
ダブルケアとは|育児と介護の同時負担・推計29万人の実態と介護職の働き方
育児と介護を同時に担うダブルケアの推計は約29万人。9割が30〜40代の働き盛り。本記事では内閣府・毎日新聞・ソニー生命の最新データに加え、介護職として働きながら自身もダブルケアに直面する人向けに、利用できる制度・サービス・キャリア継続策を網羅的に解説します。
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この記事のポイント
ダブルケアとは、育児と親の介護を同時に担う状態のこと。内閣府2016年調査では推計25.3万人、毎日新聞による2017年就業構造基本調査の独自集計では約29万3,700人にのぼり、9割が30〜40代の働く世代です。介護職として働きながらダブルケアに直面した場合、介護休業(通算93日)・介護休暇(年5日)・短時間勤務・夜勤免除などの制度を組み合わせ、地域包括支援センターやダブルケアカフェに早期相談することで、離職せずに乗り切ることが可能です。
目次
「親の介護が始まったタイミングで、子どもはまだ未就学児」「保育園のお迎えと、デイサービスの送り出しが同じ時間帯」「自分自身も介護職として働いているのに、家でも介護をしている」――こうした育児と介護の同時進行=ダブルケアに直面する人が、いま静かに増えています。
内閣府が2016年に発表した推計では約25万人。2017年の就業構造基本調査をもとに毎日新聞が独自に再集計したところ、その数は約29万3,700人に達し、しかも9割が30〜40代の働き盛りでした。さらに育児の対象を未就学児に限定せず15歳未満まで広げれば、推計は3倍超に膨らみます(ソンポ・リサーチ・インスティテュート, 2025)。
ダブルケアは「いつか自分にも降りかかる可能性のある問題」ではなく、すでに介護職の現場で日常的に起きている問題です。本記事では、ダブルケアの定義と最新の推計データ、利用できる制度・サービス、相談窓口をまとめたうえで、介護職として働きながら自身もダブルケアを抱える人がキャリアを継続するための具体策を解説します。
ダブルケアとは|定義と概念の整理
ダブルケアは、横浜国立大学の相馬直子教授と英国ブリストル大学の山下順子上級講師が2012年に研究のなかで生み出した概念です(ダブルケアサポート, 2025年公開資料)。狭義と広義で意味が異なる点が、まず押さえておきたい基本になります。
狭義のダブルケア:育児と介護の同時進行
狭義では「子育てと親の介護に同時に直面している状態」を指します。内閣府の調査における「育児している」は小学校就学前の未就学児まで、「介護している」は日常生活における入浴・着替え・食事などの手助けを年30日以上行っている場合と定義されており、両方に該当する人がダブルケアラーとしてカウントされます(内閣府男女共同参画局, 2016)。
広義のダブルケア:複数の家族ケアの同時進行
近年は家族ケアの形が複雑化しており、広義では次のようなケースもダブルケアに含めて議論されます(相馬・山下, 2020)。
- 育児+親の介護(狭義の中心ケース)
- 育児+障がいのあるきょうだいや配偶者のケア
- 祖父母のケア+孫の世話
- パートナーの病気+自身の慢性疾患+子どものケア
つまり 「複数のケア責任を一人が同時に背負っている状態」 全般がダブルケアであり、3つ以上重なればトリプルケア、家族ケアと未成年の子によるヤングケアラー状態が併存していれば多重ケア家庭と呼ばれます。
ヤングケアラー・シングルケアラーとの違い
似たケアラー概念との違いを整理します。
| 用語 | 主な対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| ダブルケア | 30〜40代を中心とする働き盛り世代 | 育児と親の介護が同時進行。9割が働く世代 |
| ヤングケアラー | 18歳未満の子ども・若者 | 家族のケアを担い学業や友人関係に影響 |
| シングルケアラー | ひとりで介護を担う人(独身の長子など) | 家族内での分担が極めて少なく孤立リスクが高い |
| ビジネスケアラー | 仕事をしながら介護を担うすべての労働者 | 2030年に約318万人と試算(経産省, 2023) |
ダブルケアラーがビジネスケアラーであるケースも多く、これらの概念は重なり合います。ダブルケア家庭で育つ子どもが結果的にヤングケアラーになっていく、という連鎖も社会課題として注目されています(相馬, 2024)。
