
福祉用具レンタルの選び方|介護保険で借りられる13種目と選定のポイント
介護保険の福祉用具貸与は車椅子・特殊寝台・歩行器など13種目が対象。要介護度別の貸与範囲、福祉用具専門相談員の役割、レンタルと購入の判断軸を家族目線で解説します。
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この記事のポイント
介護保険の福祉用具貸与は、要支援1から利用できる在宅介護の重要サービスで、車椅子・特殊寝台(介護用ベッド)・歩行器など13種目が対象です。月額レンタル料の1〜3割が自己負担となり、要介護度が低い方は対象品目に制限があります。福祉用具専門相談員が利用者の身体状況に合った機種を提案するので、ケアマネジャーへの相談から始めるのが基本の流れです。
目次
「親が退院してきたから介護用ベッドを借りたい」「車椅子を試してみたいけれど、購入と借りるのとどちらが得?」——在宅介護で福祉用具を導入するとき、家族の頭をよぎる疑問はいくつも出てきます。
介護保険の福祉用具貸与は、要支援1から利用できる公的レンタル制度で、月額自己負担はわずか数百円〜数千円ほど。自費で同じ機種を購入すると数万円〜数十万円かかる用具を、必要な期間だけ低負担で利用できる仕組みです。ただし「13種目に限定」「要介護度別の対象範囲」「軽度者は原則貸与不可の品目あり」など、ルールを知らずに使い始めると後悔するポイントがあります。本記事では制度の基本から、家族目線での選定ポイント、貸与と購入の判断軸まで一通りまとめます。
介護保険の福祉用具貸与とは
介護保険の福祉用具貸与(正式名称:居宅介護福祉用具貸与・介護予防福祉用具貸与)は、介護保険法第8条・第8条の2に基づき、要介護・要支援認定を受けた被保険者が日常生活の自立支援や介護負担軽減のために福祉用具をレンタルできる制度です。
対象となる人
要支援1・2、要介護1〜5の認定を受けた在宅生活者が対象です。施設入所中(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院など)は施設側が福祉用具を備えているため、本制度は使えません。一方、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅などは在宅扱いとなり、入居者個人で福祉用具をレンタルできます。
レンタル料の自己負担
月額レンタル料の1〜3割が自己負担です。たとえば月額1万円の介護用ベッドを1割負担で借りれば月額1,000円。月額3,000円の歩行器なら月額300円。要介護度ごとに「区分支給限度基準額」(在宅サービス全体の月額上限)が決まっており、その枠内で他の在宅サービス(訪問介護・デイサービス等)と合算されます。
申請から納品までの流れ
ケアマネジャーが居宅サービス計画(ケアプラン)に福祉用具貸与を組み込み、福祉用具事業所と契約を結びます。福祉用具専門相談員が自宅を訪問して身体状況・住環境を確認し、機種を提案・搬入。納品は契約から1週間以内が標準です。
介護保険で借りられる13種目
介護保険で貸与対象となる福祉用具は次の13種目です(介護保険法施行令第4条)。
1. 車椅子
自走式・介助式・電動車椅子の3種類。要介護2以上が原則対象。
2. 車椅子付属品
クッション・電動補助装置・テーブル等。車椅子本体とセットで貸与。
3. 特殊寝台(介護用ベッド)
背上げ・膝上げ・高さ調整機能のあるベッド。要介護2以上が原則対象。
4. 特殊寝台付属品
マットレス・サイドレール・介助バー・テーブル・スライディングボード等。
5. 床ずれ防止用具
体圧分散マットレス・エアマットレス。要介護2以上が原則対象。
6. 体位変換器
寝返り介助のための用具。要介護2以上が原則対象。
7. 手すり
工事を伴わない据置型・突っ張り型の手すり。要支援1から対象。住宅改修費の固定型手すりとは区別されます。
8. スロープ
段差解消用の可搬式スロープ。要支援1から対象。
9. 歩行器
四脚歩行器・シルバーカー型・歩行補助車。要支援1から対象。
10. 歩行補助つえ
松葉づえ・ロフストランドクラッチ・多脚杖等。T字杖・ステッキは対象外(自費購入)。
11. 認知症老人徘徊感知機器
センサーマット・GPS型感知器など。要介護2以上が原則対象。
12. 移動用リフト(つり具を除く)
床走行式・据置式・天井走行式の移乗用リフト。要介護2以上が原則対象。
