住宅改修(介護保険)とは

住宅改修(介護保険)とは

介護保険の住宅改修は、要介護・要支援者が自宅に手すり取付けや段差解消などを行う際、生涯20万円まで7〜9割が支給される制度。対象6種目・支給限度額・3段階リセット・申請手順をやさしく解説します。

ポイント

住宅改修とは(要点)

住宅改修(じゅうたくかいしゅう)とは、要介護・要支援認定を受けた人が自宅に手すりを取付けたり段差を解消したりする際、介護保険から生涯20万円を上限に7〜9割(所得により1〜3割が自己負担)が支給される制度です。対象は法令で定められた6種目に限られ、工事前の事前申請が必須となります。

目次

住宅改修の制度的位置づけ

住宅改修は、介護保険法に基づく居宅介護住宅改修費(要介護者向け)および介護予防住宅改修費(要支援者向け)として、市町村が支給する保険給付です。福祉用具のレンタル(福祉用具貸与)や購入(特定福祉用具販売)と並ぶ「住環境整備の三本柱」の一つで、自宅で安全に暮らし続けるための在宅生活継続支援を目的としています。

給付の特徴は次の3点です。

  • 対象工事は法令で6種目に限定 — 自由なリフォームではなく、自立支援・介護負担軽減に直接つながる工事のみ。
  • 支給限度額は生涯20万円 — 1回で使い切らず、複数回に分けて利用可能(合計20万円まで)。
  • 事前申請が必須 — 工事を始めてからでは支給されない。理由書や見積書を市町村に提出して承認を得てから着工する。

同居家族に複数の要介護・要支援者がいる場合は、1人につき20万円の枠が独立して与えられます(夫婦そろって認定を受けていれば合計40万円)。

介護保険の対象となる6種目

介護保険で支給される住宅改修は、厚生労働省告示で次の6種目に限定されています。これ以外のリフォーム(例:浴室全体の改装、新しい設備の追加)は対象外です。

  1. ① 手すりの取付け
    廊下・便所・浴室・玄関・玄関から道路までの通路などに、転倒予防や移動補助を目的として設置する。福祉用具貸与の「据え置き型手すり」は工事不要のため住宅改修ではなく貸与扱い。
  2. ② 段差の解消
    居室・廊下・便所・浴室間の段差や、玄関〜道路の段差を解消する工事。具体的にはスロープ設置、敷居撤去、浴室すのこ設置(固定式)、床のかさ上げなど。
  3. ③ 滑り防止および移動の円滑化等のための床材変更
    畳から板製床材へ、滑りやすいタイルから滑り止め床材へなど、転倒予防・車椅子移動を目的とした床の変更。
  4. ④ 引き戸等への扉の取替え
    開き戸を引き戸・折戸・アコーディオンカーテン等に変更する工事。ドアノブ変更、戸車設置、扉撤去(取り外し)も含まれる。
  5. ⑤ 洋式便器等への便器の取替え
    和式便器を洋式便器に取替える工事。既に洋式の便器を温水洗浄便座付きに替えるだけは対象外(暖房便座機能の追加のみは認められない)。
  6. ⑥ その他、上記①〜⑤の改修に付帯して必要となる工事
    例:手すり取付けに必要な壁の下地補強、扉の取替えに伴う壁・柱の改修、便器交換に伴う給排水設備工事、床材変更に伴う下地補修など。

支給限度額と自己負担の早見表

住宅改修費の支給限度基準額は生涯20万円。所得段階に応じて自己負担割合(1〜3割)が決まり、残りが介護保険から支給されます。20万円を超えた工事費は全額自己負担です。

所得区分(自己負担割合)20万円工事の自己負担給付額
一般所得(1割負担)2万円18万円
一定以上所得(2割負担)4万円16万円
現役並み所得(3割負担)6万円14万円

同居家族に要介護・要支援者が複数いる場合は、それぞれに別個の20万円枠が割り当てられます。20万円は1回で使い切る必要はなく、たとえば「初回12万円分の手すり工事 → 後日8万円分のスロープ工事」のように分割利用が可能です。

20万円枠がリセットされる2つの例外

原則として住宅改修費は「生涯1人20万円まで」ですが、次の2条件に該当する場合は20万円枠が再付与(リセット)されます。

① 要介護度が3段階以上重くなったとき

初回の住宅改修着工時点の要介護状態区分と比べ、現時点の要介護度が3段階以上上昇している場合は、もう一度20万円までの支給を受けられます。判定の基準は次の表のとおりで、要支援1〜要介護5の7段階を1段階ずつカウントします。