ダブルケアの実態|推計人口と背景データ
ダブルケアの規模と特徴を、複数の公的調査から押さえます。数字の幅は調査時期と「育児」の定義の広さで変動するため、出典をセットで把握しておくと現場で誤解されにくくなります。
推計人口:内閣府25万人 → 毎日新聞29万人 → 広義では70万人超
| 調査 | 時期 | 推計人口 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 内閣府男女共同参画局「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」 | 2012年就業構造基本調査ベース/2016年公表 | 約25.3万人(女性16.8万人・男性8.5万人) | 未就学児育児+年30日以上の介護 |
| 毎日新聞による独自集計 | 2017年就業構造基本調査ベース/2024年1月報道 | 約29万3,700人 | 9割が30〜40代の働く世代 |
| 2017年就業構造基本調査の二次分析(広義) | 育児を15歳未満まで拡張 | 全人口の約0.7%(25万人の3倍超) | ソンポ・リサーチ・インスティテュート, 2025 |
狭義の推計でさえ未就学児に限られているため、「小学生・中学生の子を育てながら親の介護をしている」層を含めれば、ダブルケアの実数はさらに大きいことが分かります。
年齢構成:8割が30〜40代
内閣府調査によれば、ダブルケアラーの平均年齢は男女ともに約40歳。世代別では30〜40代が全体の約8割を占めます(内閣府男女共同参画局, 2016)。育児のみの平均年齢(35〜36歳)と比べてやや高く、介護のみ(58〜59歳)よりは20歳程度若い世代に集中しています。
性別構成:女性に偏るが男性ダブルケアラーも増加
狭義のダブルケアラーは女性が約66%、男性が約34%(内閣府, 2016)。一方、ソニー生命「ダブルケアに関する調査2024」では離職経験率は男性30.4%・女性26.6%で男性のほうが高く、特に30代男性では39.8%に達します。「ダブルケアは女性の問題」という固定観念は、現場の実態とずれ始めています。
背景:晩婚化・晩産化・少子化・労働環境の変容
ダブルケア人口が増えている背景には、構造的な要因が複層的に絡みます。
- 晩婚化と晩産化:第一子出産年齢は2000年の28.0歳から2023年の31.0歳まで上昇(厚労省 人口動態統計)。30代後半〜40代前半で出産すると、その時期の親はすでに65〜75歳前後で介護リスク期に入っています。
- 少子化と核家族化:きょうだい数が減り、介護や育児を分担できる家族ネットワークが縮小。一人っ子同士の夫婦であれば、両家の親4人を実質2人で支える構図になります。
- 女性の就業率上昇:共働き世帯が標準化し、専業主婦が前提だった「家庭内ケア+仕事」の二重負担が顕在化。
- 男性の長時間労働:仕事と家庭ケアの両立が物理的に困難で、結果的に女性側にケアが偏ります。
三世代の年齢シミュレーション
SOMPOリサーチ・インスティテュート(2025)の試算が分かりやすいので紹介します。
- 母親25歳・自分30歳で出産 → 親75歳のとき、子は20歳(ダブルケアの可能性は低い)
- 母親30歳・自分35歳で出産 → 親75歳のとき、子は10歳(小学生の育児+介護)
- 母親35歳・自分40歳で出産 → 親75歳のとき、子は0歳(未就学児育児+介護で典型的なダブルケア)
第一子出産が遅れるほど、親の介護期と育児期が重なる確率が跳ね上がる構造になっています。
ダブルケアの負担|経済・時間・精神の三重圧力
ダブルケアラーが抱える負担は、しばしば「経済負担と時間負担」と単純化されますが、実際には精神的負担を加えた三重圧力として捉えるのが正確です。ソニー生命「ダブルケアに関する調査2024」では、負担に感じることの最多回答が精神的負担55%、次いで家事の負担と体力的負担が同率31%でした(毎日新聞, 2024年1月)。
経済的負担:医療・介護費+教育費が同時にのしかかる
- 未就学児の保育料・教育費は世帯あたり月平均5〜10万円
- 在宅介護の自己負担は要介護度に応じて月1〜4万円、有料老人ホーム入居なら月15〜25万円
- ダブルケア世帯で家計に不安を感じる人は約49%(毎日新聞調査, 2024)
