介護の更衣介助|脱健着患の手順・片麻痺対応・衣類選びを実例で整理
介護職向け

介護の更衣介助|脱健着患の手順・片麻痺対応・衣類選びを実例で整理

介護現場で毎日行う更衣介助のコツを、立位・座位・臥位の手順、片麻痺対応、衣類選び、認知症や季節への配慮までまとめました。脱健着患の原則と公的データに基づく自立支援の視点で解説します。

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この記事のポイント

更衣介助のコツは「脱健着患(だっけんちゃっかん)」。脱ぐときは健側から、着るときは患側から、という原則を守ること。片麻痺の方には前開き+伸縮素材の衣類を選び、座位を基本に、難しければ臥位(ベッド上)で側臥位を活用します。本人ができる動作は声かけで促し、介助者は関節をやさしく支え、皮膚観察と保温・プライバシーへの配慮を欠かさないことが、安全と自立支援の両立につながります。手順を覚えるだけでなく、毎回の介助を皮膚や体調変化を観察する機会として活用しましょう。

目次

介護人材需給データから見る職場環境改善の重要性

厚生労働省の第9期介護保険事業計画に基づく推計では、介護職員は2022年度の約215万人から、2026年度に約240万人、2040年度に約272万人が必要とされています。介護職員の必要数が増える一方で、離職が増えれば需給ギャップはさらに広がります。職場環境改善は福利厚生の話にとどまらず、人材確保策そのものです。

年度介護職員数・必要数2022年度との差見方
2022年度約215万人基準足下の介護職員数
2026年度約240万人+約25万人第9期計画期間の終期に必要な規模
2040年度約272万人+約57万人高齢化が進む2040年度に必要な規模

2040年度までに必要とされる上積みは約57万人です。これは、介護現場の努力だけで吸収するには大きい規模で、処遇改善、採用、定着支援、業務効率化を組み合わせて進める必要があります。ハラスメント対策、腰痛予防、メンタルヘルス、教育体制は、採用人数を増やす施策と同じくらい、既存職員が離れないための重要な条件になります。

出典: 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2024年7月12日公表)。2022年度の介護職員数は厚生労働省「令和4年介護サービス施設・事業所調査」、2026年度・2040年度は市町村の第9期介護保険事業計画に基づく都道府県推計の集計です。

更衣介助は、入浴・排泄・移乗と並ぶ介護の基本動作のひとつ。一日の起床・就寝・入浴前後・排泄後など、利用者の生活リズムを区切る場面で何度も行われます。一見シンプルに見えますが、実際には片麻痺・関節拘縮・認知症など多様な状態像に対応しなければならず、「自分のペースで衣服を整えたい」という利用者の自尊心も関わるため、介護職にとって熟練を要する技術です。

本記事では、現場で迷いやすい更衣介助の手順を 立位・座位・臥位 の3パターンで整理し、片麻痺の方に対する 脱健着患 の応用、衣類選びの判断軸、認知症や季節への配慮までをまとめました。新人スタッフの研修資料としても、ベテランが基本を再確認する目的でも使える構成にしています。

更衣介助とは|目的と「脱健着患」の意味

更衣介助とは、自力での着替えが難しい高齢者・障害のある方に対して、衣服の着脱を手伝う介助行為を指します。介護保険制度上は「身体介護」に分類され、身体の清潔保持・体温調節・気分転換・社会参加といった生活全体の質(QOL)を支える役割を担います。

更衣介助の主な目的

  • 清潔の維持:汗・皮脂・排泄物で汚れた衣類を交換し、皮膚トラブルを防ぐ
  • 体温調節:室温・季節・体調に応じた衣類で快適性を保つ
  • 気分の切り替え:パジャマから日中着への着替えで生活リズムを作る
  • 社会参加の支援:外出やレクリエーションへの参加意欲を引き出す
  • 皮膚の観察機会:着脱のタイミングで全身の皮膚状態をチェックする

