
ヤングケアラーへの理解と支援|家族・学校・地域ができる相談先と公的サポート
ヤングケアラーは18歳未満で家族の介護や世話を担う子ども・若者。中2の5.7%が該当。定義・実態調査・気づくサイン・学校や地域の支援・介護保険や障害福祉サービスの活用法・相談窓口を、家族や周囲ができる具体的な行動とともに解説します。
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この記事のポイント
ヤングケアラーとは、本来は大人が担うとされる家族の介護や日常生活の世話を、日常的・継続的に行っている18歳未満(あるいは18歳〜30歳未満を含む若者ケアラー)の子ども・若者のことです。厚生労働省の調査では、世話をしている家族が「いる」と回答した中学2年生は5.7%、小学6年生は6.5%、全日制高校2年生は4.1%にのぼり、平日のケア時間は中2で平均4時間にも及びます。本人が「困っている」と気づきにくいことが多いため、家族・学校・地域が早期に気づき、こども家庭センターや地域包括支援センターを介して介護保険・障害福祉サービスにつなげ、ケア負担そのものを軽くする支援が欠かせません。
目次
家族の介護や世話を当たり前に担っている子ども・若者の存在が、ようやく社会的に「見える」ようになってきました。学校に通いながら、認知症の祖父母を見守り、精神疾患のある親を支え、幼いきょうだいの世話と家事を一手に引き受ける──そうした日常を抱えながら、本人は「家族なんだから当然」「困っているなんて思っていない」と語ることが少なくありません。だからこそ、周囲の大人が早期に気づき、責めるのではなく寄り添い、必要な公的サービスにつなぐことが何よりも大切です。
本記事では、介護を専門に発信するメディアの視点から、ヤングケアラーの定義と最新の実態、子ども本人が担っている多様なケアの内容、健康・学業・進路への影響、家族や学校・地域がとるべき具体的な対応、そして介護保険・障害福祉サービスを使って「子どもからケアを引き剥がす」ための実務的な道筋をていねいに整理します。当事者・元当事者・周囲の大人、それぞれの立場から読んでいただける構成にしました。
ヤングケアラーとは|法律上の定義と「お手伝い」との違い
ヤングケアラーは、こども家庭庁・厚生労働省により次のように定義されています。
本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っていることにより、子ども自身がやりたいことができないなど、子ども自身の権利が守られていないと思われる子ども
(厚生労働省「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」より)
さらに2024年6月に改正された子ども・若者育成支援推進法では、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」として法律上に明記され、国・地方公共団体が支援に努めるべき対象に正式に位置づけられました。「過度に」とは、その負担によって遊び・勉強・進路選択といったこどもとして必要な時間や、若者では自立に向けた時間が奪われ、心身に負荷がかかっている状態を指します。
「お手伝い」とヤングケアラーの違い
子どもが家事を手伝うこと自体は珍しいことではなく、それ自体が悪いわけではありません。お手伝いとの境界は「程度」と「責任の重さ」にあります。次の3つが揃ったとき、子どもはヤングケアラーになりつつあると考えられます。
- 頻度と時間:ほぼ毎日・長時間(厚労省調査では中2の平均ケア時間は4時間/日)
- 責任の重さ:家族の安全や生活を「子ども自身が背負っている」状態(代わってくれる大人がいない)
- 本人への影響:勉強・睡眠・友人関係・進路など、こどもとしての時間が削られている
「子ども・若者ケアラー」と18歳の壁
2024年の法改正で、これまで「18歳未満」が中心だった概念に若者ケアラー(おおむね30歳未満)も含まれるようになりました。18歳を超えた瞬間に支援が途切れる「18歳の壁」を防ぐ趣旨で、市区町村は18歳未満を、都道府県は18歳以上を主に担当する役割分担も明示されています。高校卒業・進学・就職と重なる時期にケアと両立する若者にも支援の手が届くようになった点は、大きな前進です。
国の実態調査|どれくらいの子どもが家族のケアを担っているのか
「ヤングケアラーは特殊な家庭の話」と感じられるかもしれません。しかし国の実態調査は、ごく身近にケアを担う子どもがいることを示しています。
世話をしている家族が「いる」と答えた子どもの割合
