親が施設入居を嫌がるとき|在宅にこだわる気持ちと段階的な進め方
ご家族・ご利用者向け

親が施設入居を嫌がるとき|在宅にこだわる気持ちと段階的な進め方

在宅介護が限界に近いのに親が施設入居を拒み「家にいたい」と言うとき、家族はどう向き合えばよいか。拒否する心理、無理強いの弊害、ショートステイから始める段階的な慣らし方、ケアマネ・地域包括への相談、罪悪感との向き合い方、NG/OKの伝え方を公的資料に基づいてやさしく解説します。

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この記事のポイント

親が施設入居を嫌がり「家にいたい」と言うときは、無理に説得して連れて行くのではなく、まず「家がいいんだね」と気持ちを受け止めたうえで、ショートステイなど短期間のお試しから少しずつ慣らしていくのが基本です。高齢者の多くは介護が必要になっても自宅で過ごしたいと望んでおり(内閣府調査では男性50.7%・女性35.1%が自宅での介護を希望)、その気持ち自体は自然なものです。安全が脅かされているなら、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、本人の希望と命の安全のバランスを専門職と一緒に取りながら、段階的に進めます。正解は一つではなく、家族が罪悪感で自分を追い詰める必要はありません。

目次

在宅での介護が限界に近づいているのに、親が「施設なんて絶対に嫌だ」「死ぬまで家にいる」と言って譲らない。そんな状況に、心がすり減っているご家族は少なくありません。安全のことを思って提案したはずなのに、親の表情がこわばり、まるで自分が冷たい人間になったような気持ちにさせられる。けれども、親が施設を拒むのには理由があり、その理由を理解することが、こじれた話し合いをほどく糸口になります。

この記事では、親が施設入居を嫌がる心理的な背景から、無理強いがかえって事態を悪くする理由、ショートステイなどで少しずつ慣らしていく段階的な進め方、ケアマネジャーや地域包括支援センターの使い方、そして家族自身の罪悪感との向き合い方までを、公的な資料に基づいて順を追って整理します。「どう言えば伝わるのか」「いつ専門職に頼ればいいのか」という具体的な場面でも迷わないよう、避けたい言い方と、届きやすい言い方も対比でまとめました。急いで結論を出さなくて大丈夫です。一つずつ確認していきましょう。

親が施設入居を嫌がる理由|「家にいたい」の裏にある心理

「家にいたい」という言葉の裏には、いくつもの感情が重なっています。親を説得しようとする前に、まず本人が何を恐れ、何を守ろうとしているのかを知ることが、遠回りに見えて一番の近道です。

「見捨てられる」という根源的な不安

施設入居を「家族からの絶縁」「もう必要とされていない証拠」のように受け取ってしまう方は少なくありません。とくに「介護は家族がするもの」という価値観で生きてきた世代では、施設という言葉が古い「姥捨て」のイメージと結びつき、強い拒絶反応を生みます。口では「子どもに迷惑をかけたくない」と言いながら、本心では「最期まで家族のそばにいたい」「自分は邪魔者なのか」という寂しさを抱えていることが多いのです。これは理屈ではなく感情の問題なので、正論で説得しようとするほどこじれます。

「まだ大丈夫」というプライドと、老いを認めたくない気持ち

自分の心身が衰えていくことを認めるのは、誰にとってもつらいことです。「まだ自分でできる」と言い張る背景には、できなくなっていく自分を直視したくない防衛的な気持ちが働いています。とくに認知症の初期では、できなくなっていることを自覚できなかったり、自覚したくなかったりするため、支援そのものを頑なに拒むことがあります。「他人を家に入れたくない」という訪問介護への抵抗も、この心理と地続きです。

住み慣れた自宅への愛着

長年暮らした自宅は、その人の人生の記憶そのものであり、最も安心できる居場所です。内閣府の調査でも、介護が必要になった場合に「自宅で介護してほしい」と答えた高齢者は男性50.7%・女性35.1%で、いずれも最多でした(平成24年版高齢社会白書)。住み慣れた場所から離れ、見知らぬ環境で集団生活を送ることへの不安は、若い世代が引っ越しを考えるのとは比べものになりません。環境の変化に適応する力が落ちている高齢者にとって、転居は大きなストレスになり得ます。