「脱健着患(だっけんちゃっかん)」とは

更衣介助の最重要原則。脱ぐときは健側(けんそく=麻痺や痛みのない側)から着るときは患側(かんそく=麻痺や痛みのある側)から行う、という考え方です。患側から脱ごうとすると関節を無理に動かすことになり、痛みや皮膚剥離のリスクが上がります。逆に、患側から先に袖を通してから健側を通すと、可動域に余裕のある健側で残りの動作を仕上げられるため、利用者の負担が最小になります。

本人の残存機能を引き出す視点

更衣介助は、すべてを介助者が代行する場面ではありません。日本作業療法士協会が示す自立支援の考え方では、「できない部分のみを補い、できる部分は本人に任せる」ことで身体機能の維持・向上が図られるとされます。たとえばボタンを留める動作だけ介助し、袖を通す部分は本人に行ってもらう、といった部分介助の組み立てが鍵になります。

更衣介助の基本手順|立位・座位・臥位の3パターン

更衣介助は利用者の身体状況に合わせて、立位・座位・臥位(ベッド上)の3つの体位で実施します。それぞれの安全な手順と要点を整理します。

共通の事前準備

  1. 声かけと同意:「これからお着替えのお手伝いをしますね」と必ず説明し、本人の同意を得る
  2. 環境調整:室温22〜26℃を目安に、カーテン・衝立でプライバシーを確保する
  3. 衣類の準備:着る順に上から重ねて手元に置き、迷わない動線を作る
  4. 体調確認:顔色・呼吸・痛みの有無を確認し、不調があれば中止する

パターン1:立位での更衣(手すりや家具を支持)

下肢に支持力があり、立位バランスが保てる方が対象。立位はズボンの上げ下ろしが行いやすく自立度が高い反面、転倒リスクが最大の体位でもあります。

  1. 手すり・テーブル・椅子の背など、両手で握れる支持物を用意する
  2. 介助者は患側の斜め後ろに立ち、いつでも支えられる位置を確保
  3. 上着は座位で着脱し、ズボンのみ立位で行う方法が転倒予防として有効
  4. ズボンは健側から脱ぎ、患側に通すときは座って片足ずつ通してから立ち上がる
  5. 裾を踏まないよう、立つ前に裾を膝までめくり上げておく

パターン2:座位での更衣(ベッド端や椅子)

座位保持が可能な方の標準的な体位。バランスを崩しにくく、本人の動作も介助しやすいため、現場では最も多用されます。

  1. ベッド端や安定した椅子に深く腰掛けてもらい、両足が床にしっかり接地する高さに調整
  2. 背もたれや手すりを確保し、必要なら介助者が患側の肩を支える
  3. 上着の脱衣:健側の肩→袖の順に外し、頭・背中をたくし上げ、最後に患側の袖を抜く(かぶり衣類は襟を顔から離して持ち上げる)
  4. 上着の着衣:患側の袖を肩まで通し、背中を回して健側の袖を通す
  5. ズボンは膝までめくった状態で患側→健側の順に通し、本人に立ってもらいウエストまで引き上げる(立てない場合は左右にお尻を浮かせて引き上げる)

パターン3:臥位(ベッド上)での更衣

立位・座位が困難な方が対象。介助者の動作量が増えるため、ベッド高さを介助者の腰の高さに合わせ、腰痛予防のボディメカニクスを意識します。

  1. ベッドを水平にし、介助しやすい高さまで上げる
  2. 上着(前開き)の脱衣:仰臥位でボタンを外し、健側を下にして側臥位にし、上になった患側の肩・袖から外す。仰臥位に戻し、健側を下から引き抜く
  3. 上着の着衣:患側の袖を通して肩まで上げ、背中側に身頃を回し、側臥位を作って背中の身頃を整え、健側の袖を通してボタンを留める
  4. ズボンの脱衣:仰臥位で両膝を立て、お尻を浮かせて(または左右に体重移動して)ウエストまで下ろし、片足ずつ裾を抜く
  5. ズボンの着衣:両足の裾を膝まで通し、両膝を立てて腰を浮かせ、ウエストまで引き上げる

