
介護ロボット導入支援事業とは
介護ロボット導入支援事業(現・介護テクノロジー導入支援事業)の補助率最大3/4、対象6分野(移乗・移動・排泄・見守り・入浴・業務支援)、申請手順、ICT補助との違いを事業主向けに解説。
この記事のポイント
介護ロボット導入支援事業は、地域医療介護総合確保基金を財源に都道府県が実施する補助金制度で、移乗・移動・排泄・見守り・入浴・介護業務支援の6分野の介護ロボット購入費を最大3/4補助する制度です。令和7年度(2025年度)からはICT導入支援事業と統合され、「介護テクノロジー導入支援事業」として一本化されました。本記事では旧称も含め、補助率・対象機器・申請手順を整理します。
目次
制度の位置づけと変遷
介護ロボット導入支援事業は、厚生労働省の地域医療介護総合確保基金(消費税財源)を活用し、各都道府県が実施主体となって介護施設・事業所の介護ロボット購入費を補助する制度です。国費負担割合は2/3、都道府県負担割合は1/3で、事業所への補助率は要件により最大3/4まで引き上げられます。
制度開始は平成27年度補正予算の「介護ロボット等導入支援特別事業」に遡り、その後「介護ロボット導入支援事業」として恒常化されました。並行して記録ソフト・タブレット端末などを対象とする「ICT導入支援事業」が別枠で運用されてきましたが、令和7年度(2025年度)から両事業は「介護テクノロジー導入支援事業」として統合され、ロボットとICTを一体的に補助する仕組みに再編されました。
そのため2026年現在、自治体の公募要綱では「介護テクノロジー導入支援事業」「介護ロボット・ICT導入支援事業」「介護テクノロジー定着支援事業」など名称が分かれていますが、財源と仕組みはすべて地域医療介護総合確保基金に基づく同系列の補助金です。
対象となる介護ロボット6分野
厚生労働省と経済産業省が共同で定めた重点6分野が補助対象です。各分野で代表的な機器例を整理します。
- 移乗支援:装着型・非装着型のパワーアシストスーツ、床走行式リフト、スライディングボード等。腰痛予防効果が期待される。
- 移動支援:自動走行型電動車椅子、歩行アシストカート、屋内移動支援ロボットなど。利用者の自立支援と職員の付き添い負担軽減を狙う。
- 排泄支援:排泄予測センサー(DFree等)、自動採尿器、トイレ誘導ロボット。失禁回数とおむつ使用量の削減に有効。
- 見守り・コミュニケーション:ベッドセンサー、画像認識見守りシステム、コミュニケーションロボット(PALRO、PARO等)。夜勤者の見回り負担を軽減。
- 入浴支援:入浴用リフト、洗髪ロボット、自動洗体機。職員の身体負担が大きい入浴介助で需要が高い。
- 介護業務支援:センサー・ICT機器を活用して介護記録・情報共有・職員間コミュニケーションを支援する機器。インカムや音声入力記録ソフトを含む。
令和7年度の統合後は、これら6分野に加えて記録ソフト・スマートフォン・タブレット端末などのICT機器も同一事業内で補助対象となり、「9分野16項目」として整理し直されています。
補助率と上限額の早見表
補助率は事業所の取組み内容により2段階に分かれます。生産性向上の取組計画策定や成果報告など所定要件を満たすと「3/4」、満たさない場合は「1/2」が適用されます。
| 区分 | 補助率 | 1機器あたり上限 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 標準(要件未充足) | 1/2 | 30万円〜100万円 | 機器の種類により上限が変動 |
| 所定要件充足時 | 3/4 | 30万円〜100万円 | 移乗・入浴支援は上限100万円 |
| パッケージ型導入 | 1/2 or 3/4 | 400万円〜1,000万円 | 複数機器の同時導入で職員規模に応じ加算 |
1事業所あたりの総額上限は、職員規模(小規模・中規模・大規模)に応じて100万円〜250万円程度が標準で、ICTパッケージ型を選択すると最大1,000万円まで拡張できる自治体もあります。具体的な上限額は都道府県ごとに公募要綱で定められるため、所管自治体の最新公募を確認する必要があります。
ICT導入支援事業との違いと統合経緯
令和6年度までは「介護ロボット導入支援事業」と「ICT導入支援事業」が別枠で運用され、補助対象機器が明確に分かれていました。
| 項目 | 旧・介護ロボット導入支援事業 | 旧・ICT導入支援事業 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 移乗・移動・排泄・見守り・入浴のロボット機器 | 介護記録ソフト、タブレット、Wi-Fi、クラウドサーバー |
| 補助上限(1機器) | 30〜100万円 | 機器ではなく事業所単位(100〜260万円) |
| 主な目的 | 身体介助の身体的負担軽減 | 記録・情報共有のデジタル化 |
| 申請窓口 | 都道府県(介護福祉担当部局) | 都道府県(介護福祉担当部局) |
