
介護職の有給休暇|取得率の実態と取れない時の対処法を解説
介護職の有給休暇取得率は66.8%で全産業平均を上回る水準に改善。年5日の取得義務化、正社員・パート・派遣別の付与日数一覧、施設形態別の取りやすさ比較、「取れない」時の5つの対処法、円滑に取得する実践テクニック、退職時の有給消化方法、有給が取りやすい施設の見分け方チェックリストまで網羅しています。
この記事のポイント
介護職の有給休暇は労働基準法で保障された権利で、入職6ヶ月後に10日が付与されます。2019年4月からは年5日の取得が事業者に義務化されました。しかし「人手不足で取れない」と感じる介護職は約25%。対処法は①有給申請は「権利」と認識する②希望休と組み合わせる③上司に直接相談④労働基準監督署に相談⑤取得率の高い施設に転職の5つです。
目次
「有給があるのに使えない」「申請すると嫌な顔をされる」「みんな忙しいのに自分だけ休むのは気が引ける」——介護職の有給休暇を巡る悩みは深刻です。
介護労働安定センターの「令和6年度介護労働実態調査」では、介護職員の約25%が「有給休暇が取得しづらい」と回答。日本介護クラフトユニオンの調査でも、介護職員の約4割が有給をほとんど取得できていないという結果が出ています。取得できない理由の64%が「人手不足」、40%が「仕事量が多くて取りにくい」、27%が「周囲に迷惑をかけるから取りにくい」でした。
しかし、有給休暇は労働基準法で保障された労働者の権利であり、2019年からは年5日の取得が事業者に義務付けられています。違反した場合は労働者1人につき30万円以下の罰金。取れないのは本人の問題ではなく、職場の問題です。実際、最新の統計では介護業界の有給取得率は66.8%と全産業平均を上回っており、「介護=有給が取れない」というイメージは改善されつつあります。
この記事では、介護職の有給休暇の基本ルール(正社員・パート・派遣別の付与日数、有効期限、半日有給)、取得率の最新データ(産業別比較・施設形態別・推移)、年間休日数の実態(休暇制度一覧)、「取れない」時の具体的な5つの対処法、円滑に取得するための実践テクニック、法律上の権利(時季変更権・違法な拒否・相談先)、退職時の有給消化(スケジュール例・買い取り)、有給が取りやすい施設の見分け方(チェックリスト)、連休が取れるかの実態まで網羅的に解説します。しっかり休んで、良いケアを提供するための知識を身につけてください。
有給休暇の基本ルール — 介護職も例外なし

有給休暇は介護職も例外なく付与される労働基準法上の権利です。「介護施設だから有給がない」「パートだから有給はもらえない」——これらは全て誤解です。基本ルールを正確に理解しておきましょう。
有給休暇の付与日数(正社員・フルタイム)
| 勤続年数 | 付与日数 | 累計(繰越含む最大) |
|---|---|---|
| 6ヶ月 | 10日 | 10日 |
| 1年6ヶ月 | 11日 | 21日 |
| 2年6ヶ月 | 12日 | 23日 |
| 3年6ヶ月 | 14日 | 26日 |
| 4年6ヶ月 | 16日 | 30日 |
| 5年6ヶ月 | 18日 | 34日 |
| 6年6ヶ月以上 | 20日(上限) | 40日(上限) |
6年6ヶ月以上勤続すると毎年20日が付与され、前年の繰越分と合わせて最大40日の有給を保有できます。40日あれば約2ヶ月分の休みに相当します。
有給の付与条件
有給が付与されるのは以下の2つの条件を両方とも満たした場合です。
- 雇用開始日から6ヶ月が経過していること
- 6ヶ月間の出勤率が8割以上であること
この2つを満たせば、正社員・パート・アルバイト・派遣社員・契約社員を問わず有給が付与されます。雇用形態による差別は法律で禁止されています。なお、出勤率の計算では、有給取得日・産休・育休・介護休業・労災による休業は「出勤したもの」としてカウントされます。
有給の有効期限は2年
有給休暇は付与日から2年で消滅します。例えば入職6ヶ月で付与された10日は、2年6ヶ月までに使わないと消えてしまいます。翌年に繰り越すことは可能ですが、翌々年には消滅するため、計画的に使い切ることが大切です。「もったいないから貯めておく」と思っているうちに消滅してしまうケースは非常に多いです。
