介護用ベッド(特殊寝台)の選び方|サイズ・機能・付属品まで家族向けに解説
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介護用ベッド(特殊寝台)の選び方|サイズ・機能・付属品まで家族向けに解説

介護用ベッドは特殊寝台と呼ばれ、介護保険で要介護2以上が原則貸与対象。1〜3モーターの違い、サイズ選び、マットレスやサイドレールなどの付属品、レンタル料金相場まで家族目線で詳しく解説します。

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介護用ベッド(特殊寝台)は介護保険の福祉用具貸与で借りられる代表的な用具で、要介護2以上が原則対象。背上げ・膝上げ・高さ調整の電動機能を持ち、1モーター(背上げのみ)・2モーター(背上げ+膝上げ/背上げ+高さ調整)・3モーター(背上げ+膝上げ+高さ調整)の3タイプから選びます。月額レンタル料は1割負担で1,000〜1,600円程度。マットレス・サイドレール・介助バーなどの付属品も合わせて貸与できます。

目次

「親が退院後に在宅介護を始めるので、介護用ベッドを用意したい」「市販のベッドと介護用ベッドはどう違うの?」「マットレスは何を選べばいい?」——介護用ベッドの導入は、在宅介護を始める家族にとって最初の大きな選択になります。

介護用ベッドは正式には「特殊寝台」と呼ばれ、介護保険の福祉用具貸与の対象品目です。背上げ・膝上げ・高さ調整といった電動機能が、本人の起き上がりや家族の介助負担を大幅に軽減します。ただし、要介護2以上が原則対象、付属品の選び方、購入と貸与の判断など、知っておくべきポイントがいくつもあります。本記事では介護用ベッドの基礎から、家族目線の選び方、料金相場まで包括的に解説します。

介護用ベッド(特殊寝台)とは

介護用ベッド(特殊寝台)は、介護保険法施行令第4条で定められた福祉用具貸与の品目のひとつです。「サイドレールが取り付けてあるもの、または取付け可能なもの」かつ「背部または脚部の傾斜角度を変えられるもの、または床板の高さが調整できるもの」と定義されています。

市販のベッドとの違い

市販のリクライニングベッドと最大の違いは、医療・介護現場で求められる安全基準(JIS規格・ISO規格)への適合と、サイドレール・介助バー・テーブル等の付属品の連携です。介護保険貸与の特殊寝台は、転落防止サイドレールの装着位置・介助バーの取付け強度などが厳格に設計され、寝たきりに近い方の介護にも安全に使えます。

介護保険貸与の対象要件

原則として要介護2以上の認定者が対象です。要支援1・2、要介護1の軽度者は「軽度者の福祉用具貸与の例外給付」として、医師の意見書とサービス担当者会議での必要性確認を経れば貸与可能になる場合があります。たとえば「日常的に起き上がりが困難」「日常的に寝返りが困難」と医学的に判断されれば、例外給付の対象です。

レンタルが原則・購入は自費

介護用ベッドは介護保険では「貸与」のみが給付対象で、購入は給付対象外です。自費で購入する場合は10万円〜30万円が相場ですが、長期使用が予想されない限り、貸与(月額1,000〜1,600円の自己負担)の方が圧倒的に経済的です。

1モーター・2モーター・3モーターの違い

介護用ベッドはモーターの数によって動かせる部位が変わります。本人の身体状況に応じて適切なタイプを選びます。

タイプ動作部位適した方月額レンタル料(10割)1割負担
1モーター背上げのみ食事・テレビ視聴が中心、自力で起き上がれる方7,000〜9,000円700〜900円
2モーター(背+膝)背上げ・膝上げ背上げ時のずり落ちを防ぎたい方、ベッド上で過ごす時間が長い方10,000〜13,000円1,000〜1,300円
2モーター(背+高さ)背上げ・高さ調整家族の介助負担を軽くしたい方10,000〜13,000円1,000〜1,300円
3モーター背上げ・膝上げ・高さ調整寝たきりに近い方、介助頻度が高い方13,000〜16,000円1,300〜1,600円

選び方の目安

本人が自力でベッド上の生活を送る場合は2モーター(背+膝)、家族介助が頻繁に入る場合は3モーター、というのが一般的な選び方です。要介護4〜5の重度者は3モーター一択になることが多く、移乗介助のために床面の高さを変えられる機能が必須になります。要介護2の段階では2モーターから始めて、重度化したら機種変更する流れも珍しくありません。

