
高齢者の薬の副作用に気づく|介護職の観察・記録・報告の実務
介護職が高齢者の薬の有害事象に気づき医療へつなぐ実務ガイド。睡眠薬・降圧薬・抗コリン・抗精神病薬・血糖降下薬など薬剤クラス別の観察ポイント、いつから・どの薬が増えてからの記録、お薬手帳・薬剤師連携を厚労省指針・日本老年医学会の知見から解説。
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この記事のポイント
介護職は薬を処方したり中止を判断したりはできませんが、利用者の最も近くで日々の変化を観察し、医療職へ報告することはできます。高齢者の「ふらつき・転倒」「眠気・ぼんやり」「便秘・口の渇き」「急な混乱(せん妄)」「手のふるえや体のこわばり」「冷や汗・急な脱力」は、加齢のせいに見えても、睡眠薬・降圧薬・抗コリン作用のある薬・抗精神病薬・血糖降下薬などの副作用であることがあります。「いつから、どの薬が増えてから始まったか」を記録し、お薬手帳とあわせて看護師・薬剤師につなぐことが、介護職にできる最も価値ある仕事です。
目次
介護の現場では、利用者の「最近よく転ぶようになった」「日中うとうとしている」「便が出ない」「急に怒りっぽくなった」といった変化に、誰よりも先に気づくのが介護職です。こうした変化は「年のせい」「認知症が進んだ」と受け止められがちですが、その裏に薬の副作用が隠れていることは決して珍しくありません。
厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」は、高齢者では薬の有害事象が「ふらつき・転倒」「物忘れ」「便秘」「食欲低下」といった老年症候群の形で表れ、見過ごされやすいと明記しています。そして、有害事象の早期発見には「関連職種からの情報提供が有用」だとも述べています。利用者と接する時間が最も長い介護職の観察は、医療チームにとって貴重な情報源なのです。
この記事では、介護職にできること・できないことの線引きを整理したうえで、注意したい薬剤クラスごとの観察ポイント、「いつから・どの薬が増えてから」を軸にした記録の取り方、看護師・薬剤師への報告とお薬手帳の活用までを、現場の実務に沿って解説します。処方や与薬量の判断はできなくても、観察と報告を通じて利用者の安全を守ることはできます。
なぜ高齢者は薬の副作用が出やすく、気づかれにくいのか
高齢者で薬の副作用(薬物有害事象)が増える背景には、体の側の理由と、薬の側の理由の両方があります。介護職がこの仕組みを理解しておくと、「なぜこの利用者は注意が必要なのか」を具体的にイメージしながら観察できます。
体の側の理由:薬が効きすぎ、体に残りやすい
加齢とともに腎臓や肝臓のはたらきが低下すると、薬の成分が分解・排泄されにくくなり、体内に長くとどまります。その結果、同じ量でも若い人より効果や副作用が強く出やすくなります。体の水分量や筋肉量の変化も、薬の効き方に影響します。日本老年医学会は、高齢者の薬物有害事象は若年者より頻度が高く、70歳以上では60歳未満の1.5〜2倍に達すると報告しています。
薬の側の理由:薬の数が増える(ポリファーマシー)
高齢になると複数の病気を持ち、いくつもの医療機関にかかることが増えます。その結果、薬の種類が積み重なっていきます。厚生労働省によれば、75歳以上の高齢者の約4割が5種類以上の薬を使っており、6種類以上になると有害事象を起こす人が増えることが知られています。薬が多いほど、飲み合わせや相互作用のリスクも高まります。
「老年症候群」として表れるから見過ごされる
高齢者の薬の副作用は、皮膚の発疹のようなわかりやすい形ではなく、「ふらつき」「物忘れ」「便秘」「食欲低下」「元気がない」といった、加齢や認知症でもよく見られる症状として表れます。これを薬剤起因性老年症候群と呼びます。見た目が「年のせい」とそっくりなため、本人も家族も、ときに医療者でさえ薬が原因だと気づきにくいのです。だからこそ、毎日同じ利用者を見ている介護職の「いつもと違う」という気づきが重要になります。
処方カスケードという悪循環
副作用が新しい病気と誤解され、それに対してさらに薬が追加される連鎖を処方カスケードといいます。たとえば、ある薬の副作用でふらつきが出たのに、それを「めまいの持病」と捉えて別の薬が足され、薬がさらに増えてしまう、といった具合です。介護職が「この症状は、薬が増えた時期と重なっていないか」という視点を持つことは、この悪循環を断ち切るきっかけになります。
