介護保険の住宅改修費 申請手順|対象工事・上限・支給までの流れ
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介護保険の住宅改修費 申請手順|対象工事・上限・支給までの流れ

介護保険の住宅改修費は要支援1から20万円まで使える在宅介護の重要な制度。手すり設置・段差解消・滑り止め床材など6種目の工事が対象。事前申請が必須で、ケアマネとの相談から支給まで5ステップで解説。

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介護保険の住宅改修費は、要支援1以上の認定を受けた方が自宅をバリアフリー化する工事費用について、上限20万円までを自己負担1〜3割で利用できる制度です。対象は手すり設置・段差解消・滑り止め床材など6種目に限定され、工事前に市区町村への事前申請が必須。事後申請は原則不可なので、ケアマネジャーへの相談から始めるのが基本の流れです。

目次

「親が転倒するのが心配で、家のあちこちに手すりを付けたい」「玄関の段差をなくしたいけれど自費だと高くつく」——介護が始まると、自宅をどう安全にするかが家族の大きな悩みになります。

介護保険の住宅改修費は、こうした在宅介護のバリアフリー工事を公的に支える仕組みです。要支援1から使え、上限20万円の工事費に対し原則1割(所得により2〜3割)負担で済むため、自費でリフォームするよりはるかに安く済みます。ただし「事前申請が必須」「対象工事は6種目に限定」「住所変更すると再支給可」など細かいルールがあり、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員と連携しながら進める必要があります。本記事では制度の全体像から申請の具体的な手順、よくあるトラブル回避ポイントまで、家族目線でまとめます。

介護保険の住宅改修費とは

介護保険の住宅改修費(正式名称:居宅介護住宅改修費・介護予防住宅改修費)は、介護保険法第45条に基づき、要介護・要支援認定を受けた被保険者が自宅をバリアフリー化する場合に支給される給付です。

支給上限と自己負担

支給対象となる工事費の上限は1人につき生涯20万円まで(消費税込み)。自己負担は所得に応じて1〜3割で、たとえば1割負担の方が20万円の工事を行えば自己負担は2万円、保険給付は18万円となります。

対象となる人

要支援1・2、要介護1〜5の認定を受けた在宅生活の方が対象。施設入所中(特養・老健・有料老人ホーム等)は使えませんが、施設からの一時帰宅期間中に自宅で行う工事は対象になる場合があります。

住所変更と要介護度の重度化での再支給

原則として上限20万円は生涯1回ですが、①転居して住所が変わった場合、②要介護度が3段階以上重くなった場合(例:要支援1→要介護3)には、再度20万円の枠が付与されます。

対象となる工事6種目

介護保険の住宅改修費で対象となる工事は、法令で6種目に限定されています。

1. 手すりの取り付け

廊下・トイレ・浴室・玄関・階段への手すり設置。L字型・I字型・縦手すりなど形状は自由ですが、後付けではなく工事を伴う固定型に限ります。福祉用具貸与の「貸与手すり」とは別物です。

2. 段差の解消

敷居の撤去、スロープの設置、踏み台・式台の固定設置など。可搬式の段差解消機(電動)は福祉用具レンタル扱いで本制度の対象外です。

3. 滑り防止・移動円滑化のための床材変更

畳→板敷きへの変更、滑りにくいフローリング材への張替えなど。クッションフロアへの変更も含みます。

4. 引き戸等への扉の取替え

開き戸→引き戸、折り戸への取り替え。ドアノブのレバー式への交換も対象です。

5. 洋式便器等への便器の取替え

和式便所→洋式便所への取り替え。便座の高さ変更や暖房便座機能の追加も含みます。

6. その他、上記改修に付帯して必要な工事

手すり設置のための壁下地補強、床材変更に伴う家具移動費など。本工事の付随分のみが対象です。

申請から支給までの5ステップ

ステップ1:ケアマネジャーへ相談

担当ケアマネジャー(要支援の方は地域包括支援センター)へ「住宅改修を検討したい」と伝えます。本人の身体状況と住環境を踏まえ、ケアマネは工事の必要性を判断し、福祉用具専門相談員と連携して工事プランの方向性を整理します。