- 離職や時短転換による世帯収入の減少が加わり、教育費・住宅ローン・自身の老後資金の3重圧迫が起きやすい
時間的負担:「自分の時間がゼロ」になる構造
典型的な平日のタイムラインを当てはめると、ダブルケアラーには文字どおり可処分時間がほとんど残りません。
- 6:00 起床/朝食準備/子の登園準備
- 7:30 親のオムツ交換・服薬・朝食介助
- 8:30 子を保育園に送る → 出勤
- 17:30 退勤 → デイサービス迎え
- 18:30 保育園お迎え → 夕食
- 20:00 入浴介助・就寝介助(親)
- 21:30 子の寝かしつけ
- 22:30 家事・洗濯/親の様子確認/自分の食事
夜勤シフトのある介護職の場合は、これに勤務先での夜勤が加わり、連続して20時間以上ケア役割が続くことも珍しくありません。
精神的負担:罪悪感・孤立・キャリアへの不安
- 罪悪感:「子育てを十分にできていない」「親にもっと寄り添いたいのにできない」という二方向の罪悪感
- 孤立感:「ママ友に育児の話はできても介護の話はできない」(ダブルケアサポート, 2025)。コロナ禍を経て孤立感が深まっている
- 職場での開示しづらさ:介護をしていると伝えると「フルで働けない人」とマイナス評価される懸念。隠して有給で対応する人もいる(日本財団ジャーナル, 2025)
- キャリア中断への不安:重要ポジションから外される、昇進機会を逃す、復帰後のキャリア再構築への不安
離職率:3割が「実質的にダブルケアでやめた」
ソニー生命の調査(2024)では、ダブルケアを理由とする離職経験者は男女合算で28.5%。「子育てを理由に辞めた」「親の介護を理由に辞めた」「実質的にはダブルケアで辞めたように感じる」を合計した数字で、男女年代別では30代男性が39.8%と最も高い結果でした。
厚生労働省「雇用動向調査」では、2024年に介護・看護を理由に離職した人は約9.3万人(男性約3.4万人・女性5.9万人)。2000年の3.8万人から24年間で約2.4倍に増えています(生命保険文化センター, 2025)。
利用できる制度|介護休業・介護休暇・育児休業・短時間勤務
ダブルケアラーが活用できる制度は、育児・介護休業法を中心に整備されています。2025年4月施行の改正育児・介護休業法で、仕事と介護の両立支援が大きく強化されました(厚生労働省, 2025)。介護職の職場でも適用される制度です。
介護休業|要介護家族1人につき通算93日
- 取得条件:要介護状態の対象家族(配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫)を介護する労働者
- 取得日数:対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割取得可
- 給付金:雇用保険の被保険者であれば介護休業給付金(休業開始時賃金日額の67%)が支給される(生命保険文化センター, 2025)
- 使い方の例:介護施設の入所先選定、ケアマネジャーとの調整、要介護認定の手続き、終末期の対応
介護休業は「自分が直接介護をするための休み」というより、介護と仕事を両立できる体制を整えるための準備期間として使うのが推奨されています。
介護休暇|年5日(家族2人以上なら10日)
- 取得条件:要介護状態の対象家族の介護や世話のため
- 取得日数:対象家族1人につき年5日、2人以上なら年10日
- 取得単位:1日単位、半日単位、2021年からは時間単位での取得も可能
- 使い方の例:通院の付き添い、ケアマネとの短時間の打ち合わせ、施設見学
- 賃金:原則無給だが、企業の就業規則で有給とする例もある
育児休業・育児休暇
- 育児休業:原則として子が1歳になるまで(保育園に入れない等の場合は最長2歳まで)
- 産後パパ育休(出生時育児休業):子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割可能
- 子の看護等休暇:小学校3年生修了まで、子1人につき年5日(2人以上なら10日)
短時間勤務制度(時短)
- 育児:3歳未満の子を養育する労働者は1日6時間の所定労働時間に短縮できる(事業主の措置義務)
- 介護:要介護家族1人につき、利用開始から3年以上の期間内に2回以上利用可(短時間勤務、フレックスタイム、時差出勤、介護費用助成のいずれか)
残業免除・深夜業免除