介護職にできること・できないこと(医行為の線引き)
薬に関わるとき、まず押さえておきたいのが「どこまでが介護職の役割か」という線引きです。処方や薬の量を決めるのは医師、調剤や薬の説明は薬剤師、体調の医学的な評価は看護師の役割です。介護職がこれらを判断・実施することはできません。一方で、観察し、記録し、報告することは介護職の大切な専門性です。
介護職ができないこと(医行為・医療職の判断)
- 薬を処方する、薬の種類や量を変える・中止する判断をすること
- 「この薬は飲まなくてよい」「半分にしましょう」と自己判断で伝えること
- 副作用かどうかを医学的に診断すること
- 利用者や家族に「自己判断で薬をやめる」よう促すこと(自己中断は病状悪化の危険があります)
介護職ができること(観察・記録・報告・服薬介助)
- 日々の様子の変化に気づき、観察すること
- 「いつから・どんな症状か・どの薬が増えた時期と重なるか」を記録すること
- 気づいたことを看護師・サービス提供責任者・医師・薬剤師に報告し、相談すること
- 一定の条件を満たした場合の服薬介助(あらかじめ医師・看護師の指示があり、本人が安定しているなど)。介護職が行える服薬介助の範囲は、内服薬の服用や軟膏の塗布などに限られ、判断を要する行為は含まれません
- お薬手帳や市販薬・サプリの使用状況を把握し、医療職と共有すること。厚生労働省の指針も、市販薬や健康食品の使用状況の把握について介護職員の協力が重要だとしています
つまり介護職の仕事は「薬を判断すること」ではなく、「変化に気づいて医療につなぐこと」です。この役割分担を理解していれば、越権することなく、しかし遠慮しすぎることもなく、利用者の安全に貢献できます。
薬剤クラス別・介護職が注意したい副作用と観察ポイント
ここでは、高齢者によく使われ、かつ介護現場で気づきやすい代表的な薬剤クラスごとに、どんな副作用が起こり、現場で何を観察すればよいかを整理します。薬剤と症状の対応は、厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針」表1(薬剤起因性老年症候群と主な原因薬剤)にもとづいています。薬の名前を覚える必要はありません。「この症状が出たら、この種類の薬が関係しているかもしれない」という対応の感覚を持つことが目的です。
1. 睡眠薬・抗不安薬(ベンゾジアゼピン系など)→ ふらつき・転倒・眠気・物忘れ
不眠や不安に使われる薬で、高齢者でとくに有害事象が出やすい代表格です。ベンゾジアゼピン系(ブロチゾラム、エチゾラムなど)や非ベンゾジアゼピン系(ゾルピデムなど)は、過鎮静、ふらつき、転倒・骨折、日中の眠気、物忘れ、せん妄のリスクがあります。
観察ポイント:朝起きてからの足元のふらつき、トイレへの移動時のふらつき、日中うとうとしている、ろれつが回らない、夜間のトイレでの転倒。とくに薬を飲んだ翌朝〜午前中の歩行に注目します。新しく睡眠薬が始まった、量が増えた直後は要注意です。
2. 降圧薬(血圧の薬)→ 起立性低血圧・ふらつき・転倒
血圧を下げる薬は、効きすぎると立ち上がったときに血圧が下がりすぎる起立性低血圧を起こし、立ちくらみ・ふらつき・転倒につながります。とくにα遮断薬や利尿薬で起こりやすいとされます。夏場の脱水や食事量の低下が重なると、さらに血圧が下がりやすくなります。
観察ポイント:ベッドや椅子から立ち上がった直後のふらつき、入浴後・起床後・食後の立ちくらみ、「目の前が暗くなる」という訴え。可能なら、立ち上がる前と立った後の様子の違いを見ます。転倒が起き上がりや移乗の場面に偏っていないかも手がかりになります。
3. 抗コリン作用のある薬 → 便秘・口の渇き・排尿困難・せん妄
抗コリン作用とは、体のさまざまな分泌や運動を抑える作用のことです。三環系抗うつ薬、過活動膀胱の薬(ムスカリン受容体拮抗薬)、一部の抗ヒスタミン薬、腸の鎮痙薬など、幅広い薬がこの作用を持ちます。複数が重なると作用が積み重なり、便秘、口の渇き、排尿困難(尿が出にくい・尿閉)、目のかすみ、せん妄や認知機能の低下を招きます。
観察ポイント:排便回数の減少や便の硬さ、水分を欲しがる・口の中が乾いている、尿の量が減る・出にくそう・下腹部の張り、急なぼんやりや混乱。便秘や尿が出ないことは命に関わる状態(腸閉塞・尿閉)に進むこともあるため、変化を早めに共有します。