ステップ2:工事業者の選定と見積取得

地域の福祉用具業者・リフォーム業者から見積もりを取得。市区町村によっては「住宅改修事業者登録制度」があり、登録業者からの見積もりが必要な場合があります。

ステップ3:事前申請

市区町村の介護保険担当窓口に「住宅改修費支給申請書」を提出します。必要書類は次のとおり:

  • 住宅改修費支給申請書
  • 住宅改修が必要な理由書(ケアマネジャー作成)
  • 工事費見積書(業者作成)
  • 住宅改修前後の写真・図面
  • 所有者の承諾書(持ち家以外の場合)

ステップ4:工事の実施

市区町村から確認通知が届いてから工事を開始します。必ず事前申請後の着工が必要で、申請前に始めた工事は支給対象外になります。工事中の写真と完成後の写真を撮影しておきましょう。

ステップ5:支給申請(事後)

工事完了後、領収書・工事費内訳書・改修後の写真を添えて支給申請を行うと、後日、口座に保険給付分(工事費の7〜9割)が振り込まれます。受領委任払い制度を導入している市区町村では、利用者は最初から自己負担分のみを支払う仕組みも選べます。

工事種目別の費用相場と給付例

工事内容費用相場1割負担時の自己負担額
トイレ手すり1本(L字型)2〜4万円2,000〜4,000円
玄関スロープ設置5〜15万円5,000〜15,000円
浴室手すり(複数本)4〜8万円4,000〜8,000円
和式→洋式便器交換15〜25万円15,000〜25,000円(上限超過分は自費)
滑り止め床材張替え(6畳分)8〜15万円8,000〜15,000円
開き戸→引き戸交換10〜20万円10,000〜20,000円

上限20万円を超える工事は自費となります。複数の工事を組み合わせる場合は、優先度の高いものから上限内で行い、後日改めて申請するのが一般的な使い方です。

よくあるトラブルと回避策

申請前に着工してしまった

最も多い失敗が「家族が良かれと思って手すりを先に設置してしまい、後から保険適用できないと知る」ケース。事前申請の原則は市区町村が厳格に運用するため、事後申請ではほぼ全件却下されます。少しでも「介護保険を使えそう」と思ったら、まずケアマネジャーに連絡しましょう。

賃貸住宅の承諾書を取り忘れた

賃貸物件・公営住宅では大家・管理会社の「承諾書」が必須です。承諾書の文面は市区町村に書式があるので、業者・ケアマネ経由で取得し早めに大家に依頼しておくと、工事日程が遅れません。

家族で勝手に業者を決めた

住宅改修事業者の登録制を採用している自治体では、未登録の業者の工事は給付対象外になります。事前に市区町村の介護保険課へ「登録事業者リスト」を確認するか、ケアマネ経由で適切な業者を紹介してもらうと安全です。

20万円を一度に使い切らないほうが安心

転倒予防のため最初に手すり数本だけ設置し、残りの枠は今後の住環境変化に備えて残しておく運用が現場でよく見られます。要介護度が進んで浴室改修が必要になった時のために、初回工事で全額消費しない判断もアリです。

自治体ごとの上乗せ助成事例(主要都市)

介護保険の住宅改修費(上限20万円)に加えて、独自の上乗せ助成を行う自治体が全国にあります。お住まいの市区町村の制度を確認すると、自己負担を大きく減らせる場合があります。

自治体制度名追加助成額主な対象
東京都(区市町村)高齢者住宅改修給付(東京都板橋区・世田谷区等)20万円〜100万円要介護認定者・65歳以上で要支援相当の方
横浜市高齢者等住環境整備事業上限59万円要介護2以上の方・浴室改修等
神戸市高齢者住宅改修費助成事業上限30万円介護保険給付の対象外工事も補助
名古屋市高齢者住宅改造費補助上限30万円所得制限あり・要介護認定者
札幌市高齢者等自立支援住宅改修給付上限20万円介護保険給付の対象外品目を補助

これらの自治体独自助成は、所得制限や事前申請の手続きが介護保険給付とは別に必要なケースが多く、申請窓口も高齢者福祉課などに分かれます。ケアマネジャーや地域包括支援センターに「お住まいの市区町村で独自の住宅改修助成はあるか」を必ず確認してください。介護保険給付と併用すれば、20万円+自治体助成数十万円という大規模リフォームも自己負担を抑えて実現できる場合があります。