年5日の取得義務(2019年4月〜)
2019年4月の労働基準法改正により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者には、事業者が年5日は確実に取得させる義務があります。これは「労働者が自分で申請しなくても、事業者が時季を指定して取得させなければならない」という非常に強い義務です。
対象は正社員だけでなく、年10日以上の有給が付与されるパート・アルバイトも含まれます。違反した場合、労働者1人につき30万円以下の罰金が事業者に科されます。10人の職員が5日取得できていなければ、最大300万円の罰金になる計算です。
半日有給・時間単位有給
施設によっては半日有給(午前だけ休み、午後だけ休み)や時間単位有給(1時間単位で取得、年5日分まで)が認められている場合があります。通院や子どもの学校行事、役所の手続きなど、丸1日休むほどではないが数時間休みたい場合に便利です。時間単位有給は労使協定が必要なため、導入していない施設もあります。就業規則を確認してみましょう。
有給取得日の給与の計算方法
有給を取得した日の給与は、以下の3つの方法のいずれかで計算されます(就業規則で定められています)。
- 通常の賃金:普段の出勤日と同じ給与が支払われる(最も一般的)
- 平均賃金:過去3ヶ月の賃金総額÷暦日数
- 標準報酬日額:健康保険の標準報酬月額÷30
多くの介護施設では「通常の賃金」方式が採用されており、有給を取っても手取りは変わりません。
パート・アルバイト・派遣の有給休暇(比例付与)
パート・アルバイトでも有給休暇は付与されます。週の所定労働日数に応じた「比例付与」が適用されます。
パート・アルバイトの有給付与日数
| 週の所定労働日数 | 6ヶ月 | 1年半 | 2年半 | 3年半 | 4年半 | 5年半 | 6年半〜 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 5日以上 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
| 4日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
週5日以上勤務のパートは正社員と同じ日数が付与されます。週3日勤務でも6ヶ月後に5日の有給が付与されるため、年5日の取得義務の対象にもなります。
派遣社員の有給
派遣社員の有給は派遣会社(派遣元)から付与されます。申請先も派遣会社です。派遣先の施設が忙しくても、有給の取得を妨げることはできません。派遣先が変わっても、同じ派遣会社での勤続年数が通算されるため、派遣先が変わるたびにリセットされることはありません。
扶養内パートでも有給はある
「扶養内だから有給はない」と思っている方がいますが、扶養の有無と有給は無関係です。週2日でも条件を満たせば有給は付与されます。有給を取得しても「出勤扱い」のため賃金が支払われ、年収計算にも含まれます。扶養の壁を気にしている方は、有給取得分の収入も年収に加算される点を覚えておきましょう。
介護職の有給取得率の実態
介護職の有給取得率は近年改善傾向にありますが、施設による差が大きいのが実態です。最新のデータで確認しましょう。
産業別の有給取得率比較(令和6年就労条件総合調査)
| 産業 | 平均付与日数 | 平均取得日数 | 取得率 |
|---|---|---|---|
| 全産業平均 | 16.9日 | 11.9日 | 65.3% |
| 医療・福祉 | 16.4日 | 11.0日 | 66.8% |
| 製造業 | 18.4日 | 13.0日 | 70.4% |
| 情報通信業 | 17.8日 | 11.9日 | 67.1% |
| 運輸業・郵便業 | 16.1日 | 10.0日 | 62.2% |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 14.1日 | 7.2日 | 51.0% |