厚生労働省・こども家庭庁が実施した全国調査(令和2年度・3年度・5年度)では、世話をしている家族が「いる」と答えた割合は次のとおりです。
- 小学6年生:6.5%(約15人に1人)
- 中学2年生:5.7%(約17人に1人)
- 全日制高校2年生:4.1%
- 定時制高校2年生相当:8.5%
- 通信制高校生:11.0%
- 大学3年生:6.2%
つまり一クラスに1〜2人はケアを担う子どもがいる計算になります。定時制・通信制ではさらに割合が高く、ケアと学業を両立するために通学スタイルそのものを変えている子どもが少なくないことを示唆しています。
「ほぼ毎日」「平均4時間」の現実
世話をしていると回答した子どもに頻度を聞くと、いずれの学年でも「ほぼ毎日」が最多で、小学6年生では半数以上、通信制高校生でも約半数に達します。平日1日あたりのケア時間は、中学2年生で平均4.0時間、全日制高校2年生で平均3.8時間、通信制高校生では「7時間以上」が約4人に1人にのぼります。学校から帰った後の時間のほとんどがケアに費やされている状態が、決して例外的ではないと分かります。
世話の相手は「きょうだい」が最多
「誰の世話をしているか」では、小学6年生で71.0%、中学2年生で61.8%、高校2年生で44.3%が「きょうだい」と回答しました。きょうだいの状況は「幼い」が最多ですが、知的障がい(中2で14.7%)や身体障がい、発達障がいのあるきょうだいのケアも一定数含まれます。次いで多いのが「父母」と「祖父母」で、父母では精神疾患・依存症や身体障がい、祖父母では高齢・要介護・認知症のケースが目立ちます。
背景にある社会構造の変化
子どもがケアを担わざるを得ない背景には、いくつもの構造変化があります。世帯人員数は1953年の5.00人から2019年の2.39人へと半減し、共働き世帯は1980年比でほぼ倍増。ひとり親世帯も増えました。一方で65歳以上人口の5人に1人が認知症と推計され、要介護認定者数は年々増加しています。「家庭内でケアを担える大人の手」が物理的に足りていない状況に、子どもの労力が組み込まれてしまうのです。子どもが悪いわけでも親が悪いわけでもなく、家族の規模と地域のケア資源の関係そのものが変わってしまった結果として理解する必要があります。
子どもが担っているケアの実態|家事から通訳・感情面のサポートまで
ヤングケアラーが担うケアは、想像以上に幅広いものです。厚生労働省・三菱UFJリサーチ&コンサルティングの実態調査と、こども家庭庁の事例集をもとに、典型的な8パターンを整理します。複数を同時に担っている子どもも珍しくありません。
1. 家事全般を担う
食事の準備、買い物、掃除、洗濯、ゴミ出しなど、家庭の生活インフラを子どもが回している状態です。学校調査で「ヤングケアラーがいる」と答えた中学校の56.6%が、本人が家事を担っていると回答しています。親が体調を崩しがちな家庭、ひとり親家庭、外国にルーツのある家庭などで多くみられます。
2. 幼いきょうだいの世話・送迎
もっとも多いパターンです。きょうだいの食事・入浴・寝かしつけ、保育園や学童への送迎、宿題のフォローまで、親代わりの役割を担います。「親が仕事で不在の間に幼いきょうだいの遊び相手をしている」だけでもケアの一部に含まれます。
3. 認知症の祖父母の見守り
祖父母と同居する家庭では、徘徊や火の不始末を防ぐための見守り、トイレ誘導、薬の管理を子どもが担うケースがあります。とくに親が共働きの場合、放課後の数時間を子どもがほぼ一人で看ている状態が生まれやすくなります。
4. 精神疾患・依存症のある親への対応
うつ病、統合失調症、双極性障害、アルコール・薬物・ギャンブル依存などのある親を支えるケースです。家事代行に加え、不安定な感情への対応、希死念慮への寄り添い、受診の付き添いなど、専門職でも難しい役割を子どもが担います。心理的負荷がとくに大きく、外から見えにくい類型でもあります。
5. 障がいのあるきょうだいのケア
知的障がい、身体障がい、発達障がいのあるきょうだいの食事介助・通学付き添い・行動の見守りを担うケース。「きょうだい児」「シブリング」と呼ばれることもあり、自分の進路や結婚をきょうだいのケアを軸に考えてしまう傾向が指摘されています。
6. 身体的介護(入浴・トイレ・移乗)
祖父母や親の入浴・排泄・移乗(ベッドから車いすへの移動)など、本来は専門職や複数の大人で行うべき身体的介護を、子どもが一人で抱える例もあります。子ども自身の腰痛・睡眠不足の原因となり、安全面でも大きなリスクを伴います。
7. 通院付き添い・薬の管理
