
厚労省、麻しん感染拡大防止で医療関係団体に事務連絡|2026年累計436人・前年比約4倍
厚生労働省は2026年5月11日、麻しん(はしか)の感染報告数増加を受けて、医療関係団体に適切な情報提供への協力を要請する事務連絡を発出。第17週までの累計報告は436人と前年同期の約4倍。介護施設・在宅介護の現場で必要な感染対策と家族介護での留意点を、厚労省・国立健康危機管理研究機構の最新データから整理する。
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厚生労働省は2026年5月11日、麻しん(はしか)の感染報告数増加を受け、医療関係団体に適切な情報提供への協力を要請する事務連絡を発出した。第17週(4月20-26日)までの累計報告数は436人で前年同期の約4倍。発症者の年齢中央値は27歳と成人層が中心で、医療機関・施設・家庭での感染が確認されている。介護施設や在宅介護の現場では、高齢者・免疫不全者への二次感染リスクが大きく、職員のワクチン接種歴確認と早期発見の体制づくりが急務となる。
目次
解説動画
麻しん(はしか)の感染が2026年に入って急増している。第17週時点で累計436人と、前年同期と比較して約4倍のペースで報告が積み上がっており、東京都を中心に各地で発生例が広がっている。事態を受けて厚生労働省は2026年5月11日、医療関係団体に対し、感染拡大防止に向けた適切な情報提供への協力を求める事務連絡を発出した。
麻しんは感染力が極めて強く、空気感染するため、ワクチン未接種者や免疫が低下した高齢者にとって脅威となる。介護施設や在宅介護の現場では、利用者本人の重症化リスクだけでなく、職員・家族・他の利用者を含む施設内クラスターのリスクも見過ごせない。
本記事では、厚労省の事務連絡の内容と現在の流行状況を整理したうえで、介護施設・在宅介護それぞれの現場で取り得る対策を、独自の視点で具体的に提案する。読者は看護職・介護職に限らず、家族として高齢者をケアする立場の方も想定している。
厚労省事務連絡の内容と背景
2026年5月11日の事務連絡
厚生労働省は2026年5月11日、医療関係団体に対して「麻しんの感染拡大を防止するため、適切な情報提供への協力を要請する」事務連絡を発出した。同省は併せて、ホームページに掲載している医療機関や自治体向けのメッセージ、リーフレットなどを確認するよう呼びかけている。
事務連絡が発出された直接の背景は、2026年に入ってからの報告数の急増である。2026年第17週(4月20-26日)までの累計報告数は436人に達し、前年同期と比較して約4倍のペースで推移している。第14週時点では236人だった累計が、約3週間で200人増えた計算となり、勢いが衰える兆しが見えていない。
東京都の緊急ワクチン接種開始
事務連絡の翌週にあたる2026年5月18日、東京都が独自に麻しんのワクチン緊急接種を開始したことも報じられている。東京都は2026年の発症者72例で全国最多であり、自治体レベルでも具体的な対応が動き出している。
医療関係団体への要請内容
事務連絡で厚労省が医療関係団体に求めているのは、傘下の医療機関・職員への情報提供の徹底だ。具体的には、麻しんを疑う症状(発熱・発疹・カタル症状)を呈する患者が受診した際の対応手順、院内感染を防ぐための隔離・換気措置、職員のワクチン接種歴確認といった点について、改めて周知することが想定されている。
麻しんは感染症法上の五類感染症で、診断した医師は直ちに保健所へ届け出る義務がある。早期の探知と封じ込めには、最初に患者を診る医療機関の対応が決定的に重要となるため、厚労省は医療関係団体を経由したルートで現場への注意喚起を強めた形だ。
麻しんの基礎知識と2026年の流行状況
感染経路と臨床経過
麻しんは麻しんウイルスによる感染症で、空気感染・飛沫感染・接触感染のすべての経路で人から人へ感染する。同じ空間にいるだけで感染が成立しうるほど感染力が強く、免疫を持たない人が感染者と接触した場合の発症率は90%以上とされる。
