
介護職のための呼吸数の数え方|正しい観察手順と異常呼吸パターンの見分け・報告
介護職向けに呼吸数の正しい数え方(本人に悟られず胸腹部の動きで1分間測る)、高齢者の正常値、チェーンストークス・下顎・クスマウル呼吸など異常呼吸パターンの意味、SpO2に頼らず看護師へ報告すべきサインを解説します。
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この記事のポイント
介護職が呼吸数を数えるときは、脈拍を測るふりをしながら利用者の胸やお腹の上下動を1分間観察します。「呼吸を測ります」と伝えると本人が意識して呼吸が乱れるため、悟られないのがコツです。高齢者の正常値は1分間におおむね15〜20回で、25回以上の頻呼吸や9回以下の徐呼吸、チェーンストークス呼吸や下顎呼吸などの異常なリズムは急変の early sign です。頻呼吸は血圧低下より早く現れるため、SpO2が保たれていても呼吸数と呼吸様式の変化に気づいたら看護師へ報告します。
目次
体温や血圧、SpO2はパルスオキシメーターや自動血圧計が数字を出してくれます。けれども呼吸数だけは、機器任せにできず、介護職が自分の目で数える必要のあるバイタルです。そして実は、呼吸数はもっとも軽視されやすいバイタルでもあります。忙しい朝の検温で「呼吸は正常」とだけ記録され、実際には数えていないこともめずらしくありません。
ところが呼吸数は、血圧が下がるよりも早く変化する、急変の early sign(早期のサイン)です。肺炎、心不全、敗血症、脳の障害など、命に関わる変化の多くが、まず呼吸のリズムや回数のわずかな異常として現れます。だからこそ、呼吸を正しく数え、いつもと違う呼吸様式に気づける介護職は、利用者の命を守る最前線に立っています。
この記事では、本人に悟られずに呼吸数を1分間正しく数える手技、高齢者の正常値と異常値の見きわめ、チェーンストークス呼吸や下顎呼吸といった代表的な異常呼吸パターンの意味、そしてSpO2だけに頼らず看護師へ報告すべきサインを、介護職の実務に沿って解説します。診断は医師や看護師の仕事です。介護職に求められるのは、正確に観察し、いつもと違うに気づき、的確に伝えることです。
呼吸数とは、1分間に行う呼吸の回数のことです。息を吸って吐く、この一往復を1回と数えます。胸やお腹が1回上がって下がるのを1回とカウントします。手技そのものは単純ですが、正しく数えるにはいくつかのコツがあります。
なぜ「呼吸を測ります」と言ってはいけないのか
呼吸は、体温や血圧と決定的に違う点があります。それは、本人の意思で速くも遅くもできる唯一のバイタルだということです。「これから呼吸を測りますね」と声をかけた瞬間、多くの人は無意識に呼吸を整えようとします。深く吸ったり、いつもより速くなったり、逆に止めてしまったり。こうなると、その人の本当の安静時の呼吸数はわからなくなります。呼吸は延髄の呼吸中枢が自動で調節していますが、大脳からの意識的な指令でも上書きできるため、「見られている」と意識しただけでリズムが変わってしまうのです。
だから呼吸数は、本人に悟られずに数えるのが鉄則です。もっとも自然なのは、脈拍を測っているふりを続けながら数える方法です。手首に指を当てたまま、視線と意識を胸やお腹の動きに移します。利用者は「まだ脈を測っている」と思っているので、呼吸は自然なまま続きます。声をかけるとしても「少しじっとしていてくださいね」程度にとどめ、呼吸そのものには触れません。
呼吸数を数える手順
次の手順で行います。
- 利用者が安静で落ち着いているときに行う。会話の直後、体を動かした直後、痛みや処置の直後、食事や入浴の直後は呼吸が変動するため避ける。
- 脈拍を測る流れのまま、手首に指を当てた状態を保つ。
- 視線を胸部または腹部の上下動に移す。掛け物越しでわかりにくいときは、肩の動きや、そっと手を置いて感じ取る。
- 胸やお腹が1回上下する(吸って吐く)のを1回として、1分間きっちり数える。
- 回数だけでなく、リズムが規則的か、深さは十分か、左右の胸の動きに差がないか、努力して呼吸していないかも同時に観察する。