4. 抗精神病薬 → 体のこわばり・手のふるえ・歩きにくさ(錐体外路症状)・遅発性ジスキネジア
認知症の行動・心理症状(BPSD)や不眠に対して使われることがある薬です。錐体外路症状と呼ばれる、体のこわばり、手のふるえ、動作が遅くなる、歩幅が小さくすり足になる、表情が乏しくなる、といった症状が出ることがあります。また、長期間の使用で口をもぐもぐさせる・舌が動くといった、自分では止められない不随意運動(遅発性ジスキネジア)が現れることもあります。
観察ポイント:急にすり足や小刻み歩行になった、立ち上がりや方向転換がぎこちない、手がふるえる、よだれが増えた、無表情になった、口や舌が勝手に動く。これらは転倒や誤嚥のリスクにも直結します。「いつから始まったか」と「薬の開始・増量の時期」を必ず照らし合わせます。
5. 血糖降下薬・インスリン → 低血糖(冷や汗・手のふるえ・ぼんやり・意識障害)
糖尿病の薬、とくにSU薬やインスリンは、効きすぎると低血糖を起こします。高齢者は低血糖を起こしやすく、しかも典型的な症状が出にくいことがあり、「ぼんやりする」「元気がない」といった形で表れて見逃されやすいのが特徴です。低血糖は放置すると意識障害やけいれんに進む、緊急性の高い状態です。
観察ポイント:冷や汗、手のふるえ、動悸、急な不機嫌やそわそわ、ぼんやり・反応が鈍い、ろれつが回らない。食事を抜いた・食べる量が減ったとき、いつもより活動量が多かったときに起こりやすくなります。低血糖が疑われ意識がはっきりしないときは、ただちに看護師・医療職へ連絡します(対応は施設の手順・指示に従います)。
「いつから・どの薬が増えてから」を軸にした記録の取り方
副作用に気づくうえで最も強力な視点が、症状の変化と薬の変化を時間軸で結びつけることです。「最近ふらつく」という観察だけでは、加齢なのか副作用なのか区別がつきません。しかし「2週間前に睡眠薬が変わってから、朝のふらつきが増えた」と記録できれば、医療職が原因を特定するための決定的な手がかりになります。次の手順で記録を残しましょう。
ステップ1:変化に気づいたら「いつから」を特定する
「ふらつくようになった」「便が出なくなった」「ぼんやりすることが増えた」と感じたら、まず「いつ頃からか」をできる範囲で特定します。記録や他のスタッフの申し送りをさかのぼり、「○日頃から」と日付に近づけるほど、後の照合が正確になります。
ステップ2:「どの薬が増えた・変わった時期」と重ねる
お薬手帳や処方の記録を見て、症状が始まった時期の前後で、薬が追加・増量・変更されていないかを確認します。退院直後、受診後、別の科を受診した後などは、薬が変わっていることが多いタイミングです。症状の出現時期と薬の変更時期が重なっていれば、副作用の可能性が高まります。
ステップ3:症状を具体的・客観的に書く
「調子が悪い」ではなく、誰が読んでも同じ場面が思い浮かぶように書きます。たとえば「午前中、居室からトイレへ移動する際にふらつき、壁に手をついた。週3〜4回。夜間は確認できず」のように、いつ・どんな場面で・どのくらいの頻度かを具体化します。回数や時間帯がわかると、医療職が薬との関連を判断しやすくなります。
ステップ4:あわせて記録したい関連情報
転倒の有無とけがの程度、食事・水分の摂取量、排便・排尿の状況、睡眠の様子、市販薬やサプリの使用、本人や家族の訴え。これらは副作用の判断や、低血糖・脱水など他の要因との見分けに役立ちます。バイタル(血圧・脈拍など)が測れる場合はその値も添えます。
ステップ5:迷ったら「薬が原因かもしれない」と一言添えて共有する
断定する必要はありません。「○日に薬が変わってから、この症状が出ています。薬の影響はないでしょうか」と疑問の形で看護師や薬剤師に投げかければ十分です。判断は医療職が行います。介護職が事実と時間軸を正確に渡すことが、最大の貢献です。
「薬の副作用」か「加齢・認知症の進行」かを見分ける手がかり
薬の副作用は加齢や認知症の進行と症状が似ているため、見分けは簡単ではありません。最終的な判断は医療職が行いますが、介護職が「これは薬かもしれない」と気づくための手がかりがいくつかあります。次のような特徴があるときは、薬の影響を疑って報告する価値が高まります。
薬の副作用を疑いやすい特徴