潜伏期は通常10〜12日で、最長21日に及ぶ。発症後はまずカタル期(2〜4日)に38度前後の発熱、咳、鼻汁、結膜充血が現れ、いったん解熱した直後に頬粘膜にコプリック斑と呼ばれる白色斑点が出現する。続いて再発熱とともに発疹が顔面・体幹・四肢へと広がり、合併症として肺炎や脳炎を起こすこともある。
2026年累計436人・前年比約4倍
国立健康危機管理研究機構(旧国立感染症研究所)のIDWR(感染症発生動向調査週報)2026年第14号によると、第1〜14週で報告された236例のうち、234例が病原体診断を満たした検査診断例だった。年齢中央値は27歳(範囲0〜65歳)で、典型的な麻しんでは接種歴のない症例が多くみられている。
6歳以上の226例における接種歴の内訳は、接種歴なし33例(15%)、1回30例(13%)、2回73例(32%)、不明90例(40%)であり、特に「不明」と「接種歴なし」を合わせると過半数を占める。地域別では東京都72例、鹿児島県27例、愛知県23例、千葉県・神奈川県各20例の順で多い。
輸入例と国内感染
感染源としては、推定感染地域が国内156例、国外30例、国内・国外不明45例とされ、海外からの輸入例も一定の割合を占める。具体的にはインドネシア12例、ニュージーランド7例、インド3例など、複数国で感染した症例が報告されている。海外渡航者・帰国者からの伝播が国内伝播の起点となっているケースもあり、空港・港湾を抱える都市部での発生が目立っている。
MRワクチン定期接種スケジュール
麻しんの予防には、麻しん風しん混合(MR)ワクチンの2回接種が基本となる。定期接種は、第1期が1歳から2歳の誕生日前日まで、第2期が小学校入学前の1年間(5〜7歳)の2回。1回接種で95%以上、2回接種でほぼ100%が免疫を獲得するとされる。1972年9月以前生まれの世代や、定期接種2回化前の世代では免疫が不十分な人も多く、抗体検査と任意接種が推奨される。
介護施設で取り組むべき対策|独自の整理
職員のワクチン接種歴確認は今すぐ着手すべき
厚労省の事務連絡は医療関係団体を宛先としているが、介護施設にも同じロジックが当てはまる。むしろ施設内に集団生活する高齢者・要介護者の重症化リスクを考えれば、医療機関以上に厳しい備えが求められる。最優先すべきは職員のワクチン接種歴の棚卸しだ。母子手帳・予防接種台帳・自治体記録のいずれかで2回接種が確認できるかを職員ごとに確認し、不明・1回接種にとどまる職員には抗体検査と任意接種を案内する。
2026年の発症者は年齢中央値27歳で、医療機関や介護施設で働く若手・中堅層と重なる。職員自身の感染は離脱・人員シフトの混乱に直結するため、ワクチン接種は職員本人の健康管理と施設の事業継続の両面で投資効果が高い。
疑い症例発生時の対応フローを明文化する
麻しん疑いの利用者・職員が出た場合、最初の数時間の対応で施設内拡大の有無が決まる。あらかじめ、(1)個室隔離(陰圧室があれば優先使用)、(2)対応職員のN95マスク・手袋・ガウン着用、(3)同フロア利用者の動線分離、(4)保健所への直ちの相談、(5)接触者リストの作成、までを書面化したフローとして整備しておきたい。
麻しんは空気感染するため、通常のサージカルマスクでは飛沫核を防ぎきれない点に注意が必要だ。N95マスクを常備していない施設は、この機会に少量でも備蓄を開始し、フィットテストの実施計画も併せて整える。
面会制限と外部委託業者への注意喚起
感染拡大期には、面会者・出入り業者を経由した持ち込みリスクが上がる。新型コロナの経験から、面会を一律禁止することは利用者のQOLに悪影響を与えるため、現実的には体調確認とマスク着用の徹底、面会場所の限定、訪問者の麻しん抗体・接種歴の自己申告チェックといった段階的対応が望ましい。
清掃・配食・洗濯・送迎ドライバーなど、施設に立ち入る外部スタッフのワクチン状況も把握しておくとよい。委託先事業者と連携し、麻しんが疑われる場合の入館前申告のルールを共有しておくと、有事の探知が早まる。
BCP(業務継続計画)への組み込み
