
日本介護支援専門員協会、財務省提言に反論|新類型『登録施設介護支援』の報酬引き下げに『さらなる経営悪化』
2026年5月21日、日本介護支援専門員協会が住宅型有料老人ホーム向け新類型『登録施設介護支援』の介護報酬引き下げを求める財務省提言に反論声明。同一建物減算はすでに適正化済みで、追加引き下げは事業所の休廃止加速を招くと主張。
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日本介護支援専門員協会は2026年5月21日、住宅型有料老人ホーム入居者向け新類型『登録施設介護支援』の介護報酬を居宅介護支援より低く設定すべきとする財務省提言に対し、真っ向から反論する声明を発表した。同協会は『同一建物減算はすでに適正化されており、これ以上の引き下げは事業所のさらなる経営悪化と休廃止の加速を招く』と主張。来年度(令和8年度)介護報酬改定の最大論点の一つとして、ケアマネジメントの報酬水準が焦点に浮上している。
目次
解説動画
住宅型有料老人ホームの入居者に特化したケアマネジメントの新類型『登録施設介護支援』をめぐり、日本介護支援専門員協会が財務省提言に強く反論した。財務省は4月28日の財政制度等審議会で、住宅型ホーム入居者向けケアマネジメントは業務負担が軽く、事業所の収支差率も高いとして、新類型の基本報酬を居宅介護支援より低く設定すべきと提言。一方、ケアマネ協会は『現行の同一建物減算ですでに労働投入時間の差は反映されている』『追加引き下げは事業所の存続を脅かす』と反対の姿勢を鮮明にした。来年度の介護報酬改定議論で最大の対立軸の一つとなる見通しだ。
財務省が4月末に示した『適正化』提言
収支差率の高さを根拠に減額要求
財務省は4月28日の財政制度等審議会で、住宅型有料老人ホーム入居者向けケアマネジメントについて『業務負担が軽く、事業所の収支差率も高い傾向にある』と分析。来年度の介護報酬改定で、新類型『登録施設介護支援』の基本報酬を居宅介護支援より低く設定すべきと求めた。背景には、社会保障費の継続的な伸びを抑制したい財政当局の意向がある。
現行の同一建物減算の効果を限定的と評価
財務省は、現行制度の『同一建物減算』(住宅型ホーム併設事業所のケアマネに適用される減算ルール)について『効果が限定的』と指摘。減算幅の拡大ではなく、新類型での基本報酬そのものの引き下げが必要との立場を取った。住宅型ホーム入居者を担当するケアマネジメントの労働投入時間が個人宅より月22.8%少ないという昨年度の調査・研究事業データを念頭に置いた提言と見られる。
令和8年度改定の主要論点に浮上
登録施設介護支援は、政府が今国会に提出した介護保険法改正案に新設が盛り込まれた新類型。来年度(令和8年度)の介護報酬改定で具体的な基本報酬・加算体系が設計される。財務省提言は、その報酬設計の出発点となる議論を方向づける狙いがあったとみられる。
日本介護支援専門員協会の反論ポイント
同一建物減算はすでに適正化済み
日本介護支援専門員協会は5月21日の声明で、現行の『同一建物減算』はケアマネジャーの移動時間などを十分に検討して導入されたものであり、『すでに適正化はなされている』と反論した。財務省が主張する『効果が限定的』との評価に対し、減算自体が制度設計時に労働投入時間差を反映済みであると主張した格好だ。
事業所の休廃止加速を懸念
居宅介護支援事業所の数は近年減少傾向にあり、ケアマネ協会は『目下の厳しい経営環境』を強調。これ以上の介護報酬引き下げは『事業所のさらなる経営悪化を招き、休廃止を加速させる危険性がある』と警鐘を鳴らした。事業所の減少は、利用者がケアマネジャーを選びにくくなる事態に直結する。
地域生活相談業務の追加を踏まえた評価を要求
政府は新類型『登録施設介護支援』に、地域生活相談の業務を追加する方針を打ち出している。ケアマネ協会は『現行制度における労働投入時間差のみを前提とした報酬設計は不適当』と指摘。新類型では業務範囲が拡張される以上、その追加業務も評価に組み込むべきと主張した。そのうえで、加算も含めて『現行の居宅介護支援相当分の評価』が引き続き行われるべきと求めた。
ケアマネ現場への影響と独自分析
個人宅担当ケアマネ vs 住宅型併設ケアマネの構造的緊張