13. 自動排泄処理装置
排泄物を自動吸引・分離処理する装置。尿のみは要介護1から、便も対象は要介護4以上。
要介護度別の貸与対象範囲
13種目のうち、要支援1・2、要介護1の軽度者には貸与制限がある品目があります。「軽度者の福祉用具貸与の例外給付」と呼ばれる仕組みで、原則対象外の品目を借りるには医師の医学的所見・サービス担当者会議での検討記録が必要です。
| 品目 | 要支援1・2 | 要介護1 | 要介護2〜5 |
|---|---|---|---|
| 車椅子・付属品 | 原則対象外(例外可) | 原則対象外(例外可) | 対象 |
| 特殊寝台・付属品 | 原則対象外(例外可) | 原則対象外(例外可) | 対象 |
| 床ずれ防止用具 | 原則対象外(例外可) | 原則対象外(例外可) | 対象 |
| 体位変換器 | 原則対象外(例外可) | 原則対象外(例外可) | 対象 |
| 認知症徘徊感知機器 | 原則対象外(例外可) | 原則対象外(例外可) | 対象 |
| 移動用リフト | 原則対象外(例外可) | 原則対象外(例外可) | 対象 |
| 手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえ | 対象 | 対象 | 対象 |
| 自動排泄処理装置(尿) | 原則対象外 | 対象 | 対象 |
| 自動排泄処理装置(便) | 対象外 | 対象外 | 要介護4以上のみ対象 |
例外給付の主な要件は「日常的に歩行が困難」「日常生活範囲における移動の支援が特に必要」など。医師の意見書をもとにケアマネが理由を整理し、サービス担当者会議で必要性を確認した上で市区町村に届け出れば、軽度者でも貸与が認められるケースがあります。
福祉用具専門相談員の役割と上手な使い方
福祉用具専門相談員は、福祉用具事業所に配置される厚生労働省指定の専門職で、利用者の身体状況・住環境に合った機種の選定をサポートします。家族にとって最も頼れる「現場のプロ」です。
初回訪問でのアセスメント
初回訪問では、本人の体格・関節可動域・握力・歩行状態を観察し、家屋内の動線(ベッドからトイレまでの距離・段差・廊下幅など)を採寸します。ここで「車椅子の幅は廊下を通れるか」「介護用ベッドのサイズは寝室の扉を通せるか」など、家族では見落としがちな実用ポイントが洗い出されます。
機種の試用
多くの福祉用具事業所では、複数機種を持ち込んで「2週間試用」できるサービスを提供しています。歩行器は3社の機種を実際に使ってみて、本人が一番扱いやすいものを選ぶケースが多いです。試用期間中は基本的に費用はかからず、納得した機種をそのまま貸与契約に切り替えます。
定期モニタリング
納品後も6か月に1回以上のモニタリング訪問が義務付けられています。身体状況の変化に合わせて機種を変更したり、付属品を追加したりするサポートも受けられます。要介護度が変わったタイミングでは積極的に機種見直しを依頼するのがおすすめです。
家族からの具体的な要望の伝え方
「夜中のトイレ介助で起き上がりが大変」など、家族の介助負担が見えるエピソードを伝えると、相談員は介助バーや起き上がり補助のアタッチメントを提案できます。本人の自立だけでなく、家族の介助負担軽減も提案の対象になることを覚えておきましょう。
月額自己負担の目安(1割負担の場合)
主な福祉用具の月額レンタル料相場と、1割負担時の自己負担額の目安です。事業所・地域・機種により若干の差があります。
| 用具 | 月額レンタル料(10割) | 1割負担時 | 2割負担時 |
|---|---|---|---|
| 介護用ベッド(2モーター) | 10,000〜13,000円 | 1,000〜1,300円 | 2,000〜2,600円 |
| 介護用ベッド(3モーター) | 13,000〜16,000円 | 1,300〜1,600円 | 2,600〜3,200円 |
| 体圧分散マットレス(エアマット) | 7,000〜10,000円 | 700〜1,000円 | 1,400〜2,000円 |
| 標準型車椅子(介助式) | 3,500〜5,000円 | 350〜500円 | 700〜1,000円 |
| 電動車椅子 | 15,000〜25,000円 | 1,500〜2,500円 | 3,000〜5,000円 |