家族の通院への同行、医師との会話の理解と家族への共有、処方薬のセット、服薬時間の声かけなど。子どもが「家庭内の医療コーディネーター」になっている状態です。
8. 通訳・代理対応(言語・手話・行政手続き)
外国にルーツのある家庭で、日本語が不自由な親に代わって学校・病院・役所での通訳や書類対応を担うケース(ランゲージブローカー)、聞こえない親をもつ聞こえる子(コーダ/CODA)が手話通訳や音声世界との橋渡しを担うケース、行政手続きや家計の管理を担うケースも含まれます。「学習や友達関係を犠牲にしている」ことが見えにくい類型です。
ヤングケアラーへの影響|健康・学業・友人関係・進路に何が起きるか
ケアの経験そのものが悪いわけではありません。元ヤングケアラーには「家族と過ごせた時間に意味があった」「人を支える仕事に活かせている」と語る人もいます。ただし、それは適切なサポートが入った場合の話です。負担が過剰になると、子どもの健康・学業・友人関係・将来の選択肢に深刻な影響が出ます。
健康への影響
厚労省調査では、世話をしている家族が「いる」中学生は、「いない」中学生に比べて健康状態が「あまりよくない/よくない」と回答する割合が約3倍、睡眠不足を訴える割合も高くなっています。睡眠時間の慢性的な不足、腰痛、頭痛、食事を抜く、自分の通院を後回しにする──こうした身体面のサインが現れることが少なくありません。
学業への影響
「宿題や課題ができていないことが多い」「持ち物の忘れ物が多い」「遅刻や早退をたまにする・よくする」の割合は、ケアをしている子のほうが2〜3倍高いという結果が出ています。授業中に居眠りしてしまう、テスト勉強の時間が取れないといった日常が積み重なり、学力の伸び悩みや内申点への影響につながります。
友人関係・部活動への影響
「友人と遊んだり等する時間が少ない」「部活動や習い事を休むことが多い」「学校では一人で過ごすことが多い」と回答する割合も明確に高くなります。友人と共有できる経験が少ないことで孤立感が深まり、思春期に必要な人間関係の練習機会が奪われがちです。
進路選択への影響
もっとも見えにくい、しかし長期的に大きいのが進路への影響です。「家族のケアがあるから家から通える学校にしか行けない」「大学に進学したいけれど留守番できる人がいない」「正社員になりたいけれど夜勤や残業のある仕事は選べない」──こうしてキャリアの選択肢が狭まります。元ヤングケアラーへの調査では、就職後にも「責任の重い仕事が続けられず転職を繰り返した」「自分のキャリアより家族のケアを優先してきた」と語る声が複数報告されています。
心理面・自己認識への影響
「自分の話を聞いてくれる大人がいない」「家族のことで困っていると言えない」と感じ続けることは、自己肯定感を低下させ、長期的にはうつ症状や不安症状のリスクを高めます。一方で「自分はしっかりしている」「家族の役に立っている」という強い自負と、抱える疲労や寂しさが同居することも多く、本人が「助けて」と言いにくい構造を生み出しています。
ケア経験のポジティブな側面
誤解のないよう付け加えると、ケア経験には肯定的な側面も確かにあります。家族の絆、人の弱さに対する想像力、生活能力、責任感、医療や福祉の知識──これらは適切な支援とセットであれば、その子の人生の豊かな資源になり得ます。重要なのは、子どもが「子どもとして過ごす時間」を確保したうえで、ケアの経験が肯定的な意味を持てるよう周囲が調整することです。
気づくサイン|本人が「困っている」と言えなくても、まわりが気づくために
ヤングケアラー支援でもっとも難しいのは、本人も家族も「これがケア負担だ」と気づいていないことが多い点です。要保護児童対策地域協議会の調査でも、支援の最大の壁として「家族や周囲の大人に子どもがヤングケアラーである認識がない」(82.0%)、「子ども自身が状況を問題と認識しておらず支援を求めない」(50.2%)が挙げられています。だからこそ、周囲の大人が次のサインに敏感である必要があります。
学校生活で出やすいサイン
- 遅刻・早退・欠席が増える、または特定の曜日に集中する
- 宿題が出ていない、忘れ物が増える
- 授業中に居眠りする、集中力が落ちている
- 修学旅行・宿泊学習・部活動の合宿を「家庭の事情」で見送る
- 持ち物の管理が大人びていて、家庭の経済事情を担っている雰囲気がある
- 放課後すぐに帰宅し、友達と遊ばない
身体・心の変化として出やすいサイン
- 顔色が悪い、明らかに睡眠不足の様子
- 食事を抜いている、極端な偏食
- 腰痛・頭痛などの体調不良を訴える
- 感情の起伏が小さくなり、無表情・無気力に見える
- 「家のことで」と言葉を濁す
家庭・生活面で出やすいサイン