- 変化が急で、はっきりした境目がある:加齢や認知症の進行はゆるやかですが、薬による変化は「ある日を境に」始まることが多く、開始・増量の時期と一致します。
- 薬の変更と時期が重なる:退院後、受診後、新しい薬が出た直後に症状が現れた。これは最も重要な手がかりです。
- 複数の症状が同時に出る:抗コリン作用なら便秘・口の渇き・尿が出にくい・ぼんやりが同時に出るなど、ひとつの作用で説明できる症状がそろう。
- 日内変動がある:睡眠薬なら朝に強くふらつく、血糖の薬なら食前や活動後に不調が出るなど、薬を飲む時間や生活リズムと関連して症状が変動する。
見分けの注意点
一方で、症状が薬と無関係の病気(感染症によるせん妄、脱水、脳の病気など)から来ていることもあります。たとえば発熱を伴う急な混乱は感染症の可能性があり、緊急性が異なります。「薬のせいだ」と決めつけず、あくまで「薬の可能性も含めて、いつもと違う」という形で医療職に伝えることが安全です。介護職の役割は犯人を特定することではなく、見分けの材料となる事実を漏れなく渡すことだと考えるとよいでしょう。
ポリファーマシーと脱処方の視点を持つ
薬の数が多い状態(ポリファーマシー)は、それ自体が副作用や転倒のリスクを高めます。近年は、必要性の低い薬を医師・薬剤師が見直して減らしていく脱処方(減薬)の取り組みが進んでいます。介護職が脱処方を主導することはありませんが、その判断材料を提供する立場にあります。
「飲めているか」「効いているか」「困っていないか」を見る
脱処方の検討では、その薬が本当に必要か、副作用が生活の質を下げていないかが問われます。介護職は、薬がきちんと飲めているか(残薬がたまっていないか)、飲んだ後に不調が出ていないか、薬のために生活が制限されていないか(眠気で日中の活動が減るなど)を日々観察できます。これらは医師や薬剤師が減薬を判断するときの貴重な情報です。
残薬に気づいたら共有する
飲み忘れや飲みたがらない様子があると、薬が手元に余っていきます(残薬)。残薬は、薬が効いていない原因にも、思わぬ過量服用の原因にもなります。残薬の存在に気づいたら、自己判断で調整せず、看護師・薬剤師に共有します。薬剤師が訪問して残薬を整理する仕組み(訪問薬剤管理指導)につながることもあります。
「減らす」局面でも観察を続ける
薬を減らした後は、症状がぶり返さないか、逆に体調が良くなったかを観察することが大切です。脱処方は「減らして終わり」ではなく、減らした後の経過を多職種で見守るプロセスです。減薬後の「眠れているか」「血圧は安定しているか」「気分はどうか」といった変化を記録し、報告しましょう。
お薬手帳と薬剤師連携を活かす
介護職が観察した情報を医療につなぐとき、強力な味方になるのがお薬手帳と薬剤師です。薬剤師は薬の専門家であり、副作用や飲み合わせについて最も具体的なアドバイスをくれる職種です。
お薬手帳を「最新の全体像」に保つ
お薬手帳には、複数の医療機関で処方された薬がまとめて記録されます。これにより、どこかの科で出た薬がふらつきの原因になっていないか、といった全体像が見えます。介護職としては、手帳が最新の処方を反映しているか、市販薬やサプリも書き込まれているかに気を配り、受診や入退院で薬が変わったら手帳を確認・共有します。複数の医療機関にかかっている利用者ほど、手帳を一本化しておく価値が高まります。
気づいたことを薬剤師に「相談」としてつなぐ
「この薬を飲み始めてから便秘がひどくなった気がする」「眠気が強くて日中の活動が難しい」といった気づきは、看護師やサービス提供責任者を通じて、あるいは薬局・訪問薬剤師に相談として伝えると、薬剤師が原因の薬や代替案を医師に提案してくれることがあります。介護職が「副作用かどうか」を判断する必要はなく、観察した事実を渡せば十分です。
市販薬・健康食品の使用も把握する
厚生労働省の指針は、市販薬や健康食品と処方薬の併用による有害事象は、医療機関を受診しないと気づかれにくいため、患者・家族・介護職員が使用状況を把握することが重要だとしています。利用者が自分で買った風邪薬や胃薬、サプリメントを使っていないかにも目を配り、把握したら医療職と共有しましょう。
看護師・医師・薬剤師への報告のコツ
観察し記録したことは、医療職に正確に伝わってはじめて意味を持ちます。忙しい現場で短時間に的確に伝えるには、伝える順番を決めておくと役立ちます。次の流れを意識すると、相手が状況を理解し、次の行動につなげやすくなります。