- 所定外労働の制限:本人の申し出で残業(法定時間内含む)を免除
- 時間外労働の制限:1か月24時間・1年150時間を超える時間外労働の禁止
- 深夜業の制限:午後10時〜午前5時の労働を免除
- 2025年4月の改正で、育児に関する残業免除の対象が3歳未満から小学校就学前まで拡大
2025年4月改正|事業主の義務が大幅強化
改正育児・介護休業法により、事業主には以下の対応が義務付けられました(厚生労働省, 2025;マイナビHUMAN CAPITALサポネット, 2024)。
- 労働者が介護に直面した旨を申し出た場合の個別周知・意向確認
- 40歳に達した労働者への情報提供(介護休業等の制度説明)
- 研修・相談窓口設置・事例収集・方針周知のうち1つ以上の雇用環境整備
- 介護休業等に関するハラスメント防止措置
両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)
事業主向けの助成金ですが、ダブルケアラーが在籍する職場で活用してもらえれば、本人にとっても両立しやすい環境につながります。
- 介護休業取得・職場復帰支援:1人あたり30万円
- 介護両立支援制度(時短・時差出勤等)の導入:1人あたり30万円
- 個別周知・環境整備加算あり(厚労省 雇用環境・均等局, 2025)
介護サービスの活用|訪問介護・デイサービス・ショートステイ・小規模多機能
制度休暇だけではダブルケアは乗り切れません。介護保険サービスを家族の状況に合わせて組み合わせ、ケアラー本人の可処分時間を意図的につくることが、両立の鍵になります。代表的な4種類のサービスを比較します。
| サービス | 内容 | 1か月の費用目安(要介護2/自己負担1割) | ダブルケアでの活用シーン |
|---|---|---|---|
| 訪問介護(ホームヘルプ) | ヘルパーが自宅を訪問し、身体介護や生活援助を提供 | 週3回利用で約8,000〜12,000円 | 朝の身支度・服薬・食事介助を任せ、出勤に集中 |
| 通所介護(デイサービス) | 日中、施設に通って入浴・食事・レクリエーションを利用 | 週3回利用で約20,000〜25,000円 | 日中の見守りを外部化し、フルタイム勤務を維持 |
| 短期入所生活介護(ショートステイ) | 数日〜30日まで施設に短期入所 | 4泊5日で約15,000〜20,000円 | 夜勤シフトの日や出張・冠婚葬祭時の集中レスパイト |
| 小規模多機能型居宅介護 | 「通い」「訪問」「泊まり」を1事業所で柔軟に組合せ | 月額定額で約25,000〜30,000円 | 子どもの発熱・親の急変など突発対応に強い |
ダブルケアでとくに相性が良いサービス
1. 小規模多機能型居宅介護(小多機)
1事業所で「通い」「訪問」「泊まり」を月額定額で利用でき、利用者・家族の都合に合わせて柔軟に組み替えられるのが特徴。子どもの保育園からの呼び出しや自分の体調不良など、不測の事態にショートステイへ即時切り替えられるのはダブルケアラーにとって極めて大きい安心材料です。
2. 看護小規模多機能型居宅介護(看多機)
小多機に訪問看護機能が加わったサービス。医療ニーズの高い親(経管栄養・痰吸引など)を抱えるダブルケアラーが、医療と介護を一括で任せられます。
3. ショートステイの計画的利用
「自分が体調を崩してから利用する」のではなく、月1回・週末の2泊3日を最初から組み込む運用が、当事者にも親側にも好評です。日本ではまだ「親を施設に預けるのはかわいそう」という空気がありますが、ショートステイは仲間との交流や入浴の機会となり、本人にもメリットがあります(ダブルケアサポート, 2025)。
サービスを組み合わせる順序のコツ
- 要介護認定の申請を最優先。地域包括支援センターまたは市区町村窓口へ
- 認定が出るまでの暫定期間も、ケアマネジャーが暫定ケアプランで先行サービス利用が可能
- まずデイサービスで日中の見守りを確保 → 自分の勤務継続を最優先
- 夜間が辛ければショートステイの定期利用を追加
- 突発対応が増えたら小規模多機能へ切り替え
子育て側のサービス活用
- 保育園・認定こども園:ダブルケアラーは多くの自治体で「介護等に従事している保護者」として保育の必要性事由に該当し、優先入所の対象になり得る
- 病児・病後児保育:子の発熱で会社を休めない時の駆け込み先
- ファミリー・サポート・センター:地域の有償ボランティアによる子の送迎・短時間預かり
