介護施設の災害時 職員行動マニュアル|地震・水害・停電 最初の30分の判断基準
介護職向け

介護施設の災害時 職員行動マニュアル|地震・水害・停電 最初の30分の判断基準

介護施設で災害が起きた最初の30分、職員は何をどの順番で判断すべきか。地震直後の安全確保・垂直避難・停電時の電源優先順位(人工呼吸器→吸引→経管栄養)・夜間3名体制での役割分担まで、厚労省BCPガイドラインと能登半島地震の教訓に基づく実務手順。

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この記事のポイント

介護施設で災害が発生した直後の最初の30分は、「自分の安全確保 → 利用者の安否確認 → 二次災害の遮断 → 避難判断」の順で進めます。地震なら震度5強以上で原則BCP発動、水害は警戒レベル3で避難開始、停電時は人工呼吸器→吸引器→経管栄養ポンプの順に外部電源を確保。夜間少人数体制では「指揮・誘導・連絡」の3役を10秒以内に割り振ることが命を守る判断基準です。

目次

2024年の能登半島地震、2018年北海道胆振東部地震のブラックアウト、2016年熊本地震、毎年襲来する台風と水害――介護施設は災害のたびに「初動の数分・数十分」で命運が分かれてきました。厚生労働省は2024年度からすべての介護事業所にBCP(業務継続計画)策定を義務化し、年2回の研修・訓練と夜間想定の避難訓練を求めています。

本記事は、BCPやマニュアルが手元にある前提で、実際に揺れた・浸水警報が鳴った・停電したその瞬間から最初の30分、現場の職員が何を判断し、どの順番で動くべきかを時系列で整理します。厚労省「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」、内閣府防災の避難情報ガイドライン、近年の災害対応事例(能登・胆振・熊本)に基づく実務手順です。

災害発生から30分間の判断フロー(全体像)

厚生労働省「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」は、災害時の初動として「利用者・職員の安全確保 → 安否確認 → 建物・設備の被害点検 → 職員の参集」を順に挙げています。これを現場の時間軸に落とすと、最初の30分は次の4フェーズに分かれます。

フェーズ0:発災から60秒(命を守る行動)

  • 職員自身の身を守る:机の下に入る、頭を保護する、近くの利用者に覆いかぶさる
  • 揺れが収まるまで動かない(地震の場合、平均30〜60秒)
  • 大声で「地震です、落ち着いて」と利用者に短く声をかける

フェーズ1:1〜5分(一次安全確認)

  • 居室・共用部にいる利用者の外傷・転倒・家具の下敷きの有無を目視確認
  • 火災・出火の有無、ガス漏れ臭の有無を確認
  • 非常口・避難経路の通行可否を確認(家具転倒・ガラス散乱)
  • エレベーター停止、自火報の作動状況を確認

フェーズ2:5〜15分(情報収集と組織化)

  • テレビ・ラジオ・防災無線で地震規模、津波情報、警報レベルを確認
  • BCP発動基準に該当するかを管理者または当直リーダーが判断
  • 対策本部の設置/代替者ルールの発動
  • 夜間なら近隣の応援要請、施設長への第一報

フェーズ3:15〜30分(避難判断と継続業務の決定)

  • 建物被害が大きければ屋外避難または垂直避難を判断
  • 水害なら警戒レベル3で要配慮者の避難開始
  • 停電継続なら医療機器の電源優先順位に従って外部電源へ切替
  • 家族・行政・主治医・嘱託医への連絡開始

このフローを「考えながら順に進める」のではなく「ルートカードを見て機械的に進める」のが、混乱した現場で機能するBCPの条件です。次章から地震・水害・停電それぞれの判断基準を詳しく見ていきます。

地震発生時:震度別の参集基準と垂直避難の判断

地震は予兆なく発生するため、揺れている間の数十秒は「動けない時間」と割り切る必要があります。重要なのは揺れが収まった直後の判断と、震度に応じた職員参集の自動起動です。