- 同居している大人に病気・障がい・依存症がある
- ひとり親家庭で、親の仕事の負担が大きい
- 幼いきょうだいや障がいのあるきょうだいがいて、保育所等の利用が十分でない
- 外国にルーツがある、または家族の中で日本語を理解できるのが子どもだけ
- 家族の通院・行政手続きにいつも子どもが付き添っている
声のかけ方|「責めない」「結論を急がない」
サインに気づいたら、いきなり「あなたヤングケアラーね」とラベリングするのは逆効果です。こども家庭庁が学校・支援機関向けに公開している「YC気づきツール」では、次の順序が推奨されています。
- 具体的な事実から声をかける:「最近、朝早く来てるね」「忘れ物多いね、おうちで何かあった?」
- 本人の言葉を待つ:沈黙を埋めようとせず、本人が話し始めるまで待つ
- 「あなたが悪いわけではない」と明確に伝える:家族を悪く言わない/本人を責めない
- 「一人で抱え込まなくていい」と選択肢を示す:「相談できる場所がいくつかあるよ」と具体名を伝える
- 家族の許可なしでもつなげる先があると知らせる:学校のSSW、こども家庭センター、児童相談所
家族に対しては「お子さんを責めている」と受け取られないよう、「ご家庭の負担を一緒に減らす方法を考えたい」というスタンスで切り出すと、その後の連携がスムーズになります。
学校でできる対応|スクールソーシャルワーカー・養護教諭という最初の窓口
多くのヤングケアラーにとって、家庭外で一番長く過ごし、一番大人と接する場が学校です。だからこそ学校は支援の起点として極めて重要な役割を担います。こども家庭庁の「ヤングケアラー支援における学校等と支援担当部署との連携について」(令和7年改定)でも、学校が福祉部門へつなぐルートが明確化されています。
担任・養護教諭|日常で気づく一番近い大人
担任は出欠席・忘れ物・表情の変化に最初に気づける立場です。養護教諭(保健室の先生)には、体調不良を訴えて来室した時に「家のことで困っていることはない?」と気軽に話せる雰囲気があります。子どもからは「先生に話したらクラスメイトに知られてしまう」と心配する声もあるため、個別の関係づくりと守秘の徹底がセットで必要です。
スクールカウンセラー(SC)|気持ちの整理を手伝う専門家
スクールカウンセラーは公認心理師・臨床心理士が中心で、「気持ちを言葉にする」「自分の状況を整理する」段階のサポートが得意分野です。多くの学校で週1〜数回配置されており、予約せずに保健室経由で会えるところも増えています。本人が「困りごとを誰かに話してもいい」と思えるようになる入口として機能します。
スクールソーシャルワーカー(SSW)|家庭と地域をつなぐ専門家
もっとも実務的な支援につながりやすいのがスクールソーシャルワーカーです。社会福祉士・精神保健福祉士の資格を持つことが多く、家庭訪問、こども家庭センターとの連携、介護保険・障害福祉サービスへの橋渡し、生活保護や就学援助制度の活用提案などを担います。学校に常駐していない場合は教育委員会経由で派遣を依頼する形が一般的です。「家庭の状況を福祉につなぎたい」と感じたら、まずSSWに相談するのが最短ルートです。
学校から外部へつなぐ判断基準
厚労省の調査では、ヤングケアラーがいる中学校のうち52.4%が「学校内で対応している」と回答した一方、要保護児童対策地域協議会に通告したのは9.5%にとどまります。学校内対応が悪いわけではありませんが、次のような場合は早期に外部と連携すべきです。
- 家庭内で虐待やネグレクトが疑われる
- 家族の精神疾患・依存症・経済困窮が複合的に絡んでいる
- ケアの量・時間が著しく多く、子どもの心身に明らかな影響が出ている
- 本人や家族が「外部の支援はいらない」と拒んでいるが、客観的に支援が必要
「外部につなぐと家族が嫌がるかもしれない」という遠慮で抱え込むより、まずは個別ケース検討会議の俎上に載せ、多機関で対応方針を共有することが、結果的に家族全体の負担軽減につながります。
国・自治体の支援事業|こども家庭庁ヤングケアラー支援体制強化事業の仕組み
2022年度に厚生労働省が始め、2023年度のこども家庭庁発足とともに移管された「ヤングケアラー支援体制強化事業」は、地方自治体がヤングケアラー支援に取り組むための補助金事業です。令和7年度(2025年度)予算では児童虐待防止対策等総合支援事業費補助金207億円の内数として計上され、補助率は国2/3・自治体1/3となっています。
事業に含まれる3つの柱
- 実態調査・把握(都道府県・市区町村)
市区町村が学校等を通じて任意の記名式調査を実施し、個別の子どもの状況を把握できる仕組み。1市区町村あたり170万円程度が補助されます。 - 関係機関職員研修