- 誰の・何が起きているか(状況):「○○さんが、3日前から日中ずっとうとうとしています」と、利用者と現象を最初に伝えます。
- 背景となる薬の情報:「先週、睡眠薬が△△に変わっています」「6種類の薬を飲んでいます」など、薬に関する背景を添えます。
- 具体的な観察事実:「午前中はとくに反応が鈍く、食事中もうとうとします。ふらつきも増え、昨日は移乗時に膝をつきました」と、いつ・どんな場面で・どの程度かを具体的に。
- こちらの懸念と依頼:「薬の影響ではないかと心配しています。一度、薬の見直しを相談できないでしょうか」と、疑問と依頼の形で締めます。
緊急性の判断も添えると親切です。意識がはっきりしない、けいれん、呼びかけに反応しない、強い胸痛や呼吸困難を伴うときは、報告ではなく即時の連絡・救急対応が必要です。低血糖が疑われ意識がもうろうとしている場合も緊急にあたります。日頃から、何を緊急として誰に連絡するかを施設の手順で確認しておきましょう。
よくある質問
Q. 介護職が「この薬の副作用だ」と利用者や家族に伝えてもよいですか。
断定して伝えるのは避けてください。副作用かどうかの判断は医師・薬剤師・看護師の役割です。介護職は「○日に薬が変わってから、この症状が出ています」という事実と時間軸を医療職に報告し、判断を委ねます。家族から相談されたときも、「気になる点は医療職に確認しましょう」とつなぐのが安全です。
Q. 副作用が疑わしいとき、その薬を飲ませないでおいてよいですか。
自己判断で薬を抜くことはできません。薬の中止・減量は医師の判断が必要で、急にやめると病状が悪化する薬もあります。疑わしいと感じたら、与薬を止めるのではなく、速やかに看護師・医師に連絡して指示を仰ぎます。
Q. 薬の名前を覚えられません。観察に支障はありますか。
すべての薬の名前を覚える必要はありません。大切なのは「ふらつきが出たら睡眠薬や血圧の薬を、便秘や口の渇きが続くなら抗コリン作用のある薬を、ぼんやりや混乱なら多くの薬を疑う」という症状からの発想です。具体的な薬の特定は、お薬手帳を見ながら医療職と一緒に行えば十分です。
Q. 「いつもと違う」と感じても、確信が持てず報告をためらってしまいます。
確信は不要です。むしろ「確信が持てないが、いつもと違う」という段階での共有こそ早期発見につながります。空振りを恐れて報告が遅れるより、疑問の形で早めに伝えるほうが、利用者の安全を守れます。報告は事実を渡すことであり、診断ではありません。
Q. 低血糖が疑われるとき、その場でブドウ糖や砂糖を与えてよいですか。
対応は施設の手順や医師・看護師の指示に従ってください。意識がはっきりしている場合の経口補給を手順として定めている施設もありますが、意識がもうろうとしている・反応が鈍いときは誤嚥の危険があるため、無理に口から与えず、ただちに医療職へ連絡し指示を仰ぎます。
参考文献・出典
- [1]
- [2]高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 関連資料(薬物有害事象の回避)- 日本老年医学会
高齢者の薬物有害事象の頻度(70歳以上は60歳未満の1.5〜2倍 等)と特徴、特に慎重な投与を要する薬物リスト
- [3]
- [4]
- [5]
まとめ
高齢者の薬の副作用は、ふらつき・転倒、眠気、便秘や口の渇き、急な混乱、体のこわばり、冷や汗や脱力など、加齢や認知症とよく似た形で表れます。だからこそ、毎日同じ利用者を見ている介護職の「いつもと違う」という気づきが、早期発見の出発点になります。
介護職は薬を処方したり中止を判断したりはできませんが、観察し、「いつから・どの薬が増えてから」を記録し、お薬手帳とあわせて看護師・薬剤師・医師につなぐことができます。薬の名前を覚える必要はありません。症状から薬剤クラスを連想し、時間軸で薬の変化と重ねて、疑問の形で医療職に渡す。この一連の流れこそが、介護職にできる薬の安全への最大の貢献です。確信が持てなくても、ためらわずに共有することが、利用者の暮らしと命を守ります。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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