BCP発動の震度基準(一般的な例)

厚労省ガイドラインに沿った標準的な発動基準は以下のとおりです。施設の所在自治体の地域防災計画に合わせて自施設のBCPに明記しておく必要があります。

  • 震度4:当直職員が施設長へ状況報告。被害確認のみで通常業務継続
  • 震度5弱:警戒参集体制。各班責任者と夜間参集可能な職員に連絡
  • 震度5強:BCP発動・対策本部設置(標準的な基準)。全職員参集対象
  • 震度6弱以上:非常参集体制。安否確認後に外部応援を要請

震度5強以上で職員が「自動参集」するルールが命を守る

大規模災害時は通信網が麻痺し、施設から職員への連絡が困難になります。そのため震度◯以上なら連絡を待たずに参集するルール(自動参集基準)を事前に決め、職員に周知しておくのが鉄則です。同時に「自宅が被災した」「家族が死傷した」「出勤経路が危険」な場合は参集しなくてよい例外も明文化し、職員が板挟みで苦しまないように配慮します。

移動速度は徒歩2.5km/hで計算する

厚労省ガイドラインは、災害時の参集移動を原則「徒歩」とし、移動速度を「2.5km/h」を目安としています(平常時は4km/h)。道路の陥没や橋梁の落下による迂回を想定した数値です。自宅から施設まで5kmなら通常75分が災害時は2時間。これを踏まえて夜間参集可能な職員(近距離・安全ルート在住者)をあらかじめ指名しておきます。

建物被害の判定と垂直避難・水平避難の選択

揺れが収まってから3〜5分以内に、リーダーは建物被害を以下の3段階で判定します。

  1. 軽微(壁の亀裂、家具転倒)→ 屋内待機、片付け開始
  2. 中等度(柱・梁にひび、ドアが開かない)→ 同建物内の安全スペースに集合、専門家判定を要請
  3. 重大(傾き、天井落下、配管破裂)→ 即座に屋外または隣接施設へ避難

津波警報・大津波警報が発令された場合は、建物被害に関わらず3階以上または高台への垂直避難を優先します。エレベーターが停止していることを前提に、車いす利用者用の階段搬送ルートと担架の配置を訓練で確認しておくことが必須です。

水害発生時:警戒レベル別の行動と垂直避難・水平避難の選び方

水害は地震と違い、数時間〜半日前から警報が段階的に発令されるため、「警戒レベルに応じて止めずに動く」のが基本です。2016年台風10号で岩手県岩泉町の高齢者福祉施設が9名の犠牲を出した事故を受け、2017年の水防法改正で要配慮者利用施設には避難確保計画の作成と訓練が義務化されました。

内閣府防災「避難情報に関するガイドライン」の警戒レベルと施設の行動

  • 警戒レベル1(早期注意情報):気象情報・台風進路の収集を開始
  • 警戒レベル2(大雨・洪水注意報):避難経路と備蓄を再確認、夜間体制を強化シフトに変更検討
  • 警戒レベル3(高齢者等避難)要配慮者は避難開始。介護施設は原則ここで行動開始
  • 警戒レベル4(避難指示):水平避難を完了させる最終期限
  • 警戒レベル5(緊急安全確保):屋外避難は危険。垂直避難で命を守る行動のみ

警戒レベル3が発令されたら「テレビやラジオの情報を待たず即座に避難開始」が厚労省ガイドラインの原則です。避難準備に1〜2時間を要する施設では、レベル2の段階で送迎車両の確保・移送支援要請・家族連絡を済ませておきます。

水平避難と垂直避難の判断分岐

津波・水害の場合、他所へ移動する「水平避難」よりも建物内の高所へ上がる「垂直避難」の方が安全な場合があります。判断基準は次の通りです。

  • 水平避難を選ぶケース:避難指示発令前に余裕がある/施設が浸水想定区域内にあり建物の階数が不十分/浸水継続時間が長い
  • 垂直避難を選ぶケース:すでに浸水が始まっている/道路冠水で送迎車両が走行不能/高齢者等避難から避難指示までの時間が短い/施設が3階以上で上階に十分なスペースがある