今回の議論の核心は、個人宅を担当する居宅ケアマネと、住宅型ホームに併設される事業所のケアマネとの間の経営条件の差異にある。住宅型併設事業所は要介護度の重い利用者が集まりやすく、相対的に業務負担が軽くケアマネを確保しやすい構造があり、個人宅ベースの事業所より経営的に有利と長年指摘されてきた。財務省提言は『この差異を報酬で是正する』方向、ケアマネ協会の反論は『減算済みの差異をさらに広げると業界全体が衰退する』方向。両者の対立は、ケアマネジメントの公正・中立性をどう担保するかという原理的問題に直結している。
住宅型ホームの『囲い込み』対策との接続
5月22日に衆院厚労委で可決された介護保険法改正案には、住宅型有料老人ホームへの登録制導入が含まれる。新類型『登録施設介護支援』の報酬設計は、この登録制と一体で運用される見通しだ。基本報酬を居宅介護支援より下げれば、囲い込み構造への抑止力にはなる一方、住宅型併設事業所のケアマネは経営難から退出を迫られる可能性もある。改正附帯決議は『囲い込み対策の実効性担保』を求めており、報酬設計はその実効性確保の手段の一つに位置づけられる。
個人宅担当ケアマネにとっての含意
個人宅を担当する居宅ケアマネにとって、財務省提言通り住宅型併設事業所のケアマネ報酬が下がれば、相対的に競争環境は公平化される。一方、ケアマネ協会の反論通り現行水準維持となれば、住宅型併設の経営優位性は維持され、個人宅担当の事業所離れが進む可能性もある。どちらの結論になっても、現場ケアマネは『自事業所の利用者構成(個人宅か住宅型か)』を意識した経営判断が必要になる。
今後の改定議論スケジュール
介護給付費分科会での具体化
新類型『登録施設介護支援』の基本報酬や加算体系は、社会保障審議会介護給付費分科会で議論される。来年度(令和8年度)改定の本格議論は2025年12月〜2026年2月にかけてピークを迎える見通し。財務省提言とケアマネ協会の反論のどちらが反映されるかは、分科会委員の意見・厚労省事務局案・診療側/保険者側の駆け引きで決まる。
注目すべき判断材料
分科会での議論の判断材料となるのは、①住宅型併設事業所と個人宅担当事業所の収支差率の最新データ、②労働投入時間調査のアップデート、③居宅介護支援事業所の休廃止件数の推移、④住宅型ホーム入居者の状態像(要介護度・医療必要度)の変化、の4点。これらのデータが分科会資料として提示される段階で、報酬水準の議論が具体化する。
介護現場が注視すべき情報
ケアマネ・事業所管理者は、厚労省の介護給付費分科会の議事録・資料を継続的に確認することが重要。改定議論の途中で『基本報酬◯◯%減』『同一建物減算◯%引き上げ』といった具体的数字が出始めるタイミングで、自事業所への影響シミュレーションを始められる。
参考文献・出典
参考資料
- 介護ニュースJoint「ケアマネ協会が財務省に反論 新類型『登録施設介護支援』の報酬、現行評価の維持を主張」(2026年5月21日)
https://www.joint-kaigo.com/articles/46179 - 日本介護支援専門員協会 公式サイト
https://www.jcma.or.jp/ - 財務省「財政制度等審議会」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/index.htm - 厚生労働省「社会保障審議会 介護給付費分科会」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126706.html - 厚生労働省「居宅介護支援事業所の概況」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/kyotaku/index.html
まとめ
2026年5月21日、日本介護支援専門員協会は財務省の『登録施設介護支援の報酬引き下げ』提言に反論声明を発表した。背景には、住宅型有料老人ホーム併設事業所と個人宅担当事業所の経営条件の構造的差異、それを是正する方向の財務省提言、業界の経営悪化を懸念する協会側という3者の対立がある。来年度(令和8年度)介護報酬改定の最大論点の一つで、2025年12月〜2026年2月の介護給付費分科会で具体的な数字が固まる見通し。ケアマネ・事業所管理者は、自事業所の利用者構成と分科会議論の動向を継続的に把握することが重要だ。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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