
巡回訪問等実施機関とは
外国人介護人材を訪問系サービスに従事させる際、受入事業者の体制を事前に確認して適合確認書を交付し、その後も巡回訪問で遵守状況を確認する機関です。指導に従わず取消しに至った場合の5年間の受け入れ停止まで、通知の定めを整理します。
この記事のポイント
巡回訪問等実施機関とは、外国人介護人材を訪問系サービスに従事させようとする受入事業者について、遵守事項を履行できる体制があるかを提出書類で事前に確認し、外国人ごとに「適合確認書」を交付する機関です。交付後も巡回訪問を通じて遵守状況を確認し、履行が確認できない場合は指導を行い、改善が見込まれなければ受け入れを認めない措置につながります。国が民間団体に委託等して実施しており、実務は公益社団法人国際厚生事業団が担っています。
目次
巡回訪問等実施機関の役割と根拠
この機関は「外国人介護人材の訪問系サービス従事における留意点について」(令和7年3月31日付け社援発0331第40号、老発0331第12号)に登場します。通知は、外国人介護人材を訪問系サービスに従事させる際、受入事業者に5つの遵守事項を適切に履行できる体制・計画等を有することを求め、その確認を事前にこの機関へ書類を提出して受けることとしました。
もともと国は、外国人介護人材の受け入れ・定着支援の観点から、民間団体に委託等して、経済連携協定に基づく介護福祉士候補者や特定技能外国人を受け入れている事業者への巡回訪問を実施し、雇用に関する状況等の実態把握や助言を行ってきました。訪問系サービスの解禁にあたっては、この既存の巡回訪問の体制を強化して遵守状況の確認にあてる、という設計になっています。
確認する内容
通知が確認対象として挙げるのは次の項目です。
- 三①〜⑤の遵守事項を適切に実施する体制を有していること(研修の実施、同行訪問等による現場指導、意向確認とキャリアアップ計画の作成、ハラスメント対策、情報通信技術の活用等による環境整備)
- 四①の実務経験等の要件に対応すること(実務経験1年以上が原則。1年未満の例外では日本語能力と同行訪問期間の措置)
- 四②の利用者・家族への書面説明と署名に対応すること
これらがすべて確認できた事業所に対して、訪問系サービスに従事する外国人介護人材ごとに適合確認書が交付されます。事業所単位でまとめて1通が出るわけではありません。
適合確認書の交付と交付後の確認の流れ
- 書類の提出:受入事業者が、遵守事項に係る書類(キャリアアップ計画を含む報告書等)を提出します。
- 審査:提出された書類をもとに、適切な実施体制を有するかどうかが審査されます。
- 適合確認書の交付:要件を満たすと判断された場合、受け入れ予定の外国人ごとに適合確認書が発行されます。技能実習では、この確認書が外国人技能実習機構への技能実習計画認定の申請の際などに必要になります。
- 巡回訪問による確認:交付後も、遵守事項の履行状況が巡回訪問等を通じて確認されます。その際は事業管理者、サービス提供責任者、そして外国人介護人材本人からも聞き取りが行われます。
- 定期報告:毎年、キャリアアップ計画を作成し直して提出します。期限は前回の評価期間の終期から4か月以内です。
在留資格による提出先の違い
キャリアアップ計画の取扱いを定めた課長通知(令和7年3月31日付け社援基発0331第4号)では、提出先が在留資格で分かれています。技能実習は巡回訪問等実施機関へ、特定技能は特定技能協議会事務局へ提出します。特定技能の場合、協議会入会規程第3条の2により、事務局が書類を確認して適合確認書を発行する建て付けになっており、確認書自体には有効期限が設けられていません。
遵守されていない場合に取られる措置
巡回訪問等の結果、遵守事項の適切な履行が確認できない場合は指導が行われ、指導を通じても改善が見込まれない場合には、外国人介護人材の受け入れを認めない措置が講じられます。流れは在留資格ごとに定められています。
技能実習の場合
- 巡回訪問等で違反(疑わしい場合を含む)を確認
- 巡回訪問等実施機関または厚生労働省より、直ちに遵守されるよう指導
- 指導の内容に基づき、受入法人が計画的に是正に向けた対応を実施
- それでも是正がなされない場合、厚生労働省に協議のうえ適合確認書を取り消す。あわせて外国人技能実習機構へ情報提供が行われ、技能実習計画の認定が取り消される。認定を取り消された法人は、取消しの日から起算して5年間、技能実習生を受け入れられなくなる
特定技能の場合
- 同様に違反を確認し、指導、是正対応を経る
- 是正がなされない場合、厚生労働省に協議のうえ適合確認書を取り消し、介護分野における特定技能協議会の脱退手続を進める。脱退となった法人は脱退の日から起算して5年間、協議会に加入できず、介護分野の特定技能外国人を受け入れられなくなる
なお、労働関係法令の違反や介護保険制度の運営基準違反等があれば、その態様により、巡回訪問等実施機関から直ちに処分庁へ通報されます。この場合は段階的な指導を経ません。
似た名前の機関との違い