| 建設業 | 17.2日 | 10.4日 | 60.7% |
| 教育・学習支援業 | 17.5日 | 9.9日 | 56.9% |
意外にも医療・福祉の取得率66.8%は全産業平均(65.3%)を上回っています。飲食業(51.0%)や建設業(60.7%)と比較すると、介護の方が有給は取りやすい水準です。「介護は有給が取れない」というイメージは、データ上は過去のものになりつつあります。
ただし注意が必要なのは、これは業界全体の平均であること。取得率90%の施設もあれば、30%未満の施設もあり、施設ごとの差は非常に大きいです。平均が良くても、自分の施設が悪ければ意味がありません。
有給取得率の推移
介護業界の有給取得率は年々改善しています。
| 年度 | 介護業界の取得率 | 全産業平均 |
|---|---|---|
| 2018年 | 約50% | 51.1% |
| 2019年(義務化) | 約55% | 56.3% |
| 2021年 | 約60% | 58.3% |
| 2023年 | 約65% | 62.1% |
| 2024年 | 66.8% | 65.3% |
2019年の義務化が大きな転機となり、取得率は約15ポイント改善。今後も処遇改善の条件として「職場環境改善」が求められるため、取得率はさらに上がる見込みです。
施設形態別の有給の取りやすさ
| 施設形態 | 取りやすさ | 理由 |
|---|---|---|
| デイサービス | ★★★★★ | 夜勤がなく、日曜休みの施設も。シフト調整しやすい。年間休日120日以上の施設が多い |
| 大規模特養(100床以上) | ★★★★☆ | 職員数が多く、代替要員を確保しやすい。労務管理が整備されている |
| 老健 | ★★★★☆ | 医療法人の労務管理が整っている。看護職との連携で柔軟なシフト調整が可能 |
| 有料老人ホーム(大手) | ★★★★☆ | 本部の労務管理が厳格。コンプライアンス意識が高く、取得を推奨する傾向 |
| 訪問介護 | ★★★☆☆ | 担当利用者の調整が必要。ただし登録ヘルパーは比較的取りやすい |
| グループホーム | ★★☆☆☆ | 少人数(1ユニット9名に職員2〜3名)で代替が効きにくい。ワンオペの時間帯が多い |
| 小規模多機能 | ★★☆☆☆ | 通い・訪問・泊まりの兼務で調整が複雑。職員の多能工化が求められる |
有給取得率を重視するなら、デイサービスや大規模特養、大手法人の有料老人ホームが狙い目です。
介護職の年間休日数と休暇制度
有給休暇だけでなく、年間の総休日数も転職時に確認すべき重要ポイントです。
介護業界の年間休日数の分布(医療・福祉)
| 年間休日数 | 割合 | 評価 |
|---|---|---|
| 70〜79日 | 4.0% | かなり少ない |
| 80〜89日 | 4.0% | 少ない |
| 90〜99日 | 6.2% | やや少ない |
| 100〜109日 | 40.4% | 最多ゾーン |
| 110〜119日 | 24.7% | 平均的 |
| 120〜129日 | 19.4% | 多い(ホワイト企業水準) |
| 130日以上 | 1.2% | 非常に多い |
全産業の平均年間休日は112.1日。介護業界は100〜109日が最多で、全産業平均をやや下回ります。ただし年間休日120日以上の施設も約20%あり、施設選びで大きく変わります。
介護施設でよくある休暇制度
| 休暇の種類 | 内容 | 法定/任意 |
|---|---|---|
| 年次有給休暇 | 入職6ヶ月後に10日〜最大20日 | 法定(必須) |
| 希望休 | 月2〜3日の希望日を指定できる(無給の場合も) | 任意 |
| 慶弔休暇 | 結婚・出産・葬儀時に3〜7日 | 任意(多くの施設で導入) |
| 産前産後休暇 | 産前6週・産後8週 | 法定 |
| 育児休業 | 子どもが1歳(最長2歳)まで | 法定 |
| 介護休業 | 対象家族1人につき93日まで | 法定 |
| リフレッシュ休暇 | 勤続年数に応じた特別休暇 | 任意(大手法人に多い) |