- 学童保育:小学生の放課後対応
この記事に登場する介護用語
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独自分析|介護労働実態調査から読み解く「ダブルケアの足音」
介護職としてダブルケアに直面した時、職場・業界全体の実態を知ることは「自分だけではない」という心理的な助けになります。介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」と全労連「2024介護労働実態調査」をクロスして読むと、いくつかの示唆が浮かび上がります。
分析1:離職理由「家族介護」が長期トレンドで増加
厚労省「雇用動向調査」では、2024年に介護・看護を理由に離職した人は約9.3万人。2000年の3.8万人から24年間で2.4倍に増加しています(生命保険文化センター, 2025)。介護業界に限定したデータは公表されていませんが、介護職の50代が29.7%、40代26.4%、60代18.1%(全労連調査, 2024)と中高年に集中していることを踏まえると、業界全体としてダブルケア・トリプルケアの直撃を受けやすい年齢構成にあると言えます。
分析2:介護職の採用・定着で「家庭との両立支援」が決定要因の3位
介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」では、採用がうまくいっている事業所がその理由として挙げる項目の3位が「仕事と家庭(育児・介護)の両立支援を充実させていること」(47.9%)でした(介護労働安定センター, 2024)。離職率が低下傾向にある事業所では同項目が5位(36.1%)となっており、両立支援の充実度が事業所の人材確保力を左右していることが読み取れます。
分析3:早期離職防止の効果ある方策、4位が「両立支援の法制度活用促進」
同調査では、早期離職防止・定着促進のために実際に行って「効果があった」とする方策の4位が「仕事と家庭の両立を支援するための、休業・休暇・短時間労働などの法制度の活用を促進している」(43.6%)。1位の労働時間の柔軟化(52.5%)、3位の賃金水準向上(44.4%)と並んで、制度の「整備」より「活用促進」のほうが効果が出やすいという現場知見が示されています。
当サイトとしての示唆
これらのデータから、当サイトでは以下を読者に提案します。
- ダブルケアに直面したら「制度はあるか」ではなく「制度をどう活用させてもらえるか」で職場と話す
- 転職を検討する場合は、求人票や面接で「介護休業の取得実績・両立支援等助成金の受給歴」を必ず確認する
- 40歳以上の介護職員は、2025年改正法で職場からの両立支援情報提供が義務になった点を活用し、上司・人事に積極的に問い合わせる
- ダブルケアラー自身がケアマネ的に動ける強みを活かし、地域包括支援センターと早期につながる
介護職のキャリア継続|夜勤免除・時短・パート転換・登録ヘルパー
介護職としてダブルケアに直面したとき、辞める前に検討してほしい働き方の選択肢を整理します。介護業界は人手不足ゆえに柔軟な働き方の幅が広く、転職市場としても豊富なのが、ほかの業界にない強みです。
選択肢1|現職で夜勤免除・短時間勤務を申請
育児・介護休業法の深夜業の制限を申請すれば、本人の意思で夜勤を外してもらえます。介護施設は夜勤者の確保が経営課題のため、施設長としては可能な限り別の人員で対応したいと考えます。「夜勤を外したいが現職を続けたい」という意思を最初に伝えることで、施設側も穴埋めシフトの段取りに入れます。
選択肢2|デイサービス・訪問系への異動
同じ法人内で、夜勤のない事業形態(デイサービス、訪問介護、サ高住の日勤、地域包括支援センター事務など)への異動が可能なケースがあります。キャリアと社会保険を維持しながら夜勤離脱できるのが最大のメリットです。
選択肢3|パート・登録ヘルパーへの切り替え
正社員からパートへの雇用形態転換は、収入は減りますが勤務日・勤務時間の柔軟性が大きく増します。とくに登録ヘルパー(訪問介護のパート)は、自分の都合に合わせて稼働日を調整できるため、ダブルケア期にフィットする働き方として知られています。全労連調査(2024)では登録ヘルパーの77%が「介護の仕事を続けたい」と回答しており、正社員(55%)より高い継続意欲を示しています。