垂直避難で見落とされる4つの盲点

  1. エレベーターは使用不可:停電や浸水時は階段搬送のみ。車いす利用者の階段搬送訓練と人員配置を事前に決めておく
  2. 上階の備蓄:浸水継続時間(3日〜1週間を想定)に耐える水・食料・オムツ・薬を上階に分散備蓄
  3. 排泄処理:トイレが下層階のみだと使用不可。簡易トイレ・ゴミ袋・凝固剤を上階に常備
  4. 夜間照明:避難ルートを暗闇でも誘導できるよう、蓄光テープと懐中電灯を階段に配置

避難先での「最低限のケア」を継続する備え

避難先(広域避難場所・福祉避難所・連携施設)でも介護を継続する必要があります。服薬管理が必要な利用者の薬の持ち出し、医療的ケアに必要な吸引器・経管栄養食・オムツの携行リストを「非常持ち出し袋」として常時準備しておきます。アルプス介護センターの公開BCPでは、経管栄養食は1人×3日分を備蓄するのが標準とされています。

停電時:医療機器の電源優先順位と確保手段

2018年北海道胆振東部地震では北海道全域がブラックアウト(広域停電)し、24時間人工呼吸器を装着している患者の多くが避難入院を余儀なくされました。2019年の千葉県台風被害では、在宅酸素療法を受けていた高齢女性が停電による酸素供給停止で心不全が増悪し死亡した事例が報告されています。停電は介護施設にとって「静かな災害」であり、医療機器の電源確保を秒単位で判断できる体制が命を守ります。

電源を確保すべき医療機器の優先順位

限られた非常用電源を全機器に同時供給することはできません。次の優先順位で外部電源(自家発電機・ポータブル電源・蓄電池・送迎車両のインバーター)に切り替えます。

  1. 最優先(停止=即生命危機)
    • 人工呼吸器(NPPV含む):内蔵バッテリーは機種により2〜8時間。50%以下で外部電源に
    • 在宅酸素濃縮装置:停電直後から酸素ボンベに切替、ボンベ残量を即座に確認
    • 痰の吸引器:気道閉塞の利用者にとって生命線。手動吸引器を必ず併備
  2. 高優先(数時間以内に再開必要)
    • 輸液ポンプ・シリンジポンプ:薬剤の中断は致命的になりうる
    • 経管栄養ポンプ:注入速度管理が必要。重力滴下に切替可能だが薬剤注入は要注意
    • 持続血糖測定器・インスリンポンプ
  3. 中優先(半日〜1日以内)
    • エアマット(褥瘡予防):定期的な体位変換でカバー可能
    • 冷蔵庫(インスリン・経管栄養食保管用):1〜2回開閉までは内温維持
    • 暖房器具(夏季は扇風機):低体温・熱中症対策
  4. 低優先(後回し可)
    • 共用部の照明(懐中電灯・ランタンで代替)
    • テレビ・洗濯機・厨房設備(カセットコンロ等で代替)

外部電源の確保手段と容量の目安

  • 自家発電機(軽油・ガソリン):軽油50Lで約3時間連続運転(消費6L/h)。72時間運転には燃料の事前確保が必須
  • ハイブリッド車・EVの外部給電:1,400W程度の出力で3日間無給油稼働の事例あり(インターリスク総研事例集)
  • ポータブル電源:定格出力600W以上のものを医療機器1台につき1台用意
  • スプリンクラー用自家発電機の併用:火災時の優先確保を前提に、平時から事務所電源に切替可能な配線工事を行う事例も