要保護児童対策地域協議会、子ども・若者支援地域協議会、医療・介護・教育関係者向けに、ヤングケアラーの概念・早期把握の視点・対応方法を学ぶ研修を実施。 - ヤングケアラー支援体制構築事業
関係機関・民間団体と連携した相談支援、ピアサポート(当事者交流)、オンラインサロン、家事支援サービスの派遣、ヤングケアラー・コーディネーターの配置などを行う事業に補助。
ヤングケアラー・コーディネーターという新しい職種
多くの自治体で配置が広がっているのがヤングケアラー・コーディネーターです。社会福祉士・精神保健福祉士などが中心で、相談を受けたら「子どもの状況の聞き取り」「家族のケアニーズの整理」「介護保険・障害福祉・医療・教育・経済的支援への接続」を一手にコーディネートします。学校から「気になる子がいる」と相談が入ったら、家庭訪問してケアプランを一緒に考えるという、いわば「子ども版ケアマネジャー」のような役割です。
こども家庭センター|母子保健と児童福祉のワンストップ窓口
2024年4月から全市区町村に設置されたこども家庭センターは、これまで母子保健と児童福祉に分かれていた窓口を統合し、妊娠期から子育て期まで一貫した相談に応じる組織です。ヤングケアラー支援担当が置かれている自治体も増えており、学校・医療・介護・障害福祉などの関係機関と協働して、子どもと家族の支援計画(サポートプラン)を作成します。「どこに相談したらいいかわからない」時に、まず連絡すべき窓口の一つです。
家事支援・配食・通学送迎などの直接サービス
近年広がっているのが、家事支援ヘルパーの派遣、配食、子どもの送迎、学習支援といった直接サービスの自治体派遣です。たとえば埼玉県、東京都、神戸市などでは、ヤングケアラーがいる家庭に対して、家事支援員や子育てサポーターを無料または低額で派遣する制度を整備しています。お住まいの自治体名と「ヤングケアラー 家事支援」で検索すると、要件や申請方法が確認できます。
介護・障害福祉サービスを使って「子どもからケアを引き剥がす」実務的な道筋
ヤングケアラー支援の本質は、「子どもにケアを上手にやらせる」ことではなく、本来は専門職や公的サービスが担うべきケアを、専門職や公的サービスに戻すことにあります。介護を専門に発信する本サイトの視点から、ケア対象者ごとに「家族としてどんな公的サービスを活用できるか」を整理します。
祖父母が要介護・認知症の場合|介護保険サービス
65歳以上で介護や支援が必要な状態であれば、お住まいの市区町村に要介護認定を申請できます。認定を受けると次のようなサービスを使えます。
- 訪問介護(ホームヘルプ):身体介護や生活援助をヘルパーが訪問
- 通所介護(デイサービス):日中、施設で過ごしてもらう
- 短期入所生活介護(ショートステイ):数日間、施設に泊まってもらう
- 福祉用具レンタル:手すり、車いす、特殊寝台など
- 住宅改修:手すり設置・段差解消・床材変更などに最大20万円
窓口は地域包括支援センターです。中学校区に1か所程度配置されており、認定の申請代行、ケアマネジャーの紹介、サービス事業者との調整まで無料で対応してくれます。「祖父母の見守りを孫が放課後にしている」状態は、まさにデイサービスやショートステイを導入すべき典型例です。
親やきょうだいに障がいがある場合|障害福祉サービス
身体・知的・精神いずれかの障がいがある場合、障害福祉サービス受給者証を取得すれば次のサービスを使えます。
- 居宅介護(ホームヘルプ):身体介護・家事援助
- 同行援護・行動援護:外出時の支援
- 短期入所:施設での宿泊型レスパイト
- 生活介護・就労継続支援:日中の通所先
- 放課後等デイサービス:障がいのある児童の放課後の居場所
相談の入口は基幹相談支援センターまたは市区町村の障害福祉課。相談支援専門員がサービス等利用計画を作成してくれます。「障がいのあるきょうだいの世話を兄姉が担っている」家庭では、放課後等デイサービスの活用で兄姉の負担を大きく減らせます。
親に精神疾患・依存症がある場合|保健所・精神保健福祉センター
うつ病、統合失調症、双極性障害、アルコール依存などのある親への対応は、子ども一人では支えきれません。保健所と精神保健福祉センターが相談窓口となり、精神科医・精神保健福祉士による訪問相談、家族会の紹介、医療機関への接続を行います。アルコール依存にはAA・断酒会、ギャンブル依存にはGAなどの自助グループもあり、家族向けに家族教室を開いている保健所も多くあります。「親の感情の波を子どもが受け止めている」状態は、保健師による定期訪問の対象です。