選択肢4|事業所間の転職(両立支援が手厚い職場へ)
現職での調整が難しい場合は、ダブルケアラーを受け入れる体制が整った職場への転職が有力な選択肢です。求人票や面接で確認すべきポイント。
- 介護休業・介護休暇の取得実績(人数・日数)
- 時短勤務の利用実績と、復帰後のキャリアパス
- 夜勤免除・夜勤専従配置の柔軟性
- 両立支援等助成金の受給歴(介護離職防止支援コース)
- くるみん認定/プラチナくるみん認定(次世代育成支援対策推進法)
選択肢5|在宅・短時間で続けられる職種への転換
- 福祉用具専門相談員:訪問とデスクワーク中心、夜勤なし
- 介護事務:レセプト業務中心、土日休み、夜勤なし
- ケアマネジャー(実務経験5年以上で受験):訪問はあるが原則日勤・残業少なめ
- サ責(サービス提供責任者):訪問介護のシフト管理、利用者調整。日勤中心
ケアラー支援を打ち出している企業の例
近年、ダブルケアを企業課題として捉え、明示的に支援策を打ち出す事業者が増えています。くるみん認定・プラチナくるみん認定を取得している介護事業者は、両立支援に積極的な目印になります(厚生労働省 雇用環境・均等局, 2025)。
ダブルケアの相談窓口|地域包括支援センター・ダブルケアサポート・自治体専門窓口
ダブルケアは「一人で抱え込まない」ことが何より大切。最初に頼るべき窓口を、優先順位の高いものから整理します。
1. 地域包括支援センター(最初に行くべき場所)
市町村が設置する高齢者の総合相談窓口。保健師・社会福祉士・主任ケアマネが在籍し、介護保険の申請から在宅サービス調整、虐待・困窮支援まで幅広く対応します。親が住む地域と、自分が住む地域の両方の地域包括支援センターを把握しておきましょう(ダブルケアサポート, 2025)。
- 相談無料
- 要介護認定の代行申請が可能
- ケアマネジャー紹介、暫定ケアプラン作成支援
- 介護保険サービス事業所の情報提供
2. 一般社団法人ダブルケアサポート(当事者支援団体)
2016年設立、横浜国立大学のダブルケア研究チームと連携してきた全国規模の支援団体(ダブルケアサポート, 2025)。
- ダブルケアカフェ:当事者同士が悩みを共有できる交流会を全国で展開
- ハッピーケアノート:ダブルケアラーの声を集めた情報整理シート(クラウドファンディングで発行)
- 企業・行政向け啓発活動:両立支援研修・コンサルティング
3. 自治体のダブルケア専門窓口
育児と介護で行政窓口が分かれている縦割りを解消する動きが広がっています(日本財団ジャーナル, 2025)。
- 大阪府堺市:2016年10月に全国初の「ダブルケア相談窓口」開設
- 東京都港区:福祉総合窓口で育児・介護を一括対応
- 横浜市:一般社団法人ダブルケアサポートと連携した相談支援
- 重層的支援体制整備事業(2021年〜):厚労省の制度で、複数課が連携して複合課題に対応する自治体が拡大中
4. 勤務先の相談窓口(2025年4月から義務化)
2025年4月の改正育児・介護休業法により、事業主は仕事と介護の両立支援制度を利用しやすくする雇用環境整備として、研修・相談窓口設置・事例収集・方針周知のいずれか1つ以上を行うことが義務付けられました(厚労省, 2025)。介護施設の人事・総務に「相談窓口は誰ですか」と直接聞いてOKな環境になっています。
5. ケアマネジャー
要介護認定が出た後、最も頼れる存在。「子育てもしている」と最初に伝えておくと、ケアプランに保育園の送迎時間や子の体調不良時のショート切り替えなどを織り込んでもらえます。介護職の同業者として、ケアマネとの調整は自分の強みを発揮できる場面でもあります。
6. 子育て支援サイドの窓口
- 子育て世代包括支援センター:妊娠期から子育て期までの総合相談
- 地域子育て支援拠点:未就学児を連れて利用できる相談・交流の場
- 利用者支援員:保育・子育てサービスの選び方を相談
- 伴走型相談支援:妊娠・出産期の継続的伴走(2023年〜全国展開)
ダブルケアに関するよくある質問
Q. 介護休業と介護休暇は何が違いますか?
介護休業は長期の休み(対象家族1人につき通算93日まで)で、雇用保険から休業開始時賃金日額の67%にあたる介護休業給付金が支給されます。一方、介護休暇は短期スポット休暇(年5日/家族2人以上なら10日)で、時間単位での取得もOK。原則無給ですが、企業によっては有給にしている事業所もあります。両方を併用して取得できます。