施設への古いイメージや誤解

「施設に入ると自由がなくなる」「食事がおいしくない」「冷たく扱われるのではないか」といった、一昔前のイメージや断片的な情報による不安を抱えている場合もあります。実際には個室でプライバシーが守られ、行事やレクリエーションが充実している施設も多いのですが、その実態を知らないまま拒んでいることは珍しくありません。

認知症がある場合の「拒否」は中核症状の表れでもある

認知症がある親の場合、「嫌だ」という拒否は、わがままではなく病気の症状として理解する必要があります。記憶や判断の力が損なわれることで、本人は「何が起きているのかわからない」という不安や焦り、喪失感のただ中にいます。整理しきれないその感情が、拒否や怒りといった行動・心理症状(BPSD)として表れるのです。つまり、施設を拒むこと自体が、本人にとっては精一杯の「安心したい」という訴えである場合があります。

無理に入居させることの弊害|なぜ「説得」を急いではいけないか

限界が近いと、つい「とにかく入ってもらうしかない」と急ぎたくなります。けれど、本人の納得がないまま無理に進めることには、見えにくいけれど大きな代償があります。先に弊害を知っておくことが、結果的に近道になります。

「騙して連れて行く」が招く関係の断絶

「ちょっと出かけよう」と言って施設に連れて行き、そのまま入居させてしまう。追い詰められた家族がとってしまいがちな方法ですが、後々まで尾を引きます。「騙された」「捨てられた」という思いは本人の中に深く残り、その後の面会を拒まれるなど、親子関係そのものが壊れてしまうことがあります。本人の不信感は、入居後の生活の安定をも難しくします。

強い帰宅願望が退去につながることも

納得のないまま入居すると、激しい帰宅願望から落ち着かなくなり、ときに暴言や他の入居者とのトラブルにつながることがあります。状態によっては「集団生活が難しい」と判断され、施設から退去を求められるケースさえあります。急いで入居させたことが、かえって振り出しに戻る結果を招くのです。

環境変化そのものが心身の負担になる

高齢者、とくに認知症のある方にとって、住む場所が急に変わることは大きなストレスです。心の準備がないまま環境が一変すると、混乱が強まり、一時的に状態が悪化することもあります。だからこそ、後述するように「少しずつ慣らす」段階を踏むことに意味があります。

家族の罪悪感も深まる

無理に押し切った記憶は、親の問題であると同時に、家族自身の心にも残ります。「あのとき強引にしてしまった」という後悔は、入居後の罪悪感を一層重くします。本人が少しでも納得して進んだという事実は、家族の心を守るうえでも大切です。

もちろん、後述するように、火の不始末や徘徊による事故、重いセルフネグレクトなど「在宅が命の危険に直結する」場面では、本人の同意が十分に得られなくても、専門職と協議のうえで安全を優先する判断が必要になることもあります。無理強いを避けることと、危険を放置することは別の話です。その線引きこそ、家族だけで抱えずに専門職と一緒に考えるべきところです。

話し合いの前に家族が整えておきたい姿勢

具体的な進め方に入る前に、家族の側で整えておきたい姿勢があります。テクニックよりも、この土台のほうが結果を大きく左右します。

「説得」ではなく「傾聴」から始める

いきなり施設のメリットを並べても、本人の心は動きません。まずは否定せず、「家がいいんだね」「知らない場所は不安だよね」と、本人の気持ちを言葉にして受け止めるところから始めます。人は「自分の話を聞いてもらえた」と感じて初めて、相手の話に耳を傾ける余裕が生まれます。最初の数回は、結論を出そうとせず、ただ不安を聞く時間にあてるくらいでちょうどよいのです。

本人の希望と安全のバランスを意識する

大切なのは、「本人の希望を尊重すること」と「安全を守ること」を対立させないことです。「家にいたい」という願いを丸ごと否定するのでも、危険を見て見ぬふりをするのでもなく、その両方を天秤にかけながら、今できる最善を探します。たとえば「日中はサービスを使い、夜だけ家族が見る」「まずは週に数日だけ預ける」といった中間の選択肢が、両者を橋渡しします。最初から「在宅か施設か」の二択で迫らないことが、本人の身構えをほどきます。

