
経口栄養補助(ONS)は低栄養の高齢者の予後を改善するか|「誰に効くか」を分ける研究エビデンスを介護現場目線で読み解く
経口栄養補助食品(ONS)が高齢者の体重・死亡・合併症をどこまで改善するか、Cochraneレビューやランダム化試験の数値を介護職向けに翻訳。効くのは「低栄養と判定された人」で、フレイル全般や機能・QOLへの効果は不確実という線引きを、現場の栄養ケアにどう活かすかまで解説します。
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この記事のポイント
低栄養になった、あるいはその一歩手前の高齢者に、ふだんの食事に足して経口栄養補助(栄養を補うための飲料やゼリーなど。ONSと呼ばれます)を使うと、体重がわずかに増え、入院中の人では合併症が減り、「低栄養」と判定された人にしぼると死亡が減る可能性があります。一方で、元気さや歩く力(身体機能)や生活の満足度(QOL)がはっきり良くなるという確かな証拠は乏しく、「飲めば誰でも元気になる」わけではありません。効果がはっきり見えるのは、やせや食べられなさが進んだ人に、ねらいを定めて使ったときです。栄養状態がそれほど悪くない人や、フレイル(心身の弱り)全般にばらまいても、研究では効果がはっきりしません。だからこそ介護現場では、「誰に・どんな目的で・食事と一緒にどう足すか」を見極めることが、商品選び以上に大切になります。
目次
食が細くなり、見るからにやせてきた利用者に、ゼリーや栄養ドリンクのような「補助の一品」を足す。介護の現場では当たり前の光景です。けれど、ふと立ち止まると疑問がわきます。「これ、本当に意味があるのだろうか」「ただ気休めで配っているだけではないか」と。
結論から言うと、経口栄養補助(ONS)は「誰に使うか」で効果がはっきり分かれる介入です。やせや食べられなさが進んで「低栄養」と判定された人には、体重が増えたり、入院中の合併症や死亡が減ったりする可能性が研究で示されています。ところが、栄養状態がそこそこ保たれている人や、弱ってはいるけれど低栄養とまでは言えない人にばらまいても、研究では効果がはっきりしません。さらに、「元気になる」「歩けるようになる」「生活が楽しくなる」といった、家族や本人がいちばん期待する変化については、確かな証拠が乏しいのが正直なところです。
この記事では、海外の大きな研究と日本の制度をつなぎ合わせて、「ONSは誰に・どんな目的で・どう使うと意味があるのか」を、介護職の目線で整理します。商品の良し悪しではなく、「見極めの軸」を持ち帰ってもらうことがねらいです。
そもそも経口栄養補助(ONS)とは|「食事の代わり」ではなく「足し算」
経口栄養補助(ONS=oral nutritional supplements。経口補助食品・栄養補助飲料などとも呼ばれます)とは、ふだんの食事だけでは必要なエネルギーやたんぱく質が足りないときに、食事に「足して」口から飲んだり食べたりする栄養補助の製品のことです。少量で高エネルギー・高たんぱくに作られた飲料タイプ、ゼリータイプ、ムースタイプなどがあり、施設でも在宅でも広く使われています。市販の経口補助食品をイメージするとわかりやすいでしょう。
大事なのは、ONSは「食事の代わり(置き換え)」ではなく「食事の足し算(上乗せ)」として設計されている点です。研究の世界でも、ほとんどは「通常の食事+ONS」と「通常の食事のみ」を比べています。つまり、ONSの効果を考えるときは「これを飲めば食事はいらない」ではなく、「足りない分をどう埋めるか」という発想が前提になります。チューブで胃に直接入れる経管栄養や、点滴で血管から入れる静脈栄養とは違い、ONSはあくまで口から摂る方法で、本人の「食べる力」が残っていることが使う条件になります。
では、この「足し算」は本当に高齢者の体や予後を変えるのでしょうか。ここで効果を語るときに、絶対に外せない前提が一つあります。それは「対象が低栄養か、低栄養のリスクがあるか」という入り口です。研究の結論は、この入り口の違いで大きく割れます。次の章から、そのズレを具体的な数字で見ていきます。
土台になる証拠|Cochraneレビューが示した「効くのは低栄養の人」
ONSの効果を考えるとき、最初に押さえたいのがCochraneレビュー(複数の研究を集めて統合し解析した結果=メタ解析。世界で最も信頼される証拠のまとめ方の一つ)です。Milneらがまとめた「低栄養またはそのリスクのある高齢者へのたんぱく質・エネルギー補給」のレビューは、62件のランダム化試験(対象者をくじ引きで2グループに分けて比べる、効果を最も確かめやすい方法)・あわせて10,187人を統合しています。
