拘縮のある利用者への日常ケアの工夫|無理に伸ばさず清拭・更衣・移乗を安全に
介護職向け

拘縮のある利用者への日常ケアの工夫|無理に伸ばさず清拭・更衣・移乗を安全に

拘縮のある利用者の日常介助を安全に行うコツを解説。無理に伸ばさず関節を支える原則、手指の握り込み拘縮のスキンケア、拘縮側から通す更衣、密着部の清拭、褥瘡好発部位の観察、痛みのサインで中止する判断まで介護職向けにまとめました。

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この記事のポイント

拘縮のある利用者への日常ケアの基本は、固まった関節を無理に伸ばさないことです。無理に伸展させると痛み・筋緊張の悪化・皮膚損傷・骨折を招くため、末端の動かしやすい部分からゆっくりほぐし、手のひら全体で関節を支えて動かします。更衣は拘縮側から袖を通し、清拭は脇・股・手掌など密着部の観察と洗浄を丁寧に行い、痛みのサインが出たら中止します。関節可動域(ROM)訓練は職種と指示の範囲内で行います。

目次

介護の現場では、すでに関節が固まってしまった「拘縮のある利用者」への日常介助に悩む場面が数多くあります。「腕が伸びなくて袖が通らない」「手が握り込んでいて開けない」「移乗のたびに痛がって身体がこわばる」。こうしたとき、良かれと思って関節を伸ばそうとすると、かえって痛みを与え、拘縮を悪化させたり、皮膚を傷つけたり、最悪の場合は骨折を招いたりします。

この記事は、拘縮を「予防する」段階ではなく、すでに拘縮がある利用者に対して、清拭・更衣・移乗・体位変換といった毎日のケアをどう安全に行うかに絞って解説します。関節を無理に動かさずに支える基本原則から、手指の握り込み拘縮のスキンケア、拘縮側から通す更衣の順番、密着部の観察ポイント、そして「痛みのサインが出たら中止する」という判断まで、現場ですぐ使える具体策を整理しました。

拘縮のある利用者へのケアで最も大切な原則|無理に伸ばさない

拘縮とは、関節周囲の筋肉・腱・皮膚などが縮んで硬くなり、関節の動く範囲(関節可動域)が狭くなった状態です。すでに拘縮が完成している利用者では、「元に戻そう」として無理に伸ばすケアは禁物です。

なぜ無理に伸ばしてはいけないのか

固まった関節を力ずくで動かそうとすると、次のリスクが生じます。

  • 痛み:痛みは筋緊張をさらに強め、拘縮を悪化させる悪循環を生みます。
  • 皮膚損傷・スキンテア:高齢者の皮膚は薄くもろいため、引っ張る力で表皮がめくれる裂傷(スキンテア)が起きやすくなります。
  • 骨折:長期臥床の利用者は骨がもろく、四肢に強い力が加わると容易に骨折します。

「末端からほぐす」が基本手技

脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の解説によれば、拘縮した部分を無理に動かそうとせず、利用者の様子を見ながら、末端など動かしやすい部分から徐々に動かしていくことで筋緊張がゆるんでくるとされています。関節そのものを無理に開くのではなく、まず指先・足先などの動かせるところから少しずつ働きかけるのがコツです。

握り込んだ手・こわばった膝のほぐし方の例

  • 握り込んだ手:親指のつけ根をゆっくり開くと握り込んでいた指がゆるんでくるので、人差し指から一本ずつ少しずつ開いていきます。
  • 力が入った膝:足首の内側にそっと手を当て、足先を10cmほどゆっくり開きます。
  • 硬く締まったわき:腕を内側に動かしてから、円を描くようにゆっくり外側へ動かすとわきが開きます。

