訪問入浴サービスの利用方法|利用対象・スタッフ体制・料金まで家族目線で解説
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訪問入浴サービスの利用方法|利用対象・スタッフ体制・料金まで家族目線で解説

訪問入浴介護は浴槽を持ち込み看護師1名と介護職員2名で在宅で入浴を支える介護保険サービス。寝たきりで自宅浴室の入浴が困難な方が対象。1回45〜60分・自己負担1,500円前後で安心の入浴を実現します。

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訪問入浴介護は、看護師1名と介護職員2名の計3名チームが専用浴槽を自宅に持ち込み、寝たきりの方の入浴介助を行う介護保険サービスです。要介護1から利用でき、1回の所要時間は45〜60分。介護保険1割負担で1,500円前後(要介護度・地域・サービス内容により変動)。自宅浴室での入浴が困難な方や、デイサービスの入浴を負担に感じる方の選択肢として、在宅介護で重要な役割を果たします。

目次

「寝たきりの親を週1回でも入浴させたいが、自宅の浴室では介助できない」「デイサービスの入浴は本人が嫌がる」「家族だけでは抱えきれない」——在宅介護で「入浴」は家族の大きな悩みのひとつです。

訪問入浴介護は、こうした課題に対する最も心強い解決策です。専用浴槽を自宅に持ち込み、看護師1名・介護職員2名の専門チームが入浴を全面サポート。寝たきりの方や医療的ケアが必要な方でも、自宅で安心して湯につかれる介護保険サービスです。本記事では訪問入浴のサービス内容・利用対象・料金・利用までの流れ・家族目線の活用ポイントまで包括的に解説します。

訪問入浴介護とは

訪問入浴介護(正式名称:訪問入浴介護・介護予防訪問入浴介護)は、介護保険法第8条・第8条の2に基づき、要介護・要支援認定を受けた被保険者の自宅に専用浴槽を持ち込み、入浴を支援するサービスです。

専用浴槽の持ち込みが特徴

訪問入浴で使う浴槽は、軽量で組み立て式の専用浴槽です。事業所の車両(訪問入浴車)から浴槽・給湯設備・湯沸かし装置を屋内に運び込み、寝室や居間など本人が普段過ごす場所で入浴を実施します。浴槽の大きさは長さ約190cm・幅約80cmが標準で、寝室の畳1〜2畳分のスペースがあれば設置可能です。

3名チームの専門スタッフ

訪問入浴は看護師1名と介護職員2名の3名チームでの提供が基本です。看護師が血圧・脈拍・体温などのバイタルチェックを行い、入浴可否を判断。介護職員2名が浴槽搬入・脱衣介助・洗髪・洗体・着衣介助を分担します。1人での介助では難しい寝たきりの方も、3名チームなら安全に入浴できます。

対象となる人

要支援1・2、要介護1〜5の認定を受けた在宅生活者で、自宅浴室での入浴が困難な方が対象。具体的には「寝たきりに近い」「自力で浴室まで移動できない」「デイサービスの入浴介助が体調的に難しい」などの状況で利用されます。

訪問入浴の流れ(45〜60分)

訪問入浴当日のサービスは、玄関到着から退室までおよそ45〜60分。標準的な流れを紹介します。

1. 到着・搬入(10〜15分)

3名チームが訪問入浴車で到着し、浴槽・給湯装置・タオル類を屋内に搬入します。浴槽は分解状態で運び、設置場所で組み立て・給湯を開始。本人は事前にトイレを済ませておくとスムーズです。

2. 健康チェック(5分)

看護師が体温・血圧・脈拍・呼吸数を測定し、本人の体調を確認します。発熱(37.5℃以上)・極端な血圧変動・著しい体調不良がある場合は入浴を中止し、清拭や部分浴に変更することもあります。本人と家族の安全確保が最優先です。

3. 脱衣・洗体(10〜15分)

介護職員2名が脱衣を介助し、シャワーで全身の洗体・洗髪を行います。寝たきりの方は専用ストレッチャーやスライディングシートで浴槽に移乗します。皮膚状態(褥瘡・発疹・湿疹)も観察し、看護師が経過を記録します。

4. 入浴(10分)

本人の体調を見ながら、浴槽でゆっくり身体を温めます。湯温は38〜40℃が標準で、本人の好みに合わせて調整。長湯は心臓に負担をかけるため、5〜10分を目安に上がります。