主な結果を、数字の意味を添えて並べます。
| みたこと | 結果(原報の値) | 日常語での読み方 |
|---|---|---|
| 体重の変化 | +2.2%(信頼区間1.8〜2.5) | ONSを足した群は体重がおよそ2%増えた。確実だが小さな増加。 |
| 死亡(全員) | RR 0.92(0.81〜1.04) | 約1割低い向きだが、偶然の範囲を超えず「差があるとは言えない」。 |
| 死亡(低栄養と判定された人にしぼる) | RR 0.79(0.64〜0.97) | 低栄養の人だけで見ると約2割低く、偶然では説明しにくい差。 |
| 合併症 | RR 0.86(0.75〜0.99) | 感染や床ずれなどの合併症が約1〜2割少ない傾向。 |
| 身体機能・QOL | 効果を示せた試験はわずか | 歩く力や生活の満足度が良くなる確かな証拠は乏しい。 |
ここでの「RR(相対危険=リスク比)」は、ざっくり言えば「ONSを足した群のリスクが、足さない群の何倍か」を表す数字です。1.0なら差なし、0.79なら「約2割低い」と読みます。
このレビューの最大のポイントは、全員を一緒くたにすると死亡の差は消えるのに、「低栄養」と判定された約2,461人にしぼると死亡が約2割減るという点です。つまりONSは「高齢者なら誰でも」ではなく、すでに栄養が枯れかけている人にこそ効く可能性がある。この「対象を選ぶ」という性質が、ONSを理解する一番の鍵になります。
結論が割れるポイント|「入院・低栄養の人」と「在宅・フレイル全般」では話が違う
Cochraneの「対象を選べば効く」という線引きは、その後の研究でさらにはっきりします。対象と場面が変わると、結論が正反対に近いほど割れるのです。代表的な二つの研究を並べてみます。
① 入院・低栄養の人に「効いた」研究(NOURISH試験)
DeutzらのNOURISH試験は、心不全・心筋梗塞・肺炎・COPDで入院した65歳以上・低栄養(栄養状態を医師が低栄養と判定)の652人を、高たんぱくのONS(たんぱく質20g・筋肉を保つ成分HMB・ビタミンD入り)を飲む群と、見た目が同じだが効果のない飲料(プラセボ)を飲む群に、くじ引きで分けて比べました。退院後90日を追跡した結果です。
- 主要な指標(再入院または死亡をまとめた割合)は 26.8% 対 31.1%で、統計的な差はありませんでした。つまり「再入院も含めた総合点」では勝てていません。
- ところが90日後の死亡だけを見ると 4.8% 対 9.7%、RR 0.49(0.27〜0.90)と約半分。偶然では説明しにくい差でした(1人の死亡を防ぐのに約20人が飲む必要があるという計算)。
ここで誤読しないでほしいのは、「主要な総合指標では差がつかず、死亡という一部の指標で差が出た」という構造です。死亡が減ったのは心強い一方、研究が最初に立てた「再入院も含めた勝負」では引き分けだった、という両面をセットで覚えておく必要があります。なおこの研究はONSメーカーの資金提供を受けています(結果を否定する根拠ではありませんが、読むときの前提として知っておく事実です)。
② 在宅・フレイル全般では「証拠が乏しい」研究(Lancet Healthy Longevity)
一方、Thomsonらが2022年にまとめたメタ解析は、地域で暮らす「フレイル(心身が弱った状態)」の高齢者に対象を広げました。11件のランダム化試験・822人を統合した結果は、「フレイルや、それに伴う悪い結果を減らすという証拠は乏しい」。エネルギーやたんぱく質の摂取、移動の力にわずかな効果の可能性はあるものの、証拠の確かさ(GRADEという格付け)は「very low=とても低い」とされ、生活の満足度(QOL)への効果もまちまちでした。
この二つを並べると、ONSの正体が見えてきます。「入院していて、はっきり低栄養」の人には予後を変えうるが、「在宅で、弱ってはいるが低栄養とは限らない」人全般にばらまいても効果は確認できない。同じ「ONS」でも、誰に使うかで意味がまったく変わるのです。
食欲が落ちた人ではどうか|体重は増えるが、食欲そのものはわずか/続けにくさという壁
もう一つ、現場で気になるのが「食欲が落ちた人」への効果です。Liらが2021年にまとめたメタ解析は、食欲不振のある高齢者(平均81.9歳)を対象にした17件のランダム化試験・1,204人を統合しました。