いずれも共通するのは、ゆっくり・声をかけながら・利用者の反応を確認しながらという点です。一気に動かさないことが安全なケアの土台になります。

拘縮のタイプを知るとケアの当たり所が見える

ひとくちに拘縮といっても、原因や固まり方によっていくつかのタイプがあります。タイプを知っておくと、どの部位に負担がかかりやすいか、どこを観察すべきかの見当がつきます。

  • 筋性拘縮:最も頻度が高いタイプ。筋肉が縮んで関節が引っ張られます。長期臥床や動かさない状態が続くと進みます。
  • 神経性拘縮:脳卒中などの後の麻痺により、筋緊張のアンバランスで生じます。片麻痺側に多く見られます。
  • 皮膚性拘縮:やけどや手術後の皮膚の引きつれによるもの。
  • 結合組織性拘縮:じん帯や腱膜の収縮で手指が曲がるなど。
  • 関節性拘縮:関節そのものの傷や炎症が原因。

また、固まる方向によって、関節が曲がったまま固まる屈曲拘縮(肘・膝・手指に多い)、伸びたまま固まる伸展拘縮、脚が内側に閉じる内転拘縮などに分けられます。屈曲拘縮では皮膚が合わさる部分の密着トラブル、内転拘縮では股・陰部の清潔保持が課題になりやすいなど、タイプごとに日常ケアで気をつける点が変わります。どのタイプでも共通するのは、「無理に反対方向へ戻そうとしない」という原則です。

手指の握り込み拘縮のスキンケア|手掌・爪・におい対策

手指が握り込んだまま固まる拘縮は、日常ケアの中でも特に見落とされがちで、かつトラブルが起きやすい部位です。皮膚・排泄ケア認定看護師の解説をもとに、握り込み拘縮のケアを整理します。

握り込み拘縮で起きる皮膚トラブル

  • 爪による自己損傷:握った手の中で爪が伸び、自分の爪で手のひらを傷つけてしまう。
  • 浸軟(しんなん)とびらん:指どうしが接触した部分に汗やよごれがたまり、皮膚がふやけて(浸軟)、びらんや潰瘍、浸出液につながる。
  • におい・白癬(はくせん):手掌や指の間は清潔を保ちにくく、においが出たり、時に水虫菌(白癬)を伴うこともある。

手掌・指の間の洗い方

  1. たっぷりの泡を数分置く:泡状の洗浄剤を皮膚にのせ、数分そのままにして洗浄成分を指の間にしみこませてから、優しく洗います。ゴシゴシこすらないことが鉄則です。
  2. やわらかいラバーブラシを活用:本人・家族の許可を得て、ゴム製のスティック状ブラシを使うと開きにくい指の間まで届きます。やわらかいラバーは皮膚を傷つけにくいのが利点です。
  3. 指の間の拭き方:ガーゼを無理に突っ込まず、コットンガーゼをブラシに巻き付けるなどして、指の間を丁寧に拭き取ります。
  4. 洗浄後の保護:洗浄後、皮膚と皮膚が接していない部分には保湿剤を塗って皮膚を健やかに保ちます。

爪切りとロール(保護)の考え方

爪は手掌を傷つけないよう、痛みを与えない範囲で少しずつ整えます。手を開こうとすると痛みを伴い、ケアが難しい場合もあるため、無理に一度で終わらせず、日を分けて行うのも一つの方法です。手掌の密着を軽減する目的で、丸めたタオルやハンドロール等をゆるやかに握らせて指の間の接触を減らす工夫もありますが、締め付けや過度の伸展にならないよう、看護師やリハ職と相談して選びます。