サイズ(幅・長さ)の選び方

介護用ベッドのサイズは、本人の体格と寝室のスペースに合わせて選びます。

サイズ区分長さ適した方
レギュラー(標準)83〜91cm191cm身長170cmまでの方、寝返りが少ない方
ミニ(短尺)83〜91cm180cm身長160cm前後の小柄な方、寝室が狭い場合
ワイド91〜100cm191cm身長170cm以上の方、寝返り動作が大きい方
セミロング83〜91cm205cm身長180cm以上の長身の方

寝室への搬入動線を確認

サイズ選びの前に、寝室までの動線(玄関→廊下→寝室ドア→寝室内設置スペース)を採寸します。ベッドは分割搬入できる機種が多いですが、組み立て後のサイズと寝室扉幅・廊下幅は事前確認が欠かせません。また、ベッド周りに介助者が立てるスペース(ベッドの片側50cm以上)も確保しましょう。

側面のスペースと介助動線

介助頻度が高い場合、ベッドの両側を空けられる配置が理想です。難しい場合は介助動作の多い側(例:右麻痺なら左側)を空けます。テレビ視聴や窓からの景色などの本人の希望も考慮に入れて、心地よく過ごせる向きを選びましょう。

特殊寝台付属品(マットレス・サイドレール等)の選び方

介護用ベッドと組み合わせて使う付属品も、介護保険の貸与対象になります。本体の機能と組み合わせて、本人と家族の負担を減らす設計にします。

マットレス

体格と身体状況に応じて、ウレタン(標準)・エア・ハイブリッドの3種類から選びます。寝返りができる方はウレタン、寝たきりや褥瘡リスクがある方はエアマットレス(体圧分散・自動体位変換機能つき)を選びます。マットレスは「床ずれ防止用具」「特殊寝台付属品」のどちらかに分類されますが、両者は別の介護保険貸与品目です。

サイドレール

転落防止のため、ベッドの長辺に取り付けるバーです。寝返り時の転落リスクがある方には必須。サイドレールに収納ポケットやランプを内蔵した機種もあります。本人が立ち上がる時の支えにもなりますが、認知症の方は乗り越え事故のリスクがあるため、サイドレールの高さや配置を福祉用具相談員と相談します。

介助バー(ベッド用手すり)

起き上がり・立ち上がり時の支えとして、サイドレールよりも握りやすい縦型・横型のバー。本人がベッドから自立して起き上がれる方には最適のサポート用品です。スイングタイプ(左右に動かせるタイプ)は車椅子への移乗時に邪魔にならず便利です。

テーブル

ベッド上で食事・読書ができるサイドテーブルやオーバーテーブル。ベッドに食事を運ぶ機会が多い場合は必須です。高さ調整・角度調整できる機種が便利。

スライディングボード

ベッドから車椅子への移乗介助を補助する滑り板。重度の方の移乗介助で家族の腰痛予防に効果的です。床走行式リフトの代替としても使えます。

ベッド導入から納品までの流れ

ステップ1:ケアマネジャーへ相談

「介護用ベッドを検討したい」と担当ケアマネジャーに伝えます。要介護2以上であれば原則貸与対象、要介護1以下でも例外給付の可能性を相談できます。本人の体格・既往歴・身体機能・住環境を踏まえ、ケアマネは福祉用具事業所を紹介します。

ステップ2:福祉用具専門相談員の自宅訪問

福祉用具事業所から専門相談員が自宅を訪問し、寝室の採寸・本人のアセスメント・機種提案を行います。複数機種のカタログを比較しながら、家族の希望(介助負担軽減・本人の自立促進など)を伝えると、相談員が最適な組み合わせを提案します。

ステップ3:機種試用

多くの事業所では、納品前に1〜2機種を試用できるサービスを提供しています。本人がリモコン操作できるか、マットレスの硬さは合っているか、サイドレールの高さは適切かを確認します。試用期間は通常無料です。

ステップ4:契約と納品

機種が決まれば貸与契約を結び、納品日を調整します。納品日は分解搬入後、相談員がその場で組み立てて動作確認まで実施。リモコン操作の使い方を家族にも説明します。納品から1週間以内に再度モニタリング訪問があるのが一般的です。