令和7年度から両事業は「介護テクノロジー導入支援事業」に統合され、ロボットとICTを横断的に補助できるようになりました。これにより、見守りセンサー(ロボット側)と記録ソフト(ICT側)を同時導入し、夜勤体制を見直すといったパッケージ型の業務改革が補助対象として設計しやすくなっています。
申請から実績報告までの流れ
- 情報収集:所管都道府県の公募要綱を確認。例年4〜6月に公募開始、年度内に複数回募集する自治体もある。
- 導入機器の選定:厚労省「介護ロボットの開発・実証・普及プラットフォーム」で機器情報を確認。相談窓口(全国主要都市)で機器選定の助言も受けられる。
- 計画書・見積取得:生産性向上の取組計画書、見積書(複数社相見積もりが原則)、導入後の効果測定計画を準備。
- 交付申請:都道府県へ交付申請書を提出。交付決定前の機器購入は補助対象外になるため注意。
- 交付決定・発注:交付決定通知の受領後に正式発注、納品、支払いを実施。
- 実績報告:年度末(または指定期日)までに実績報告書、領収書、効果測定結果を提出。
- 補助金確定・支払い:書類審査後、確定通知が届き補助金が振り込まれる(精算払いが基本)。
申請書類は20〜30種類に及ぶことが一般的で、初年度は社労士・行政書士や補助金申請支援サービスへの委託も検討されます。書類不備による減額・差し戻しが頻発するため、自治体の事前相談(オンライン窓口)を活用すると採択率が安定します。
業務改善助成金との併用と生産性向上指標
介護ロボット導入支援事業(介護テクノロジー導入支援事業)は、厚労省所管の他補助金との併用が原則可能です。とくに次の制度との組み合わせが有効です。
- 業務改善助成金(厚労省・労働基準局):事業場内最低賃金を引き上げる中小事業者が、設備投資(介護ロボット含む)に対して最大600万円の助成を受けられる。地域医療介護総合確保基金との併用は同一機器・同一経費の重複は不可だが、別機器なら同年度に並行申請できる。
- IT導入補助金(中小企業庁):記録ソフトやクラウドサービスが対象。ICT統合後は介護テクノロジー導入支援事業と機能が重複するため、対象機器を分けて申請する必要がある。
3/4の高補助率を受けるには、生産性向上の取組計画を策定し、導入後に成果指標で効果測定を行うことが要件化されています。代表的な指標は次のとおりです。
- 夜勤者1人あたりの巡視回数・巡視時間の削減率
- 介護記録の入力時間(1日1人あたり分)の削減率
- 移乗介助による職員の腰痛発生件数・労災件数の推移
- 残業時間・有給取得率・離職率などの労務指標
- 利用者のADL維持・改善率(LIFEデータと連動)
これらの数値は、LIFE(科学的介護情報システム)提出データと組み合わせることで、ケアの質向上と業務効率化を統合的に評価できます。とくにADL維持等加算・科学的介護推進体制加算の算定要件と整合する指標設計が、補助金実績報告とLIFE加算の両方を満たす実務的なアプローチです。
よくある質問
- Q1. リース契約でも補助対象になりますか?
- A. 多くの自治体でリース料も補助対象に含まれますが、リース期間・契約形態に条件があります。原則として補助年度内に発生したリース料のみが対象で、複数年契約の場合は初年度分のみが補助されるケースが一般的です。
- Q2. 既に導入済みの機器は対象になりますか?
- A. 対象外です。交付決定前に購入・契約した機器は補助対象外となります。発注は必ず交付決定通知の受領後に行ってください。
- Q3. どの自治体でも同じ要綱ですか?
- A. 国の枠組みは共通ですが、補助上限額・公募時期・必要書類・優先採択条件は都道府県ごとに異なります。所管自治体の最新公募要綱を必ず確認してください。
- Q4. 訪問介護事業所も対象になりますか?
- A. 対象です。施設系(特養・老健・有料老人ホーム等)に加えて、訪問介護・通所介護・グループホーム・小規模多機能なども補助対象に含まれます。ただし機器の種類により施設系のみ対象となるものもあります。
- Q5. ICT機器(タブレット・記録ソフト)だけでも申請できますか?
- A. 可能です。令和7年度の統合後は、ロボット機器とICT機器を単独でも組み合わせでも申請できます。ICT機器のみで上限額が引き上げられる「ICTパッケージ型」を設定する自治体も増えています。
参考資料
- [1]
- [2]
- [3]
- [4]
- [5]
まとめ
介護ロボット導入支援事業は、地域医療介護総合確保基金を財源とする厚労省の補助制度で、令和7年度からは「介護テクノロジー導入支援事業」としてICT補助と統合されました。移乗・移動・排泄・見守り・入浴・介護業務支援の6分野が対象で、生産性向上の取組計画を伴うケースでは最大3/4の高補助率が適用されます。業務改善助成金やLIFE加算と組み合わせて設計することで、補助金活用とケアの質向上を両立できる仕組みです。所管都道府県の公募要綱を毎年度確認し、計画的に申請してください。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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