更衣介助のコツ|拘縮側から袖を通し、可動域を超えない

更衣は、拘縮のある利用者への日常介助でつまずきやすい場面の代表です。ポイントは関節の可動域を超えて動かさないことと、着脱の順番です。

脱健着患(だっけんちゃっかん)の順番

片麻痺や拘縮で動きに左右差がある場合、着脱には順番の原則があります。

  • 脱ぐとき:動く側(健側)から脱ぐ。
  • 着るとき:動きにくい側・拘縮側(患側)から通す。

拘縮側から先に袖を通すことで、あとから通す健側は本人の動きも使えるため、拘縮した腕を無理に引っ張らずにすみます。これを「脱健着患」と呼びます。

関節可動域を超えない工夫

  • 袖は肩まで一気に通さない:まず二の腕あたりまで袖を通し、段階的に肩へ引き上げます。かぶり式は肩関節に大きな可動域が必要になるため、可能なら前開きの服を選ぶと負担が減ります。
  • ゆとりのある服を選ぶ:伸縮性があり、袖ぐりの広い前開きの衣類は、拘縮のある腕でも通しやすくなります。
  • 関節を支えて動かす:腕を通すときは、手首や肘を引っ張るのではなく、関節付近を手のひらで下から支えながらゆっくり動かします。

寝たまま更衣するときの流れ

座位が取れない利用者では、身体を横向き(側臥位)にして片側ずつ着脱します。横向きにする際も、拘縮した四肢を巻き込まないよう、腕を体幹に沿わせてから体位変換します。仰向けに戻すたびに、袖や襟のしわが背中や骨突出部の下敷きになっていないか確認します。

清拭のコツ|脇・股・手掌など密着部の観察と洗い方

清拭は身体を清潔にするだけでなく、全身の皮膚を観察できる貴重な機会です。拘縮のある利用者では、関節が曲がって皮膚どうしが密着する部分に汚れや汗がたまり、皮膚障害が起きやすくなります。

特に念入りに観察・洗浄する密着部

  • 手掌・指の間:握り込み拘縮でふさがりやすく、浸軟・びらん・においが出やすい。
  • 脇(腋窩):腕が体幹に密着して汗がたまりやすい。
  • 股(鼠径部)・陰部:股関節が曲がって閉じ、湿潤しやすい。
  • 肘の内側・膝の裏:屈曲拘縮で皮膚が合わさりやすい。
  • 耳の後ろ・首のしわ:見落としやすく、汚れが残りやすい。

洗い方・拭き方の基本

  1. ゆっくり広げてから洗う:密着した部分は、末端からほぐす要領で無理なく開き、指先や脇もゆっくり広げて洗い残し・すすぎ残しがないようにします。
  2. 摩擦を避ける:石けんはよく泡立て、こすらず泡で洗います。皮膚がもろい利用者では、押し拭きを基本にします。ゴシゴシこする清拭は、高齢者の薄い皮膚にはスキンテア(皮膚裂傷)の原因になります。
  3. 温熱刺激を活かす:温かいタオルでの清拭は毛細血管を広げて血行を促し、皮膚の観察もしやすくなります。室温に注意し、拭く部分だけを露出して保温します。
  4. 洗浄後は水分をしっかり拭き、保湿:密着部は乾かしにくいため、水分を残さず、必要に応じて保湿剤で皮膚を保護します。乾燥した皮膚はバリア機能が落ち、かゆみや傷につながります。

清拭は「観察の時間」でもある

清拭のたびに、発赤・びらん・スキンテア・内出血の有無をチェックします。特に骨の出っ張り(骨突出部)に、押しても消えない赤み(消退しない発赤)があれば、褥瘡の初期サインとして看護師へ報告します。清拭は皮ふの汚れを落として清潔を保つだけでなく、拭くことのマッサージ効果で血行を促し、手足を動かして体位を変えることで褥瘡や拘縮の進行を防ぐ効果もあります。全身を見ることで皮ふトラブルを早期に見つけられる点も、日々の清拭が持つ大きな役割です。

おむつ交換のコツ|わきを緩め、きれいな横向きを作る

おむつ交換は、股関節や膝が拘縮した利用者にとって痛みを伴いやすく、介助者の腰にも負担がかかる場面です。ポイントは身体をきれいな横向きにして、密着部を清潔にすることです。