幼いきょうだいの世話|保育所・ファミリーサポート・学童保育
幼いきょうだいの送迎・世話は、本来は親と公的サービスで分担するべきです。保育所の入所要件は自治体ごとに異なりますが、ひとり親世帯や親に疾患がある世帯は優先順位が上がります。ファミリー・サポート・センター(地域住民同士の助け合い)、子育て援助活動支援事業、病児・病後児保育、放課後児童クラブ(学童保育)など、入口は複数あります。これらは多くがこども家庭センターから一括で案内してもらえます。
家族会議の進め方|「子ども一人に背負わせない」共通認識
サービスを入れるには家族全員の合意があったほうがスムーズです。とくに「他人を家に入れたくない」「家族で支え合うべき」と感じている保護者には、「子どもの将来のために、今のうちから外部の支援を組み込んでおく」という説明が響きやすいことが、ヤングケアラー支援の実践報告で繰り返し指摘されています。介護や障害福祉サービスは「家族の代わり」ではなく「家族と一緒に支える仕組み」だ──この共通認識を家庭の中につくることが、結果的に子どもの時間を取り戻します。
親世代へ|子どもが「自然にケアを担っている」状態に気づいたら
もしご自身の家庭の中で、子どもが日常的に介護や家事、きょうだいの世話を担っているのではないかと感じたとき、保護者の方に意識していただきたいことがあります。これは「悪い親だった」と責めるための話ではなく、社会の構造変化の中でどの家庭にも起きうることとして、対処の選択肢を増やすための整理です。
1. 子どもの「平気だよ」を真に受けすぎない
ヤングケアラーは「親に心配をかけたくない」「弱音を吐いてはいけない」という気持ちが強いことが多く、聞かれれば「平気」「自分で選んでやっている」と答えます。それは事実の半分であって、もう半分には疲労や寂しさが隠れています。「ありがとう、本当に助かってる。でも本当はどう感じてる?」と感謝とセットで本音を聞く姿勢を意識してみてください。
2. 「子どもしかいないから」を疑う
「うちは私(保護者)が夜勤の仕事だから、子どもがやらないと回らない」「ケアマネには相談したけど何も変わらなかった」と感じている場合でも、視点を変えると別の選択肢があるケースが多くあります。地域包括支援センター、基幹相談支援センター、こども家庭センターに「子どもがこれだけのケアを担っている状態を変えたい」と明確に伝えると、利用できるサービスの組み合わせが見つかることがあります。
3. 進路選択の責任を子どもに負わせない
「ケアがあるから家から通える学校にしてほしい」「下宿はしないでほしい」と、無自覚に進路選択を縛ってしまうことがあります。子どもがケアを理由に進路を狭めかけているサイン(「私は地元の大学でいい」「就職は家から通える範囲で」)に気づいたら、保護者の側から「あなたの希望を最優先にしていい、その分は私たちが別の方法で組み直す」と明確に伝えることが大切です。
4. レスパイト(一時的な休息)を意識的に組み込む
子どもが家族のケアから完全に離れる時間を、意識的に確保してください。ショートステイで祖父母を数日預ける、放課後等デイサービスで障がいのあるきょうだいの居場所をつくる、ファミリーサポートで幼いきょうだいを預ける──こうした「子どもがケアから自由になる時間」は、贅沢ではなく必要不可欠なものです。
5. 「親も助けを求めていい」というメッセージを家庭に持ち込む
子どもがケアを抱え込みやすい家庭は、しばしば保護者自身も「自分だけで何とかしなければ」と抱え込んでいます。保護者がまず「助けて」「相談したい」と口にする姿を見せることが、子どもにとって「弱さを見せても大丈夫」というメッセージになります。介護うつ・育児疲れの相談は、こども家庭センターや地域包括支援センターでも受け付けています。
本人・周囲が今すぐ使える相談窓口リスト
「どこに連絡したらいいかわからない」というのは、ヤングケアラー支援で一番多い悩みです。子ども本人、保護者、教員、地域住民、それぞれの立場から使える窓口を一覧で整理します。匿名相談OKの窓口も多く、まずは話してみるだけでも構いません。
子ども本人がすぐに使える窓口
- こども家庭庁ヤングケアラー特設サイト 相談窓口検索:自治体ごとの相談先を検索できる(kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(なやみ言おう)/24時間・無料・全国共通
- 子どもの人権110番:0120-007-110(法務省)/平日8:30〜17:15・無料
- チャイルドライン:0120-99-7777/毎日16時〜21時・18歳まで無料
