
主介護者とは
主介護者は要介護者の介護を主体的に担う家族の中心人物。国民生活基礎調査の続柄・性別・年齢構成、老老介護・8050問題、ケアマネジメントでのアセスメントの考え方を解説。
この記事のポイント
主介護者とは、要介護者の家族・親族の中で、日々の介護を中心となって担う人を指します。国民生活基礎調査では「主に介護にあたっている人」と定義され、ケアマネジメントの現場ではアセスメントの中心人物として位置づけられます。2022年(令和4年)国民生活基礎調査では、同居家族が主介護者である世帯は45.9%で、続柄は配偶者22.9%・子16.2%・子の配偶者5.4%。性別は同居の主介護者の68.9%が女性、年齢は60歳以上が80%超を占め、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」が常態化しています。
目次
主介護者の定義と位置づけ
主介護者は、厚生労働省「国民生活基礎調査」の介護票で「主に介護にあたっている方」として把握される統計上の用語であり、同時にケアマネジメントの実務でも「介護の中心人物」として明確に意識される概念です。要介護者本人と並んで、ケアプラン作成時のアセスメント対象になります。
主介護者は法令上の定義はないものの、以下の3つの役割を主として担います。
- 身体介護の実施:食事介助・排泄介助・入浴介助・更衣介助など日常生活動作の支援
- 生活援助・連絡調整:通院付き添い、服薬管理、ケアマネジャー・サービス事業者との連絡、家計管理
- 意思決定の代行・代弁:認知症等で本人の判断能力が低下した場合、ケアプラン同意・医療同意の場面で家族代表として意思を伝える
主介護者は「副介護者」と組み合わせて複数で介護を分担することもありますが、現実には主介護者1人に過度に介護役割が集中する「ワンオペ介護」が問題化しています。介護労働安定センター「介護労働実態調査」でも、家族介護を取り巻く課題として「主介護者の高齢化」「主介護者の健康悪化」「主介護者の社会的孤立」が継続的に指摘されています。
主介護者の負担感はZarit介護負担尺度(J-ZBI_8)などで定量的に評価でき、地域包括支援センターやケアマネジャーが要介護者本人と並んで支援対象として位置づけることが推奨されています。
主介護者の続柄・性別・年齢の最新データ
厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」より、在宅で要介護者を介護する主介護者の構成は次のとおりです。
主介護者の続柄(同居の場合・主介護者ベース)
| 続柄 | 割合 |
|---|---|
| 配偶者 | 22.9% |
| 子 | 16.2% |
| 子の配偶者 | 5.4% |
| 父母・その他 | 1.4% |
| 同居家族計 | 45.9% |
| 別居の家族 | 11.8% |
| 事業者 | 15.7% |
性別(同居の主介護者)
- 女性 68.9% / 男性 31.1%
年齢構成(同居の主介護者)
- 60〜69歳 29.1%、70〜79歳 28.5%、80歳以上 18.4%
- 60歳以上が約76%、すなわち主介護者の4人に3人は60歳以上
老老介護世帯の割合
同調査によれば、要介護者・主介護者ともに65歳以上である「老老介護」世帯は63.5%に達し、2019年の59.7%から上昇しています。さらに75歳以上どうしの「超老老介護」世帯も増加傾向にあり、認知症の人が認知症の人を介護する「認認介護」も社会問題となっています。
主介護者をめぐる典型的なリスクパターン
主介護者の負担状況は世帯構造により類型化できます。それぞれに固有のリスクと支援策があります。
| パターン | 典型的な世帯像 | 主なリスク |
|---|---|---|
| 老老介護 | 夫婦どちらかが要介護、配偶者が主介護者(ともに65歳以上) | 主介護者自身の健康悪化・共倒れ |
| 認認介護 | 主介護者・要介護者ともに認知症 | 服薬管理破綻、火災・徘徊等の事故 |
| 8050問題型 | 80代の親を50代のひきこもり・無職の子が介護 | 経済困窮、子の社会的孤立、虐待リスク |
| ビジネスケアラー型 | 就労中の40〜50代の子(多くは女性)が主介護者 | 介護離職、キャリア中断、離婚率上昇 |
| ヤングケアラー型 | 未成年の孫・きょうだいが主介護者・準主介護者 | 学業・進学への影響、将来設計の損失 |
| ダブルケア型 | 育児と介護を同時に担う30〜40代 | 多重役割による疲弊、精神的不調 |
| 遠距離介護型 | 別居の子が遠方から介護 | 交通費負担、緊急時の対応遅延 |
このうち8050問題は、高齢化と長期ひきこもりの併発により注目される類型で、子側に経済力がなく、親の介護費用を年金から賄うため貯蓄が枯渇しやすいのが特徴です。地域包括支援センターは2024年度以降「重層的支援体制整備事業」のもとで、介護・障害・困窮を一体的に扱う相談窓口を整備しつつあります。