手順の考え方

  1. 介助者が前かがみにならない:ベッドの高さを介助者の腰の高さに合わせ、利用者を自分と反対側へ向けると、腰への負担が減ります。
  2. きれいな90度の横向きにする:ねじれのない安定した側臥位を作ると、陰部・臀部が見えやすく交換もスムーズになります。関節を動かすときは、末端からゆるめてわきや股を無理なく開きます。
  3. 密着部の観察と清潔:股関節が閉じて湿潤しやすい鼠径部・陰部・臀部を、こすらず優しく洗浄・清拭します。おむつ交換は1日数回あるため、褥瘡の前段階である発赤を見つける絶好の観察機会です。
  4. しわ・ずれを残さない:おむつやシーツのしわは圧迫の原因になります。仰向けに戻したら、背中や骨突出部の下にしわがないか確認します。

股関節や膝の拘縮が強い場合は、脚を無理に開かず、動く範囲でゆっくり開排します。開きにくいときは看護師やリハ職に相談し、ポジショニングやケア手順を一緒に見直します。

移乗・体位変換のコツ|関節を支持面で支え、引っ張らない

移乗や体位変換は、拘縮のある利用者に痛みを与えやすく、介助者の腰痛リスクも高い場面です。原則は「引っ張らず、支える」です。

手のひら全体で関節付近を支える

足先や指先をつかんで引っ張ると、一点に力が集中して痛みや脱臼・骨折のリスクが高まります。手のひら全体を使い、関節付近を下から支えるように持ち上げるのが基本です。骨の出っ張りの両側に手を入れ、荷重を面で受けるようにします。腕を持つときは手首だけをつかまず、肘と手首の両方を支えて腕全体を安定させます。

ずれ・摩擦を生じさせない

  • 一気に動かさない:声をかけながらゆっくり動かします。身体を引っ張ってずり上げたり、一気に回転させて起こしたりすると、骨突出部に圧迫やずれが生じます。
  • 福祉用具を活用する:スライディングシートやスライディングボード、必要に応じて介護用リフトを使うと、利用者の負担も介助者の腰への負担も減らせます。エアマットレスなど沈み込む寝具の上では、スライディングシートが特に有効です。スライディングシートを抜くときは、下側の布を引くと利用者に摩擦がかかりにくくなります。
  • 拘縮した四肢を巻き込まない:体位変換の前に、拘縮した腕を体幹に沿わせ、脚を組ませるなどして、身体の下敷きにならないようにします。四肢が身体の下敷きになると、その部分に強い圧がかかり、褥瘡や痛みの原因になります。

体位変換は「きれいな横向き」を意識する

側臥位にするときは、身体がねじれない安定した横向きを作ります。左右の肩を結ぶ線と左右の腰骨を結ぶ線が平行になるよう整え、背中とマットレスのすき間にはクッションを入れて支えます。すき間を放置すると身体が緊張し、拘縮が進む一因になります。背上げ・移乗のあとは、背抜き・腰抜き・足抜きで衣類や皮膚のずれを解放すると、圧迫の予防になります。

車いす姿勢のずれも直す

車いすに移乗したあとは、お尻が前にずれた「仙骨座り」になっていないか確認します。仙骨座りは仙骨部・尾骨部への圧迫を強め、褥瘡のリスクを高めます。深く座り直す介助や、必要に応じてクッションでの姿勢保持を行い、長時間同じ姿勢が続かないよう、こまめに座り直しや除圧(圧抜き)を行います。

褥瘡好発部位の観察|拘縮があると「いつもと違う場所」にできる

拘縮のある利用者では、日常ケアのたびに褥瘡(床ずれ)の観察が欠かせません。ここで押さえておきたいのが、「拘縮があると、一般的な好発部位以外の場所にも褥瘡ができやすい」という点です。

一般的な褥瘡の好発部位(体位別)