| バースデー休暇 | 誕生月に1日の特別休暇 | 任意 |
転職時には有給だけでなく、希望休の月日数、慶弔休暇の有無、リフレッシュ休暇なども確認しましょう。「年間休日」に有給は含まれないため、「年間休日110日+有給20日=実質130日」と考えると、休みの実態が見えてきます。
有給が取れない時の5つの対処法

有給休暇は労働基準法で保障された権利ですが、現場では「申請しづらい」「人手不足で取れない」と悩むケースが後を絶ちません。ここでは、有給が取れない時に実行できる具体的な5つの対処法を、段階別に紹介します。
対処法1:有給申請は「権利」と認識する
最大の障壁は、多くの介護職員が「有給は頼んで取らせてもらうもの」と誤解していることです。有給は労働基準法第39条で保障された労働者の権利であり、原則として事業者は取得を拒否できません。
- 取得理由を詳しく説明する義務はない(「私用のため」で十分)
- 事業者が拒否できるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」のみ(時季変更権)
- しかも時季変更権は「別の日に変更する」権利であって、「取得自体を拒否する」権利ではない
- 「人手不足だから」は拒否の正当な理由にはならない
まずは自分の意識を変えることが第一歩です。「休ませてもらう」ではなく「休暇を取得する」というスタンスで申請しましょう。
対処法2:希望休と組み合わせて申請する
介護現場では月に2〜3日の「希望休」制度がある施設が多いです。希望休と有給を組み合わせることで、連休を確保しやすくなります。
- 希望休2日+有給1日=3連休:家族旅行や通院にも対応できる
- 公休2日+有給2日=4連休:リフレッシュに最適
- 夜勤明け+公休+有給:夜勤明けの翌日を有給にして実質2.5日休み
1ヶ月以上前に申請すればシフト調整もしやすく、同僚への負担も最小限にできます。
対処法3:上司に直接・書面で相談する
口頭で申請して拒否された場合や、雰囲気で取りづらい場合は、書面(有給申請書)で正式に申請しましょう。記録が残ることで、事業者側も適切に対応せざるを得なくなります。
- 申請日時・取得希望日・残日数を明記した書面を提出
- コピーを手元に残す(後に証拠として使える)
- 上司で解決しない場合は人事部門・施設長に相談
- 相談内容と返答は日付付きでメモに残す
対処法4:労働基準監督署に相談する
社内で解決しない、または年5日の取得義務すら守られていない場合は、労働基準監督署への相談が有効です。
- 相談は無料、電話でも窓口でも可能
- 匿名での相談・通報が可能(会社に名前は伝わらない)
- 労働基準法違反があれば、事業所に是正勧告・行政指導が入る
- 年5日の取得義務違反は労働者1人につき30万円以下の罰金
- 介護労働安定センターや各都道府県の総合労働相談コーナーも利用可能
対処法5:取得率の高い施設に転職する
様々な手段を講じても改善しない職場は、体質的な問題を抱えている可能性が高いです。介護業界は人手不足で売り手市場のため、転職は十分現実的な選択肢です。
- 求人票で「有給取得率◯%」を明記している施設を選ぶ
- 年間休日120日以上の施設を狙う
- 見学時にスタッフに「有給は取りやすいですか」と直接聞く
- 社会福祉法人(大規模)や大手法人の労務管理は整備されていることが多い
- 転職エージェントに「有給取得率の高い施設を紹介してほしい」と依頼する
我慢し続ける必要はありません。自分の心身の健康を最優先に、働きやすい環境を選びましょう。
有給を円滑に取得するための実践テクニック
「権利だと分かっていても、実際に申請するのは気が引ける」——そんな方のために、角を立てずに有給を取得するための実践テクニックを紹介します。
テクニック1:年間計画を立てる
年度初めに「今年はこの月に有給を使う」という年間計画を立てましょう。計画的に申請すると、上司も「しっかり考えている人だ」と感じます。年間計画の例:
| 月 | 有給の使い方 | 理由 |
|---|---|---|
| 4月 | 1日 | 年度初めは比較的余裕がある |
| 6月 | 1日 | 梅雨の平日に用事を済ませる |