能登半島地震(2024年)から見えた課題

2024年1月の能登半島地震では、医療機器利用者の情報を業者・医療機関・行政が一元把握できておらず、交通寸断で酸素ボンベの搬送が遅延、避難所で使えるはずの医療機器が使えないといった問題が顕在化しました。介護施設としては、「医療機器ごとの業者連絡先」「機器シリアル番号」「予備バッテリーの所在」を1枚のカードに整理して、夜勤者でも即座に対応できるようにしておくことが教訓です。

夜間・少人数体制での対応:3名で命を守る役割分担

入所施設の夜間体制は、特養・老健で介護職員2〜3名、グループホームでユニットあたり1名というのが一般的です。夜間帯に災害が発生すれば、施設長や看護師の参集まで最低でも数十分〜数時間は数名で対応する必要があります

「指揮・誘導・連絡」の3役を10秒以内に割り振る

業界の研修教材で広く採用されている考え方が「スリム版ICS(インシデント・コマンド・システム)」です。少人数でも次の3役を即座に決めることで、混乱を最小化できます。

  • 指揮(コマンダー):最も経験の長い職員が担当。全体状況を把握し、避難判断・参集要請・対策本部設置を決定
  • 誘導(避難・救護):自力歩行困難者リストをもとに、車いす・経管栄養者・人工呼吸器装着者を優先搬送
  • 連絡(情報):施設長・嘱託医・119・行政・利用者家族への連絡を時系列で記録

夜間に介護職員2名+看護師1名なら、看護師が誘導と医療的トリアージを兼務、最古参職員が指揮、もう1名が連絡という配分が現実的です。

夜間参集の現実:3%出勤率から始まる

公開されているBCP事例(アルプス介護センター等)では、夜間発災時の「発災直後の出勤率」を3%と設定しています。発災後6時間で30%、1日で50%、3日で70%、7日で90%。このリアルな前提に立って、夜間少人数で「何を捨て何を守るか」を業務優先度として明文化しておく必要があります。

業務優先度の例(生命維持を前提)

  • 絶対継続(◎):バイタル確認、排泄、食事・補水(備蓄食)、口腔ケア
  • 状況により実施(○):離床(無理に勧めない)、就寝時口腔ケア
  • 一時休止(△〜×):入浴は清拭対応、通院介助は可能な場合のみ、面会対応は制限

夜間訓練を年1回必ず実施する

介護施設の避難訓練は年2回が義務(消防法)ですが、入所型施設は夜間想定の避難訓練を年1回努力義務として実施することが求められています。カーテンを閉めた状態、夜勤者のみの参加、火災想定・雪害想定・職員不足想定など、毎回テーマを変えてマンネリ化を防ぐのが効果的です(インターリスク総研の事例集より)。

報告・連絡フロー:誰に・いつ・何を伝えるか

災害時の連絡は「内部→医療→行政→家族」の順で進めるのが原則です。電話回線は混線するため、複数の連絡手段(固定電話・携帯・メール・SNS・FAX・災害用伝言ダイヤル171)を併用します。

発災直後(5〜15分)の連絡先

  • 施設長・管理者:被害概況、利用者の安否、夜間体制で続行可能か
  • 嘱託医・協力医療機関:負傷者の有無、医療的ケア対象者の状況、搬送要否
  • 119(消防):火災・救急搬送が必要な場合のみ。混雑時は応答までに時間を要する
  • 近隣連携施設:避難先候補としての受入可否、応援人員派遣の可能性

15〜30分の間に行う連絡

  • 市町村介護保険担当課:BCP発動の報告、福祉避難所開設要請の可否
  • 都道府県(重要案件のみ):広域支援要請、入所者の転院搬送
  • 利用者家族:安否、避難先、面会可否、引き取り要請の有無。担当を1人決めて記録
  • 非番職員:参集基準該当者へ自動参集の確認連絡

「災害用伝言ダイヤル171」を平時から訓練する

NTTの災害用伝言ダイヤル171は毎月1日と15日、防災週間(8月30日〜9月5日)、防災とボランティア週間(1月15日〜21日)等に体験利用ができます。職員研修で必ず録音・再生を体験させ、利用者家族にも事前に伝言確認方法を案内しておくと、災害時の電話混線をバイパスできます。