| 歩行器(四脚) | 2,500〜3,500円 | 250〜350円 | 500〜700円 |
| シルバーカー型歩行器 | 1,500〜2,500円 | 150〜250円 | 300〜500円 |
| 据置型手すり | 1,500〜2,500円 | 150〜250円 | 300〜500円 |
| 可搬式スロープ | 2,000〜4,000円 | 200〜400円 | 400〜800円 |
| 床走行式リフト | 15,000〜25,000円 | 1,500〜2,500円 | 3,000〜5,000円 |
2024年度介護報酬改定では、貸与価格の上限が品目ごとに設定され、全国平均価格+1標準偏差を超えた機種は保険給付の対象外となるルールが導入されました。事業所が示す価格が「上限価格内」かは契約時に確認できます。
貸与と購入(特定福祉用具販売)の判断軸
福祉用具には「貸与」と「販売(特定福祉用具販売)」の2つの給付があります。判断軸を整理します。
特定福祉用具販売の対象品目(5種目)
直接肌に触れる・他人の使用を避けたい用具は「販売」となり、貸与の対象になりません。年間10万円までの購入費の1〜3割が保険給付されます(同一年度内)。
- 腰掛便座(ポータブルトイレ・補高便座)
- 自動排泄処理装置の交換可能部品
- 排泄予測支援機器(2022年新設)
- 入浴補助用具(シャワーチェア・浴槽内椅子・浴槽手すり等)
- 簡易浴槽
- 移動用リフトのつり具
貸与か購入か迷う場面
2024年度改定で、固定用スロープ・歩行器(歩行補助つえを除く)・歩行補助つえ(松葉づえを除く)の3品目は「貸与・販売の選択制」になりました。長期使用が見込まれる軽量歩行器などは購入の方が経済的なケースもあります。
| 判断軸 | 貸与が向いている | 購入が向いている |
|---|---|---|
| 使用期間 | 3年未満 | 3年以上の長期 |
| 身体状況の変化 | 進行性で機種変更の可能性 | 状態が安定 |
| メンテナンス | 事業所が定期点検 | 自己管理可能 |
| 品目 | 13種目すべて | 5種目(販売対象) |
福祉用具選びで失敗しないコツ
納品前に住環境を必ず採寸する
介護用ベッドが寝室に入らない、車椅子が廊下を通れない、というトラブルは実際に起きています。福祉用具専門相談員は採寸プロですが、家族も「寝室のドア幅・廊下幅・玄関の段差高さ」を事前に測っておくと、機種選びがスムーズになります。
本人の体格・利き手・既往歴を伝える
身長・体重だけでなく、利き手や麻痺の有無、関節リウマチなどの既往歴を相談員に共有すると、適切な機種が選ばれます。たとえば右麻痺の方には、左手で操作しやすい歩行補助杖が選ばれるべきです。
夜間・緊急時の動線を想定する
「夜中のトイレ介助」「急な発熱で病院への移動」など、トラブル時の動線も含めて福祉用具を考えると、後悔のない選定になります。介護用ベッドの隣にポータブルトイレを設置する例、玄関に折りたたみ車椅子を常備する例など、相談員が現場で見てきた経験を活かせる場面です。
複数機種の試用を活用する
福祉用具事業所では、契約前に複数機種を持ち込んで2週間程度の試用ができるサービスを提供しています。歩行器・車椅子・マットレスは特に個人差が大きいので、必ず複数試してから決めましょう。
福祉用具レンタルに関するよくある質問
Q. 借りた用具が合わない場合、機種変更できますか?
A. 可能です。福祉用具専門相談員のモニタリングで身体状況の変化や使い勝手の不一致が確認されれば、別機種への切り替えができます。途中解約・機種変更は事業所への連絡だけで対応できることが多く、追加費用は通常発生しません。
Q. 福祉用具事業所はどう選べばよいですか?
A. 担当ケアマネジャーから2〜3社の紹介を受け、対応エリア・取扱機種・モニタリング頻度を比較しましょう。同じ品目でも事業所によって貸与価格に幅があるため、必ず見積比較を行います。「全国平均貸与価格」より高い場合は理由(特殊機能・上位機種等)を確認してください。
Q. 軽度者でも介護用ベッドを借りられる例外給付はどうすれば認められますか?
A. 主治医意見書に「日常生活範囲における移動の支援が特に必要」「立ち上がりが困難で起居動作の介助が必要」等の医学的所見が記載され、ケアマネジャーがサービス担当者会議で必要性を確認した上で市区町村に届け出れば認められます。日常生活自立度や認知症の程度も判断材料になります。