| 8月 | 2日 | お盆前後に公休と組み合わせて連休に |
| 10月 | 1日 | 秋の行楽シーズン |
| 12月 | 1日 | 年末の準備 |
| 2月 | 2日 | 閑散期に消化 |
このように年8日を計画的に消化すれば、義務の5日はクリアし、残りも無理なく使い切れます。
テクニック2:シフト作成者と良好な関係を築く
シフトを作成するのはユニットリーダーや主任であることが多いです。日頃からコミュニケーションを取り、信頼関係を築いておくと、有給の申請が通りやすくなります。「いつも急なシフト変更に対応してくれるから、有給くらい取ってもらわないと」と思ってもらえるのが理想です。
テクニック3:繁忙期を避ける
介護施設の繁忙期を把握し、そこを避けて申請すると通りやすいです。
- 避けた方がいい時期:年末年始(12/28〜1/3)、お盆(8/13〜16)、インフルエンザ流行期(1〜2月)、施設行事の直前、監査・実地指導の時期
- 狙い目の時期:4〜5月(新年度で比較的落ち着いている)、10〜11月(行事の谷間)、6月(梅雨で行事が少ない)
テクニック4:「お互い様」の雰囲気を作る
同僚が有給を取る時に快く送り出すことが大切です。「お休み楽しんできてくださいね」と声をかけることで、自分が休む時にも同じ雰囲気が生まれます。チーム全体で「有給を取るのは当たり前」という文化を作ることが、全員にとってプラスになります。
テクニック5:有給の使い方を工夫する
- 公休+有給で連休を作る:公休2日の間に有給1日を入れて3連休
- 夜勤明け+有給:夜勤明けの翌日を有給にすれば、実質2.5日の休み
- 月曜or金曜に有給:土日と合わせて3連休に
- 半日有給の活用:午前だけ休んで通院、午後から出勤(施設に制度がある場合)
テクニック6:有給管理アプリを活用する
有給の残日数や有効期限を管理できるスマホアプリを活用すると、計画的に消化できます。「あと◯日残っている」が一目でわかるため、期限切れで消滅するリスクを防げます。給与明細にも記載されていますが、月1回しか確認できないため、アプリで常時把握しておくのがおすすめです。
有給に関する法律知識 — 知っておくべき権利と違法行為
有給に関するトラブルを防ぐために、法律上の権利を正しく理解しておきましょう。
事業者が有給を拒否できる唯一のケース — 時季変更権
事業者には「時季変更権」があり、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、取得日を別の日に変更するよう求めることができます。ただし、これは「今日は無理だから来週にしてほしい」という日程の変更であり、取得自体を拒否することはできません。
「人手不足だから」は時季変更権の正当な理由にはなりません。恒常的な人手不足は事業者の責任であり、それを理由に有給を拒否することは違法です。
これは違法!有給に関するNG行為
| 事業者のNG行為 | 違法の根拠 |
|---|---|
| 有給の申請を無視する・拒否する | 労働基準法第39条違反 |
| 有給を取得した職員の評価を下げる | 不利益取扱いの禁止(労基法附則136条) |
| 「理由を言わないと認めない」と言う | 有給の理由説明義務はない |
| 年5日の取得をさせない | 30万円以下の罰金(労基法第120条) |
| 有給を「希望休」に振り替える | 有給と希望休は別制度。振り替えは違法 |
| 退職時の有給消化を拒否する | 退職日までの有給取得は労働者の権利 |
相談先一覧
- 労働基準監督署:有給拒否・年5日未取得の相談。匿名OK
- 総合労働相談コーナー:各都道府県の労働局に設置。無料
- 法テラス:弁護士への無料法律相談(収入要件あり)
- 介護労働安定センター:介護業界に特化した労働相談
退職時の有給消化 — 全部使い切って辞める方法
退職時に残っている有給休暇は、退職日までに全て消化する権利があります。「引き継ぎがあるから有給は使えない」と言われても、法律上は拒否できません。
退職時の有給消化スケジュール例
有給残日数20日、退職日を3月31日とした場合:
| 期間 | 内容 |
|---|---|
| 2月1日〜28日 | 引き継ぎ期間(通常勤務) |
| 3月1日〜31日 | 有給消化期間(出勤不要) |
| 3月31日 | 退職日(在籍最終日) |
有給消化中も在籍扱いのため、健康保険・厚生年金は継続します。給与も通常通り支払われます。
有給消化を拒否された場合
- 法的には拒否できない:退職日が決まっている場合、時季変更権は行使できない(変更先の日がないため)
- 書面で申請する:口頭だけでなく、有給申請書を提出し、コピーを手元に残す
- 労働基準監督署に相談:拒否された場合は監督署に相談。迅速に対応してもらえる
有給の買い取りについて
在職中の有給買い取りは原則違法です。ただし以下の3つの場合は例外的に認められます。
- 退職時に消化しきれない有給を買い取る
- 法定を超える日数(会社独自の上乗せ分)を買い取る
- 時効で消滅した有給を買い取る
買い取り額は施設との交渉次第ですが、1日あたりの平均賃金が基準になります。退職前に上司や人事に相談しましょう。
有給が取りやすい施設の見分け方 — 転職時のチェックリスト
「今の職場では有給が取れないから転職したい」——そう思ったら、次の施設では同じ失敗を繰り返さないよう、有給の取りやすさを事前にチェックしましょう。
求人票でチェックすべきポイント
| チェック項目 | 良い施設の特徴 | 要注意な施設 |
|---|---|---|
| 有給取得率の明記 | 「有給取得率80%」など具体的数値がある | 取得率の記載がない |
| 年間休日数 | 120日以上 | 105日未満 |
| 希望休 | 「月3日まで希望休OK」と明記 | 記載なし |
| 人員配置 | 「法定基準以上の配置」「手厚い人員体制」 | 「少数精鋭」「アットホーム」(人手不足の婉曲表現の場合あり) |
| 福利厚生 | リフレッシュ休暇、バースデー休暇の記載 | 福利厚生欄が空白 |
面接で確認すべき質問
- 「有給取得率はどのくらいですか?」——具体的な数字で答えてくれれば◎
- 「希望休は月何日出せますか?」——2〜3日が標準。0日なら要注意
- 「シフトはいつ頃決まりますか?」——1ヶ月前に確定するのが一般的
- 「連休を取ることは可能ですか?」——「問題ない」と即答してくれれば◎
- 「年末年始やお盆の勤務体制はどうなっていますか?」——交代制で全員が休めるようになっていれば◎
施設見学でわかること
- スタッフの表情が明るいか:有給が取れない施設はスタッフの表情が疲れている
- 掲示板にシフト表が掲示されているか:透明性のある管理がされている
- スタッフの人数に余裕があるか:フロアに職員が1人しかいない施設は危険信号
- 「有給が取りやすい」と現場のスタッフが言うか:見学時にスタッフと話す機会があれば直接聞いてみる
運営母体による違い
| 運営母体 | 有給の取りやすさ | 特徴 |
|---|---|---|
| 社会福祉法人(大規模) | ★★★★★ | 労務管理が整備。組合がある場合も。有給取得を推奨する傾向 |
| 医療法人 | ★★★★☆ | 病院併設の場合、病院の労務規定に準じることが多い |
| 株式会社(大手) | ★★★★☆ | 本社のコンプライアンスが厳格。取得義務の管理が徹底 |
| 株式会社(中小) | ★★☆☆☆ | 経営者次第。取得率が極端に低い施設も |
| NPO法人 | ★★★☆☆ | 施設による差が大きい |
有給を重視するなら、社会福祉法人か大手法人を選ぶのが安全です。中小の株式会社は良い施設もありますが、事前の確認が特に重要です。
有給が取れない介護職のリアルな声と改善事例
有給が取れないと悩む介護職員のリアルな声と、実際に改善に成功した施設の取り組みを紹介します。
「取れない」と感じる介護職の声
- 「有給を申請すると上司に『今忙しいのに?』と嫌な顔をされる。それ以来、申請するのが怖くなった」
- 「先輩が有給を使わないので、自分だけ使うわけにいかない雰囲気。無言の圧力がある」
- 「人手不足で、自分が休むと他のスタッフに迷惑がかかると思うと、休めない」