★ 臥位の介助では、シーツに衣類のシワが残ると褥瘡(床ずれ)の原因になります。仕上げに必ず背中側のシワを伸ばしましょう。

片麻痺の方への更衣介助|脱健着患の応用と注意点

脳血管障害(脳卒中後遺症)などで片麻痺がある方への更衣介助は、健側と患側の役割を意識した動作の組み立てが核心です。日本リハビリテーション医学会が示す急性期〜回復期のリハビリでは、ADL(日常生活動作)の中でも更衣動作の自立度向上が早期離床の指標とされており、介護現場でも同じ視点が求められます。

「脱健着患」が理にかなっている理由

  • 健側を最後に動かす(着るとき):可動域に余裕がある健側を最後に動かすことで、衣類を引き上げる・襟を整えるなど細かい仕上げ動作が可能になる
  • 患側を先に動かす(着るとき):袖の入口にゆとりがある段階で患側を通すため、関節を強引に曲げずに済む
  • 患側を最後に動かす(脱ぐとき):先に健側を抜き、衣類が緩んだ状態で患側を抜くため、肩・肘への負荷が最小

具体的な動作のコツ

  1. 患側の袖を通すときは「手→肘→肩」の順:介助者が患側の手を支えて袖口に入れ、肘を伸ばしながら肩まで上げる。この間、健側の手は本人にひざに置いておいてもらうとバランスが安定する
  2. 関節は支える、引っ張らない:肩関節は脱臼しやすいため、麻痺側の腕を持つときは肘下と手首を両手で支え、引っ張らないこと
  3. 立ち上がりはお辞儀してから:座位から立位へ移るときは、足を椅子側に引いて前傾(お辞儀)してから立つと安定する
  4. 転倒予防:ズボンの上げ下げのために立つ場面では、必ず手すりかテーブルを支えにする

高次脳機能障害がある場合

脳血管障害の方の中には、左右の認識が混乱したり、衣類の前後や裏表が分からなくなる失行症状が見られる方もいます。次のような工夫が役立ちます。

  • 衣類の前面に小さな目印(リボン・刺繍)を付ける
  • 「右袖から通しましょう」など、左右ではなく身体部位で声かけする
  • 同じ手順を毎回繰り返し、習慣化を促す

拘縮がある場合

関節拘縮があると、衣服の着脱で皮膚剥離(スキン-テア)や骨折のリスクが高まります。日本創傷・オストミー・失禁管理学会のスキンケアガイドでは、高齢者の脆弱な皮膚に対して「摩擦・ずれ・引っ張り」を避けることが基本とされています。具体的には、伸縮性のある衣類を選ぶ、肘や肩を無理に伸ばさない、保湿剤で皮膚をしっとり保つ、といった対応が必要です。

衣類タイプ別の選び方|かぶり・前開き・ボタン・マジックテープ

更衣介助の負担は、衣類選びで大きく変わります。利用者の身体状況・残存機能・季節に合わせて衣類タイプを選ぶことが、自立支援と介助者の負担軽減を両立させる鍵です。

衣類タイプ別の比較

タイプメリットデメリット向いている方
前開き(ボタン)頭を通さず着脱でき、肩関節への負荷が少ないボタンの細かい操作が必要片麻痺・拘縮あり、ボタン操作が可能な方
前開き(マジックテープ)片手でも開閉でき、力が弱くても扱えるテープが消耗しやすく、寝具に絡みやすい手指の巧緻性が低下した方、片麻痺で利き手が患側の方
前開き(ファスナー)開閉がスムーズで耐久性が高いファスナーをつまむ力と巧緻性が必要上肢機能が比較的保たれている方
かぶり(プルオーバー)シルエットがすっきり、洗濯しやすい頭・肩関節を大きく動かす必要がある関節可動域に問題がない、自力で着脱できる方
ゴムウエストのズボン着脱が容易で、トイレ介助の時間も短縮サイズ調整が難しく、ずり落ちやすい排泄回数が多い方、立位が不安定な方