| みたこと | 結果(原報の値) | 日常語での読み方 |
|---|---|---|
| 体重 | 効果の大きさ SMD 0.53(0.41〜0.65) | 一般的な目安では「中くらい」の効果。体重は増えやすい。 |
| エネルギー摂取 | SMD 0.46(0.29〜0.63) | 「小さい〜中くらい」。食べる総量は増える方向。 |
| 食欲そのもの | MD 0.18(0.03〜0.33) | 統計的には差があるが、変化はごくわずか。 |
「SMD(効果の大きさの目安)」は、一般的なものさしでは0.2前後=小さい、0.5前後=中くらい、0.8以上=大きい、と読みます(この目安は数字を読むための一般的な基準で、原報の値そのものではありません)。体重やカロリー摂取は増える一方、「食欲が戻る」という変化はごくわずかでした。経口栄養補助(ONS)は「食べたい気持ちを取り戻す薬」ではなく、「食べられる範囲で栄養を底上げする手段」と理解するほうが実態に近いのです。
見落とされがちな「続けにくさ」
もう一つ、効果の前提として大きいのがアドヒアランス(指示どおり続けられるか)です。複数のレビューで、年齢が高いほどONSを飲みきれず残してしまう傾向が指摘されています。どれだけ良い製品でも、飲みきれなければ栄養は届きません。研究で効果が出ているのは「ちゃんと飲めた人」での話であり、「処方した=効いた」ではない点は、現場でこそ実感のあるところでしょう。味の好み、温度、とろみ、一度に飲む量、出すタイミング。この「続けてもらう工夫」こそ、介護職の腕の見せどころになります。
数字を読み違えないための6つの注意点
- 「全員で効果なし=意味なし」ではない。Cochraneでは全員だと死亡の差は消えますが、低栄養の人にしぼると約2割減ります。効くかどうかは「平均」ではなく「対象」で決まります。逆に、低栄養でない人に配っても効果は期待しにくい、という意味でもあります。
- 「死亡が半分」は対象を限った話。NOURISH試験の「90日死亡4.8%対9.7%」は、心肺疾患で入院した低栄養の高齢者という、かなり限られた集団の結果です。元気な在宅高齢者にそのまま当てはめてはいけません。しかも同じ研究の「再入院も含めた総合指標」では差がついていません。
- 体重・カロリーが増えること=元気になること、ではない。体重増加は多くの研究で確かですが、歩く力や生活の満足度(QOL)がはっきり良くなる証拠は乏しいままです。「数字が動いた」と「暮らしが良くなった」は別物として扱います。
- フレイル全般への「ばらまき」は支持されていない。在宅のフレイル高齢者を対象にしたメタ解析では、証拠の確かさは「very low」。弱っている人みんなにとりあえずONS、という発想は研究では裏づけられていません。
- 飲みきれなければ効果は届かない。研究の好成績は「続けられた人」での話。高齢者ほど飲み残しが増える傾向があり、続けてもらう工夫が効果を左右します。
- ONSは食事の置き換えではなく足し算。食事を減らしてONSに頼ると本末転倒です。研究も「食事+ONS」を前提にしています。口から食べる楽しみを削らないことが大前提です。
現場でどう活かすか|「とりあえずONS」から「評価して、ねらって、続けてもらう」へ
研究の線引きを、介護現場の動きに翻訳します。ポイントは「配る前に見極める」「配ったら続けてもらう」「数字で振り返る」の3段階です。
1. まず「本当に低栄養か/リスクか」を評価する
経口栄養補助(ONS)が効くのは低栄養または低栄養リスクの人でした。だから出発点は商品選びではなく評価です。体重の推移、食事摂取量(何割食べたか)、見た目のやせ、握力やふくらはぎの細さ。施設ならMNA-SFやGLIM基準で低栄養かどうかを多職種で判定します。「最近よく残すな」という気づきを、評価のテーブルに乗せるのが介護職の最初の仕事です。
2. 食事を削らず「足し算」として位置づける
ONSは置き換えではなく上乗せ。食事の楽しみや口から食べる力を奪わないことが大前提です。主食を減らしてONSに置き換えると、総量が増えず本末転倒になります。介護食の種類と栄養管理の工夫(刻み・とろみ・補食)と組み合わせ、まず食事を最大化したうえで、足りない分をONSで埋める順番が基本です。
3. 「続けてもらう」を設計する