Q. ダブルケアの場合、保育園に優先入所できますか?
多くの自治体で、ダブルケアラーは「介護等に従事している保護者」として保育の必要性事由に該当し、優先入所の加点対象となります。市区町村によって点数の付け方が異なるため、子育て世代包括支援センターまたは保育課に「親の介護をしている場合の加点はあるか」を確認してください。要介護認定を受けていれば、その認定書を保育園申込書に添付するのが一般的です。
Q. 介護職をしながら親の介護もすると、自分が壊れそうです。どうすれば?
まず「自分が職場で得ている介護の知識」と「親の介護を担う自分」を切り分けることが大切です。仕事のときの自分はプロとして冷静に動けても、親が相手だと感情が揺さぶられて疲弊しがちです。親のケアは自分が直接担うのではなく、ケアマネとサービスに委ねる方針に切り替えると負担が一気に下がります。ダブルケアカフェなど当事者の集まりで「同業者あるある」を共有するのも有効です(ダブルケアサポート, 2025)。
Q. 夫がほとんど協力してくれません。離婚も考えるべき?
男性ダブルケアラーも増えていますが、依然として女性に負担が偏っているのが実態です(内閣府, 2016)。離婚の前に、まず「具体的なタスクの可視化と分担表の作成」を試してみてください。「ケアマネとの月次面談は夫担当」「医療機関の付き添いは隔週で交代」など、具体的に役割を割り振ると協力が引き出しやすくなります。それでも改善しない場合は、自治体のダブルケア相談窓口やジェンダー平等関連の相談機関に相談を。
Q. 「ダブルケア」という言葉を職場で使ってOKですか?
2016年以降、行政・企業の制度文書にも頻出する用語になりました。SOMPOリサーチ(2025)の調査では認知度がまだ約20%とヤングケアラー(約52%)より低いものの、制度説明・両立支援の文脈では正式用語として通用します。むしろ「ダブルケア」と明示的に伝えることで、上司・人事も育児休業・介護休業の併用相談として処理してくれやすくなります。
Q. 親の介護がいつ終わるか分からないので、長期計画が立てられません。
ダブルケアの大きな特徴は「いつ終わるか分からない」連続性です(相馬, 2024)。子育てはおおよそ20年で区切りが見えますが、介護は数か月で終わることも10年以上続くこともあります。長期計画より、「3か月ごとに自分の働き方を見直す」ローリングプランニングを推奨します。介護度の変化や子の進学に合わせて、勤務形態・サービス利用・家族分担を都度組み替える発想が現実的です。
参考文献・出典
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まとめ|ダブルケアは「制度を使い倒す」「一人で抱え込まない」が両輪
本記事の要点を改めて整理します。
- ダブルケアとは育児と親の介護の同時進行。狭義の推計は内閣府25.3万人(2016)、毎日新聞29万人(2024)で、9割が30〜40代の働く世代
- 背景は晩婚化・晩産化・少子化・女性の就業率上昇・男性の長時間労働。第一子出産年齢が上がるほど親の介護期と重なる確率が跳ね上がる構造
- 負担は経済・時間・精神の三重圧力。精神的負担が最大(55%)で、孤立感が深刻
- 使える制度は介護休業(93日)・介護休暇(年5日/時間単位可)・育児休業・短時間勤務・夜勤免除。2025年4月改正で事業主の周知義務が大幅強化
- サービスは訪問介護・デイサービス・ショートステイ・小規模多機能を組み合わせ、可処分時間を意図的につくる
- 相談窓口は地域包括支援センターを最優先。次にダブルケアサポート、自治体ダブルケア窓口、勤務先の相談窓口
- 介護職としてのキャリア継続策は夜勤免除・時短・デイサービス異動・パート転換・登録ヘルパー切り替え・両立支援が手厚い職場への転職と幅広い
ダブルケアは「自己責任で乗り切る問題」ではなく、すでに社会全体で支援体制と制度が整備されつつある社会課題です。とくに2025年4月の改正育児・介護休業法以降は、事業主に「ダブルケアラーへの支援」を義務付ける流れが強くなっています。
介護職としてのキャリアと、家族としてのケアの両方を続けるために最も重要なのは、「一人で抱え込まない」ことと、「使える制度・サービスを徹底的に使い倒す」こと。プロとして働く介護職だからこそ持っている知識とネットワークを、自分自身のダブルケアにも活用してください。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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2026/5/8
