護DXはICT・ロボット等の技術導入を契機に組織・業務プロセス・経営戦略までデジタル変革することを指します。ICTはDXの「手段」の一つであり、ハードを買うだけでDXにはなりません。

参考資料・出典

まとめ

介護ICTは、介護記録・情報共有・請求業務をデジタル化し、職員の間接業務を減らして直接ケアの時間を増やす仕組みです。厚労省の実証では1人1日30〜60分の業務時間削減、夜間巡視の半減など具体的効果が確認されています。2025年度からの「介護テクノロジー導入支援事業」では補助率最大3/4で財政支援も拡充。ただしハードを買うだけでは効果は出ず、業務改善計画・職員研修・効果測定をセットで進める「業務再設計」が鍵となります。LIFEや介護情報基盤との連携も進む中、介護ICTは現場の働きやすさと利用者ケアの質の双方を底上げするインフラとして位置づけられています。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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