5. 着衣・整容(10分)

身体を拭き、着替えと整髪・髭剃り・爪切りなどの整容まで行います。本人の希望に応じて化粧水・保湿クリームの塗布も対応可能です。

6. 退室・後片付け(10分)

使用後の浴槽・給湯装置を消毒し、車両へ撤収。使ったタオルや備品も持ち帰るため、家族の片付け作業はほぼ不要です。

訪問入浴の料金(介護保険1〜3割負担)

訪問入浴介護の介護報酬は1回あたりの単位数で決められ、地域区分により単価が異なります。標準的な料金例を示します(2024年度介護報酬改定後・1単位10円換算)。

サービス内容料金(10割)1割負担2割負担3割負担
全身浴(要介護1〜5)約12,600円約1,260円約2,520円約3,780円
清拭または部分浴に変更約9,420円約942円約1,884円約2,826円
介護予防訪問入浴(要支援)約8,490円約849円約1,698円約2,547円

加算でつく追加料金

サービス提供体制強化加算(職員のキャリア評価による上乗せ)・初回加算(利用開始月の追加報酬)・看護職員加配加算など、事業所の体制により加算がつくことがあります。利用開始時に契約書で内訳を確認してください。

頻度と月額の目安

週1回利用なら月4回で1割負担5,000円程度、週2回なら月10,000円程度が目安です。区分支給限度基準額(要介護度ごとの月額上限)の枠内で、訪問介護・デイサービス・福祉用具など他のサービスと組み合わせて使います。

訪問入浴 vs 訪問介護の入浴介助 vs デイサービスの入浴

在宅介護で入浴を支える方法は3つあります。本人の身体状況・家族の介護負担・希望に応じて使い分けます。

項目訪問入浴介護訪問介護の入浴介助デイサービスの入浴
場所自宅(専用浴槽持込)自宅浴室デイサービス施設
スタッフ看護師1名+介護職員2名介護職員1名施設の介護職員・看護師
対象者寝たきり・自宅浴室入浴困難多少の介助で自宅浴室を使える方移動可能で施設に通える方
所要時間45〜60分30〜60分(入浴のみ)半日〜1日(他の活動と一体)
1回の費用(1割)約1,260円約400〜600円デイ料金に含む
本人の負担自宅で安心自宅で安心外出による疲労あり
医療的ケア対応看護師同行で可能限定的施設看護師に依存

選び方の目安

寝たきりや人工呼吸器・吸引が必要な方は訪問入浴、軽度の介助で自宅浴室を使える方は訪問介護、社会的交流も含めたい方はデイサービスというのが一般的な使い分けです。中には「平日はデイサービス、土曜は訪問入浴」と組み合わせる方も多くいます。

訪問入浴サービスを利用開始するまでの流れ

ステップ1:ケアマネジャーに相談

担当ケアマネジャー(要支援の方は地域包括支援センター)に「訪問入浴を検討したい」と伝えます。本人の身体状況・自宅浴室の状況・主治医の入浴可否判断を踏まえ、ケアマネが利用の必要性を判断します。

ステップ2:主治医の意見書取得

訪問入浴では入浴中の急変リスクが伴うため、主治医の「入浴可能」の意見書または書面確認が必要です。心疾患・高血圧・呼吸器疾患など、入浴に注意が必要な既往歴がある場合は、医師から「湯温・湯量・入浴時間」の指示が出ます。

ステップ3:事業所の選定と契約

地域の訪問入浴事業所をケアマネが2〜3社紹介してくれます。対応エリア・空き状況・スタッフ体制・料金を比較して選びます。契約前に、事業所担当者が自宅を訪問して浴槽搬入の動線・設置場所を確認するアセスメントを行います。

ステップ4:初回サービス

初回は通常の流れに加え、本人の好みの湯温・洗髪方法・嫌がるポイントなどをスタッフがヒアリングします。家族も立ち会って、コミュニケーションを取りながら本人の希望をスタッフに伝えると、2回目以降がスムーズです。

ステップ5:定期利用とケアプラン見直し

週1〜2回の定期利用が標準です。本人の身体状況・季節(夏は週2回、冬は週1回など)に応じて頻度を調整します。要介護度の変化やADLの変化があれば、ケアプラン見直し時に頻度や時間帯を変更します。

