緊急通報システムとは

緊急通報システムとは

緊急通報システムは、ひとり暮らし高齢者や重度障害者がボタン一つで受信センターに緊急連絡できる仕組み。自治体事業・民間サービスの違いから機器種類・費用・申込方法までを解説。

ポイント

この記事のポイント

緊急通報システムは、ひとり暮らしの高齢者や重度身体障害者が急病・転倒などの緊急時に、専用機器のボタン1つで24時間体制の受信センターに通報できる仕組みのこと。多くの市区町村が地域支援事業や独自施策として実施しており、利用者宅に設置する固定型機器や、首から下げるペンダント型送信機を組み合わせて、必要に応じて消防・協力員・家族へ連絡する。所得に応じて自己負担月数百〜数千円で利用できる。

目次

緊急通報システムの仕組みと制度的位置づけ

緊急通報システムは、自宅で急病や転倒などのトラブルが起こったときに、利用者がボタンを押すだけで24時間対応の受信センターにつながる仕組みだ。多くの自治体は介護保険法に基づく「地域支援事業」のうち「任意事業」として、または市町村独自の高齢者福祉サービスとして実施している。

3つの構成要素

システムは大きく3つの要素で構成される。1つ目は利用者宅に設置する固定型通報装置(電話機型)、2つ目は首から下げるペンダント型送信機または室内でも持ち歩ける小型ボタン、3つ目は警備会社や地域包括支援センター系列が運営する24時間受信センターだ。利用者がペンダントを押すと固定機を経由してセンターに通報が入り、オペレーターが状況を確認したうえで、救急車手配・近隣協力員への連絡・家族通知などを行う。

制度上の位置づけ

市区町村が実施する自治体事業の場合、対象者・費用負担・受信センター運営事業者は条例または要綱で定められている。介護保険サービスとは別枠の福祉施策のため、要支援・要介護認定がなくても利用可能な自治体が多い。一方、ALSOK・セコム・象印などの民間警備会社・メーカーが提供する有料サービスもあり、こちらは保険適用外のサービスとなる。

類似サービスとの関係

センサー型見守り(人感センサーや家電稼働センサーで異変を検知)、ICT見守り(GPSやスマホアプリで居場所を共有)、配食サービス時の安否確認、新聞配達員による声かけなど、複数の見守り手段を組み合わせる「重層的見守り」が地域包括ケアの基本路線で、緊急通報システムはその中核装置に位置づけられる。

緊急通報システムの主な機能

  • 緊急通報ボタン:固定機・ペンダント型のいずれかを押すと、即座に24時間体制の受信センターへつながる。
  • 音声相談機能:オペレーターや看護師資格を持つ相談員と双方向で会話でき、症状を伝えながら指示を仰げる。
  • 協力員ネットワーク:あらかじめ登録した近隣の親族・民生委員・町内会員に自動で連絡が入り、現場に駆けつけてもらえる。
  • 火災・ガス漏れセンサー連動:自治体オプションで煙感知器・ガス漏れ警報器を連動させ、自動通報する仕組みも普及。
  • 定期安否確認コール:週1回〜月1回、センターから電話で安否を確認するサービスがある自治体・事業者も多い。
  • 看護師24時間相談:体調不安・服薬不安などの一般相談を、看護師などの専門職が365日対応する。
  • 位置情報通知(GPS型):外出時にも対応する移動型機器の場合、GPSで位置情報を発信できる。

自治体事業と民間サービスの違い

緊急通報システムは「自治体が実施する公費事業」と「民間警備会社の有料サービス」の2系統がある。費用・対象・サービス範囲を比較する。

項目自治体事業民間サービス
運営主体市区町村(受信センターは委託)ALSOK・セコム・東京海上日動・象印など
対象者原則65歳以上のひとり暮らし/高齢者のみ世帯/重度障害者制限なし(家族契約も可能)
初期費用無料(または住民税非課税世帯は無料)0〜30,000円程度(工事費含む)
月額費用0〜2,000円(住民税非課税は無料の自治体多数)1,500〜5,000円程度
申込窓口市区町村高齢福祉課・地域包括支援センター各社のWebサイト・代理店
緊急時の駆けつけ協力員(近隣親族・民生委員)警備員(隊員が直接駆けつけ)