15秒×4ではなく、なぜ1分間か
脈拍は15秒数えて4倍することもありますが、呼吸数はできるだけ1分間そのまま数えます。呼吸は脈拍よりリズムが不規則になりやすく、15秒や30秒の換算では誤差が大きくなるためです。たとえば15秒で4回だったから4倍して16回と記録しても、その15秒がたまたま速い局面だっただけかもしれません。とくに後で述べるチェーンストークス呼吸のように、周期的に無呼吸をはさむパターンは、短時間の観察では完全に見落とします。異常が疑われるときほど、腰を据えて1分間、できれば数分間、呼吸のリズム全体を見届けることが大切です。数え終えたら、回数と観察した呼吸様式を必ずその場で記録します。記憶は驚くほど早くあいまいになります。
高齢者の呼吸数の正常値と、頻呼吸・徐呼吸・無呼吸の目安
数えた呼吸数を評価するには、正常値と異常値の目安を知っておく必要があります。ただし、もっとも大切なのは一般的な基準値そのものよりも、その人のいつもの呼吸数を把握しておくことです。高齢者は個人差が大きいため、平常値からのずれで異常を捉えます。
高齢者の呼吸数の正常値
成人の安静時の呼吸数は、一般に1分間12〜20回が正常とされます。高齢者は加齢で肺の弾力性や呼吸筋の力が落ち、酸素の取り込み効率が下がるため、成人よりやや多めになる傾向があります。医学的なテキストでは、高齢者の呼吸数はおおむね1分間15〜20回で規則的なリズムを保つ状態が正常とされています。加齢がさらに進むと個人差が広がり、正常範囲を幅広く見る考え方もあります。いずれにせよ、日頃からその人の平常時の呼吸数を記録しておくことが、異常の早期発見につながります。「この人は普段18回くらい」とチームで共有できていれば、24回に増えたときすぐに変化と気づけます。
頻呼吸・徐呼吸・無呼吸の目安
日本臨床検査医学会のガイドラインでは、呼吸回数の異常を次のように整理しています。
- 頻呼吸:呼吸数が1分間25回以上。発熱、肺炎、心不全、低酸素、代謝の異常などで起こります。呼吸が浅く速くなり、1回の換気量は減りがちです。
- 徐呼吸:呼吸数が1分間9回以下。頭蓋内圧の上昇、鎮静薬や睡眠薬の影響、脳や呼吸中枢の障害などで起こります。見た目は静かでも危険なことがあります。
- 無呼吸:呼吸が10秒以上止まる状態。睡眠時に繰り返すものは睡眠時無呼吸症候群が疑われます。呼吸停止が続けば生命に直結します。
介護現場でよく使われる目安として、24〜25回以上を頻呼吸、8〜9回以下を徐呼吸と覚えておくとよいでしょう。ただし、これらの数値はあくまで一般的な目安です。回数だけで判断せず、後述する呼吸様式や本人の全身状態、そしてその人の平常値と合わせて総合的に見ることが重要です。同じ22回でも、普段20回前後の人ならほぼ平常、普段14回の人なら明らかな変化、というように、絶対値ではなく変化の幅で捉える視点を持ちましょう。
回数だけでなく「呼吸様式」を見る|努力呼吸と観察の視点
呼吸の観察は、回数を数えるだけでは半分しか終わっていません。むしろ回数が正常範囲でも、呼吸の仕方(呼吸様式)に異常が現れていることがあります。介護職が回数と同時に見ておきたいのが、次の観察点です。
リズム・深さ・左右差
リズムが規則的かどうかを見ます。吸って吐いての間隔が一定でなく、速くなったり遅くなったり、途中で止まったりする場合は、後述する異常呼吸パターンの可能性があります。深さも重要で、極端に浅い呼吸(ちゃんと空気が入っていない)や、異常に深い呼吸は換気の異常を示します。胸の動きに左右差がないかも確認します。
努力呼吸のサイン
努力呼吸とは、安静時なのに全身を使って苦しそうに呼吸している状態です。健康な人は横隔膜を中心に楽に呼吸しますが、呼吸が苦しくなると、本来は使わない筋肉まで動員します。次のようなサインが努力呼吸です。
- 肩を上下させて呼吸する(肩呼吸)
- 首すじの筋肉が張り、鎖骨の上や肋骨の間がへこむ
- 小鼻がヒクヒク開く(鼻翼呼吸)
- 口をすぼめて、あるいは肩で息をしながら話すため、会話が途切れ途切れになる