周囲の「かわいそう」に振り回されない

親戚や近所から「施設に入れるなんて」と言われ、心が揺れることがあるかもしれません。けれど、24時間その介護を担っているのは家族自身です。共倒れを防ぐことは、親を守ることと矛盾しません。介護保険制度は、介護を家族だけで抱えず社会全体で支えるために作られた仕組みであり、施設や在宅サービスを使うことは制度の正しい利用です。外からの無責任な言葉より、目の前の現実を基準に考えてよいのです。

一度で決まらない前提で、時間をかける

施設入居の話し合いは、一度で決着することのほうがまれです。本人の気持ちは、その日の体調や雰囲気でも揺れます。今日断られても、それは「永遠の拒否」ではありません。何度か対話を重ね、第三者の力を借り、ときには「条件」を一緒に決めながら、少しずつ進めていくものだと心づもりしておくと、家族の焦りもやわらぎます。

施設入居までの段階的な進め方|ショートステイから慣らす

「いきなり入居」ではなく、「自宅以外でケアを受けることに少しずつ慣れてもらう」のが、もっとも無理が少なく、本人の納得も得やすい進め方です。次の段階を、本人のペースに合わせて踏んでいきます。一気に全部を進める必要はありません。

段階1:在宅サービスで「他人のケア」に慣れる

まずは訪問介護やデイサービスなど、自宅で暮らしながら使えるサービスから始めます。「家族が出かける間だけ」「お風呂が大変だから、その日だけ」といった、本人が受け入れやすい名目から入るのがコツです。最初は嫌がっても、通い始めるとスタッフや他の利用者と楽しそうに過ごすようになる方も多くいます。ここで「自宅以外の場所でも、安心して過ごせた」という小さな成功体験を積むことが、次の段階への土台になります。

段階2:ショートステイ(短期入所)で「泊まり」を体験する

次のステップが、数日間だけ施設に泊まるショートステイ(短期入所)です。「家族が旅行に行く数日だけ」「家の片付けをする間だけ」といった一時的な理由で利用でき、本人にとっても心理的なハードルが下がります。ショートステイは、施設での生活を実際に体験してもらう絶好の機会です。「思っていたより居心地がよかった」「ごはんがおいしかった」と本人が感じれば、施設への古いイメージそのものが書き換わります。介護する家族にとっても、束の間の休息(レスパイト)になり、共倒れを防ぐ意味があります。

段階3:体験入居で「住む」イメージをつかむ

施設によっては、本格的な入居の前に数日から一週間ほどの体験入居を受け入れているところがあります(すべての施設で実施しているわけではないため、事前の確認が必要です)。実際にその部屋で寝起きし、スタッフや他の入居者と関わることで、本人が「ここで暮らせそうか」を自分の感覚で判断できます。家族が言葉で説明するより、本人の実感のほうが何倍も説得力を持ちます。

段階4:本人を交えた施設選びと入居

施設選びには、できる限り本人にも参加してもらいます。パンフレットを一緒に見たり、見学に同行してもらったりすることで、「自分で選んだ」という納得感が生まれます。どうしても見学を拒む場合は、まず家族だけで見学して写真や動画を見せる、本人が信頼する人と外出するついでに立ち寄る、といった工夫もあります。本人の希望(自由度を保ちたい、認知症の方と一緒は不安、費用は抑えたい等)を施設のタイプと照らし合わせて選ぶと、入居後の満足度も高まります。

「次に転んだら」など、条件を一緒に決めておく

今すぐの入居は難しくても、「次に転んで骨折したら」「夜の徘徊が続いたら」「入院することになったら」など、具体的なラインを本人と一緒に決めておく方法があります。あらかじめ合意があれば、いざその時が来たときに「あのとき約束したよね」とスムーズに進めやすくなり、親子で気持ちの準備もできます。とくに退院のタイミングは、生活が一度リセットされるため、在宅から施設へ切り替える自然な節目になりやすい場面です。

誰に相談すればいい?|ケアマネ・地域包括・医師の使い方

家族だけで説得しようとすると、感情がぶつかり合って行き詰まりがちです。第三者、とくに専門職の力を借りることで、こじれた話し合いが驚くほどほどけることがあります。誰に、どう頼ればよいのかを整理します。