住宅改修費に関するよくある質問

Q. 賃貸でも使えますか?

A. 使えます。ただし大家・管理会社の承諾書が必須です。退去時の原状回復については大家と事前に話し合い、書面で取り決めておくとトラブルを防げます。公営住宅の場合は管理者(市区町村住宅課等)への申請窓口が別途あります。

Q. 工事業者は自分で選んでいいですか?

A. 多くの市区町村では自由に選べますが、住宅改修事業者登録制度がある自治体(東京都・神奈川県の一部、大阪府など)では登録業者からの選定が必要です。福祉用具専門相談員に相談すると、地域の信頼できる業者を紹介してもらえます。

Q. 20万円を超える工事は全部自費ですか?

A. 超過分は自費ですが、自治体によっては独自の上乗せ助成(プラス5〜10万円程度)を持っているところもあります。お住まいの市区町村の高齢者福祉課や地域包括支援センターに「独自助成の有無」を確認してみてください。

Q. 申請から工事完了まで何日かかりますか?

A. ケアマネ相談から事前申請まで2週間、市区町村審査と工事日程調整で2〜4週間、工事自体は1日〜数日が標準。トータルで1〜2か月を見込むのが現実的です。緊急性が高い場合(退院後すぐ)はケアマネに「優先審査」を依頼すると短縮できる場合があります。

参考文献・出典

まとめ

介護保険の住宅改修費は、上限20万円という限られた枠ではありますが、自己負担1〜3割という極めて手厚い公的支援です。手すり1本・滑り止め床材・段差解消スロープといった小規模工事を組み合わせるだけで、家族の介護負担と転倒リスクを大きく下げられます。

大切なのは「事前申請の原則」と「ケアマネ経由の進め方」の2点。家族が独断で工事を進めると保険適用できなくなる可能性があるため、まずは担当ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する一歩から始めてください。20万円の枠を計画的に使い切る視点も、長期介護では大切な工夫です。

家族で進める時の段取り(補足)

住宅改修は工事計画の段階から「家族で全員参加して決める」のが後悔のない進め方です。本人が暮らす空間ですが、毎日の介助に入る家族の動きやすさも工事計画に反映されると、結果的に介助負担が減ります。

家族全員での現地確認

退院後に在宅介護を始めるケースなら、退院前に本人を一度自宅に連れて来て、実際に手すりが欲しい位置・段差で困る箇所を本人に指差してもらうのが理想です。本人の身長・利き手・歩行パターンを反映した手すり高さは、後付け修正がしにくい部分です。

ケアマネ・福祉用具専門相談員との3者会議

ケアマネが「住宅改修が必要な理由書」を書く前に、福祉用具専門相談員と家族で工事プランを練り上げると、申請書類の説得力が増します。市区町村審査担当も「3者でしっかり検討した跡が分かる申請」には好意的です。

将来の重度化を見越したプラン

要支援1の段階で改修するなら、5年後・10年後に要介護3〜4になった時の動線も想定しておきます。たとえば手すりは「今は不要だがいずれ必要になる位置」にも下地補強だけ先にしておくと、後で手すり追加が安価で済みます。

賃貸物件で住宅改修を行うときの実例

大家・管理会社との交渉の進め方

賃貸住宅で住宅改修を行う場合、最初の関門が大家・管理会社の承諾取得です。実例では、ケアマネジャーが介護保険の住宅改修費制度の概要を説明する文書を作成し、家族が大家に面談で「親の身体状況」「工事内容」「退去時の対応」を丁寧に説明したところ、3日で承諾が得られたケースがあります。逆に電話一本で「手すりを付けたい」と切り出すと、原状回復を理由に拒否されるケースが多くあります。

退去時の原状回復の取り決め

承諾書には「退去時の原状回復はどうするか」を必ず書面化しておきます。手すり程度であれば、退去時に取り外し・ビス穴補修まで業者に依頼すれば原状回復可能です。実例では、退去時の補修費用(2〜5万円程度)を入居者負担で約束する代わりに、改修工事の承諾を得るパターンが多く見られます。

