
住宅改修とは
介護保険の住宅改修は要支援・要介護者が自宅で安全に暮らすための工事制度。手すり設置や段差解消など6種類の対象工事と上限20万円・自己負担1〜3割・事前申請の流れをわかりやすく整理する。
この記事のポイント
住宅改修は、介護保険の要支援・要介護認定を受けた被保険者が、手すり設置や段差解消などの6種類の小規模工事を自宅に施した場合、支給限度基準額20万円(自己負担1〜3割)の範囲で費用の7〜9割が保険給付される制度です。原則として工事前の事前申請が必須で、住所が変わったり要介護区分が3段階以上重くなった場合に限り再支給が認められます。
目次
住宅改修の制度概要
住宅改修は、介護保険法第45条に基づく「居宅介護住宅改修費」(要介護者向け)と第57条「介護予防住宅改修費」(要支援者向け)として位置づけられる介護保険給付です。在宅で暮らす要支援1〜要介護5の認定を受けた被保険者が、自宅の小規模なバリアフリー改修を行った際に、市区町村が改修費用の7〜9割(所得に応じて1〜3割の自己負担)を支給します。
支給対象となる工事は厚生労働大臣告示で6種類に限定されており、屋根の葺き替えや増築といった大規模リフォームは対象外です。あくまで「在宅生活の継続に必要な最小限の改修」が想定されており、利用者本人の身体機能や生活動線に合わせて選ぶ必要があります。
支給限度基準額は被保険者1人あたり生涯20万円。20万円を一度に使い切る必要はなく、複数回に分けて利用できます。ただし、いったん使い切った後でも、住所が変わった(転居した)場合や、要介護状態区分が3段階以上重くなった場合は、再度20万円を上限とする支給を受けられます。
介護保険で対象となる住宅改修6種類
- 手すりの取り付け:廊下・階段・浴室・トイレ・玄関など、転倒予防や移動補助のための設置(福祉用具貸与に該当する据え置き型は対象外)
- 段差の解消:敷居の撤去、スロープ設置、浴室床のかさ上げなど(昇降機やリフトは対象外)
- 滑り防止・移動の円滑化のための床材変更:畳から板張り、車椅子用のクッションフロア化など
- 引き戸等への扉の取替え:開き戸→引き戸、アコーディオンカーテン、ドアノブ→レバーハンドルへの交換など
- 洋式便器等への便器の取替え:和式→洋式、洋式→暖房便座付き洋式(ウォシュレット単独の取り付けは対象外)
- その他、上記の改修に付帯して必要となる工事:手すり設置のための壁下地補強、段差解消のための給排水管移設など
これらは厚生労働省告示「介護保険の給付対象となる住宅改修の種類」(平成12年厚生省告示第395号)で明確に定義されており、市区町村ごとに微妙に運用が異なる場合があるため、必ず事前に保険者(市区町村介護保険課)へ確認します。
住宅改修の申請手順
- ケアマネジャー等に相談:要介護者は担当ケアマネ、要支援者は地域包括支援センターに改修内容を相談。福祉住環境コーディネーターや福祉用具専門相談員の助言も活用
- 施工業者の選定・見積もり取得:複数業者から見積もりをとり、工事範囲と金額を確定する
- 事前申請(事前申請が必須):住宅改修費支給申請書、住宅改修が必要な理由書(ケアマネ等が作成)、見積書、改修前の写真、平面図などを市区町村に提出
- 市区町村の承認:書類審査を経て承認通知を受け取る(承認前に着工した場合は支給されないので注意)
- 工事の実施:承認内容どおりに施工
- 事後申請(支給申請):改修後の写真、領収書、内訳書等を提出
- 住宅改修費の支給:原則「償還払い」で利用者がいったん全額立替→保険給付分が後日振り込まれる。市区町村によっては「受領委任払い」を導入しており、自己負担分のみ業者へ支払う仕組みも利用可能
福祉用具貸与・特定福祉用具販売との違い
住宅改修は「住宅そのものに手を加える工事」であり、レンタルや購入で対応する福祉用具とは制度上明確に分けられています。
| 項目 | 住宅改修 | 福祉用具貸与 | 特定福祉用具販売 |
|---|---|---|---|
| 支給上限 | 生涯20万円 | 区分支給限度基準額の枠内 | 年間10万円 |
| 自己負担 | 1〜3割 | 1〜3割 | 1〜3割 |
| 対象例 | 手すり設置・段差解消 | 車椅子・介護ベッド・歩行器 | 腰掛便座・入浴補助具 |
| 事前申請 | 必須 | 不要(ケアプランに位置づけ) | 原則不要 |
たとえば「据え置き型の手すり」はレンタル品(福祉用具貸与)として扱われ、住宅改修にはなりません。一方、壁にネジ止めする手すりは住宅改修扱いです。同じ「手すり」でも給付の枠組みが変わるため、どの制度を使うかはケアマネ・福祉用具専門相談員と相談して決めます。
住宅改修を活用するときのポイント
- 必ず事前申請する:着工後の申請は原則認められず、全額自己負担になる
- 20万円は世帯ではなく被保険者ごと:夫婦どちらも認定を受けていれば、それぞれ20万円ずつ使える
- 「3段階リセット」を覚える:要介護状態区分が3段階以上重くなった場合、20万円の枠が再び使える(例:要支援2→要介護3)
- 地方自治体独自の上乗せ補助:障害者総合支援法の住宅改修給付や市区町村単独事業(バリアフリー改修補助)と併用できる場合がある
- ケアマネの理由書が要:申請書類の中で最も重要なのが「住宅改修が必要な理由書」。本人の身体状況・生活動線・改修目的を具体的に書く必要がある
よくある質問
Q1. 賃貸住宅でも住宅改修はできますか?
A. 可能ですが、家主の承諾書が必要です。原状回復費用は介護保険の対象外のため、事前に賃貸契約の条件を確認してください。
Q2. 20万円を一度に使う必要はありますか?
A. ありません。複数回に分けて利用できます。たとえば最初に手すり10万円分、その後段差解消10万円分というように使えます。
Q3. 住所変更すると枠は復活しますか?
A. はい。被保険者の住所が変わった場合は、新たに20万円までの枠が認められます(同一住所内のリフォームは対象外)。
Q4. 福祉用具貸与の手すりとの違いは?
A. 工事を伴うかどうかが分かれ目です。壁・床にネジ止めする手すりは住宅改修、置くだけの据置型はレンタル(福祉用具貸与)扱いです。
Q5. 介護職や訪問介護員は工事に立ち会う必要がありますか?
A. 法的義務はありませんが、本人の動作確認のため、ケアマネ・福祉用具専門相談員・訪問介護員が立ち会うことが推奨されます。改修後の動線をプランに反映するため、現場で確認しておくと安心です。
参考資料
- 厚生労働省「介護保険における住宅改修」https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jutaku01/
- 厚生労働省告示「介護保険の給付対象となる住宅改修の種類」(平成12年厚生省告示第395号)
- 介護保険法第45条(居宅介護住宅改修費)・第57条(介護予防住宅改修費)
- 厚生労働省「介護保険最新情報」住宅改修の取扱い通知
まとめ
住宅改修は、要支援・要介護者の在宅生活を支える6種類の小規模工事に対して、生涯20万円までの給付を行う介護保険制度です。事前申請が必須で、ケアマネや福祉住環境コーディネーターの助言を得ながら、本人の身体状況に合った改修を選ぶことが重要です。福祉用具貸与・特定福祉用具販売との使い分けも理解した上で、最適な選択肢を組み立てましょう。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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