Q. 入院中も福祉用具のレンタルは継続できますか?
A. 短期入院(1か月以内)であれば一時休止扱いでレンタル料が日割計算される場合が多いです。長期入院(1か月以上)になる場合は一旦解約し、退院時に再契約するのが一般的です。事業所と相談して柔軟に対応しましょう。
代表的な品目別・選び方のポイント
車椅子の選び方
自走式・介助式・電動の3タイプから本人の身体機能に応じて選びます。屋外移動が多い方は折りたたみ式の介助用、屋内中心ならコンパクトな自走式が便利です。座面の幅はお尻の幅+5cm程度、座面奥行は太もも長さ−5cm程度が標準。長時間座る方は体圧分散クッションを併用すると、褥瘡(じょくそう)予防になります。
歩行器の選び方
四脚歩行器は両手で持ち上げて移動するタイプで、立位保持が比較的しっかりした方向け。シルバーカー型(前輪付き)は前に押して歩くタイプで、屋外移動が多い方や買い物に出かける方に適します。最近は前腕支持型歩行器(プラットフォーム歩行器)も普及し、手で握れない方でも安定して歩行できる選択肢が増えました。
体圧分散マットレスの選び方
体圧分散マットレスはエア(空気圧調整)・ウレタン・ハイブリッド型の3種類。寝返りができない・痩せて骨が突出している・既に褥瘡がある方は、自動体位変換機能つきのエアマットレスが推奨されます。一方、ある程度自力で寝返りができる方は、低反発ウレタンマットレスでも対応可能です。寝心地の好みも個人差があるため、試用期間を活用して本人が眠りやすい機種を選びましょう。
歩行補助つえの選び方
T字杖は介護保険の貸与対象外(自費購入)ですが、ロフストランドクラッチ(前腕固定型)・多脚杖・松葉づえは貸与対象です。握力が弱い方・手首に痛みがある方はロフストランドクラッチが、立位バランスが不安定な方は4点支持杖(多脚杖)が選ばれます。
参考文献・出典
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契約から納品・返却までの実務フロー
契約書のチェックポイント
福祉用具事業所と交わす貸与契約書では、月額レンタル料・自己負担額・支払い方法(口座振替/集金)・解約条件・モニタリング頻度を必ず確認します。「6か月に1回以上のモニタリング訪問」「機種変更時の追加費用ゼロ」「解約は1か月前通知」などが標準条件です。
納品時の確認
納品当日は福祉用具専門相談員が機種の使い方説明と動作確認を行います。介護用ベッドのリモコン操作、車椅子のブレーキ確認、歩行器の高さ調整など、家族も一緒に立ち会い、その場で操作練習をしておきましょう。納品書・取扱説明書は必ず保管します。
使用中のメンテナンス
消耗品(マットレスカバー・車椅子クッションカバー等)は定期交換、本体の故障時は事業所への連絡で無償交換が標準です。エアマットレスのコンプレッサー故障など、緊急性の高いトラブルは24時間対応の事業所も多くあります。
返却時の流れ
本人が施設入所・入院・お亡くなりになった場合は、家族から事業所へ電話で連絡し、引き取り日を調整します。引き取りは契約解除後5営業日以内が標準で、返却時のクリーニング費用は事業所負担です。最終月のレンタル料は日割計算されることが多いですが、契約書で確認してください。
まとめ
介護保険の福祉用具貸与は、在宅介護を支える上で住宅改修と並ぶ重要な公的サービスです。13種目の対象範囲・要介護度ごとの貸与制限・自己負担の目安を理解しておくと、家族にとって最適な福祉用具を選びやすくなります。
大切なのは「福祉用具専門相談員を頼ること」と「身体状況の変化に応じた見直し」の2点です。一度借りた用具を使い続けるのではなく、定期モニタリングで機種変更や付属品追加を柔軟に行うことで、本人の自立支援と家族の介助負担軽減の両立が実現します。まずは担当ケアマネジャーへ「福祉用具を検討したい」と相談する一歩から始めてください。
監修者
介護のハタラクナカマ 医療・介護監修チーム
医療・介護専門職チーム(看護師/介護福祉士/ケアマネジャー)
訪問看護・介護保険・医療保険に関する制度内容を、厚生労働省・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の一次ソースをもとに、医療・介護専門職チームが内容の正確性を確認しています。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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