異食への対応|認知症の原因・誤飲と窒息リスク管理・環境調整を介護職向けに解説
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異食への対応|認知症の原因・誤飲と窒息リスク管理・環境調整を介護職向けに解説

認知症などで食べ物以外を口に入れる「異食」への介護現場での対応を、原因・危険物の管理・誤飲/窒息時の初動・環境調整・多職種連携まで、厚生労働省ガイドラインに基づき介護職向けに解説します。

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異食とは、食べ物以外のもの(ティッシュ・紙おむつ・洗剤・電池など)を口に入れたり飲み込んだりする行動で、認知症の行動・心理症状(BPSD)の一つとして現れます。厚生労働省は「異食をすべて防ぐことは難しい」としており、介護職に求められるのは、生命に関わる危険物を特定して手の届かない場所に管理し、食事・観察で予兆を捉え、誤飲・窒息が起きた際は看護職員と連携して速やかに初動対応することです。叱責ではなく、原因に応じた環境調整と多職種連携が対応の軸になります。

目次

介護現場で「利用者がティッシュを口に入れていた」「紙おむつをちぎって飲み込もうとしていた」という場面に直面した経験を持つ職員は少なくありません。異食(いしょく)は認知症の進行に伴って現れることの多い行動で、洗剤や電池のように生命に関わる物品を口にすれば、中毒・窒息・消化管損傷など重大事故に直結します。

一方で、厚生労働省のガイドラインは「異食をゼロにしようとすると利用者の生活を制限してしまう」とも指摘しており、見守り強化だけで完全に防ぐことは現実的ではありません。だからこそ介護職には、なぜ異食が起こるのかを理解したうえで、危険物の管理・環境調整・観察・即時対応・看護職員や医師との連携という役割を体系的に担うことが求められます。

この記事では、異食の原因から危険物の見極め、環境調整の具体策、誤飲・窒息時の初動対応、そして再発防止までを、介護職の視点で整理します。なお、誤飲した物品の毒性判断や救命処置の要否は医療職の判断領域であり、本記事は介護職が担う観察・環境調整・連携・初動の範囲に焦点を当てます。

異食とは|認知症のBPSDとしての異食行動と現場での現れ方

異食とは、食べ物ではないものを口に入れたり飲み込んだりする行動を指します。医学的には「ピカ(pica)」とも呼ばれ、認知症高齢者では行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)の一つとして現れることが知られています。厚生労働省の事故予防ガイドラインも、異食を「認知症のBPSDにより引き起こされる症状の一つ」と位置づけています。

介護現場で見られる異食の典型例

現場で観察される異食には、以下のようなパターンがあります。

  • ティッシュペーパーや紙おむつ・尿取りパッドをちぎって口に入れる
  • 観葉植物の葉や土、石けん、ハンドクリームを口にする
  • 洗剤・漂白剤・整髪料などの液体を飲んでしまう
  • ボタン電池・硬貨・ボタン・クリップなどの小物を飲み込む
  • たばこや吸い殻、灰皿にたまった水を口にする

これらは「お腹が空いているから」とは限らず、後述するように複数の要因が絡み合って起こります。食事の前後を問わず、また満腹であっても発生しうる点が、単なる空腹とは異なる特徴です。

「弄便」など他のBPSDとの違い

異食はしばしば他のBPSDと混同されますが、整理して理解することが対応の第一歩です。たとえば便を触ったり壁に塗りつけたりする「弄便(ろうべん)」や、失禁といった排泄トラブルは、不快感の解消や排泄の見当識障害が背景にあり、異食(非食物を摂取する行動)とは原因も対応も異なります。異食は「口に入れる・飲み込む」点に本質があり、誤飲・窒息・中毒という身体リスクに直結するため、リスク管理の優先度が高い行動です。

なぜ異食が起こるのか|認知症による4つの原因

異食は単一の原因ではなく、認知機能の低下に伴う複数の要因が重なって生じます。原因を見極めることが、叱責に頼らない適切な環境調整・声かけにつながります。

1. 失認・誤認(食べ物とそうでないものの区別がつかない)

認知症では、視力そのものに問題がなくても、目に入ったものを正しく認識できなくなる「失認」が起こります。その結果、ティッシュを食べ物と誤認したり、判断力の低下から「とりあえず口に入れてみる」という行動につながったりします。これは異食の最も中核的な原因です。