訪問入浴を上手に活用するコツ

本人の好みに合わせたサービス調整

湯温(38℃のぬるめが好きな方、40℃の熱めが好きな方)、洗髪頻度(毎回 vs 週1回)、入浴中の会話(賑やかに vs 静かに)など、本人の好みを事業所に伝えるとサービス満足度が大きく上がります。本人が認知症で意思表示できない場合は、家族が本人の生活歴を踏まえて代弁します。

季節ごとの利用調整

夏場は汗をかきやすいため週2回、冬場は体調を崩しやすいため週1回、というように季節調整するのが一般的です。インフルエンザ流行期や本人の体調不良時は休止・延期も柔軟に対応できます。

家族の準備事項

サービス当日は、入浴後の着替えとタオル(バスタオル・フェイスタオル)を用意します。寝室・居間の搬入動線(玄関〜浴槽設置場所までの廊下)を片付け、設置スペース(畳1〜2畳分)を空けておきます。電源コンセント1個と給湯のための水道(または持参給湯)が必要です。

医療的ケアとの連携

胃ろう・在宅酸素・人工呼吸器など医療的ケアが必要な方は、看護師が同行することで安全に入浴できます。訪問看護と訪問入浴を組み合わせて、入浴前後の医療的ケアを訪問看護師が対応するパターンもあります。在宅医療の主治医・訪問看護師・訪問入浴事業所の3者連携を、ケアマネが調整します。

入浴中の体調急変への備え

訪問入浴は安全性の高いサービスですが、入浴中の体調急変リスクをゼロにはできません。家族として知っておきたい備えを整理します。

入浴前の体調管理

当日朝の検温・血圧測定・食事量の確認を行い、サービス到着前にスタッフに「いつもより食欲がない」「夜中に何度も目が覚めた」などの情報を共有します。発熱・脱水・血圧変動の兆候があれば、看護師が早めにシャワー浴・清拭への変更を判断できます。

入浴中の急変対応

看護師が常時バイタルチェックを行い、意識消失・血圧低下・呼吸困難などの兆候があれば即座に入浴中止・浴槽外への搬出を行います。重大な急変時は119番通報と同時に、訪問看護や主治医への連絡も並行で行うのが標準フローです。家族は救急隊への引き継ぎ情報(既往歴・服薬リスト・かかりつけ医)を整理しておくと安心です。

入浴後の様子観察

入浴は身体に大きな刺激を与えるため、入浴後30分〜1時間は静かに休息し、家族や訪問看護師が様子観察を行います。発汗・水分摂取・脱水予防のため、入浴後は経口補水液やお茶を提供すると安心です。夕方〜夜に体調変化が出る方もいるため、いつもと違うサインに気づいたら早めに連絡を取れる体制を作っておきましょう。

家族目線の活用事例(パターン別)

事例1:脳梗塞後遺症で寝たきりの父・要介護4

右半身麻痺で自力では浴室に行けず、家族3人がかりでも介助が困難だったケース。週1回の訪問入浴を導入したことで、家族の介助負担がほぼゼロになり、本人もリラックスして湯につかれる時間が貴重な楽しみになりました。看護師が褥瘡の状態を毎週チェックしてくれることも家族の安心材料になっています。

事例2:認知症の母・要介護3

デイサービスの集団入浴を嫌がり、家族介助の入浴も拒否することが多かったケース。自宅で慣れたスタッフが対応する訪問入浴に切り替えたところ、不安が減って素直に入浴に応じるように。本人のペースに合わせたきめ細やかな対応が、認知症ケアでも効果的です。

事例3:パーキンソン病の80代女性・要介護2

動作が不安定で転倒リスクが高く、自宅浴室の入浴は家族が付き添っても不安が大きかったケース。訪問入浴に切り替え、看護師が血圧・脈拍を確認しつつ、薬の効果が出ている時間帯(オン時間)に合わせて入浴を実施。本人の体調管理と家族の負担軽減を両立できました。

事例4:在宅看取り期の利用

終末期の在宅療養中、訪問入浴で「最後にもう一度ゆっくり湯につかりたい」という本人の希望を叶えたケース。家族と看護師が立ち会い、本人にとっても家族にとっても心に残る時間になりました。ターミナルケアでの訪問入浴は、QOLを高める重要な選択肢のひとつです。