ステップ5:定期モニタリングと機種変更6か月に1回以上の定期モニタリングで、身体状況の変化や使用上のトラブルを確認します。要介護度が変わった、本人の身体機能が変化した、家族の介助負担が増えた、などの状況変化があれば、機種変更を相談できます。

介護用ベッド導入時の注意点

寝室の温度・湿度管理

介護用ベッドを設置する寝室は、エアコン・加湿器の風が直接当たらない位置に配置します。電動部分(モーター)に湿気がこもると故障の原因に。風通しを確保しつつ、本人の体温維持に配慮した温度設定(夏26〜28度、冬20〜22度)が目安です。

転落事故の予防

サイドレールがあっても、認知症の方の転落事故は完全には防げません。床にクッションマットを敷く、ベッドの高さを最低まで下げて寝かせる、人感センサーを設置するなど、複数の対策を重ねます。

褥瘡(じょくそう)予防

寝たきりに近い方は、2時間ごとの体位変換が褥瘡予防の基本です。3モーターベッドの高さ調整機能で介助者の腰痛を防ぎ、エアマットレスの自動体位変換機能を活用するとケア負担が軽減します。仙骨部・かかと・肩甲骨に発赤があれば早めに訪問看護師に相談しましょう。

停電時の手動操作

介護用ベッドは停電時も手動でリクライニングを下げられる「緊急下降機構」を備えた機種が標準です。納品時に操作方法を確認しておきましょう。停電が頻発する地域では、ポータブル電源の併用も選択肢です。

家族の介助負担を減らす使いこなしポイント

高さ調整は介護腰痛予防の必須機能

3モーターベッドの「高さ調整」は本人のためというより、家族・介助者の腰痛予防のための機能です。おむつ交換・着替え・体位変換時には床面を高くし(介助者の腰高さ)、本人が立ち上がる時は床面を低くする(本人の膝高さ)といった使い分けで、介助負担が大幅に減ります。

背上げ時の「圧抜き」

背上げ機能を使うと体が下にずれ落ちる「ずれ」が発生し、皮膚への摩擦が褥瘡の原因になります。背上げ後に膝下にクッションを入れて固定し、肩甲骨周辺と仙骨部のシーツを軽く持ち上げて「圧抜き」をすると、ずれが解消されます。

移乗動作の連携

ベッドから車椅子への移乗時は、ベッドの高さを車椅子の座面と同じ高さに合わせるとスムーズです。スライディングボードや床走行式リフトと組み合わせると、女性の介助者でも体格の大きな方を安全に移乗できます。

本人の起き上がり練習

本人が自力で起き上がる練習をする時は、2モーター(背上げのみ)からゆっくり始めて、リハビリスタッフの指導のもと段階的に進めます。家族が手を貸しすぎると本人の身体機能が低下する可能性があるため、ベッド機能を活用した「適度な自立支援」がポイントです。

本人の状態別・おすすめのベッド構成例

パターン1:要介護2・自立度が高い方

ベッド本体は2モーター(背上げ+膝上げ)、マットレスはウレタン、付属品は介助バー1本という構成が標準。本人が自力で起き上がれるため、過剰な機能は不要です。月額自己負担は1割で約1,200円。家族の介助は声かけ・見守り中心です。

パターン2:要介護3・移乗介助が必要な方

3モーター(背・膝・高さ)、ウレタンorハイブリッドマットレス、サイドレール2本、介助バー1本という構成が多く選ばれます。高さ調整で家族の腰痛予防、介助バーで本人の起き上がり支援、サイドレールで転落予防という三位一体の構成です。月額1,600〜2,000円程度。

パターン3:要介護4〜5・寝たきりの方

3モーター、エアマットレス(自動体位変換機能つき)、サイドレール2本、スライディングボードという構成です。褥瘡予防のためのエアマットレスは必須で、スライディングボードで家族の移乗介助負担を軽減します。月額自己負担は1割で2,500〜3,000円程度になります。

パターン4:終末期・看取りケア

3モーターベッドに、専用のエアマットレス(褥瘡予防)と、ベッド周辺に介助者の動線を確保した配置。終末期では訪問看護師・訪問診療医も自宅に出入りするため、ベッド周辺に1m以上の空間を確保することが理想です。