2. 満腹中枢・空腹中枢の障害

脳の障害により満腹感・空腹感をつかさどる中枢の働きが乱れると、実際には食事を済ませていても強い空腹感が続き、目の前にあるものを口に運んでしまうことがあります。

3. 不安・ストレスの代償行動

孤独感や満たされない欲求、不安などが背景にあり、口に何かを入れることで安心を得ようとする代償行動として異食が現れる場合があります。環境の変化や生活リズムの乱れが引き金になることもあります。

4. 味覚・嗅覚の変化

加齢や認知症に伴って味覚・嗅覚が低下すると、口に入れたものが食べ物でないことに気づきにくくなり、飲み込んでしまうリスクが高まります。

なお、鉄やカルシウムなどの栄養欠乏が異食の誘因となる可能性も指摘されており、認知症の症状と決めつけず、体調や検査結果を含めて多面的にアセスメントすることが重要です。介護職が原因を断定するのではなく、看護職員や医師と情報を共有し、医学的評価につなげる姿勢が求められます。

原因の見極めが「観察の質」を変える

これら4つの原因は、介護職が現場で観察するポイントを変えます。空腹が背景にあるなら食事量・間食のタイミングを記録し、不安が背景にあるなら不穏が出やすい時間帯や環境の変化を記録する——というように、原因の仮説に応じて観察の焦点を絞ることで、その利用者に合った環境調整が見えてきます。「なぜこの人は今これを口にしたのか」を一人ひとり考える姿勢が、画一的な見守りよりも事故を減らします。原因が複数にまたがることも多いため、複数の職員の観察を持ち寄り、看護職員や管理栄養士を交えてアセスメントを更新していくことが、認知症ケアの基本である「その人を理解する」アプローチに直結します。

異食すると危険な物品|厚労省が挙げる「生命に関わる物」を介護職が把握する

異食対応の出発点は、「何が危険なのか」を正しい知識として把握することです。厚生労働省の事故予防ガイドラインは、異食事故対策の要点を「生命に関わる物品の異食の防止に取り組むこと」とし、危険物を明確にして利用者の身の回りに置かない・目の届かないところに置く管理を求めています。同ガイドラインが挙げる危険物を、リスク別に整理します。

異食・誤飲すると即生命に関わる毒性の高い物品

  • 塩素系漂白剤、アルカリ性洗浄剤
  • 防虫剤、殺虫剤
  • 電池類(特にボタン電池)
  • たばこ・灰皿にたまった水
  • 薬(過量摂取)

これらは少量でも中毒・粘膜損傷を起こす恐れがあり、ガイドラインも「絶対に異食しないよう管理して対策を行いましょう」としています。液体系の物品はセーフティキャップ付きのボトルに詰め替えるといった対策が挙げられています。

けがや窒息の恐れがある物品

  • 紙おむつの吸水性ポリマー
  • ナイフ類
  • 針・画鋲

紙おむつや尿取りパッドの吸水性ポリマーは、水分を含んで膨張するため、飲み込むと喉や消化管をふさいで窒息・閉塞を起こす危険があります。また、ビニール袋・ティッシュ・布類のように気道をふさぎやすい形状・硬さのものも、口に入れたあとに危険だと判断できないために窒息リスクが高まります。

介護職が押さえる「量」と「個別性」の視点

同ガイドラインのケーススタディでは、「少量では異食しても問題ない物品も、大量に異食すると危険性が高まる」と指摘されています。たとえば詰め替え用の浴槽洗剤を大量に飲み込んだ事例では、看護職員の判断で病院搬送・胃洗浄・入院に至りました。「普段使うものだから」と油断せず、詰め替え容器のように大量にあるものほど厳重に管理する視点が、現場の介護職には欠かせません。

環境調整|異食を起こさせない仕組みを介護職がつくる

異食は見守りの強化だけでは防ぎきれないため、「危険物を物理的に遠ざける環境調整」が最も効果的な未然防止策になります。厚生労働省ガイドラインも、入所時に異食の有無を確認し、危険物を利用者の身の回りに置かない・目の届かないところに置く管理を基本としています。

1. 入所・利用開始時に異食リスクをアセスメントする

ガイドラインは、第一に入所時に異食の有無を確認することを求めています。過去に異食があったか、どんな物品を口にしたか、認知症の進行度(日常生活自立度)はどの程度かを把握し、ケアプランやヒヤリ・ハット記録に共有します。リスクが分かっていれば、職員全員で同じ警戒レベルを共有できます。