記録は時系列で「誰が・何時何分に・何をしたか」を残す

事後の振り返り、行政報告、損害保険請求、訴訟リスクへの備えとして、初動から復旧までのすべての判断と行動を時系列で記録します。連絡担当者がタイムスタンプ付きでメモを取り、ホワイトボードに掲示しながら共有するのが現場で機能する方法です。

BCP(業務継続計画)との連動:マニュアルを「動く計画」にする

2024年度から、すべての介護事業所にBCP策定が義務化されました(2024年3月までの経過措置期間あり)。違反すると基本報酬の減算対象となる「業務継続計画未策定減算」が運営基準に組み込まれています。本記事の手順はBCPの「緊急時の対応」パートにあたる部分です。

BCPに必ず含めるべき10項目(厚労省ガイドライン)

  1. BCP発動基準(地震・水害別)
  2. 行動基準(個人の安全確保・避難・参集)
  3. 対応体制(各班の役割・代替者)
  4. 対応拠点(対策本部の設置場所)
  5. 安否確認(利用者・職員の方法)
  6. 職員の参集基準(自動参集ルール・徒歩2.5km/h想定)
  7. 施設内外の避難場所・避難方法(垂直避難の準備)
  8. 重要業務の継続(優先業務と職員出勤率の時系列)
  9. 職員の管理(休憩・宿泊場所・勤務シフト原則)
  10. 復旧対応(破損箇所確認・業者連絡先)

マニュアルと「ルートカード」を分けて運用する

BCP本体は数十ページに及ぶ正式文書ですが、現場で災害発生時に開くものではありません。夜勤者・新人職員が瞬時に行動できるよう、A3サイズ1枚の「ルートカード」「タスクチェックリスト」を別途作成することが実務では必須です。

  • 震度5強発生時のフローチャート(5分・10分・30分のタスク)
  • 停電時の医療機器電源切替手順(優先順位カード)
  • 夜間3名体制での役割分担表
  • 緊急連絡先リスト(電話番号・メール・代替手段)
  • 避難経路と垂直避難先(A3平面図に色分け)

これらを撥水ラミネート加工してナースステーション・各ユニット・夜勤者用ロッカーに常備し、夜間照明下でも視認できるマット仕上げにするのが運用上のコツです。

研修・訓練は年2回+夜間想定1回が最低ライン

BCP策定義務化に伴い、年2回の研修と年2回の訓練が運営基準に明記されました。入所系施設では夜間想定の避難訓練を年1回実施する努力義務もあります。机上訓練(DIG:災害図上訓練)と実動訓練を組み合わせ、毎回テーマを変えることで実効性が高まります。

よくある質問

Q. 夜勤中に震度6弱の地震が発生したらまず何をすべきですか?

A. 揺れている間は無理に動かず、机の下に入るか頭を保護して身を守ります。揺れが収まったら、(1)自分のケガを確認、(2)近くの利用者の状態を声で確認、(3)非常口の通行可否を目視、(4)火災・ガス漏れの有無を確認、の順に5分以内に進めます。震度5強以上は標準的なBCP発動基準のため、施設長への第一報と自動参集体制の起動を同時に行います。

Q. 水害の警戒レベル何で避難を開始すべきですか?

A. 介護施設は警戒レベル3(高齢者等避難)の発令時点で避難開始が原則です。要配慮者の避難には準備に1〜2時間を要するため、レベル2の段階で送迎車両確保・備蓄品準備・家族連絡を進めておきます。レベル4(避難指示)は水平避難の最終期限、レベル5(緊急安全確保)が出てからの屋外避難は危険なため垂直避難に切り替えます。