日本褥瘡学会の実態調査では、療養場所によって発生部位の順位に違いがありますが、共通して仙骨部と踵部が多くなっています。

順位一般病院介護老人保健施設
1位仙骨部(28.0%)仙骨部(35.4%)
2位踵部(10.8%)尾骨部(16.8%)
3位尾骨部(9.9%)腸骨稜部(9.7%)
4位大転子部(7.4%)踵部(7.1%)
5位脊椎部(5.1%)大転子部(6.2%)

仰向け(仰臥位)では仙骨部・踵部、横向き(側臥位)では大転子部・腸骨部が圧迫を受けやすい部位です。

拘縮があると増える「特殊な好発部位」

ある病院の褥瘡対策マニュアルでは、関節拘縮があると身体の変形により、通常の好発部位以外の部位、たとえば膝部・肘部・前胸部などにも褥瘡が発生しやすくなるため、入念な皮膚観察が必要とされています。

  • 膝の内側・くるぶし:膝が曲がって左右の脚が合わさり、骨どうしが当たる。
  • 肘・前胸部:腕が曲がって身体に密着し、皮膚や骨が圧迫される。
  • 手掌:握り込みで爪や指が食い込む。

つまり拘縮のある利用者では、教科書的な仙骨・踵だけを見ていては褥瘡を見逃します。関節が曲がって皮膚や骨が接触している「その人固有の当たり場所」を、清拭やおむつ交換のたびに確認することが、拘縮ケアならではの観察ポイントです。

体位変換の頻度の目安

自力で寝返りができない利用者では、標準的には2時間おきの体位変換が目安です。体圧分散マットレスを併用している場合でも、4時間を超えない範囲で体位変換を行うことが日本褥瘡学会のガイドラインで示されています。

やってはいけないNG介助|拘縮を悪化させる5つの行為

良かれと思ってやったケアが、かえって拘縮や皮膚トラブルを招くことがあります。特に避けたい行為をまとめます。

  • 1. 固まった関節を無理に伸ばす:痛みで筋緊張が高まり、拘縮が進みます。可動域を戻すのは介護職単独の判断で行うケアではありません。
  • 2. 手足の先端を引っ張って動かす:一点に力が集中し、皮膚損傷・脱臼・骨折のリスクが高まります。関節付近を手のひらで支えます。
  • 3. 身体を引きずって寝位置を直す:ずれと摩擦で骨突出部の皮膚を傷め、褥瘡の原因になります。持ち上げるかスライディングシートを使います。
  • 4. すき間を埋めずにポジショニングを終える:身体とマットレスのすき間を放置すると、緊張が抜けず拘縮が進みます。クッションで支持面を作ります。
  • 5. 痛みのサインを無視して続行する:表情のこわばり・うめき・身体の突っ張りは中止のサインです。無理に完遂しないことが安全につながります。

痛みのサインで「中止する」判断とROM訓練の線引き

拘縮ケアで最も大切な現場スキルの一つが、「痛みのサインを読んで、無理をせず中止する」判断です。とりわけ、自分から言葉で「痛い」と言えない利用者では、非言語のサインを見逃さないことが安全の鍵になります。

中止・見直しを検討する痛みのサイン

  • 表情がこわばる、顔をしかめる、眉間にしわが寄る
  • うめき声・声のトーンの変化
  • 身体が突っ張る、逆に急に力が抜ける
  • 介助しようとすると手で払いのける、身を引く

これらが出たら、その動作をいったん止め、姿勢を楽な位置に戻します。「完璧に着替えさせる」「決めた通りに動かす」ことより、痛みを与えないことを優先します。着替えや清拭は、部位ごとに日を分けて行ってもかまいません。