外国人介護人材の受け入れには、名称の似た機関が複数登場します。役割を取り違えると提出先を間違えます。
| 機関 | 関わる制度 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 巡回訪問等実施機関 | 訪問系サービス従事の可否確認(技能実習・特定技能に共通する仕組み) | 遵守事項の体制を事前確認し適合確認書を交付。交付後の巡回訪問で履行状況を確認 |
| 登録支援機関 | 特定技能 | 受け入れ機関に代わって義務的支援10項目を実施 |
| 監理支援機関 | 育成就労(2027年4月施行) | 育成就労実施者への監理・支援 |
| 外国人技能実習機構 | 技能実習 | 技能実習計画の認定。認定の取消しも行う |
| 送り出し機関 | 技能実習・育成就労等 | 現地での募集・選抜・事前教育 |
登録支援機関や監理支援機関は事業者が選んで契約する相手ですが、巡回訪問等実施機関は事業者が選ぶものではなく、国の委託を受けて確認する側に立ちます。
受入事業者が押さえておきたい実務上の要点
本人からの聞き取りが確認手段に含まれる
巡回訪問での確認は、書類や管理者への質問だけで完結しません。通知は、事業管理者、サービス提供責任者、外国人介護人材本人等から確認することとしています。書面上の体制と現場の実態が食い違えば、本人への聞き取りで表面化します。ハラスメントの相談窓口や緊急時の連絡体制を、本人が実際に説明できる状態にしておくことが求められます。
相談窓口は本人側にも用意されている
国は同じ事業の中で、外国人介護人材の介護業務の悩み等に関する相談窓口を設けており、母国語で相談できるよう多言語対応を行っています。訪問系サービスの解禁にあわせて、この窓口の周知と体制強化も国の取組として通知に明記されました。
費用面の支援メニューがある
通知は、地域医療介護総合確保基金に、外国人介護人材に係る各種研修の受講支援や介護福祉士資格取得のための学習支援などのメニューが整備されていることに触れています。訪問系サービスに同行する場合のかかり増し経費への支援に係る事業や、ハラスメント対策の推進に係る事業、介護従事者の負担軽減等に資する情報通信技術の導入支援事業もあり、都道府県に積極的な活用の検討を促しています。同行訪問の人件費負担が受け入れの障壁になる場合、都道府県の基金事業の公募状況を確認する価値があります。
巡回訪問等実施機関に関するよくある質問
Q. 巡回訪問等実施機関はどこですか
国が民間団体に委託等して実施する仕組みで、厚生労働省の補助事業「外国人介護人材受入・定着支援等事業」の実施主体である公益社団法人国際厚生事業団が実務を担っています。特定技能については、同法人内に置かれた特定技能協議会事務局が窓口となります。
Q. 適合確認書に有効期限はありますか
特定技能協議会入会規程は、適合確認書について有効期限を設けないと定めています。ただし年1回のキャリアアップ計画提出という定期報告が課され、遵守状況が確認され続けます。
Q. 施設サービスだけで受け入れる場合も適合確認書が必要ですか
適合確認書は訪問系サービスに従事させる場合の仕組みです。施設サービスのみであれば、この確認書の交付を受ける手続きは生じません。
Q. 外国人1人ごとに申請が必要ですか
適合確認書は訪問系サービスに従事する外国人介護人材ごとに交付されます。すでに交付を受けている事業所が新たに別の外国人を訪問系サービスに従事させる場合は、その受け入れ前に改めて提出が必要です。
Q. 指導を受けたら即座に受け入れ停止になりますか
通知の流れでは、指導、計画的な是正対応を経てもなお是正されない場合に取消しへ進みます。ただし労働関係法令の違反や介護保険制度の運営基準違反等は、その態様により直ちに処分庁へ通報されます。
巡回訪問等実施機関に関する参考資料
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巡回訪問等実施機関のまとめ
巡回訪問等実施機関は、外国人介護人材の訪問系サービス従事を認めるかどうかの門番にあたる機関です。5つの遵守事項の体制と、実務経験・利用者への書面説明への対応を提出書類で事前に確認し、外国人ごとに適合確認書を交付します。交付は終点ではなく、その後も巡回訪問で履行状況が確認され、本人からの聞き取りも行われます。
是正されない違反は、技能実習なら技能実習計画の認定取消し、特定技能なら協議会からの脱退につながり、いずれも5年間の受け入れ停止という重い結果を招きます。他方で国は、同行訪問のかかり増し経費への支援など基金事業のメニューも用意しています。確認される側として身構えるより、体制整備の相談先および支援策の情報源として早めに接点を持っておくほうが、受け入れは進めやすくなります。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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