UR都市機構・公営住宅の特別ルール

UR賃貸住宅では「高齢者向け住戸改修制度」があり、手すり設置やドア改修について事前承認の手続きが整備されています。公営住宅(都営・市営住宅)では「住宅改造費助成事業」を独自に持つ自治体もあり、原則として住宅課への申請が別途必要です。介護保険給付と公営住宅の改造助成を併用できる場合もあるため、入居先の管理事務所にも事前確認が欠かせません。

リフォーム業者選びの比較ポイント

住宅改修の成否はリフォーム業者選びで7割が決まる、と現場のケアマネジャーは口を揃えます。介護保険の住宅改修費を使う場合、一般のリフォーム業者ではなく、介護保険の制度に精通した業者を選ぶのが鉄則です。

福祉用具事業所が併設するリフォーム業者

地域の福祉用具事業所が住宅改修も請け負っているケースが多く、福祉用具専門相談員が現場を見て手すりの位置を提案するため、本人の身体状況に合った工事になります。市区町村の介護保険課で「住宅改修事業者一覧」を入手できる地域もあるため、まずは登録業者からリストアップします。

3社相見積もりが鉄則

同じ「トイレ手すり設置」でも、業者によって2万円から5万円まで価格差が出ます。最低3社から見積もりを取り、工事内容・使用部材・保証期間を比較することで適正価格を見極められます。安いだけでなく「手すりの太さ・素材・取付高さ」の提案内容も重視しましょう。

避けたい業者の特徴

「介護保険を使えば実質無料です」とだけ強調する業者、「すぐに契約を」と急かす業者は警戒が必要です。実際には事前申請が必要であり、見積から工事まで最短でも2〜3週間かかります。また、訪問販売で唐突に「手すりを付けませんか」と勧誘してくる業者は、消費者被害につながりやすいパターンとして国民生活センターも注意喚起しています。地域包括支援センターやケアマネ経由で紹介される業者を選ぶのが最も安全です。

住宅改修費に関するよくある質問(追加)

Q. 事前申請の書類記入例はどこで入手できますか?

A. 市区町村の介護保険課窓口、または市区町村の公式サイトでダウンロードできます。記入例は「ケアマネジャー作成欄」(住宅改修が必要な理由書)と「申請者記入欄」(住所・氏名・工事概要)で分かれます。記入時に最も多いミスは「工事日程の記入漏れ」と「見積金額と申請金額の食い違い」。記入後はケアマネに必ず一度チェックしてもらうことを強くお勧めします。

Q. 20万円の枠を一度に使い切るべきか分割で使うべきか

A. 現場のケアマネジャーは「初回は10万円程度で抑え、残り10万円を将来の重度化に備える」運用を提案するケースが多いです。たとえば要介護1の段階で手すり数本+玄関スロープで7万円を使い、要介護3〜4に進んだ段階で浴室全面改修に残り13万円を使う、というのが典型的な分割戦略です。逆に重度化が確実視される疾患(脳卒中後遺症等)の方は、最初から20万円全額を浴室・トイレ・廊下のセット改修に投じるパターンが選ばれます。

Q. 介護認定が降りていない段階で工事してもいいですか?

A. 介護保険の給付は要支援1以上の認定者が対象なので、認定前の工事は対象外です。退院後すぐ介護が始まるケースでは、認定申請と同時に「暫定ケアプラン」での認定見込み判定をケアマネが行い、認定が降りる前提で住宅改修の事前申請を進める運用もあります。緊急性が高い場合は地域包括支援センターに早めに相談してください。

Q. 一度工事した箇所を再度改修できますか?

A. 同じ場所での工事は原則1回限りですが、要介護度が3段階以上重くなった場合、または転居した場合は再度20万円の枠が付与されます。たとえば要支援1で手すりを設置した方が要介護3になった時点で浴室改修を追加する、というケースは典型的なリセット適用例です。

監修者

介護のハタラクナカマ 医療・介護監修チーム

医療・介護専門職チーム(看護師/介護福祉士/ケアマネジャー)

看護師介護福祉士ケアマネジャー

訪問看護・介護保険・医療保険に関する制度内容を、厚生労働省・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の一次ソースをもとに、医療・介護専門職チームが内容の正確性を確認しています。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。

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