2. 生命に関わる危険物を施錠管理する

  • 漂白剤・洗剤・薬・電池などは、鍵付き収納や利用者の手が届かない高所に保管する
  • 詰め替え用洗剤など「大量にある物品」も、容器・保管場所を含めて施錠管理する
  • 液体はセーフティキャップ付きボトルに詰め替え、簡単に開けられないようにする
  • 使用後に出しっぱなしにしない運用ルールを職員間で徹底する

前述の浴槽洗剤の事例では、塩素系洗剤は施錠していたのに、使用頻度の高い浴槽洗剤の扉には鍵がなく誰でも手が届いたことが原因でした。「危険な薬品だけ」ではなく、日常的に使う物品の管理漏れを点検することが再発防止につながります。

3. 居室・共用部の「紛らわしいもの」を減らす

食べ物と見間違えやすいもの(カラフルな小物、一口サイズの雑貨、丸い形状のもの)や、ティッシュ・紙類は、異食リスクの高い利用者の手元から減らします。ただし生活感を奪いすぎないよう、危険度に応じてメリハリをつけることが、ガイドラインの「過度な対策は生活の制限につながる」という指摘に沿った対応です。

4. 食事・生活リズムを整える

  • 空腹感が引き金になる場合は、1日3食に加えて安全な間食を取り入れ、食事間隔を短くする
  • 手元に安全に口にできるもの(飴・ガムではなく、嚥下状態に応じたおやつ)を置く配慮をする
  • 規則的な生活リズム・適度な活動・口腔ケアで、不安や手持ち無沙汰を減らす

これらは原因(空腹・不安)に直接働きかける環境調整であり、危険物管理と組み合わせることで効果が高まります。

異食を発見したとき・誤飲や窒息が起きたときの初動対応

環境調整をしても異食を完全に防ぐことはできません。発見時・誤飲時・窒息時に介護職が落ち着いて初動を取れるかが、被害の大きさを左右します。ここでは「叱責しない発見時対応」と「医療職と連携した緊急対応」を分けて整理します。なお、毒性の判断・救命処置の要否・受診や救急要請の最終判断は医療職の領域であり、介護職は観察・初動・連絡・連携を担います。

1. 口に入れている段階で発見したとき

  • 大声で驚かない:反射的に飲み込んでしまうため、慌てず落ち着いて近づく
  • 無理に口から取り出そうとしない:拒否反応や咬傷、奥へ押し込むリスクがある
  • 名前をゆっくり呼び、体にそっと触れて注意を向ける
  • 命に危険のない物であれば、安全な食品や別のものとそっと交換する誘導を試みる
  • 「これは食べ物ではないので口から出しましょう」とやさしく視覚的に促す

2. 危険物を飲み込んだ疑いがあるとき

  • 何を・どのくらい・いつ口にしたかを可能な範囲で確認・記録する(容器や残りも保全する)
  • 直ちに看護職員に連絡し、不在の場合は電話で指示を仰ぐ
  • 洗剤・漂白剤・薬品などは、自己判断で無理に吐かせない(食道・気道を再度傷つける恐れがある)
  • 看護職員・医師の指示のもと、医療機関への連絡・搬送につなげる(前述の事例では看護職員の判断で病院搬送・胃洗浄に至った)

3. 窒息が疑われるとき(緊急)

厚生労働省ガイドラインは、事故発生時の状態把握に医学的知見が不可欠であり、看護職員を呼ぶ・電話で指示を仰ぐことを求めています。介護職が把握すべき項目として、意識・呼吸の有無、唇の色(紫色=チアノーゼは発見の遅れのサイン)、血圧・脈拍・体温・酸素飽和度などのバイタルサインが挙げられています。

  • 声かけ・肩を揺らして意識を確認する
  • 意識がない・呼吸がない場合は直ちに吸引・心肺蘇生を行い、救急車を要請する(ガイドライン記載の対応)
  • 背部叩打法など窒息時の具体的手技は、施設の研修・看護職員の指示に従って実施する

ガイドラインでは、地域の消防署と連携して窒息事故時の対応研修を行う施設の取り組みも紹介されています。緊急時に体が動くよう、平時からシミュレーション研修や吸引器・救急体制を整えておくことが、介護職にできる最大の備えです。