自治体事業は費用面で優位だが、現地への駆けつけは協力員に依存する。民間サービスは警備員の直接駆けつけがある反面、費用負担が大きい。両者を組み合わせて利用する高齢者世帯もある。

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自治体の緊急通報システム申込から設置までの流れ

  1. STEP1:相談・問い合わせ。お住まいの市区町村の高齢福祉課または地域包括支援センターに相談。対象要件・費用負担を確認。
  2. STEP2:申請書類の提出。本人・親族の連絡先、協力員(緊急時に駆けつける近隣の人)2〜3名の同意書、世帯所得証明(自己負担額決定用)を添えて提出。
  3. STEP3:自治体による審査。要件審査と協力員の確認。1〜3週間程度かかる。
  4. STEP4:機器設置工事。委託事業者が利用者宅を訪問し、固定機の設置と電話回線への接続、ペンダントの初期設定を実施。所要時間は1〜2時間程度。
  5. STEP5:操作説明・テスト通報。設置担当者が利用者本人にボタン操作を実演してもらい、テスト通報で受信センターと通話できることを確認。
  6. STEP6:運用開始。設置日から24時間体制でモニタリング開始。年1回程度、機器点検と協力員情報の更新を行う。

導入を検討するときのチェックポイント

  • ボタンを押せる手指の状態か:認知症や麻痺で押下動作ができない場合、人感センサーや見守りカメラ型の方が適している。
  • 家族・親族が近隣に住んでいるか:近隣に駆けつけ可能な人がいない場合は、警備員駆けつけ付きの民間サービスを優先検討。
  • 住民税課税状況:多くの自治体で住民税非課税世帯は無料/課税世帯でも月数百円程度の負担。所得証明を事前に準備。
  • 電話回線の有無:固定電話回線必須の機器が多い。光電話・IP電話で動作しない機器もあるため事前確認を。
  • ペンダントの防水性能:入浴中の事故が多いため、IPX7以上の防水ペンダントが選べるか確認すべき。
  • 退院後の利用:急性期病院・回復期病院から在宅復帰する際、医療ソーシャルワーカーや退院支援看護師に相談すれば申込支援が受けられる。

緊急通報システムに関するよくある質問

Q1. 介護保険で利用できますか?

A. 緊急通報システム本体は介護保険の対象外。市区町村の地域支援事業(任意事業)または高齢者福祉事業として税財源で実施されているため、要支援・要介護認定がなくても利用できる自治体が多い。

Q2. 誤って押してしまった場合はどうなりますか?

A. 受信センターから音声で確認が入る。「間違えました」と伝えれば対応終了。返事がない・通話できない場合は、協力員や救急隊への要請に進むため、誤操作してもまずは応答することが重要。

Q3. 入院・施設入所した場合は?

A. 入院・入所中は機器を一時休止扱いにできる自治体が多い。長期入院や施設入所が決まったら、市区町村窓口に連絡して契約を解約・休止する。

Q4. 認知症があっても利用できますか?

A. 軽度の認知症であればボタン操作は可能だが、進行に応じて操作困難になる。認知症の方には、人感センサー・見守りカメラ・GPS型機器・徘徊感知機器の併用が推奨される。

Q5. 民間の見守りサービスとの違いは?

A. 緊急通報システムは「ボタンを押した時に通報する能動型」、見守りサービスはセンサーで生活リズムの異変を検知する「受動型」が中心。緊急通報+見守りセンサーの組み合わせが理想的だが、費用負担と相談して導入を検討する。

参考資料

まとめ

緊急通報システムは、自宅でひとり暮らしを続ける高齢者にとって最初に検討すべき安全装置だ。市区町村の地域支援事業で実施されているケースが多く、住民税非課税世帯は無料、課税世帯でも月数百円程度の負担で導入できる自治体が大多数。固定型本体+ペンダント送信機+24時間受信センターの3要素で構成され、ボタン1つで救急要請・協力員連絡・看護師相談につながる。認知症が進んでボタン操作が難しくなった場合は、人感センサー型見守りやGPS型機器との併用が推奨される。導入を考えたら、まずはお住まいの自治体の高齢福祉課または地域包括支援センターに相談しよう。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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