ケアマネジャー:在宅と施設をつなぐ調整役

すでに介護保険サービスを利用している場合、担当のケアマネジャー(介護支援専門員)が最も身近な相談相手です。在宅サービスの組み合わせを見直して在宅の限界を先延ばしする方法から、ショートステイの手配、施設の情報提供、入居前の面談まで、幅広く相談できます。「家族は在宅で頑張りたいけれど限界が近い」という窮状を率直に伝え、本人への声かけにも協力してもらいましょう。

地域包括支援センター:まだサービスを使っていない人の入口

まだ介護認定を受けていない、ケアマネジャーがいないという場合は、地域包括支援センターが入口になります。市町村が設置する高齢者の総合相談窓口で、令和7年4月末時点で全国に5,487か所(ブランチを含めると7,374か所)あります。介護・福祉・医療・権利擁護にわたる相談に無料で応じ、必要なサービスや専門機関につないでくれます。「親が施設を嫌がっていて、どう進めればいいかわからない」という段階でも、遠慮なく相談して構いません。お住まいの市区町村の窓口や役所で、担当のセンターを案内してもらえます。

医師(かかりつけ医):客観的な後押し役

家族が言っても聞かないことでも、医師から「今の状態で一人の生活は危険です」と言われると、本人がすっと受け入れることがあります。あらかじめ家族の状況を医師に伝え、診察の自然な流れで話してもらうよう相談しておくと、「家族に追い出される」のではなく「お医者さんが心配している」という形になり、親子関係を悪くせずに進められます。退院支援の場面では、病院の医療ソーシャルワーカーが家族の意向を調整しながら施設を提案してくれることもあります。

介護家族の会:同じ立場の人とつながる

専門職への相談とは別に、同じように親の介護に悩む人が集まる「介護家族の会」に参加するのも有効です。「自分だけが苦しんでいるわけではない」と実感できるだけで、心の負担はずいぶん軽くなります。各地域包括支援センターや自治体が、地域の家族会の情報を持っています。

安全が脅かされているときは、ためらわず相談を

火の不始末、徘徊による事故、極端なセルフネグレクトなど、在宅での生活が命に関わる段階では、本人の同意を待っているだけでは危険です。こうしたケースこそ、地域包括支援センターや医師と早めに協議し、緊急の対応(医療機関への入院や行政の関与を含む)を相談すべき場面です。「もう少し様子を見よう」とためらっているうちに事故が起きてしまう前に、専門職に判断を仰いでください。

親に届く伝え方・避けたい伝え方

同じ内容でも、伝え方ひとつで本人の受け取り方はまるで変わります。避けたい言い方と、届きやすい言い方を対比でまとめました。あくまで一例で、本人の性格や関係性に合わせて言葉は選んでください。

避けたい伝え方

  • 「もう家では無理だから施設に入って」と結論だけを突きつける。本人には「厄介払いされる」と聞こえてしまいます。
  • 「みんなのためだから」「世間体が悪いから」と、本人以外の都合を理由にする。自分が邪魔者だと感じさせます。
  • 「いい加減わがまま言わないで」と感情をぶつける。本人の不安に正論で蓋をすると、心を閉ざします。
  • 「ちょっと出かけよう」と嘘をついて連れて行く。一度きりはしのげても、「騙された」という不信が深く残ります。
  • 「どうしてわかってくれないの」と本人を責める。本人も同じくらい不安で揺れていることを忘れがちです。

届きやすい伝え方

  • 「家がいいよね。その気持ちはよくわかるよ」と、まず希望を肯定してから話す。否定されないと感じて、初めて耳を開きます。
  • 「お母さんのことは大事。でも、私ももう体がもたなくて、このままだと二人とも倒れてしまう」と、自分を主語にして正直な状態を伝える(Iメッセージ)。「あなたが悪い」ではなく「私が限界」という形なら、本人も「負担をかけたくない」と感じやすくなります。
  • 「まずは数日だけ試してみて、嫌だったらやめよう」と、後戻りできる選択肢として提示する。逃げ道があると人は一歩踏み出しやすくなります。
  • 「一緒に見学だけしてみない?決めるのはそのあとでいいから」と、決断と見学を切り離す。「見るだけ」ならハードルが下がります。
  • 「お医者さんも心配していたよ」と、第三者の言葉を借りる。家族からの提案より角が立ちません。