Q. 停電したら最初に電源を確保すべき機器は何ですか?

A. 人工呼吸器が最優先です。内蔵バッテリーは機種により2〜8時間しかもたないため、残量50%以下になる前に外部電源(自家発電機・ポータブル電源・送迎車インバーター)へ切り替えます。次に痰の吸引器、在宅酸素濃縮装置の代替としての酸素ボンベ、その後に輸液ポンプ・経管栄養ポンプの順です。冷蔵庫や照明は懐中電灯・カセットコンロで代替可能なため、後回しにします。

Q. 経管栄養ポンプが停電で止まったらどうすればよいですか?

A. 重力滴下方式に切り替えることで一時的に対応可能です。注入バッグの高さを利用者の胃から60〜80cm上に保ち、クレンメで滴下数を調整します。ただし薬剤注入の場合は流速管理が必要なため自己判断せず、嘱託医・看護師に必ず指示を仰ぎます。経管栄養食は1人×3日分を備蓄しておくのが標準です。

Q. 夜勤中に職員が3名しかいないとき、避難判断は誰がしますか?

A. 事前に決められた「夜間指揮者」が判断します。一般的には最古参の介護職員が務めますが、看護師が夜勤にいれば看護師が指揮を兼ねます。発災後10秒以内に「指揮・誘導・連絡」の3役を割り振り、迷わず動けるよう平時から夜間訓練で繰り返し確認しておくことが重要です。施設長への第一報後は、施設長の指示が届くまで現場リーダーの判断で行動して構いません。

Q. BCP未策定だと何が起きますか?

A. 2024年度からBCP策定が義務化され、未策定の場合は「業務継続計画未策定減算」により基本報酬が減算されます(経過措置期間あり)。経済的なペナルティもさることながら、未策定の施設で災害が起きて利用者に被害が出れば、安全配慮義務違反として民事訴訟・行政処分のリスクがあります。

Q. 避難訓練は年何回必要ですか?

A. 消防法で年2回が義務です。入所型施設はうち1回を夜間想定または夜間の災害を想定した訓練として実施することが努力義務とされています。BCP策定義務化に伴い、年2回の研修と年2回の訓練(机上訓練と実動訓練の組み合わせ可)も別途求められています。

参考文献・出典

まとめ:最初の30分を「考える時間」にしないために

災害時の介護現場で職員に求められるのは、その場での創造的判断ではなく、事前に決められた手順を機械的に実行することです。最初の30分を「何をすべきか考える時間」にしてしまうと、利用者の命を守る初動が遅れます。

本記事で整理したポイントを最後に再掲します。

  • 地震:60秒は身を守る、5分以内に一次安全確認、震度5強で自動参集起動、震度6弱以上で非常参集体制
  • 水害:警戒レベル3で避難開始、垂直避難と水平避難を施設環境で事前選択、上階に備蓄を分散
  • 停電:人工呼吸器→吸引器→経管栄養ポンプの順に外部電源切替、自家発電燃料は72時間分
  • 夜間体制:3名で「指揮・誘導・連絡」を10秒以内に割り振り、業務優先度を絶対継続〜一時休止の4段階で運用
  • BCP連動:A3サイズのルートカードを各ユニットに常備、年2回の研修・訓練+夜間想定1回が最低ライン
  • 報告フロー:内部→医療→行政→家族の順、時系列で全行動を記録

2024年度からのBCP策定義務化と運営基準減算は、介護現場に新たな負担を強いる制度ではなく、「災害時に職員一人ひとりが迷わず動けるための投資」です。マニュアルを棚に置いて終わりにせず、毎月の研修・カンファレンスでルートカードを開き、夜間訓練で実際に動いてみる――その積み重ねが、いざという時の数分の判断速度を変え、利用者と職員自身の命を守ります。

転職を検討中の介護職の方は、応募先のBCP策定状況や夜間訓練の頻度を面接で確認してみるのも一つの判断材料になります。BCPに本気で取り組んでいる施設は、職員の安全も真剣に考えている施設である可能性が高いからです。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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