
認認介護とは
認認介護とは、認知症の高齢者が認知症の高齢者を介護する状態。服薬管理事故・徘徊・栄養失調などのリスクが高く、地域包括支援センター・成年後見制度・施設入所の優先利用が支援の柱となります。
この記事のポイント
認認介護(にんにんかいご)とは、認知症を抱える高齢者が、同じく認知症を抱える高齢の家族を介護している状態を指します。判断力や記憶力の低下した者同士のケアとなるため、服薬管理ミス・徘徊・低栄養・転倒などの事故リスクが極めて高く、共倒れに直結しやすい介護形態です。地域包括支援センターへの相談、成年後見制度の活用、施設入所の優先利用が主な支援策となります。
目次
認認介護とは
認認介護とは、認知症を発症している高齢者が、同じく認知症を発症している配偶者・親・きょうだいなど高齢の家族を在宅で介護している状態を指す言葉です。65歳以上同士で介護を担う「老老介護」のなかでも、両者ともに認知症を抱えるケースを区別して呼びます。法令上の定義はなく、福祉・医療現場や調査研究で実態を表すために用いられる行政・実務用語です。
厚生労働省「2022年国民生活基礎調査」によれば、要介護者と同居する世帯のうち65歳以上同士の老老介護の割合は63.5%に達しており、長寿化と核家族化を背景に増加傾向にあります。山口県が2010年に実施した在宅介護世帯調査では10.4%が認認介護に該当したと報告され、老老介護世帯の一定数が認知症の進行とともに認認介護へ移行することが示されています。介護者・被介護者ともに判断力が低下するため、外部から発見されにくい「介護のブラックボックス」になりやすい点が深刻な課題です。
老老介護・ダブルケアとの違い
「老老介護」「認認介護」「ダブルケア」はいずれも家族介護の構造的問題を表しますが、論点が異なります。
| 用語 | 担い手の構造 | 主なリスク |
|---|---|---|
| 老老介護 | 65歳以上が65歳以上を介護 | 体力的負担・閉じこもり |
| 認認介護 | 認知症の高齢者が認知症の高齢者を介護 | 服薬事故・栄養失調・徘徊・経済被害 |
| ダブルケア | 育児と親の介護を同時に担う現役世代 | 離職・精神的疲弊・収入減 |
老老介護は身体的負担、認認介護は認知機能の二重低下による安全性の崩壊、ダブルケアは現役世代の時間・経済的圧迫と、支援設計の出発点が異なります。認認介護では「介護者自身が要支援・要介護対象になる」点が決定的で、ケアプラン設計でも介護者本人を支援対象に組み込む発想が必要です。
認認介護の現状を示すデータ
認認介護の規模感は、関連する公的データを総合すると見えてきます。
- 認知症高齢者数の推計(厚生労働省2024年公表):65歳以上の認知症有病率は12.3%。患者数は2025年に約471万人、2040年には約584万人に達する見込み。
- 老老介護の比率(厚生労働省「2022年国民生活基礎調査」):要介護者と同居する世帯のうち、65歳以上同士は63.5%、75歳以上同士も35.7%と過去最高水準。
- 認認介護の出現率(山口県在宅介護世帯調査・2010年):在宅介護世帯の10.4%が認認介護に該当。
- 夫婦の同時発症リスク:80歳の夫婦では年齢別有病率から約11組に1組(9.5%)が両者ともに認知症となる試算。
- 高齢者世帯の構造(内閣府「令和6年版高齢社会白書」):65歳以上のいる世帯のうち単独世帯と夫婦のみ世帯の合計が6割超を占め、家族介護の閉じた環境が認認介護を生む土壌になっている。
現場・家族が知っておきたい支援策と介入ポイント
現場・家族が知っておきたい支援策
認認介護は「気づかれた時点ですでに重症化していた」という事例が多く、早期介入と多職種連携が要となります。介護職・家族・地域住民が押さえるべき柱は次の5点です。
- 服薬管理を外部化する:一包化調剤、訪問薬剤師による週1回の服薬カレンダー設置、訪問看護師の服薬確認を組み合わせ、服薬は本人と家族に任せない設計にします。
- 地域包括支援センターを早期につなぐ:地域包括ケアシステムの中核として、保健師・社会福祉士・主任ケアマネが多職種でアセスメントに入ります。
- 成年後見制度で財産・契約を守る:成年後見人を立てることで年金管理・契約代行が可能になり、悪質商法被害も防げます。
- 施設入所の優先利用を検討する:特養の入所判定で認認介護世帯は優先対象となるため、ケアマネ経由で市町村の指針を確認します。
- 介護職の気づきの感度を上げる:利用者本人だけでなく同居家族の認知機能変化(お薬手帳の重複・冷蔵庫の異変・発言の辻褄)にも目を向け、ケアマネ・地域包括に共有します。
よくある質問
Q. 認認介護と老老介護の違いは何ですか?
A. 老老介護は「65歳以上が65歳以上を介護する」広い概念で、介護者の判断力が保たれているケースも含みます。認認介護は介護者・被介護者の双方が認知症である状態を指し、服薬事故や経済被害が起きやすく、より緊急介入が必要な区分とされます。
Q. 認認介護はどのくらいの世帯で起きていますか?
A. 山口県の在宅介護世帯調査(2010年)では10.4%が認認介護に該当し、学術試算では80歳代の夫婦で約11組に1組(9.5%)に達するとされています。
Q. 近隣住民が認認介護に気づいたらどう動けばよいですか?
A. 警察通報ではなく、市区町村の地域包括支援センターに「気になる高齢者がいる」と相談します。匿名相談も可能で、保健師・社会福祉士が訪問してサービスにつなげます。
Q. 介護保険サービスだけで認認介護を支えられますか?
A. 訪問介護・通所介護・訪問看護を組み合わせても、夜間や緊急時の見守りには限界があります。配食サービス・見守りセンサー・成年後見・施設入所などを総合的に組み合わせる必要があります。
参考資料
- 厚生労働省「2022年国民生活基礎調査の概況」 — 老老介護63.5%
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html - 厚生労働省「認知症およびMCIの高齢者数と有病率の将来推計」(2024年公表) — 2025年471万人・2040年584万人
https://www.mhlw.go.jp/content/001279920.pdf - 厚生労働省「認知症施策推進大綱」 — 共生と予防の二本柱
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000076236_00002.html - 内閣府「令和6年版高齢社会白書」 — 高齢者世帯の構造
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/index-w.html - 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」
https://www.ipss.go.jp/pp-ajsetai/j/HPRJ2024/hprj2024_top.asp - 山口県「在宅介護に関する実態調査」(2010年) — 在宅介護世帯の10.4%が認認介護
まとめ
認認介護は、認知症の高齢者が認知症の高齢者を介護する状態で、判断・記憶機能の二重低下により事故・栄養失調・経済被害が起きやすい現代日本の重要課題です。介護保険サービスだけでは完結せず、地域包括支援センターによる早期発見、成年後見制度、特養の優先入所、訪問薬剤師・訪問看護による服薬管理の外部化を組み合わせて支える必要があります。介護職にとっては、利用者本人だけでなく同居家族の認知機能変化を察知し多職種につなぐ視点が、これからのキャリアで強く求められる専門性となります。
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執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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