やってはいけない対応・望ましい対応の対比

異食への対応は、とっさの反応がそのまま事故の重さに直結します。現場で迷いやすい場面を、NG対応と望ましい対応で対比します。

発見時の対応

NG:大声を出して驚かせる/力ずくで口に手を入れて取り出す/「何やってるの!」と叱責する。
望ましい:落ち着いて近づき、名前を呼んで注意を向け、安全な物との交換や視覚的な声かけで誘導する。

原因のとらえ方

NG:「認知症だから仕方ない」と片づけ、原因を探らない/逆にすべて認知症の症状と決めつけて医学的検査をしない。
望ましい:失認・空腹・不安・栄養状態など複数の原因を想定し、看護職員・医師と共有して評価につなげる。

予防の考え方

NG:見守りの人手だけで防ごうとする/生活空間からあらゆる物を撤去して生活を過度に制限する。
望ましい:生命に関わる危険物を特定して施錠管理し、それ以外は生活の質を損なわない範囲で調整する(厚労省ガイドラインの「過度な対策は生活の制限につながる」という考え方)。

事故が起きたとき

NG:介護職だけで様子見する/自己判断で吐かせる/報告を後回しにする。
望ましい:速やかに看護職員へ連絡し医学的判断を仰ぐ/状態を正確に記録する/事故報告・原因分析・再発防止策の検討につなげる。

介護職の役割と多職種連携・事故後の振り返り

異食対応は、介護職が単独で抱える課題ではありません。厚生労働省ガイドラインは、利用者・家族・医療機関・行政と日々コミュニケーションを取り、多職種で連携することがケアの質向上と事故の未然防止・再発防止につながるとしています。介護職の役割を整理します。

介護職が担う中核的な役割

  • 観察と情報共有:日々接する介護職だからこそ気づける予兆(口元の動き、特定の物への執着、空腹・不安のサイン)を記録し、チームで共有する
  • 環境調整の実行と点検:危険物の施錠管理・出しっぱなし防止を日常業務に組み込み、抜けがないか定期点検する
  • 即時対応と連絡:異食・誤飲・窒息の発見時に初動を取り、看護職員へ速やかに連絡する

多職種連携のかたち

  • 看護職員・医師:誤飲時の毒性判断・受診/救急の判断、異食の医学的原因(栄養欠乏など)の評価
  • 管理栄養士・歯科専門職:空腹が原因の場合の食事量・回数・形態の調整、口腔機能の評価
  • ケアマネジャー・家族:在宅・施設を問わず、リスク情報の共有とケアプランへの反映

事故・ヒヤリハット後の振り返り

ガイドラインは、事故報告の目的を「職員の責任追及ではなく、原因分析や再発防止策の検討を通じた利用者へのケア改善」と明記しています。異食やそのヒヤリハットが起きたら、誰の責任かを問うのではなく、「なぜ起きたか・物品管理に問題はなかったか」をチームで分析し、保管場所や運用ルールを見直すことが再発防止につながります。介護施設等には利用者の生命・身体の安全に配慮する安全配慮義務があり、こうした組織的なリスクマネジメントは介護職一人ひとりの実践に支えられています。

【独自見解】家族向けの「予防論」と施設の「リスクマネジメント」のギャップを埋める

異食について解説する一般的な情報の多くは、ご家族向けに「危険物を片づける」「怒らない」「食事を小分けにする」といった予防のコツを並べる構成になっています。これらは正しい一方で、介護職が組織として向き合う「事故が起きる前提のリスクマネジメント」という視点が抜け落ちがちです。当サイトが厚生労働省の令和7年11月ガイドラインを読み解いて見えてきたのは、公的な立場が「異食はゼロにできない」と明言している点です。ここに、家族向けの予防論と施設の実務との決定的な差があります。

家庭では「気をつける」で済むかもしれませんが、複数の利用者を限られた職員で支える施設では、「気をつける」は再現性のある仕組みに翻訳しなければ機能しません。具体的には、(1) 入所時アセスメントで異食リスクを記録に残す、(2) 危険物を「危険度×量」で分類し施錠ルールを標準化する、(3) ヒヤリハットを責任追及ではなく仕組みの改善に使う、という3点です。ガイドラインのケーススタディが「鍵をかけていた塩素系洗剤」ではなく「鍵のない浴槽洗剤」で事故が起きたと示すように、事故は"管理しているつもり"の盲点で起こります。