- 「有給を取っても、翌日に仕事が2倍になって戻ってくる。結局、休まない方が楽」
- 「年5日の義務化後は取れるようになったけど、それ以上は『贅沢だ』という空気がある」
日本介護クラフトユニオンの調査では、有給が取れない理由の1位は「人手不足」(64%)。これは個人の問題ではなく、施設の人員配置の問題です。
有給取得率を改善した施設の取り組み
事例1:年間有給カレンダーの導入(特養・東京都)
年度初めにスタッフ全員の有給取得計画を作成。上司が率先して有給を取ることで、取りやすい雰囲気を醸成。結果、取得率が45%→82%に改善。
事例2:ICT導入でシフト調整を効率化(老健・大阪府)
シフト管理システムを導入し、有給申請をアプリで完結。「対面で申請する気まずさ」を解消。さらにAIがシフトの穴を自動で検出し、代替要員を提案する機能も。取得率が55%→75%に改善。
事例3:管理職が月1回の有給を義務化(GH・福岡県)
「上が休まないと下も休めない」という課題を解消するため、管理職(主任・リーダー)に月1回の有給取得を義務化。管理職が休むことでスタッフも気兼ねなく休めるようになり、離職率も改善。
2026年以降の見通し
2025年12月からの3階建て賃上げでは、「職場環境の改善」が支給条件の一つ。有給取得の促進はその主要項目です。また、2026年6月の臨時改定でも「生産性向上推進体制加算」が強化され、ICT導入による業務効率化=有給を取りやすい環境づくりが推奨されています。今後、有給が取れない施設は賃上げの恩恵を受けられず、人材確保でも不利になるため、改善は加速する見込みです。
連休は取れる?お盆・年末年始・GWの実態
介護施設は365日稼働のため、一般企業のように全員が一斉に休む「お盆休み」「年末年始休暇」はありません。しかし、シフト調整や有給を組み合わせることで連休を取ることは可能です。
介護職の連休取得状況(アンケート調査)
| 連休の取得状況 | 割合 |
|---|---|
| 基本的に連休は取れない | 20% |
| 2連休まで取れる | 36%(最多) |
| 3連休まで取れる | 24.7% |
| 4連休まで取れる | 5.3% |
| 5連休以上取れる | 14% |
約8割の介護職が何らかの連休を取得しています。2〜3連休が主流ですが、有給と組み合わせれば5連休以上も可能です。
お盆・年末年始・GWの働き方
| 時期 | 入所施設 | デイサービス | 訪問介護 |
|---|---|---|---|
| お盆 | 通常稼働(シフト制で交代で休む) | お盆休み3〜5日の施設も | 利用者により異なる |
| 年末年始 | 通常稼働(12/31〜1/3は手当が出る施設も) | 12/30〜1/3休みが多い | 利用者により異なる |
| GW | 通常稼働 | カレンダー通り休みの施設も | 利用者により異なる |
デイサービスはお盆や年末年始に施設自体が休業する場合があるため、連休が取りやすいです。入所施設でも、希望を早めに出せばシフト調整で3〜5連休を確保できます。
連休を取りやすくするコツ
- 3ヶ月以上前に希望を出す:早い者勝ちの施設が多い
- 同僚と調整する:「私がお盆に出るから、年末はお願い」と交換する
- 有給+公休を組み合わせる:公休2日+有給2日=4連休
- 夜勤明け+翌日休みを活用:実質2日間の自由時間
よくある質問
Q. 介護職でも有給休暇は本当にもらえるのですか?
A. はい、もらえます。有給休暇は労働基準法第39条で保障された権利で、雇用形態や施設形態に関係なく、入職6ヶ月後に出勤率8割以上を満たせば最低10日が付与されます。正社員はもちろん、パート・アルバイト・派遣社員・契約社員も対象です。「介護施設だから有給がない」「パートだから有給はもらえない」は全て誤解です。
Q. 年5日の取得義務とは何ですか?
A. 2019年4月の労働基準法改正により、年10日以上の有給が付与される労働者には、事業者が年5日は確実に取得させる義務があります。違反した場合は労働者1人につき30万円以下の罰金が事業者に科されます。正社員だけでなく、年10日以上付与されるパートも対象です。