訪問入浴に関するよくある質問

Q. 自宅にお風呂があっても利用できますか?

A. 利用できます。自宅浴室があっても、本人が浴室まで移動できない・介助者が浴室で介護できない(浴室が狭い、家族が高齢など)といった事情があれば対象になります。ケアマネジャーが本人の状況をアセスメントして判断します。

Q. マンションでも利用できますか?

A. 利用できます。浴槽は分解搬入で軽量なので、エレベーターのあるマンションなら問題なく搬入可能です。エレベーターなし4階以上の場合は事業所に相談が必要です。給湯設備は事業所が車両から持参するため、自宅の給湯機能は不要です。

Q. 入浴を断られることはありますか?

A. 体温37.5℃以上の発熱、明らかな体調不良、医師から入浴中止指示が出ている場合は入浴を中止し、清拭または部分浴に変更します。請求料金もそれに合わせて減額されます。安全を最優先する判断ですので、本人と家族の理解が大切です。

Q. 訪問看護との違いは何ですか?

A. 訪問看護は看護師による医療的ケア(点滴・服薬管理・褥瘡処置・カテーテル管理など)が主で、入浴は補助的なサービスです。訪問入浴は入浴介護そのものを目的としたサービスで、看護師は入浴中の安全確保が主な役割。両者は別のサービスとして併用できます。

Q. シャワー浴だけでも利用できますか?

A. 利用できます。体調不良時や本人の希望でシャワー浴・部分浴のみに変更する場合は「清拭」料金(全身浴より約3割減)になります。看護師の判断で湯につからずシャワー浴に切り替えるケースは珍しくありません。

参考文献・出典

費用を抑えて訪問入浴を活用する工夫

区分支給限度基準額の枠内で組み合わせる

訪問入浴は他の在宅サービスと合わせて区分支給限度基準額(月額の利用上限)の枠内に収める必要があります。たとえば要介護3の方は月額限度額が約27万円ですが、その中で訪問介護・デイサービス・福祉用具・訪問入浴を組み合わせます。ケアマネジャーが利用バランスを設計しますが、家族から「お風呂を優先したい」と伝えると、入浴頻度を増やす設計が可能です。

高額介護サービス費の払い戻し

1か月の自己負担合計が一定額(住民税課税世帯は44,400円、非課税世帯は24,600円など)を超えた場合、高額介護サービス費として超過分が後日払い戻されます。訪問入浴を含む全サービスの自己負担を合算して計算するため、頻度を上げても上限を超えなければ追加費用が抑えられる仕組みです。

事業所間の料金比較

訪問入浴の介護報酬は全国共通ですが、加算(サービス提供体制強化加算など)の有無で実質的な料金に差が出ます。同じ地域で複数の事業所を比較し、加算の少ない事業所を選ぶと月額1,000円〜2,000円の節約になることがあります。ただし加算は職員のスキル評価でもあるため、サービス品質と料金のバランスをケアマネと相談しましょう。

市町村独自の入浴助成事業

一部の自治体(東京都港区・大阪府吹田市など)では、介護保険とは別に「入浴サービス利用助成」を実施しています。月数千円の助成が出る自治体もあるため、市区町村の高齢者福祉課に確認してみる価値があります。

まとめ

訪問入浴介護は、寝たきりや重度の身体状況にある方でも自宅で安全に入浴できる介護保険サービスです。看護師1名・介護職員2名の3名チームが専用浴槽を持ち込み、医療的ケアの必要な方にも対応しながら、本人と家族にとって貴重な「お風呂の時間」を支えます。

大切なのは、本人の身体状況・好み・体調変化に応じてサービスを調整すること。週1〜2回の定期利用を基本に、訪問看護・デイサービス・訪問介護と組み合わせることで、在宅介護を持続可能なものにできます。「自宅浴室での入浴がきつくなってきた」「デイサービスの入浴を本人が嫌がる」と感じたら、まずは担当ケアマネジャーに「訪問入浴の検討」を相談してみてください。

監修者

介護のハタラクナカマ 医療・介護監修チーム

医療・介護専門職チーム(看護師/介護福祉士/ケアマネジャー)

看護師介護福祉士ケアマネジャー

訪問看護・介護保険・医療保険に関する制度内容を、厚生労働省・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の一次ソースをもとに、医療・介護専門職チームが内容の正確性を確認しています。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。

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