
テレナーシング(遠隔看護)とは
テレナーシング(遠隔看護)はICTを使い、離れた場所の療養者にモニタリング・相談・保健指導を行う看護活動。日本看護協会の定義、オンライン診療との違い、介護現場での活用、看護師に求められるスキルを解説。
この記事のポイント
テレナーシング(遠隔看護/Telenursing)とは、ICT(情報通信技術)と遠隔コミュニケーションを通じて提供される看護活動の総称です。看護職が離れた場所にいる療養者の心身データをモニタリングし、テレビ電話やチャットで保健指導・相談・教育を行います。日本看護協会は「対面看護・訪問看護に次ぐ第3の看護提供方法」と位置づけています。
目次
テレナーシングの定義と全体像
テレナーシングは「ICTと遠隔コミュニケーションを通じて提供される看護活動」と日本看護協会・聖路加国際大学テレナーシングSIG等で定義されています。看護職が音声・画像・映像・心身情報を活用し、離れた地点で暮らす療養者と家族のアセスメントを行い、情報提供・相談・教育・保健指導を提供する仕組みです。
従来の電話相談やナースコールとは区別され、データの遠隔モニタリングを併用することできめ細かなアセスメントが行えるのが特徴です。米国看護師協会(ANA)では1990年代後半からTelenursingが定義され、欧米では循環器疾患・糖尿病の在宅管理で広く活用されてきました。日本では2020年のCOVID-19流行を機に在宅療養者の健康見守り需要が高まり、2021年に日本在宅ケア学会が「テレナーシングガイドライン」を策定して普及が加速しています。
テレナーシングは「遠隔医療(Telemedicine)」の一部に位置づけられますが、診断・処方を行うオンライン診療と異なり、看護職の判断のもとセルフケア支援・療養指導・症状の早期発見を担います。特に介護現場では、訪問看護の補完手段や、施設入居者の夜間モニタリング、家族介護者へのメンタルサポートとして注目されています。
提供形態は大きく3パターンに分類されます。看護職から療養者へのN to P(Nurse to People)型、生体データの遠隔監視を伴うテレモニタリング型、専門看護師から現場看護師への助言を行うN to N(Nurse to Nurse)型です。介護施設では特定行為研修修了看護師や認知症看護認定看護師がN to Nで助言する事例も増えています。
テレナーシングの主な実施形態
日本在宅ケア学会のテレナーシングガイドラインや厚生労働省の遠隔医療に関する指針に基づき、現在国内で運用されている主な形態を整理します。
- テレモニタリング型:血圧計・SpO2モニター・体重計などのIoT機器が自動送信する生体データを看護職が遠隔で確認し、異常値を検知したらビデオ通話や訪問につなげる方式。COPD・心不全・糖尿病で実績が多い。
- ビデオ相談型(N to P):療養者・家族とテレビ電話でつながり、症状の変化や服薬状況、ストーマ・褥瘡・在宅酸素のケア方法を確認・指導する方式。訪問看護の合間の状態確認に活用される。
- 看護師間コンサルテーション型(N to N):施設配置の看護師が、認定看護師や専門看護師に遠隔で助言を求める方式。皮膚・排泄ケア、緩和ケア、感染管理などで利用が広がる。
- 遠隔保健指導型:特定保健指導や疾病予防プログラムの一環として、生活習慣の改善をテレビ電話で継続支援する方式。職域・自治体の保健事業で活用。
- 緊急時オンコール対応型:施設入居者や独居高齢者の夜間急変時に、ナースコール/センサーを起点にテレビ電話で看護師が一次評価を行い、訪問の要否を判断する方式。
オンライン診療・電話相談との違い
テレナーシングは「離れた相手に対応する」点で他のサービスと混同されがちですが、目的・担い手・法的位置づけが異なります。
| 項目 | テレナーシング | オンライン診療 | 電話相談(コールセンター) |
|---|---|---|---|
| 主な担い手 | 看護師・保健師 | 医師 | 看護師または相談員 |
| 目的 | セルフケア支援・療養指導・モニタリング | 診断・処方 | 受診勧奨・一次トリアージ |
| 使用ツール | ビデオ通話+IoT生体データ | ビデオ通話+電子処方箋 | 音声通話のみが基本 |