介護施設は2024年4月から感染症BCPの策定が義務化されている。多くの施設が新型コロナ・インフルエンザを念頭にBCPを整備しているが、空気感染する麻しんは換気・隔離の要件が厳しく、別建てで補足する価値がある。今回の流行を契機に、BCPの感染症パートを見直し、麻しんを想定した職員ワクチン確認手順・隔離手順・対応者人選を追記しておきたい。
家族介護での留意点|独自の整理
同居家族の接種歴を最初に確認する
在宅介護では、ケアの担い手である家族が外から麻しんを持ち込むルートが現実的な脅威となる。とくに通学・通勤で人混みに頻繁に触れる10〜30代の家族は、接種歴の不十分な世代と重なるため要注意だ。母子手帳が手元にない場合は、自治体の予防接種台帳照会や抗体検査が確認の選択肢となる。費用は自費だが、要介護高齢者を抱える家庭では平時の予防投資として優先度が高い。
1972年9月以前生まれの祖父母世代は、定期接種を受けていない・自然感染で免疫を得ているなどケースが分かれる。罹患歴がはっきりしない場合は、抗体検査で免疫の有無を確認しておきたい。
受診時の感染対策と事前連絡
麻しんを疑う症状が家族に出た場合、医療機関を受診する際の事前連絡は必須となる。事前連絡なしに発熱外来や一般待合で待機すると、空気感染で他の患者・職員へ感染を広げてしまう。受診前に必ず電話で「麻しんを疑う症状がある」と伝え、入口・待機方法の指示を受けるのが家族介護者として押さえておきたい行動原則だ。
要介護高齢者を伴う通院では、家族側に症状が出ている場合は別の家族・ヘルパーへの代行依頼や、訪問診療への切り替え相談も視野に入れたい。
訪問サービス利用時の情報共有
訪問介護・訪問看護・デイサービスを利用している家庭では、家族や利用者本人に麻しんを疑う症状が出た時点で、すぐに事業所へ連絡する必要がある。事業所側はサービス提供の一時中断・他利用者への安全確保・代替体制の手配を判断しなければならず、家族からの早期連絡が事業所運営の前提となる。
逆に、地域で麻しんが流行している局面では、サービス事業所側から「外出時のマスク着用」「発熱時の受診先」など情報提供を受ける場面が増える。日頃から事業所との連絡ルートを整え、緊急時に確実に伝わる手段を持っておくことが、家族介護者のリスク管理として効いてくる。
同居高齢者の重症化リスクと早期受診
麻しんの合併症としては肺炎と脳炎が知られ、特に免疫が低下した高齢者では致命的な経過をたどることがある。要介護高齢者は嚥下・呼吸機能が落ちている例が多く、麻しんに加えて誤嚥性肺炎を併発するリスクも高い。家族介護者は、利用者本人に発熱・発疹・カタル症状が見られた段階で、自己判断で経過観察せずに早期に医療機関へ相談する判断軸を持っておきたい。
参考資料
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まとめ
厚労省が2026年5月11日に発出した事務連絡は、麻しんの感染拡大を医療現場が早期に止めることを狙ったものだ。第17週までの累計436人・前年比約4倍という勢いは、医療機関の対応だけで抑え込めるレベルを超えつつあり、介護施設や在宅介護の現場でも独自の備えが必要になっている。職員のワクチン接種歴確認、疑い症例発生時の対応フロー整備、面会・出入り業者への注意喚起は、施設運営者がいま着手すべき具体策である。
家族介護の側からも、同居家族の接種歴チェック、発症時の事前連絡を伴う受診、訪問サービス事業所との情報共有といった、家庭ベースの予防動線を整えておきたい。麻しんは「過去の病気」ではなく、ワクチン接種率の世代差と海外からの伝播経路を背景に、いまも現役の脅威であることを意識して動きたい。
看護職・介護職として、あるいは家族として、自分の立ち位置でできる予防策を選び取りたい方は、まずは自分自身のキャリアや働き方の方向性を整理してみてはどうだろうか。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
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