ROM訓練は「職種と指示の範囲」で

関節可動域(ROM)訓練は、拘縮の進行を抑えるうえで有効ですが、誰がどこまで行うかは職種と指示の範囲で決まります。医療的な判断を伴う可動域の評価や積極的な運動は、医師の指示のもとで看護師や理学療法士・作業療法士が担うのが原則です。介護職は、日常介助の中でできる範囲の自然な関節運動(清拭で腕を広げる、更衣で肘を通すなど)を、痛みを与えない範囲で丁寧に行い、気づいた変化を多職種へ報告する役割が中心になります。

「気づき」を記録・報告につなげる

拘縮ケアは一人の頑張りではなく、チームの仕組みで差がつきます。新しくできた発赤、可動域の変化、痛がり方の変化などは、記録し、看護師・リハ職・ケアマネジャーへ共有します。日々ケアに入る介護職の「いつもと違う」という気づきが、褥瘡や骨折を未然に防ぐ最前線になります。

よくある質問(FAQ)

Q. 拘縮した腕はやはり伸ばしてはいけないのですか?

すでにある拘縮を介護職が力ずくで伸ばすのは避けます。無理な伸展は痛み・皮膚損傷・骨折を招き、拘縮を悪化させます。清拭や更衣の中で、痛みを与えない範囲でゆっくり動かすにとどめ、可動域を戻す運動は医師の指示のもとで看護師・リハ職が判断します。

Q. 握り込んだ手が開けず、においが気になります。どうすれば?

親指のつけ根からゆっくり開き、人差し指から一本ずつほぐします。泡をのせて数分置いてから優しく洗い、やわらかいラバーブラシやガーゼを巻いた棒で指の間を清潔にします。爪が手掌に食い込まないよう少しずつ整え、洗浄後は保湿します。改善しない皮膚障害は看護師へ相談します。

Q. 更衣で袖が通りません。順番のコツは?

着るときは拘縮側(動きにくい側)から袖を通す「脱健着患」が基本です。袖は肩まで一気に通さず二の腕まで通してから引き上げ、前開きの伸縮性のある服を選ぶと負担が減ります。

Q. 移乗のとき、どこを持てば安全ですか?

足先や指先を引っ張らず、手のひら全体で関節付近を下から支えます。骨の出っ張りの両側に手を入れて面で持ち上げ、スライディングシートやリフトなどの福祉用具を積極的に使うと、利用者も介助者も負担が減ります。

Q. 拘縮のある人の褥瘡はどこを見ればいいですか?

仙骨部・踵部・大転子部といった一般的な好発部位に加え、拘縮では膝の内側・肘・前胸部・手掌など、関節が曲がって皮膚や骨が当たる「その人固有の部位」を清拭のたびに確認します。押しても消えない発赤は褥瘡の初期サインとして報告します。

参考文献・出典

まとめ|拘縮は「無理に伸ばさず、支えて、観察する」

すでに拘縮のある利用者への日常ケアは、「元に戻す」ことではなく、今の状態で痛みと二次障害(皮膚損傷・褥瘡・骨折)を防ぎながら、清潔と快適さを保つことが目的です。要点を振り返ります。

  • 無理に伸ばさない:末端からゆっくりほぐし、関節付近を手のひらで支える。
  • 手指の握り込みケア:泡で数分おいて優しく洗い、指の間・爪・においに配慮し保湿・保護する。
  • 更衣は脱健着患:拘縮側から袖を通し、可動域を超えない。
  • 清拭は観察の時間:脇・股・手掌など密着部を丁寧に洗い、皮膚の変化を見る。
  • 移乗は引っ張らず支える:福祉用具を使い、ずれ・摩擦を作らない。
  • 褥瘡は「その人固有の当たり場所」も見る:膝・肘・前胸部・手掌までチェックする。
  • 痛みのサインで中止する:完璧より安全を優先し、気づきを多職種へ報告する。

拘縮ケアは、介護職一人の技術だけでなく、看護師・リハ職と連携するチームの仕組みで質が決まります。毎日ケアに入る介護職の「無理をしない・よく観る・すぐ伝える」姿勢が、利用者の安全と尊厳を守る土台になります。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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