初回時の状態3段階上昇後
要支援1要介護2以上
要支援2 / 要介護1要介護3以上
要介護2要介護4以上
要介護3要介護5

※ なお、この「3段階リセット」は生涯で1度のみ適用される例外措置です。

② 転居したとき

住宅改修は「住んでいる住宅」に対して支給されるため、別の住宅に転居した場合は転居先で再度20万円の枠が新たに付与されます(回数制限なし)。ただし、入院・入所先(病院・特養・サ高住など)は転居の対象になりません。

申請から支給までの流れ

住宅改修は「事前申請 → 工事 → 事後申請(支給申請)」の二段階で進みます。工事を始めてから申請することはできない点に注意が必要です。

  1. ケアマネジャー等に相談
    担当のケアマネジャー、地域包括支援センターの保健師、または福祉用具専門相談員に相談し、必要な改修内容を整理します。
  2. 「住宅改修が必要な理由書」の作成
    ケアマネジャー、福祉用具専門相談員、作業療法士などの有資格者が作成する必須書類です。改修箇所の不便さ・改修目的・期待される効果が記載されます。
  3. 事前申請(市町村へ提出)
    支給申請書/工事費見積書/理由書/改修前の写真(日付入り)/間取り図・改修箇所の図面、を市町村に提出し、承認を待ちます。
  4. 承認後に工事着工 → 完了
    事前申請が承認されてから、施工業者が工事を行います。完了したら改修後の写真(日付入り)を撮影しておきます。
  5. 事後申請(支給申請)
    領収書/工事内訳書/改修後の写真/(持ち家でない場合)所有者の承諾書を市町村に提出します。
  6. 支給
    償還払いの場合は7〜9割が後日口座へ振込み。受領委任払いの場合は最初から自己負担分(1〜3割)のみを業者に支払うだけで完結します。

償還払いと受領委任払いの違い

住宅改修費の支給には2種類の支払い方式があり、自治体や事業者によって扱いが異なります。利用者にとって資金繰りの負担が大きく違うため、申請前に確認しておくことが重要です。

項目償還払い(原則)受領委任払い
初回支払い額工事費全額(例:20万円)自己負担分のみ(例:2万円)
給付金の流れ後日、利用者の口座へ7〜9割振込み市町村から事業者へ直接7〜9割支払い
利用者の資金準備
導入要件全市町村で利用可市町村への事業者登録が必要
主な利用シーンすぐ立替えできる場合立替え負担を避けたい場合

受領委任払いはすべての市町村で利用できるわけではない点に注意してください。利用希望の場合は、(1)お住まいの市町村が受領委任払いを採用しているか、(2)依頼予定の業者が市町村に「受領委任払い取扱事業者」として登録されているか、の2点を事前に確認します。

住宅改修に関するよくある質問

Q1. 賃貸住宅でも住宅改修費は使えますか?
はい、利用できます。ただし事後申請時に住宅所有者(大家)の承諾書が必要となります。退去時の原状回復義務についても事前に確認しておきましょう。
Q2. 自分で材料を買って工事すれば対象になりますか?
原則として施工業者による工事が必要です。自分で取付けた手すり等は給付対象外となるケースが多いため、必ず事前に市町村へ確認してください。
Q3. 介護保険の20万円とは別に、自治体の独自助成はありますか?
多くの自治体で、介護保険とは別枠の高齢者住宅改修助成事業(または「すこやか住宅改修助成」など)を実施しています。介護保険の20万円を超える部分や対象外の工事に使えるケースもあるため、お住まいの市町村窓口で確認しましょう。
Q4. 「住宅改修が必要な理由書」は誰でも書けますか?
いいえ。ケアマネジャー(介護支援専門員)/福祉用具専門相談員/作業療法士/理学療法士/福祉住環境コーディネーター2級以上など、市町村が認める有資格者のみが作成できます。原則として担当のケアマネジャーが作成するのが一般的です。
Q5. 着工後に申請してもダメですか?
はい、対象外となります。住宅改修費は事前申請が承認されてから着工することが条件のため、工事を始めてから申請しても給付されません。緊急の場合でも必ず先に市町村へ相談してください。

参考資料

まとめ

住宅改修は生涯20万円を上限に、自宅を「自立して住み続けられる環境」へ整えるための介護保険給付です。対象は6種目(手すり/段差/床材/扉/便器/付帯工事)に限定されており、事前申請+有資格者作成の理由書がなければ給付されません。要介護度が3段階以上重くなったときや転居時に20万円枠がリセットされる例外もあるため、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に早めに相談し、計画的に活用することが大切です。

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執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

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