効果は飲みきれて初めて出ます。味の好み(甘い・甘くない)、温度(冷やす・常温)、形態(飲料・ゼリー・ムース)、一度の量を小分けにする、食間や口腔ケアのあとに出すなど、「残さず摂れる出し方」を一人ひとりに合わせる。飲み残しが続くなら製品や出し方を変える。これは管理栄養士任せにせず、毎日そばにいる介護職だからこそ拾える情報です。ミールラウンド(多職種での食事観察)の場に、その気づきを持ち込みましょう。
4. 制度の枠組みに乗せて記録・共有する
2021年度以降、特養などでは栄養マネジメント強化加算(11単位/日)で、低栄養リスクの高い人に栄養ケア計画を立て、週3回以上のミールラウンドを行い、状態を経口維持加算などと一体で運用する仕組みが整っています。状態はLIFE(科学的介護情報システム)に提出してフィードバックを受けます。ONSを「なんとなく配る」のではなく、評価→計画→観察→記録→見直しのサイクルに乗せることが、研究の知見を現場で再現する道筋です。
介護職のキャリアにとっての意味|「根拠を持って栄養を語れる人」になる
栄養ケアは「管理栄養士の仕事」と思われがちですが、実際に利用者の食事量を毎日見て、残食に気づき、味や形態の相性を知っているのは介護職です。ONSの研究を読めることは、その日々の観察を「加算につながる根拠ある栄養ケア」へ引き上げる武器になります。
| 強み(メリット) | 気をつける点(デメリット・限界) |
|---|---|
| 「低栄養の人にこそ効く」と説明でき、漫然とした配布や逆に必要な人への出し惜しみを防げる | 研究は「対象を選べば効く」であって万能ではない。期待を上げすぎると家族・本人の落胆を招く |
| 残食・飲み残しの観察を、栄養マネジメント強化加算やLIFEの記録に直結させられる | 機能やQOLの改善は証拠が乏しい。「歩けるようになる」と安易に言わない節度が要る |
| 多職種カンファレンスで管理栄養士・看護師と対等に栄養を語れ、連携の質が上がる | 医療的な投与量の判断は管理栄養士・医師の領分。越境せず情報提供役に徹する |
| 「科学的介護(LIFE)」の流れに乗れ、評価・記録ができる職員として市場価値が上がる | 製品の宣伝文句をうのみにしない。メーカー資金の研究があることも知っておく |
転職市場の目線で言えば、「栄養ケア・マネジメントを理解し、観察を記録に落とせる介護職」は、栄養マネジメント強化加算やLIFE対応を進めたい施設にとって価値の高い人材です。エビデンスの線引きを語れることは、面接でも現場でも「考えて動ける人」という信頼につながります。
現場メモ|ONSと上手に付き合うための小さなコツ
- 「食事の前」より「食間・食後」に。食前に出すと満腹になって肝心の食事が進まないことがある。食事量を減らさない出し方を優先する。
- 飲み残しは「量」で記録する。「飲んだ/飲まない」ではなく「半分」「3分の1」と残量を残すと、効いているか・続けられているかが見える。
- 味に飽きさせない。同じ味が続くと残しやすい。フレーバーや形態(飲料↔ゼリー)を変えてローテーションする。
- 口腔ケアとセットで。口の中が乾いていたり汚れていると飲みづらい。口腔ケア後は摂取が進みやすい。
- 「やせてきた」を放置しない。体重が月単位で落ちている人は低栄養のサイン。ONSの前にまず評価のテーブルへ。
- 本人の希望を聞く。「甘いのが苦手」「冷たいほうがいい」など、続けられるかは好みで大きく変わる。
よくある質問
- Q. 元気がない高齢者にとりあえずONSを配れば、みんな元気になりますか?
- A. いいえ。研究で予後の改善が見えるのは「低栄養または低栄養リスクと判定された人」です。栄養状態が保たれている人や、弱ってはいるが低栄養とは限らないフレイル全般にばらまいても、効果ははっきりしていません。まず評価が先です。
- Q. ONSを飲めば歩けるようになったり、元気が出たりしますか?
- A. 体重やカロリー摂取が増えることは多くの研究で確かですが、歩く力や生活の満足度(QOL)がはっきり良くなるという確かな証拠は乏しいのが現状です。「数字が動くこと」と「暮らしが良くなること」は分けて考えましょう。
- Q. 死亡が半分になるという話を聞きました。本当ですか?
- A. それは心不全や肺炎などで入院した低栄養の高齢者を対象にした特定の試験(NOURISH試験)の「90日死亡」の結果です(4.8%対9.7%)。ただし同じ研究で「再入院も含めた総合指標」では差がついていません。限られた集団・限られた指標の話で、すべての高齢者に当てはまるわけではありません。
- Q. 食事が進まない人は、食事を減らしてONSに置き換えてよいですか?