- じっとしていられず、体を起こしたがる
努力呼吸が見られたら、呼吸数が正常範囲でも呼吸状態は悪化していると考え、看護師へ報告します。とくに会話が一息で続かず、単語ごとに息継ぎが必要な状態は、切迫したサインです。
チアノーゼと顔色
唇や爪、口の中の粘膜が青紫色になるチアノーゼは、血液中の酸素が不足しているサインです。顔色が蒼白い、あるいは土気色といった変化も合わせて見ます。これらはSpO2の数値が下がる前後に現れることがあり、機器の数字と自分の目の両方で判断する材料になります。
代表的な異常呼吸パターンと介護職の観察ポイント
呼吸のリズムや様式には、特定の病態と結びついた特徴的なパターンがあります。名前と見た目、そして「どんな状態のサインか」を知っておくと、看護師への報告が格段に正確になります。介護職が病名を診断する必要はありませんが、「こういう呼吸をしている」と具体的に伝えられることが、医療職の判断を助けます。以下は日本臨床検査医学会のガイドラインなどに基づく代表的なパターンです。
チェーンストークス呼吸
浅い呼吸から徐々に深く大きな呼吸になり、ピークを過ぎると再び徐々に浅くなって、10〜20秒ほどの無呼吸に入る。これを周期的に繰り返す呼吸です。1周期はおおむね30秒〜2分ほど。重度の心不全、腎不全(尿毒症)、脳血管障害、各種疾患の終末期などでみられます。呼吸中枢の二酸化炭素への反応の乱れが背景にあります。夜間や臥床時に現れやすく、「息が止まったと思ったらまた大きく吸い始める」という家族や職員の気づきが発見の糸口になります。
下顎呼吸(あえぎ呼吸)
顎を上下に動かして、あえぐように息を吸い込む呼吸です。呼吸数は1分間1〜5回程度まで極端に減ります。呼吸中枢の機能が著しく低下したときに現れ、多くは臨終が近い状態を示す重要なサインです。看取りの場面で遭遇することが多く、下顎呼吸に気づいたら速やかに看護師へ報告し、家族への連絡など施設の看取り対応につなげます。苦しそうに見えますが、この段階では本人に苦痛は少ないとされることを、動揺する家族に看護師から伝えてもらう配慮も大切です。
クスマウル呼吸
異常に深くて大きい呼吸が、規則的に持続する呼吸です。速く深い場合もあります。体が酸性に傾く代謝性アシドーシス(糖尿病ケトアシドーシスや尿毒症など)のときに、二酸化炭素を吐き出して体を中和しようとして現れます。糖尿病のある利用者で、深く大きな呼吸に加えて意識がもうろうとしている、果物が腐ったような甘酸っぱい口臭(アセトン臭)がある場合は緊急性が高く、すぐに看護師へ報告します。
ビオー呼吸(失調性呼吸)
深さも間隔もバラバラの不規則な呼吸と、無呼吸を突然繰り返す呼吸です。チェーンストークス呼吸のような規則的な増減がなく、まったく予測できないのが特徴です。脳幹(延髄や橋)の障害、脳腫瘍、髄膜炎、脳の重い病変などでみられ、生命の危機を示すことが多いパターンです。
起座呼吸
横になると苦しくて呼吸ができず、上体を起こすと楽になる状態です。心不全や肺のうっ血で、臥位になると心臓に戻る血液が増えて負担がかかるために起こります。「夜、横になると苦しがって起き上がる」「ベッドを起こしてほしいと訴える」「枕を高くしないと眠れない」といった変化は、心不全悪化の重要なサインです。SpO2が保たれていても油断せず報告します。
SpO2だけに頼ってはいけない理由|数字が正常でも危ないとき
パルスオキシメーターの普及で、SpO2は介護現場でもっとも手軽なバイタルになりました。しかしSpO2の数字だけを見て「96%あるから大丈夫」と判断するのは危険です。呼吸数と呼吸様式の観察が、なぜ今も欠かせないのかを整理します。
SpO2は「今この瞬間の酸素」しか見ていない
SpO2は血液中のヘモグロビンがどれだけ酸素と結びついているかを示す値で、正常値は96〜99%です。厚生労働省の介護職員向けテキストでも、90%以下は絶対的に異常とされ、普段の値より低いかどうかも重要とされています。ただしSpO2でわかるのは酸素の取り込みだけで、二酸化炭素が体にたまっている状態はわかりません。同テキストは、呼吸筋が弱る神経筋疾患などでは、SpO2が正常でも二酸化炭素が排出できず危険な状態のことがあると明記しています。酸素の数字が良くても、換気(息の出し入れ)がうまくいっているとは限らないのです。