Q. 「人手不足だから」という理由で有給を拒否されました。違法ですか?
A. 違法の可能性が高いです。事業者の時季変更権は「事業の正常な運営を妨げる場合」に「別の日に変更する」権利であり、取得自体を拒否する権利ではありません。恒常的な人手不足は事業者の責任であり、それを理由に有給取得を拒否することは認められません。労働基準監督署に相談しましょう。
Q. 有給の理由は詳しく説明しなければなりませんか?
A. いいえ、理由説明の義務はありません。「私用のため」で十分です。有給は使用目的を問わず自由に使える権利であり、事業者が理由によって取得を拒否することもできません。ただし、繁忙期を避けるなど配慮して申請すると円滑に進みます。
Q. 有給の有効期限はありますか?
A. 付与日から2年で消滅します。翌年に繰り越すことは可能ですが、翌々年には使えなくなります。「もったいないから貯めておく」と思っているうちに消滅してしまうケースが多いため、計画的に消化しましょう。給与明細やシフト管理アプリで残日数と有効期限を常に把握しておくことをおすすめします。
Q. 退職時に残った有給はどうなりますか?
A. 退職日までに全て消化する権利があります。「引き継ぎがあるから有給は使えない」と言われても、退職日が決まっている場合は時季変更権も行使できません(変更先の日がないため)。退職日の前に有給消化期間を設定するのが一般的です。消化しきれない分を買い取ってもらえるケースもあります。
Q. パートでも有給はもらえますか?
A. はい、もらえます。週の所定労働日数に応じて「比例付与」が適用されます。週5日以上勤務なら正社員と同じ日数、週3日勤務でも6ヶ月後に5日の有給が付与されます。扶養内でも有給は付与されるため、年収計算時には有給取得日の賃金も含めて試算しましょう。
Q. 有給が取りやすい施設の見分け方は?
A. 求人票で「有給取得率◯%」が明記されていること、年間休日120日以上、希望休月2〜3日以上、社会福祉法人や大手法人など労務管理が整備されている施設を選びましょう。面接で「有給取得率」「希望休の日数」「連休の可否」を具体的に質問して、答えられない施設は要注意です。施設見学時にスタッフの表情や人員配置も確認しましょう。
参考文献・出典
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有給が取れない職場に悩んでいるなら、環境を変えることも選択肢。働き方診断で、ワークライフバランスが整った施設を見つけましょう。
まとめ
この記事のポイントまとめ
| テーマ | ポイント |
|---|---|
| 有給の基本ルール | 入職6ヶ月後に10日付与、最大20日/年(繰越含め最大40日保有)。正社員・パート・派遣問わず権利あり |
| 年5日の取得義務 | 2019年4月〜事業者に義務化。違反は労働者1人あたり30万円以下の罰金 |
| 取得率の実態 | 介護業界66.8%で全産業平均(65.3%)を上回る水準に改善。ただし施設ごとの差は大きい |
| 取りやすい施設 | デイサービス、大規模特養、大手有料老人ホーム、社会福祉法人。年間休日120日以上が目安 |
| 取れない時の対処法 | ①権利と認識する②希望休と組合せ③書面で申請④労基署相談⑤取得率の高い施設へ転職 |
| 退職時の消化 | 退職日までに全日消化可能。拒否されたら労基署へ相談 |
| 連休の取得 | 約8割が2連休以上取得。有給+公休で3〜5連休も可能 |
介護職の有給休暇は労働基準法で保障された権利であり、雇用形態にかかわらず取得できます。2019年の義務化で取得率は改善傾向にあり、介護業界全体の取得率は66.8%と全産業平均を上回る水準に達しました。
それでも「取れない」と感じるのは、本人の問題ではなく職場の問題です。人手不足を理由に拒否することは違法であり、改善されない場合は労働基準監督署に相談する権利があります。
取得率の高い施設に転職することも立派な選択肢です。求人票で「有給取得率」「年間休日数」「希望休の日数」を確認し、面接で具体的に質問することで、入職前に実態を見極められます。しっかり休んで心身を整えることは、質の高いケアを提供するための基盤です。自分の権利を大切に、持続可能な働き方を見つけていきましょう。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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