素材と機能で選ぶポイント

  • 伸縮性:ストレッチ素材は袖通しがスムーズで、関節に優しい
  • 吸湿・速乾性:汗をかきやすい高齢者には吸湿速乾素材が皮膚トラブルを減らす
  • サイズ感:ぴったりよりワンサイズ大きめが介助しやすい。ただし大きすぎると裾を踏んで転倒の恐れあり
  • 洗濯耐性:施設では業務用洗濯機にかけられる素材が望ましい

独自分析|衣類タイプの選択フロー

当サイトが現場のヒアリングと公的ガイドラインを照らして整理した、衣類タイプの選択フローです。

  1. 麻痺・拘縮がある? → Yes:前開き/No:かぶりも可
  2. ボタン操作ができる? → Yes:前開き(ボタン)/No:マジックテープ or ファスナー
  3. 立位保持ができる? → Yes:通常のゴムウエスト/No:両側ジッパー付きズボン(介護用)
  4. トイレ移動の頻度が多い? → Yes:脱ぎやすいゴム+テーパード/No:通常タイプでOK

重要なのは、機能性だけで選ばないこと。本人が「これを着たい」と思える色・柄・デザインを優先することで、着替えへの主体性が高まり、自立支援の効果も大きくなります。

自立支援型衣類と自助具の活用|公的データから見る効果

更衣動作の自立支援には、衣類の改良と自助具の活用が大きな効果を発揮します。国立障害者リハビリテーションセンター 別府重度障害者センターが公開する「在宅生活ハンドブック No.24 自分で行う更衣動作」(2015年)では、頸髄損傷者を対象に、衣類の改良と自助具を組み合わせることで、ベッド上・端座位・トイレなどさまざまな環境で更衣動作の自立が達成できることが事例とともに紹介されています。

主な自立支援型衣類・自助具

  • ループ付き靴下:履き口にループを縫い付け、指を引っ掛けて広げられる
  • 前開き改良ズボン:腰口を前開きにし、ウエストゴムの締め付けを軽減
  • ボタンエイド:指の巧緻性が低下した方が片手でボタンを留められる自助具
  • ソックスエイド:かがめない方が靴下を履くための補助具。膝が曲がらなくても使用可能
  • マジックテープ仕様の上着:片手で開閉でき、ボタン操作が困難な片麻痺の方に有効

独自分析|「自立支援型衣類」が広がりにくい理由

当サイトが厚生労働省の介護ロボット試用貸出リストや福祉用具の各種ガイドを横断的に確認した範囲では、移乗・見守り分野に比べ、衣類分野は介護保険のレンタル対象(特定福祉用具)から外れているため、現場での導入は家族購入や施設の備品に依存しています。結果として、入院中はリハ専門職が自助具を案内するものの、退院後の在宅・施設生活で活用が継続されにくいのが課題です。

退院前カンファレンスや、ケアマネジャーが立てる居宅サービス計画書(ケアプラン)の中で、衣類・自助具の選定を「移乗用具」と同列に扱う仕組みを介護職側から提案することが、自立支援の効果を持続させる現実的な方法です。

皮膚観察を兼ねた更衣の重要性

厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策」「介護施設・事業所における利用者の権利擁護」関連通知でも、利用者の身体状態の変化を早期発見する責務が示されています。更衣介助は全身の皮膚を直接観察できる数少ない機会であり、内出血・発赤・乾燥・褥瘡の初期サインなど、口頭では把握できない情報を得られます。介助者は手順をこなすだけでなく、観察記録を残す習慣をつけましょう。