| 根拠法・指針 | テレナーシングガイドライン(日本在宅ケア学会) | オンライン診療の適切な実施に関する指針(厚労省) | 各自治体・事業者の運用基準 |
| 診療報酬・介護報酬 | 診療報酬の遠隔モニタリング加算等で部分評価 | オンライン診療料として算定 | 原則として算定対象外 |
| 継続性 | 長期の療養支援を前提 | 単発〜定期受診 | 原則1回完結 |
テレナーシングはオンライン診療の代替ではなく補完関係にあり、医師の処方や診断は行いません。一方、単なる電話相談と異なり、IoT機器や定期的なビデオ通話によって継続的な療養アセスメントができる点が大きな違いです。
2024年介護報酬改定でのテレナーシング関連評価
2024年(令和6年度)介護報酬改定では、訪問看護および看護小規模多機能型居宅介護において、ICT・遠隔技術を活用した看護を評価する加算が複数新設されました。テレナーシング普及の制度的後押しとして重要な改定です。
| 加算名 | 単位数 | 対象サービス | 主な要件 |
|---|---|---|---|
| 遠隔死亡診断補助加算(新設) | 150単位/回 | 訪問看護/看護小規模多機能型居宅介護 | 「情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修」を修了した看護師が、主治医の指示に基づき情報通信機器を用いて医師の死亡診断を補助。離島等の対象地域に限る。 |
| 専門管理加算(新設) | 250単位/月 | 訪問看護/看護小規模多機能型居宅介護 | 緩和ケア・褥瘡ケア・人工肛門/膀胱ケアに係る専門研修修了者、または特定行為研修修了看護師がN to Nを含む計画的管理を実施。 |
| ターミナルケア加算(見直し) | 2,500単位/死亡月(旧2,000単位) | 訪問看護/定期巡回・随時対応型訪問介護看護/看護小規模多機能型居宅介護 | 医療保険のターミナルケアとの整合性を図る観点で増点。 |
診療報酬(医療保険)側では、訪問看護療養費に「遠隔死亡診断補助加算 1,500円」「専門管理加算 2,500円/月」が設定されています。介護保険と医療保険のいずれも、ICT活用が単独で評価されたわけではなく、研修要件・対象地域・対象利用者の限定がある点に注意が必要です。
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」、厚生労働省「介護保険最新情報 Vol.1225(令和6年3月15日)」。
介護現場でのテレナーシング活用シーン
- 夜間オンコール対応: 介護施設職員からの相談に、訪問看護師がビデオ通話で利用者の状態を確認
- 遠隔地の在宅高齢者見守り: 月1回の対面訪問+週1回のオンラインバイタルチェックを組み合わせ
- 退院直後の不安期支援: 退院後1〜2週間の集中フォローをビデオ通話で実施
- 家族介護者への助言: 体位変換・吸引などの手技を家族にリアルタイム指導
- 感染症流行期の対応: 訪問を最小化しつつケアの質を維持
よくある質問
- Q1. 介護保険・医療保険の対象になりますか?
- A. 2024年改定で「遠隔死亡診断補助加算」「特別管理加算(情報通信機器を用いた療養指導)」などが新設され、限定的ながら保険評価が進んでいます。
- Q2. 通信機器の費用負担は?
- A. 事業所側がタブレット・通信回線を整備するのが一般的で、利用者は基本的に無料です。一部の事業所では利用者がスマホを使うパターンもあります。
- Q3. オンライン診療と何が違いますか?
- A. オンライン診療は「医師による診断・処方」、テレナーシングは「看護師による観察・指導・相談」です。両者を組み合わせる施設も増えています。
まとめ
テレナーシングは「移動時間・訪問頻度・人材不足」の課題を緩和する新しい看護のかたちです。2024年介護報酬改定で初の保険評価が入ったことを契機に、訪問看護ステーション・介護施設配置看護師の両方で導入が進むと見込まれます。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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