呼吸数はSpO2より早く異常を知らせる
体調が悪化すると、人はまず呼吸を速めて酸素を確保しようとします。この代償が効いているうちは、SpO2はまだ正常範囲に保たれます。つまり頻呼吸が始まっていてもSpO2は下がっていないことがあり、SpO2が下がったときにはすでに代償の限界を超えているのです。頻呼吸は血圧の低下よりも早く現れる変化として知られ、急変の early sign になります。肺炎や敗血症では、熱が出るより先に呼吸数だけが増えていることもあります。だからSpO2が正常でも、呼吸数が増えている、努力呼吸をしている、といった変化を捉えることが、早期発見の決め手になります。SpO2は結果の数字、呼吸数と呼吸様式は変化の前ぶれと考えると、両方を見る意味が理解しやすいでしょう。
機器の誤差にも注意
指先が冷たい、末梢の血流が悪い、マニキュアやジェルネイルをしている、体が動いている、といった条件では、パルスオキシメーターは実際より低い値や不正確な値を示すことがあります。数字が普段と違うときは、指を温める、別の指で測り直す、装着し直すなどしたうえで、数字と本人の様子(顔色、呼吸、意識、会話)を必ずセットで判断します。機器は判断を助ける道具であって、判断そのものを肩代わりはしてくれません。
高齢者の呼吸観察でつまずきやすい5つの落とし穴
高齢者の呼吸観察には、成人とは違う注意点があります。現場でつまずきやすいポイントを押さえておきましょう。
- 平常値を知らないまま数値だけで判断する:高齢者は個人差が大きく、平常時から呼吸がやや速い人もいます。その人のいつもの呼吸数を記録しておかないと、異常なのか個性なのか区別できません。ケース記録や申し送りで平常値を共有しておきます。
- 掛け物や厚着で胸の動きが見えない:冬場や臥床中は胸腹部の動きが見えにくく、数え損ねます。肩や鎖骨の動きを見る、そっと手を置くなど、見えないときの代替手段を持っておきます。
- 数えたふりで済ませてしまう:忙しさから「呼吸は正常」とだけ記録し、実際は数えていないことが起こりがちです。呼吸数こそ、急変を最初に知らせる値だと意識します。
- 認知症の方が測定を嫌がる:意識させると呼吸が乱れるうえ、拒否につながることもあります。ケアの流れの中で自然に、脈拍観察に続けてさりげなく数えます。
- 1回の数値だけで安心・不安になる:呼吸は変動します。1回だけでなく、時間を置いて再度測り、変化の方向(増えているのか、パターンが崩れてきたのか)で捉えます。
看護師へ報告すべきサインと、SBARで正確に伝えるコツ
介護職の役割は、異常に気づき、それを医療職へ的確に伝えることです。呼吸に関して、次のようなサインが見られたら看護師へ報告します。緊急性が高いものは、その場ですぐに応援を呼び、指示を仰ぎます。迷ったときは「様子を見る」より「早めに伝える」を選びます。呼吸の異常は進行が速いことがあり、報告が早いほど利用者を守れます。
すぐに報告すべき呼吸のサイン
- 呼吸数が1分間25回以上(頻呼吸)、または9回以下(徐呼吸)
- その人の平常時より明らかに呼吸が速い、または遅い
- チェーンストークス呼吸、下顎呼吸、クスマウル呼吸、ビオー呼吸など、いつもと違うリズムや様式
- 肩で息をする、鎖骨の上がへこむなどの努力呼吸
- 会話が一息で続かない、単語ごとに息継ぎする
- 横になれず起き上がって呼吸する(起座呼吸)
- 唇や爪が青紫色になるチアノーゼ、顔色不良
- SpO2が普段より低い、90%以下
- 呼吸と同時に、意識がもうろうとする、反応が鈍い
SBARで伝えると医療職が動きやすい
報告は、思いついた順に話すより、SBARという型に沿うと過不足なく伝わります。医療と介護の現場で共有されている伝え方です。
- S(状況):何が起きているか。「〇〇さんの呼吸が普段より速く、1分間28回です」