認知症の方への更衣介助|混乱を防ぐ7つの工夫

認知症の方への更衣介助では、本人が「何をされているか分からない」状態にならないことが最優先です。厚生労働省「認知症施策推進大綱」が示す「認知症の人の意思決定支援」の考え方に沿って、本人のペースを尊重した介助を組み立てます。

認知症の方に有効な工夫

  1. 正面・目線の高さで話しかける:背後や視野外から触れると驚かせてしまう。必ず視界に入ってから声をかける
  2. 動作を一つずつ伝える:「右袖を通しますね」と動作の直前に短く伝える。長い説明は混乱の原因
  3. 本人の馴染みの衣類を使う:これまで愛用していた色・柄を選ぶことで、抵抗感が和らぐ
  4. 選択肢を2つに絞る:「青と緑、どちらにしますか?」と限定した選択肢を提示すると、自己決定感を保てる
  5. 無理強いしない:拒否がある場合は一旦中断し、時間をおいて再度試みる。タイミングが変わると応じてくれることも多い
  6. 同じ手順を繰り返す:毎回同じ順番・同じ声かけを続けることで、手続き記憶として身につき混乱が減る
  7. 環境を整える:テレビを消し、視覚的・聴覚的な刺激を減らすと集中しやすい

BPSD(行動・心理症状)への対応

更衣中に強い抵抗・拒否(介護拒否)が見られる場合、BPSD(認知症の周辺症状)の一種として捉え、原因を探ります。「寒い」「痛い」「恥ずかしい」「急かされている」といった本人の主観が拒否の背景にあることが多く、室温・声かけ・動作スピードを調整するだけで解決することもあります。チームで情報共有し、ケアプランに反映させましょう。

季節別の配慮

季節配慮ポイント
春・秋朝晩の寒暖差に応じて重ね着できる構成。カーディガンなど脱ぎ着しやすい羽織りを準備
吸湿速乾素材を選び、汗をかいたらこまめに着替える。室温を28℃以下に保ち熱中症を予防
更衣前に部屋を暖めてヒートショックを防止。重ね着で薄手を組み合わせ、暑くなれば1枚脱げる構成にする

特に冬場の入浴前後の更衣は、ヒートショック(急激な温度差による血圧変動)のリスクが高い場面です。脱衣所と浴室の温度差を5℃以内に抑えるよう、暖房器具を活用しましょう。

更衣介助でよくある事故とリスク回避

更衣介助は短時間の動作ですが、転倒・関節損傷・皮膚剥離など重大事故につながるリスクが潜んでいます。厚生労働省「福祉用具ヒヤリハット事例集」(2019年)でも、更衣・移乗の場面でのヒヤリハットが多数報告されています。

主なリスクと回避策

  • 転倒:立位でズボンを上げ下げする際にバランスを崩しやすい。手すり・テーブルでの支持を必ず確保し、片足を上げる動作は座位で行う
  • 肩関節脱臼:麻痺側の腕を引っ張ると脱臼や腱板損傷を起こす。袖を通すときは必ず袖口を持って手を迎えに行く
  • 皮膚剥離(スキン-テア):高齢者の皮膚は脆弱で、衣類の摩擦やテープの剥離で簡単に裂ける。爪で引っかかないよう介助者の爪を短く整え、保湿ケアを併用する
  • 骨折:拘縮した関節を無理に動かすと骨折する例がある。可動域内の動きにとどめ、抵抗を感じたら一旦動作を止める
  • 低体温:素肌が露出する時間を最小限にし、タオルやバスタオルで覆いながら介助する
  • 誤った着用:認知症の方が衣類を逆さに着用するなど、安全確認の最後に全身を確認する
  • セクハラ・羞恥心への配慮不足:異性介助は可能な限り避け、必ずカーテン・衝立で空間を区切る

ヒヤリハット報告を活かす

事故が起こらなかったヒヤリハット事例こそ、改善のヒントが詰まっています。「立位でふらついた」「袖が通りにくかった」など些細な気づきも記録し、チームで共有することで再発防止につなげましょう。施設では、ヒヤリハット記録の集計を月次で実施し、ケアの標準化に活用するのが望ましい運用です。