- よりそいホットライン:0120-279-338/24時間・無料/外国語対応・性別違和の相談ライン等あり
- LINE相談:埼玉県・東京都など多くの自治体がヤングケアラー向けLINE相談を開設
家族・保護者の相談窓口
- こども家庭センター:全市区町村に設置/妊娠期〜子育て期の総合相談
- 地域包括支援センター:高齢の家族のケアについて/中学校区に1か所
- 基幹相談支援センター:障がいのある家族のサービス相談
- 保健所・精神保健福祉センター:精神疾患・依存症のある家族の相談
- 児童相談所相談専用ダイヤル:0120-189-783(いちはやく・おなやみを)/24時間・無料
学校関係者・支援者向け
- こども家庭庁「YC気づきツール」「YCアセスメントツール」(特設サイトからダウンロード可)
- こども家庭庁主催のヤングケアラー支援研修
- 各都道府県のヤングケアラー支援研修・出前講座
当事者・元当事者の交流コミュニティ
- 一般社団法人ヤングケアラー協会:オンラインサロン「Yancle community」、就労支援サービス「Yancle works」
- 日本財団 ヤングケアラーと家族を支えるプログラム:当事者向け企画・啓発映画
- 一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会:中学生・高校生向け「ほっと一息タイム」、探求プログラム
これらの窓口は「家族の許可がなくても」「匿名でも」相談できます。「相談したら何かが勝手に動いてしまうのでは」と心配な場合も、最初の電話・LINEは「話を聞いてもらうだけ」で大丈夫です。「次はどこに連絡したらいいか」「家族とどう話せばいいか」を一緒に考えてくれます。
元ヤングケアラー(成人後)への支援|18歳を超えてからのケア経験と向き合う
ヤングケアラーをめぐる議論は子ども期に焦点が当たりがちですが、ケア経験が人生に与える影響は大人になってから顕在化することも少なくありません。元ヤングケアラー・若者ケアラーへの支援は、ようやく社会的な議論が始まったばかりの領域です。
成人後に出やすい困りごと
- 就職活動・転職活動が家族のケアに縛られる
- 正社員の長時間労働や夜勤と両立できず非正規・パートを選ばざるを得ない
- 結婚・恋愛・出産を「家族のケアを抜けたら申し訳ない」と感じて選びにくい
- 家族と物理的距離を取れず、自立への踏み出しが遅れる
- ケアと自分の人生の境界がわからない/自分のやりたいことがわからない
- 子ども時代の話を友人や恋人にしづらく、関係性が表層的になりやすい
- 家族の死後に「ケアロス」と呼ばれる強い喪失感や燃え尽き症状を抱える
若者ケアラー(おおむね30歳未満)への公的支援
2024年の子ども・若者育成支援推進法改正で、若者ケアラーも法的な支援対象として明示されました。都道府県が主に担当し、次のような支援が広がっています。
- 子ども・若者支援地域協議会での個別ケース対応
- 地域若者サポートステーション(サポステ)での就労支援
- ケアと両立しやすい働き方の相談(社会福祉協議会、ハローワーク)
- 介護休業・介護休暇制度(93日まで/対象家族1人につき3回まで分割可)の活用相談
ピアサポートと当事者コミュニティ
元ヤングケアラーがもっとも力を得るのは、同じ経験をした人同士のつながりです。一般社団法人ヤングケアラー協会の「Yancle community」、各地のケアラーズカフェ、SNS上のオンラインサロンなどに参加することで、「自分一人じゃなかった」「ケア経験を語っていい」と感じられる場が確保できます。心理的負荷が大きい場合は、精神保健福祉センターや民間カウンセリングの利用も選択肢に入ります。
ケア経験を肯定的に語り直す
大人になってから「自分はヤングケアラーだった」と気づいたとき、過去の自分の選択を悔やむ気持ちと、家族を支えてきた自負との両方を抱えることになります。どちらも否定する必要はありません。ケア経験は「奪われた時間」であると同時に、自分が積み上げてきた力でもある──この両義性を抱えたまま、これからの自分の人生を組み直していく支援が、若者ケアラー支援の本質です。
ヤングケアラーに関するよくある質問
Q. ヤングケアラーは何歳から何歳までを指しますか?
A. 厚生労働省の定義は「18歳未満」を中心としていますが、2024年6月の子ども・若者育成支援推進法改正で18歳以上の若者ケアラー(おおむね30歳未満)も法的な支援対象として明示されました。年齢で区切るというより、「家事や家族の介護を過度に行っていて、こども・若者として必要な時間が奪われている」状態であるかどうかが判断基準です。