共通するのは、「あなたを大切に思っている」という前提を、言葉でも態度でも繰り返し伝えることです。施設入居は親を遠ざける選択ではなく、安全な環境で穏やかに過ごしてもらうための選択である。その思いが伝わるかどうかが、本人の納得を大きく左右します。

家族の罪悪感との向き合い方

段階を踏み、専門職に相談し、それでも家族の心に残るのが「本当にこれでよかったのか」という罪悪感です。この感情は、親への愛情が深いからこそ生まれるもので、決してあなたが冷たいからではありません。最後に、その向き合い方を整理します。

罪悪感の正体を知る

罪悪感が生まれる背景には、いくつかの共通した要因があります。一つは「親の介護は子どもがするもの」という文化的な価値観で、近所や親戚の目を気にして「家族の恥」のように感じてしまうことがあります。けれど、2000年に介護保険制度が始まって以来、介護は社会全体で支える仕組みへと変わりました。核家族化や共働きが当たり前になった今、家族だけで介護を完結させるほうがむしろ難しい時代です。「施設に預ける=見捨てる」ではなく「社会の支援を活用する選択」だと捉え直すことが、罪悪感を軽くする第一歩になります。

限界まで頑張ってからでは遅い

もう一つの要因が、在宅介護による心身の消耗です。とくに認知症介護では、夜間の対応で慢性的な睡眠不足に陥り、介護者自身の健康が深刻に損なわれることがあります。心身が限界に近づくと冷静な判断ができなくなり、つい強い口調で当たってしまっては自己嫌悪に陥る、という悪循環にも陥りがちです。介護うつや介護離職が現実になる前に施設という選択肢を持つことは、逃げではなく、親子双方を守る判断です。介護する人が倒れてしまっては、結局、親のケアも続けられません。

兄弟姉妹とは「事実」を共有する

兄弟姉妹がいる場合、介護の負担が一人に偏り、施設の話を切り出すと「親を捨てるのか」と責められて板挟みになることがあります。その背景にあるのは、多くの場合「介護の大変さが共有されていない」ことです。「夜に何回起こされるか」「一日の介護時間はどれくらいか」「主治医から何を指摘されているか」といった事実を数字やエピソードで共有すると、直接介護していない家族にも状況が伝わります。誰かを責めるのではなく、「親にとって最善は何か」を全員で一緒に考える姿勢が、合意形成の鍵になります。

入居は「終わり」ではなく、新しい関わりの始まり

入居後も、家族にできることはたくさんあります。無理のない範囲で面会に行き、好きだったお菓子を持参したり、季節の話をしたりする。施設のスタッフと積極的に情報を交わし、本人の好みや生活習慣を伝える。こうした関わりを通じて、「任せきりにした」という思いは「スタッフと一緒にケアしている」という安心感に変わっていきます。介護にかける時間の量は減っても、介護の負担から解放されることで、親子の時間の質はむしろ高められることがあります。

それでもつらいときは、自分のケアも忘れずに

頭で「正しい判断だ」とわかっていても、罪悪感はすぐには消えません。なぜその選択をしたのかを紙に書き出して整理する、十分な睡眠や趣味の時間を意識的に確保する、といったセルフケアは、わがままではなく、長く穏やかに親と向き合い続けるための土台です。後悔や悲しみが長引いて自分でも抱えきれないと感じたら、地域包括支援センターや、介護者のメンタルヘルスに対応する相談窓口、心療内科などを頼ってください。あなたが今こうして悩んでいること自体が、親を大切に思っている何よりの証拠です。

よくある質問

Q. 親が頑として施設を拒みます。本人の同意がなくても入居させられますか?

判断能力がしっかりしている場合、本人の意思を完全に無視して入居させることは、自己決定の侵害にあたり、施設側もトラブルを避けるため受け入れに慎重です。原則は本人の納得を得る努力を尽くすことです。ただし、火の不始末や徘徊事故など在宅が命の危険に直結する場合は、地域包括支援センターや医師と協議のうえ、安全を優先した対応(入院や行政の関与を含む)を検討します。一人で判断せず、必ず専門職に相談してください。