- B(背景):関連する情報。「もともと心不全があり、昨夜から横になると苦しがっていました」
- A(評価):自分がどう感じるか。「いつもと違い、努力呼吸をしていて心配です」
- R(依頼):してほしいこと。「一度診ていただけますか」
介護職は診断や医学的判断はできませんが、「呼吸数」「呼吸様式」「いつからか」「平常時との違い」という客観的な事実を数字と言葉で伝えることが、医療職の的確な判断を支えます。呼吸数を1分間きちんと数えた記録は、口頭で「なんとなく苦しそう」と言うよりはるかに強い情報になります。「28回で努力呼吸あり」と伝えられれば、看護師は電話越しでも緊急度を判断できます。日頃から呼吸を数え、平常値を記録しておくことが、いざというときの正確な報告につながるのです。
よくある質問(FAQ)
Q. 呼吸数は15秒数えて4倍してもいいですか。
できるだけ1分間そのまま数えることをおすすめします。呼吸は脈拍よりリズムが不規則で、15秒や30秒の換算では誤差が大きくなります。とくに周期的に無呼吸をはさむチェーンストークス呼吸などは短時間では見落とすため、異常が疑われるときほど1分間、あるいは数分間かけて観察します。
Q. なぜ「呼吸を測ります」と言ってはいけないのですか。
呼吸は本人の意思で速くも遅くもできる唯一のバイタルだからです。測定を意識させると無意識に呼吸を整えてしまい、本当の安静時の呼吸数がわからなくなります。脈拍を測るふりを続けながら、視線を胸やお腹の動きに移して数えるのがコツです。
Q. 介護職が呼吸数を数えるのは医療行為になりませんか。
胸やお腹の動きを目で見て呼吸数を数える観察行為そのものは医療行為ではなく、介護職が行える健康状態の把握です。ただし、その数値をもとに投薬の要否など医学的な判断を下すことはできません。介護職の役割は正確に観察して看護師や医師へ報告することです。
Q. 下顎呼吸を見たらどうすればいいですか。
下顎呼吸は臨終が近いことを示す重要なサインであることが多いため、速やかに看護師へ報告し、施設の看取り対応や家族への連絡につなげます。あわてず、まずは応援と看護師を呼ぶことが第一です。
Q. SpO2が96%あれば呼吸数は数えなくても大丈夫ですか。
いいえ。SpO2が正常でも、体が呼吸を速めて代償している段階では数字が保たれます。頻呼吸はSpO2低下や血圧低下より早く現れるため、SpO2が正常でも呼吸数と呼吸様式は必ず観察してください。
参考文献・出典
- [1]
- [2]
- [3]
まとめ|呼吸は、数えられる人だけが気づける命のサイン
呼吸数は、機器任せにできず介護職が自分の目で数える唯一のバイタルであり、同時に急変をもっとも早く知らせてくれるサインでもあります。本人に悟られないよう脈拍を測るふりをしながら、胸やお腹の上下動を1分間きちんと数える。回数だけでなく、リズム・深さ・努力呼吸・チアノーゼまで見る。この基本を身につけた介護職は、SpO2の数字が正常でも異変を捉えられます。
高齢者の呼吸数はおおむね1分間15〜20回が目安で、25回以上の頻呼吸、9回以下の徐呼吸、そしてチェーンストークス呼吸・下顎呼吸・クスマウル呼吸・ビオー呼吸・起座呼吸といった異常な様式は、いずれも見逃せないサインです。これらに気づいたら、呼吸数と呼吸様式、平常時との違いをSBARで正確に看護師へ伝えます。診断は医療職の仕事、正確な観察と報告は介護職の専門性です。
忙しい現場では、呼吸数はつい後回しにされがちなバイタルです。しかし、たった1分間その人の胸の動きを見つめるだけで、まだ数字にも顔色にも出ていない体の変化に気づけることがあります。呼吸を数えられる人だけが気づける命のサインがある。その1分が、利用者の急変を早期に食い止める最初の一歩になります。
執筆者
介護のハタラクナカマ編集部
編集部
介護業界の転職・キャリア情報を発信。厚生労働省の公的データと現場の声をもとに、介護職で働く方・転職を検討する方に役立つ情報をお届けしています。
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