Q. 自分はヤングケアラーかもしれないと思ったら、まずどうすればいいですか?
A. 「ヤングケアラーかどうか」を自分で診断する必要はありません。「家のことで困っている」「自分の時間が取れない」「眠れない」など、何かしらの困りごとがある時点で、こども家庭庁ヤングケアラー特設サイトの相談窓口検索や、24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)、よりそいホットライン(0120-279-338)に電話・LINEで連絡してみてください。匿名OKで、話を聞いてもらうだけでも構いません。
Q. 家族の許可がなくても相談していいですか?
A. はい、相談できます。学校のスクールソーシャルワーカー、こども家庭センター、児童相談所、こども家庭庁の相談窓口は、いずれも本人や周囲の大人からの相談を、家族の許可なく受け付けます。「相談したことが家族にすぐ伝わって状況が悪化するのでは」と心配な場合は、その懸念も含めて窓口に伝えると、本人の安全を優先した対応を一緒に考えてくれます。
Q. 学校の先生に相談したらクラスメイトに知られませんか?
A. 学校の教員・スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーには守秘義務があり、本人の同意なくクラスメイトに伝わることはありません。担任や養護教諭が話しにくい場合は、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを直接指名することもできます。学校外で話したい場合は、こども家庭センターやチャイルドライン(0120-99-7777)など、学校と直接つながらない窓口を選べます。
Q. 介護保険サービスを使うとお金がたくさんかかりますか?
A. 介護保険サービスの自己負担は、原則として費用の1〜3割です。世帯の所得が低い場合は高額介護サービス費の上限額が低く設定され、さらに社会福祉法人による利用者負担軽減制度や生活保護受給者の自己負担免除などの仕組みもあります。費用面の不安は地域包括支援センターのケアマネジャーに率直に伝えれば、利用できる制度を組み合わせた提案を受けられます。
Q. ヤングケアラーの問題は親が悪いということですか?
A. いいえ、特定の誰かを責めるための概念ではありません。世帯の小規模化、共働きの増加、ひとり親世帯の増加、高齢化、認知症の増加、外国にルーツのある家庭の増加など、社会構造の変化の中で、家庭内のケア需要が家族の手だけでは到底担えなくなった状況に対する社会的な気づきです。重要なのは家族を責めることではなく、地域・国・自治体・学校が一緒にケアを担う仕組みをつくっていくことです。
参考文献・出典
- [1]
- [2]ヤングケアラーの実態に関する調査研究 報告書- 厚生労働省/三菱UFJリサーチ&コンサルティング
中学2年生・高校2年生・要保護児童対策地域協議会への調査結果。世話の有無・内容・頻度・影響に関する一次データ
- [3]
- [4]
- [5]
- [6]
- [7]
まとめ|「子どもがこどもでいられる時間」を社会で取り戻す
ヤングケアラーという言葉は、特定の家庭や子どもを「問題」として切り出すためのものではありません。世帯規模の縮小、共働きの増加、ひとり親世帯の増加、高齢化、認知症の増加──こうした社会の変化のなかで、家庭の中だけではケアを担いきれなくなっている状況に、私たちが気づくための言葉です。
本記事で確認したように、中学2年生の5.7%、小学6年生の6.5%、定時制高校では8.5%もの子どもが、家族の世話を日常的に担っています。平日のケア時間は中2で平均4時間。「家族のために」「自分が選んでやっている」と笑顔で語る背景には、本人すら気づきにくい疲労と孤独が積み重なっています。
支援の出発点はシンプルです。気づくこと、責めないこと、つなぐこと。学校のスクールソーシャルワーカー、こども家庭センター、地域包括支援センター、基幹相談支援センター、ヤングケアラー・コーディネーターという、ここ数年で急速に整いつつある支援の仕組みを、家族で・周囲で・子ども本人で、上手に使っていきましょう。介護保険や障害福祉サービスは、家族を肩代わりするものではなく、家族と一緒にケアを支える仕組みです。子どもが担っているケアの一部を専門職に戻すだけで、こども・若者の人生の選択肢は大きく広がります。
そしてもう一つ。すでに大人になった元ヤングケアラーの方も、これから若者ケアラーとして家族のケアと両立していく方も、ピアコミュニティや若者支援の仕組みのなかで、自分の経験を否定もせず、過剰に肯定もしないかたちで語り直していけます。「ケア経験は人生から奪われた時間でもあり、自分が積み上げてきた力でもある」──その両義性を、一人で抱え込まずに分かち合っていける社会へ。本記事が、その第一歩のきっかけとなれば幸いです。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護保険、施設選び、在宅介護など、介護を受ける方・ご家族が判断に迷いやすいテーマを、公的情報と実務上の確認ポイントに沿って解説しています。
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