Q. ショートステイすら「行きたくない」と嫌がります。どうすれば?

まずは理由を聞き、不安を受け止めることが先です。「家族が出かける数日だけ」など一時的で後戻りできる名目にすると、ハードルが下がります。話し合いの場にケアマネジャーや地域包括支援センターの職員に同席してもらうと、専門職の言葉で安心できることもあります。一度で諦めず、デイサービスなど日帰りから慣らす方法もあります。

Q. 認知症があり、説明しても理解してもらえません。

認知症が進むと、言葉での説明が届きにくくなります。論理で納得させようとするより、本人が安心できる雰囲気づくりや、信頼するスタッフ・家族との関係づくりを優先します。拒否は病気の症状の一つでもあるため、本人を責めず、ケアマネジャーや医師と対応を相談しながら進めましょう。判断能力の低下が進んでいる場合は、家族が本人に代わって決断する覚悟が必要になる場面もあります。

Q. 在宅介護をいつまで続けるべきか、見極めがわかりません。

明確な正解はありませんが、介護する家族が睡眠不足や心身の不調を抱え始めたら、それは在宅の見直しを考えるサインです。「次に転んだら」「入院したら」など、あらかじめ条件を決めておくと判断しやすくなります。迷ったらケアマネジャーや地域包括支援センターに現状を伝え、客観的な視点をもらってください。

Q. 施設に入れることに、どうしても罪悪感があります。

その気持ちは多くの家族が経験する自然なものです。介護保険制度は介護を社会で支える仕組みであり、施設の利用は制度の正しい活用です。入居後も面会やスタッフとの連携で関わり続けられます。罪悪感が強く長引くときは、一人で抱えず、地域包括支援センターや介護家族の会、専門の相談窓口を頼りましょう。

Q. 兄弟が「在宅で続けるべきだ」と言って対立しています。

多くの場合、介護の大変さが共有できていないことが原因です。介護の頻度や時間、医師の指摘などを具体的な事実として共有し、「誰のための選択か」を全員で考える場を設けましょう。感情的になりやすい場合は、ケアマネジャーや地域包括支援センターの専門職に間に入ってもらうのも有効です。

参考文献・出典

まとめ|急がず、本人の気持ちと安全の両方を大切に

親が施設入居を嫌がり「家にいたい」と言うとき、家族に求められるのは、強引に押し切る力でも、無理を重ねて在宅を続ける我慢でもありません。本人がなぜ拒むのかを理解し、その気持ちを受け止めたうえで、ショートステイなどで少しずつ慣らしながら、安全とのバランスを専門職と一緒に取っていく。この段階的な進め方こそが、本人にとっても家族にとっても無理の少ない道です。

大切なポイントを振り返ります。第一に、拒否の裏には「見捨てられる不安」「老いを認めたくない気持ち」「自宅への愛着」があり、認知症がある場合は症状の表れでもあること。第二に、騙して連れて行くような無理強いは、関係の断絶や退去のリスクを招き、かえって遠回りになること。第三に、在宅サービスからショートステイ、体験入居へと段階を踏み、本人を施設選びに巻き込むこと。第四に、ケアマネジャーや地域包括支援センター、医師といった第三者の力を借りること。そして、家族自身の罪悪感は愛情の裏返しであり、自分を責める必要はないことです。

急いで結論を出す必要はありません。今日断られても、それは終わりではなく途中経過です。一人で抱え込まず、専門職や同じ立場の家族とつながりながら、本人の気持ちと安全の両方を大切にして、少しずつ前へ進んでいきましょう。あなたが悩んでいること自体が、親を思う気持ちの表れなのですから。

監修者

介護のハタラクナカマ 医療・介護監修チーム

医療・介護専門職チーム(看護師/介護福祉士/ケアマネジャー)

看護師介護福祉士ケアマネジャー

訪問看護・介護保険・医療保険に関する制度内容を、厚生労働省・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業協会等の一次ソースをもとに、医療・介護専門職チームが内容の正確性を確認しています。

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