よくある質問(FAQ)

Q. 「脱健着患」と「着患脱健」は同じ意味ですか?

A. はい、同じ原則を表す表現です。「脱ぐときは健側、着るときは患側」という順序を覚えやすくしたフレーズで、「だっけんちゃっかん」「ちゃっかんだっけん」のいずれの読み方も使われます。現場では「脱健着患」がよく使われます。

Q. 拒否がある利用者には、無理にでも着替えさせるべきですか?

A. 無理強いはせず、一旦中断するのが原則です。拒否の背景には「寒い」「痛い」「恥ずかしい」「急かされている」など本人の主観があることが多く、原因を探って取り除けば応じてもらえることが多いです。どうしても不衛生な状態が続く場合は、チームでケアプランを見直し、医師・看護師にも相談しましょう。

Q. 更衣介助の所要時間の目安は?

A. 利用者の状態や衣類の種類によって幅がありますが、座位で前開きの上下を介助する場合で5〜10分、臥位で全介助の場合は15〜20分程度が目安です。急がせると本人の負担が増すため、時間に余裕を持ったシフト設計が望まれます。

Q. 入浴前後の着替えと、起床・就寝時の着替えで注意点は違いますか?

A. 入浴前後は身体が濡れていたり体温調節が不安定なため、保温・転倒予防により注意が必要です。起床時は寝具で覆われた状態からの着替えのため、室温を上げてから始めましょう。就寝前は本人がリラックスしている時間なので、急かさず会話を楽しみながら行うのが理想です。

Q. 認知症で着替えを毎回拒否する利用者にはどう対応すれば?

A. 拒否のパターンを記録して原因を特定するのが第一歩です。同じ介助者・同じ時間帯・同じ衣類を試し、どの条件で受け入れやすいかを観察します。本人の馴染みの衣類を使う、選択肢を2つに絞る、家族の写真を見せながら声かけするなど、認知症ケアの個別性を活かした工夫が有効です。

Q. 寝たきりの方の更衣で介助者が腰を痛めないコツは?

A. ベッドの高さを介助者の腰の位置まで上げ、足を肩幅に開いて重心を低くするボディメカニクスの基本を守ります。利用者を引き寄せるときは腕の力ではなく体重移動を使い、シーツや滑りやすいシートを活用すると負担が減ります。

参考文献・出典

まとめ|更衣介助は「自立支援の窓口」

更衣介助は、単なる着替えの手伝いではなく、利用者の身体状態を観察し、生活リズムを整え、自尊心を支える「自立支援の窓口」です。脱健着患の原則を軸に、立位・座位・臥位の体位を使い分け、衣類選びと自助具の活用で本人の残存機能を引き出すことが、介助者・利用者双方の負担軽減につながります。

本記事の要点

  • 原則は「脱健着患」。脱ぐときは健側、着るときは患側から
  • 体位は立位・座位・臥位の3パターンを使い分け、転倒リスクと自立度のバランスを取る
  • 片麻痺の方には前開き+伸縮素材を、認知症の方には馴染みの衣類と限定的な選択肢を
  • 自助具(ボタンエイド・ソックスエイド)と改良衣類の活用で自立支援の幅が広がる
  • 更衣の場面は皮膚観察の貴重な機会。発赤・乾燥・褥瘡サインを見逃さない

介護現場での更衣介助は、毎日繰り返される基本動作だからこそ、丁寧なアセスメントと記録の積み重ねがケアの質を決めます。新人スタッフは手順の習得から、ベテランは本人主体の関わりへと、それぞれの段階で本記事の視点を活用してください。介護技術を磨きたい方、より良い職場環境で経験を積みたい方は、自分に合った働き方を見つけるためのキャリア相談を活用するのもひとつの選択肢です。

執筆者

介護のハタラクナカマ編集部

編集部

介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。

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