介護・福祉職員の退職金共済、抜本見直しへ|厚労省「財政運営の安定化」を論点に検討開始
厚労省が2026年4月23日、88万人が加入する社会福祉施設職員等退職手当共済制度の抜本見直し検討会を始動。準備金残高は3年で505億→294億円に急減。財政運営・対象法人・給付水準を論点に秋に方向性。

2026/5/8
財務省、ケアマネ報酬に「自立支援アウトカム連動」を提言|要介護度改善で報酬増の仕組みへ・27年度改定論点
2026年4月28日の財政制度等審議会で財務省が提言した「居宅介護支援の報酬体系に自立・要介護度改善のインセンティブを組み込む」論点を一次資料から解説。LIFEとの接続、ケアマネ業務への影響、成功報酬型の利点とリスクを読み解く。

2026/5/8
財務省、訪問介護・通所介護の賃上げ要件に介護テクノロジー導入を|ケアプー導入率28.2%が後押し
財政制度等審議会・財政制度分科会(2026年4月28日)で財務省が、訪問介護・通所介護のさらなる賃上げ要件に介護テクノロジー導入の追加を要請。ケアプー導入率が3月時点で28.2%に急伸した実績を背景に、2027年度介護報酬改定の新たな論点として浮上した。

2026/5/7
家事支援、国家資格を新設へ|高市首相「介護離職をどうしても防止したい」2027年めど初試験
高市早苗首相は2026年4月22日の日本成長戦略会議で家事支援サービスの新たな国家資格創設を関係閣僚に指示。職業能力開発促進法の技能検定として2027年秋の第1回試験実施を目指す。介護離職防止と保険外サービス育成が狙い。

2026/5/7
介護福祉士養成校卒業生の経過措置、2031年度まで延長|国試不合格でも卒業後5年目まで就労可
社会保障審議会福祉部会で説明された一括改正案により、介護福祉士養成校卒業生が国家試験に不合格でも有資格者として働ける経過措置が2031年度卒業者まで延長される。一方で6年目以降の措置は2026年度卒業者で終了。制度改正の中身と進学者・新人介護職への影響を整理する。

2026/5/7
日本医師会、介護報酬改定「2年に1度」を提言|江澤常任理事「3年後は見通せない」
2026年4月27日の社会保障審議会・介護給付費分科会で、日本医師会の江澤和彦常任理事が介護報酬改定を3年から2年サイクルに短縮するよう提言。物価高騰・賃上げは別枠で毎年改定を主張し、全老健・東憲太郎会長も同調した。背景と現場・転職者への影響を整理する。
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2026/4/20
ダブルケア(育児×介護)の乗り切り方|時間・お金・心の対処法
育児と親の介護を同時に担う「ダブルケア」。約25万人と推計される実態、時間管理、育児・介護休業などの制度、経済的支援、相談窓口、キャリア両立のコツまで、家族がすぐ動ける対処法を整理します。

2026/3/20
介護職と子育ての両立ガイド|ママにおすすめの施設・働き方・制度を解説
介護職と子育ての両立方法を解説。デイサービス・訪問介護などママに人気の施設形態、育児休暇・時短勤務・子の看護休暇の制度、扶養内パートのシミュレーション、急な子どもの発熱時の対応まで網羅。

2026/5/10
有料老人ホームの入居一時金|返還ルール・90日ルール・初期償却の仕組み
有料老人ホームの入居一時金の相場・初期償却・経年返還・90日ルール(短期解約特例)・500万円保全措置を徹底解説。返還計算式や倒産リスク、重要事項説明書のチェックリストまでご家族目線で整理します。

2026/5/10
認定調査当日に家族が準備すべきこと|本人の様子を正しく伝える特記事項のコツ
要介護認定の訪問調査で家族が事前準備すべきメモ・持ち物・伝え方を、認定調査員テキスト2009と現場の体験談を踏まえて整理。本人が良く見せる問題への対策、特記事項に書いてもらう具体エピソード5例、結果が軽い場合の区分変更申請まで網羅します。

2026/5/10
介護疲れ・共倒れを防ぐ|レスパイトケアの活用法と家族のセルフケア
主介護者の3割が介護うつを経験し、うつ状態だと死亡・要介護リスクが6.9倍に。共倒れの初期サイン、ショートステイ・小規模多機能・看多機などレスパイトケア5種類の使い分け、週次スケジュール例、ZBI負担尺度によるセルフチェック、家族のセルフケア習慣まで、医療・介護専門職への相談導線とともに網羅解説します。
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