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主介護者を支える支援の組み立て方
主介護者が一人で抱え込まないために、ケアマネジャー・地域包括支援センター・専門職は次の視点でアセスメントを行います。
- 主介護者のADL・健康状態を確認:介護を担う側にも疾病・障害がないか、自身の通院は受けられているか
- 主介護者の就労状況を確認:仕事との両立に困っていないか、介護休業・介護休暇を取得済みか
- 副介護者の有無を整理:他に介護に関われる家族はいるか、役割分担は明確か、遠距離家族はどう関与できるか
- 経済状況を把握:介護費用が世帯収入を圧迫していないか、高額介護サービス費・負担限度額認定の対象か
- レスパイトを定期化:ショートステイ・通所介護を計画的に組み込み、主介護者が休む時間を確保
- 家族介護者教室・認知症カフェへの接続:同じ立場の介護者同士のピアサポートが孤立防止に有効
- 緊急時の連絡網を構築:主介護者が急に倒れた場合のバックアップ体制(緊急ショート・親族連絡先)を事前に整える
主介護者が高齢・健康悪化・うつ傾向のいずれかに該当する場合、要介護者本人の介護度引き上げや施設入所の検討を含めた中長期計画が必要となります。
よくある質問
Q1. 主介護者は法律で決まっていますか?
法令上の定義はありません。介護保険法には「主たる介護者」という用語の明確な定義はなく、ケアプラン上は「主に介護を担う家族」と運用されています。介護休業法・育児介護休業法でも、対象家族は配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫と幅広く規定され、主介護者を1人に限定する制度設計にはなっていません。
Q2. 主介護者を変更することはできますか?
家族間の話し合いと意思確認があれば変更可能です。ケアマネジャーに伝えればケアプランの「主介護者」欄を更新できます。変更時は副介護者・別居家族との役割分担を再整理することが重要です。
Q3. 配偶者が高齢で介護できない場合はどうしたらいいですか?
子・子の配偶者・別居の家族・専門職の組み合わせで支える方法を検討します。同居家族で対応が難しければ、施設入所(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・サービス付き高齢者向け住宅)を含めた選択肢を地域包括支援センターと相談します。
Q4. 8050問題で介護をしている50代の子はどんな支援を受けられますか?
地域包括支援センター・市町村の重層的支援体制整備事業・社会福祉協議会・生活困窮者自立支援制度などが連携した相談窓口があります。要介護者の介護保険サービスと、子側の就労・生活困窮支援を一体的に検討する必要があります。
Q5. ヤングケアラーが主介護者になっているケースはどう対応すべき?
子ども家庭庁・文部科学省・厚生労働省の連携の下で、学校・スクールソーシャルワーカー・市町村こども家庭センターを通じた支援につなぎます。本人が「自分はヤングケアラー」と気づいていないケースも多く、第三者の発見が重要です。
関連する詳しい解説
- 📖 親トピック: 介護離職とは|年間10万人が直面する仕事と介護の両立問題 — 主介護者の離職問題
- 🔗 関連: 介護休業給付金の申請方法と支給額の計算
- 📖 関連用語: 介護うつとは
- 📖 関連用語: 介護負担感とは|Zarit介護負担尺度の使い方
- 📖 関連用語: ビジネスケアラーとは
- 📖 関連用語: ダブルケアとは
- 📖 関連用語: ヤングケアラーとは
- 📖 関連用語: 老老介護とは
- 📖 関連用語: 認認介護とは
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まとめ
主介護者は要介護者を中心となって支える家族の中核人物で、続柄では配偶者・子・子の配偶者の順に多く、性別では7割が女性、年齢では60歳以上が約76%を占めます。老老介護世帯は63.5%に達し、認認介護や8050問題、ビジネスケアラー、ヤングケアラー、ダブルケアなど多様な類型のリスクが顕在化しています。主介護者は要介護者本人と並ぶ支援対象であり、ケアマネジメントでは健康・就労・経済・心理的負担を多面的にアセスメントし、レスパイトケアや家族介護者教室、地域包括支援センターを通じた重層的支援につなぐことが不可欠です。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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