- A. 基本は置き換えではなく足し算です。研究も「食事+ONS」を前提にしています。まず食事を最大化し、足りない分をONSで補う順番にします。口から食べる楽しみや力を奪わないことが大前提です。
- Q. ONSは介護職が勝手に出してよいのですか?
- A. 低栄養の判定や栄養ケア計画は、管理栄養士・医師・看護師を含む多職種で行います。介護職の役割は、残食や飲み残し、味の好みといった日々の観察を正確に拾い、ミールラウンドや記録(LIFE)に乗せて共有することです。投与量の判断は越境しません。
参考文献・出典
- [1]Protein and energy supplementation in elderly people at risk from malnutrition- Milne AC, Potter J, Vivanti A, Avenell A. Cochrane Database of Systematic Reviews(プレーンランゲージサマリー)
62試験・10,187人を統合。ONSは体重を約2.2%増やし、合併症を減らす(RR0.86)。死亡は全体では有意差なし(RR0.92)だが、低栄養と判定された人にしぼると約2割減(RR0.79、0.64〜0.97)。機能・QOLの改善は示せず。本記事の「効くのは低栄養の人」という核の根拠。
- [2]Protein and energy supplementation in elderly people at risk from malnutrition- Milne AC, Potter J, Avenell A. Cochrane Database Syst Rev. 2002(PubMed抄録)
同レビューの版。死亡RR0.67(0.52〜0.87)、入院日数の短縮(−3.4日)を報告する一方、機能アウトカムやQOLへの効果は十分なデータがなく示せないと結論。
- [3]Readmission and mortality in malnourished, older, hospitalized adults treated with a specialized oral nutritional supplement: A randomized clinical trial(NOURISH試験)- Deutz NE, et al. Clin Nutr. 2016(PubMed抄録)
心肺疾患で入院した65歳以上・低栄養652人のRCT。主要複合(再入院または死亡)は26.8%対31.1%で有意差なし。90日死亡は4.8%対9.7%(RR0.49、0.27〜0.90、NNT約20)。メーカー資金提供あり。
- [4]Effectiveness and cost-effectiveness of oral nutritional supplements in frail older people who are malnourished or at risk of malnutrition: a systematic review and meta-analysis- Thomson KH, et al. Lancet Healthy Longevity. 2022(PubMed抄録)
地域で暮らすフレイル高齢者を対象にした11RCT・822人のメタ解析。ONSがフレイルや有害アウトカムを減らす証拠は乏しく、確実性はGRADEで very low。QOLへの効果もまちまち。「フレイル全般へのばらまきは支持されない」根拠。
- [5]Effectiveness of Oral Nutritional Supplements on Older People with Anorexia: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials- Li M, et al. Nutrients. 2021;13(3):835
食欲不振の高齢者(平均81.9歳)17RCT・1,204人。体重は中くらいの効果(SMD0.53)、エネルギー摂取も増加(SMD0.46)。一方で食欲そのものの改善はごくわずか(MD0.18)。
- [6]令和3年度介護報酬改定の概要(栄養関連)- 厚生労働省 老健局老人保健課
栄養マネジメント加算の包括化と栄養マネジメント強化加算(11単位/日)の新設、ミールラウンド週3回以上、経口維持加算(400単位/月)、LIFE活用など、施設の栄養ケア・マネジメントの制度的枠組み。現場でONSをどの仕組みに乗せるかの根拠。
まとめ|「ONS=元気になる」ではなく「誰に・どう使うか」のケア
経口栄養補助(ONS)は、魔法の飲み物でも、ただの気休めでもありません。研究が示すのは、「低栄養または低栄養リスクと判定された人」には体重増加・合併症減少・(入院・低栄養例では)死亡減少という意味のある効果がありうる一方、栄養が保たれた人やフレイル全般にばらまいても効果は確認できず、機能やQOLの改善も確かではない、という線引きでした。「飲めば誰でも元気になる」という期待とも、「どうせ気休め」という諦めとも違う、その中間にこそ事実があります。
この線引きを現場の動きに直すと、答えはシンプルです。配る前に評価し、食事を削らず足し算として位置づけ、飲みきれるよう工夫し、記録して見直す。そして、その一連を栄養マネジメント強化加算やLIFEといった仕組みに乗せる。毎日利用者のそばにいて、残食や好みに最初に気づける介護職は、この栄養ケアの起点に立っています。エビデンスの線引きを語れることは、漫然とした配布や、逆に必要な人への出し惜しみを防ぎ、「考えて動ける介護職」としての信頼につながります。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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