つまり介護職にとっての異食対策とは、個人の注意力に依存する予防から、組織の仕組みで盲点をつぶすリスクマネジメントへの転換です。この視点を持てる職員は、利用者の安全を守ると同時に、自分自身を「防げなかった責任」から守ることにもなります。これは、家族向けの記事だけを読んでいては得られない、介護職ならではの専門的な構えだと考えます。

現場ですぐ使えるチェックポイント

シフトの引き継ぎで共有したいこと

  • 異食歴のある利用者は誰か、過去に何を口にしたか
  • その利用者の居室・動線に危険物が出ていないか(特に詰め替え用洗剤・薬・電池)
  • 空腹・不安が出やすい時間帯(夕方の不穏など)

日々の業務で意識したい小さな習慣

  • 清掃・入浴介助で使った洗剤を、その場で施錠収納に戻す
  • ティッシュ箱や紙おむつのストックを、リスクの高い利用者の手元に置かない
  • 「口を動かしている」「何かを握っている」ときはさりげなく声をかけ、中身を確認する
  • 気になる行動はヒヤリハットとして記録し、放置しない

異食は「防げなかった職員が悪い」のではなく、組織で仕組みを整えて減らしていくものです。一人で完璧を目指すより、チームで気づきを共有する文化づくりが、結果として利用者の安全を守ります。

よくある質問(FAQ)

Q. 異食は介護職の見守りで完全に防げますか?

A. いいえ。厚生労働省のガイドラインも「どれだけ見守りを強化しても防ぐことは難しい事故」「異食をゼロにしようとすると利用者の生活を制限してしまう」と明記しています。現実的な目標は、生命に関わる危険物を特定して確実に管理し、誤飲・窒息時に速やかに対応できる体制を整えることです。

Q. 異食を見つけたら、すぐ口から取り出すべきですか?

A. 無理に取り出そうとするのは避けます。大声を出すと反射的に飲み込んでしまい、力ずくで口に手を入れると咬傷や奥への押し込みの危険があります。落ち着いて声をかけ、安全な物との交換や視覚的な誘導を試み、危険物の場合は看護職員に連絡して指示を仰ぎます。

Q. 洗剤を飲んでしまったとき、吐かせた方がよいですか?

A. 自己判断で吐かせるのは避けてください。塩素系漂白剤やアルカリ性洗浄剤などは、吐かせることで食道や気道を再度傷つける恐れがあります。何をどのくらい口にしたかを確認・記録し、容器を保全したうえで、速やかに看護職員・医師に連絡して指示に従います。

Q. 在宅介護でも施設と同じ対応でよいですか?

A. 基本的な考え方(危険物の管理・原因の見極め・無理に取り出さない・必要時の医療連携)は同じです。在宅では家族が管理しきれない物品も多いため、ケアマネジャーや訪問看護と連携し、危険物の置き場所の見直しや受診のタイミングを相談することが大切です。

Q. 異食はいつか治りますか?

A. 認知症のBPSDとしての異食は、原因(失認・空腹・不安など)への対応や環境調整で頻度が下がることはありますが、進行度によって変化します。栄養欠乏など別の原因が隠れている可能性もあるため、認知症の症状と決めつけず、看護職員・医師に相談して医学的評価を受けることが重要です。

参考文献・出典

まとめ|異食は「ゼロ」より「重大事故を防ぐ仕組み」で向き合う

異食は認知症のBPSDの一つであり、見守りの強化だけで完全に防ぐことは難しい行動です。だからこそ介護職に求められるのは、異食そのものをゼロにすることではなく、生命に関わる危険物を特定して確実に管理し、誤飲・窒息が起きたときに看護職員と連携して速やかに動ける体制を整えることです。

原因(失認・空腹・不安・感覚変化)を見極めて環境と生活リズムを調整し、危険物は施錠管理し、発見時は叱責せずに誘導する。そして事故やヒヤリハットは責任追及ではなく再発防止のために振り返る——この一連の実践が、利用者の安全と尊厳の両方を守ります。異食対応は、観察力・環境づくり・多職種連携という、介護職の専門性が最も発揮される領域の一つです。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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