介護用ベッドに関するよくある質問

Q. 要介護1ですが介護用ベッドを借りられますか?

A. 原則対象外ですが、例外給付の対象になる可能性があります。主治医意見書に「日常的に起き上がりが困難」「日常的に寝返りが困難」と記載され、サービス担当者会議で必要性が確認されれば貸与可能です。ケアマネジャーに「例外給付の検討」を依頼してください。

Q. 短期入院中もレンタル料はかかりますか?

A. 入院期間が1か月以内なら、事業所により日割計算や一時休止扱いに対応します。長期入院(1か月超)が見込まれる場合は、いったん解約して退院時に再契約する方が経済的です。

Q. ベッドの組み立てや搬入は誰がしますか?

A. 福祉用具事業所のスタッフが搬入・組み立て・動作確認まで実施します。家族の作業は不要で、納品当日は寝室を片付けて搬入動線を確保するだけで大丈夫です。

Q. 介護用ベッドのリモコン操作が難しい場合は?

A. 認知症の方や手の動きが不自由な方には、シンプルな操作のリモコン(ボタンが少ない大型タイプ)や、家族専用のロック機能つきリモコンに変更できます。事業所に相談すれば付属品の入れ替えで対応してもらえます。

Q. マットレスは別契約ですか?

A. ウレタンマットレスはベッド本体とセットで貸与されることが多いですが、エアマットレス・ハイブリッドマットレスは別契約(追加料金)になります。月額500〜1,000円程度の自己負担増になりますが、褥瘡予防には不可欠です。

介護用ベッドの起き上がり介助の手順

介護用ベッドを最大限活用するには、家族が機能を使いこなした介助手順を身につけることが重要です。基本的な起き上がり介助の流れを紹介します。

ステップ1:声かけと体位確認

「これから起き上がりますね」と本人に声をかけ、本人の意識レベルや体調を確認します。発熱・吐き気・胸痛がある場合は無理に起こさず、看護師・主治医に相談してください。

ステップ2:背上げ角度を段階的に上げる

リモコンで背上げ角度を30度→60度→90度と段階的に上げます。一気に90度まで上げると血圧変動でめまい・気分不快を起こすことがあるため、各段階で1〜2分の様子見をします。膝上げも同時に上げると、ずり落ち防止になります。

ステップ3:ベッドの高さを足裏が床に着く高さに調整

3モーターベッドなら、本人がベッド端に座った時に足裏が床にしっかり着く高さに調整します。膝が90度より少し開くくらいが理想的で、立ち上がりやすくなります。

ステップ4:足を床におろして端座位へ

サイドレールや介助バーを支えにして、本人にゆっくり足を床におろしてもらい、ベッドの端に座る「端座位」を取ります。介助者は本人の前に立ち、両手を本人の腰に添えて支えます。

ステップ5:立ち上がりまたは車椅子への移乗

端座位で1〜2分静止し、めまいがないことを確認してから立ち上がり介助、または車椅子への移乗を行います。家族の安全のため、移乗時は介助者の足を本人の足の外側に置き、腰を落として支えるフォームを心がけましょう。

参考文献・出典

まとめ

介護用ベッド(特殊寝台)は、在宅介護を始めるご家族にとって最も生活への影響が大きい福祉用具のひとつです。1〜3モーターのタイプ選択、サイズ、付属品の組み合わせは、本人の自立支援だけでなく介助者の負担軽減にも直結します。

大切なのは「ケアマネジャーと福祉用具専門相談員に任せる」ことと、「身体状況の変化に応じた機種見直し」を継続すること。要介護2の段階で2モーターから始めて、重度化に応じて3モーターやエアマットレスに切り替える、というのが多くの家族が選ぶ柔軟な活用方法です。月額1,000〜1,600円という低負担で、本人と家族のQOLを大きく改善できる制度ですので、ぜひ積極的に活用してください。

監修者

介護のハタラクナカマ 医療・介護監修チーム

医療・介護専門職チーム(看護師/介護福祉士/ケアマネジャー)

看護師介護福祉士ケアマネジャー

訪問看護・介護保険・医療保険に関する制度内容を、厚生労働省・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の一次ソースをもとに、医療・介護専門職チームが内容の正確性を確認しています。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。

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